看護師の3Kとは?9K・10Kの意味と前向きに働くための考え方

「看護師は3Kだからやめておいた方が良い」「3Kのきつさ、ほかの看護師も感じている?」
このような不安を感じたり、日々の業務で「きつい」と実感したりしている看護師は少なくありません。一方で、看護師の仕事はやりがいや誇りを感じられる魅力的な職業でもあります。
この記事では、看護師の3Kや9K、10Kの意味を解説したうえで、前向きに働くための考え方や選択肢を紹介します。キャリアに不安を感じている看護師も、自分に合った働き方を見つけるヒントが得られます。
看護師の3Kとは「きつい」「汚い」「危険」のこと
3Kとは以下の単語の頭文字をとった言葉で、労働環境の厳しい職業を表す際に使われます。
- きつい
- 汚い
- 危険
看護師の仕事が3Kといわれる理由を、具体的に見ていきましょう。
きつい
看護師の仕事は、身体面・精神面の両方できついといわれます。
とくに、身体的な負担は深刻で、日本医療労働組合連合会「急性期一般病院における看護職員の腰痛・頸肩腕痛の実態調査」によると、20代後半の看護職員の約65%が腰痛を訴えていると報告されています。これは、患者さまの移乗介助や体位変換、おむつ交換など身体に負担のかかる業務に加え、夜勤を含む不規則な勤務形態が生活リズムの乱れとなり、健康への影響を大きくしているためです。
また、患者さまの命を預かる責任とプレッシャーにさらされていることも、看護師が精神的な負担を感じる要因となっています。
汚い
看護師は痰の吸引、排泄物の処理、ドレーンからの排液の管理など体液や排泄物にかかわるケアを担当することが多く、一般的に「汚い」と感じられやすい業務を避けられません。
しかし、これらは患者さまの健康状態を把握するための大切な観察項目です。色、量、性状を確認することで、体調の変化や異常をいち早く発見できるため、重要な業務といえます。
危険
看護師の仕事には、感染症や事故などのリスクが常につきまといます。
たとえば、患者さまとの会話や痰の吸引時には飛沫感染の恐れがあり、採血や点滴の際には針刺し事故による血液感染の可能性もあります。
また、レントゲン撮影時の放射線被ばくや、取り扱いに注意が必要な薬剤を取り扱う機会があることも「危険な仕事」といわれる理由です。
看護師の3Kは「9K」「10K」ともいわれることもある
従来の3Kに加えて、看護師の仕事の厳しさをより詳しく表現する言葉として次のような表現もあります。
- 6つの「K」が加わり「9K」に
- 近年ではさらに広がり「10K」と呼ばれることも
ここでは、3Kにプラスされた「K」について詳しくみていきましょう。
6つの「K」が加わり「9K」に
3Kに次の6つの「K」が加わったものが9Kです。
- 規則が厳しい
医療機関では、カルテ記載の書き方や個人情報の取り扱い、与薬手順など医療安全のルールが細かく定められており、常に決まりに沿って行動する必要がある - 給料が安い
業務の責任の重さや業務量に対して給与水準が低いと感じる看護師は多く、夜勤手当に頼らざるを得ないという声も聞かれる - 休暇が取れない
慢性的な人手不足により希望するタイミングで休暇を取りにくく、シフト制のため連休が組みにくいと感じる看護師もいる - 婚期が遅い
シフト勤務や業務の忙しさにより、プライベートの時間が取りにくく、出会いの機会が限られると感じる看護師もいる。「仕事と家庭を両立できるか不安」という声があがるのも、このKが示す背景のひとつ。
※この表現は、看護師の勤務形態がプライベートに影響を及ぼしやすいという実情を表現したものですが、結婚や出産などライフイベントのタイミングには個人差があります。
- 化粧がのらない
夜勤や不規則な生活リズムにより肌が荒れやすくなり、化粧のりが悪くなると感じる看護師もいる - 薬に頼って生きている
夜勤や不規則な勤務により、体調管理のために栄養ドリンクや薬に頼る場面がある
日本看護協会「2022年看護職員の労働実態調査」によると、看護師の7割以上が何らかの薬を常用しています。看護師の心身への負担の大きさや、業界が抱える課題を象徴する表現として注目されています。
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近年ではさらに広がり「10K」と呼ばれることも
最近では看護師の仕事について「10K」という表現もみられるようになりました。「10Kには明確な定義があるわけではなく、人によってさまざまなKの表現が使われています。
- 過酷
9Kでは言い表せないほどの労働環境の厳しさを表す言葉である - 帰れない
急変対応や看取り、緊急入院といった突発的な事態、業務量の多さにより、定時で帰宅することが難しい状況を表す
- クレーム
「待ち時間が長い」「看護師の態度が悪い」といった医療機関へのクレームが話題になることが増えている
これらの新たな「K」は、看護師が直面する労働環境の厳しさや、現代の患者・社会との関係性の変化による新たな精神的な負担を反映しているといえます。
看護師の3Kはネガティブからポジティブへ
ネガティブな「K」ばかりを紹介してきましたが、近年では看護師の仕事をポジティブに捉えた新しい3Kが提唱されています。
- 感謝
- 感動
- 貢献
ここからは、ポジティブな3Kを紹介します。
感謝
看護師は、患者さまやご家族から、感謝の言葉を受け取れる職業です。
退院時に「あなたのおかげで頑張れました」「あなたがいてくれて、本当に助かったよ」と声をかけられたとき、看護師として働いていて良かったと実感できます。また、ベッド上で過ごしていた患者さまが立ち上がれるようになったり、笑顔が戻ったりする瞬間に立ち会えることは、人の役に立っている実感につながります。
感動
看護師の仕事には、感動的な場面が数多くあります。
新しい命の誕生に立ち会える瞬間、長期入院していた患者さまが無事に退院できた日など、心を動かされる場面に携われます。患者さまの回復に貢献できたという達成感や、その過程で味わえる喜びは、看護師ならではのやりがいといえるでしょう。
貢献
看護師は、患者さまの病気やケガの回復を支えることはもちろん、心配するご家族への声かけや心理的なサポートもおこなう職業です。
人の命や生活を支えているという実感は、看護師として働き続ける原動力になるでしょう。
看護師が「3K」と感じる場面と向き合い方
看護師として働くなかで「きつい」「汚い」「危険」と感じる場面は避けられません。しかし、対処法を知っておくことで、これらの課題と前向きに向き合えるようになります。
- 夜勤や長時間労働で体力が限界に感じたとき
- 排泄介助や感染リスクに不安を感じたとき
- 患者さまの急変や事故のリスクにプレッシャーを感じたとき
上記のような3Kを感じやすい場面と、その向き合い方について紹介します。
夜勤や長時間労働で体力が限界に感じたとき
夜勤や長時間労働による疲労は、多くの看護師が直面する課題です。
日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では、夜勤中にできる限り仮眠をとることが推奨されています。短時間でも質の良い仮眠をとるために、アイマスクや耳栓を活用する、仮眠前に軽くストレッチをするといった工夫が有効です。
また、夜勤前に十分な睡眠をとる、栄養バランスの良い食事を心がけるなど、普段の健康管理を意識しましょう。休日はリフレッシュの時間を作り、疲労を溜め込まないことも健康を保つために重要です。
排泄介助や感染リスクに不安を感じたとき
排泄介助や感染リスクのある業務への不安は、多くの看護師が経験することです。
最初は痰や便の処理に抵抗があっても、業務を経験していくうちにうまく対応できるようになります。排泄介助や痰の吸引は、患者さまの健康状態を知るための観察の機会でもあります。「患者さまを支えている」という意識を持つことで、少しずつ前向きに取り組めるようになるでしょう。
また、正しい知識と対策を身につけることで、感染リスクへの不安を軽減できます。職場の感染対策マニュアルに沿って、手指衛生や個人防護具を適切に使用することが大切です。
患者さまの急変や事故のリスクにプレッシャーを感じたとき
患者さまの命にかかわる場面でのプレッシャーは、看護師として避けて通れないものです。1人で抱え込まず、困ったときや判断に迷ったときは、リーダーや先輩看護師に相談しましょう。
急変時のシミュレーション研修に参加したり、先輩の対応を見学したりすることで、実践的なスキルを磨けます。「最初は不安を感じても、経験を積むことで落ち着いて対応できるようになります。
看護師の3Kの仕事をしたくないと感じたときに検討できる働き方
看護師の3Kがつらいと感じたとき、働き方そのものを見直すことも選択肢の1つです。
- 夜勤のない職場で働く
- 専門性を活かして働く
- 自分に合った職場を見つける
自分に合った環境を選ぶことで、仕事も生活も充実させられます。
夜勤のない職場で働く
夜勤による身体的・精神的な負担を減らしたい場合、日中のみの勤務ができる職場を検討しましょう。
- 訪問看護ステーション
- クリニック
- 健診センター
- 企業の産業保健室
これらの職場では、基本的に夜勤がありません。規則正しい生活リズムで働けるため、プライベートの時間も確保しやすくなります。
専門性を活かして働く
看護師としてのスキルアップを目指すことで、仕事へのやりがいが増し、3Kのつらさを乗り越えられることもあります。
自分が興味を持てる分野や得意とする領域を見つけ、その分野での経験を積むことも効果的です。やりがいを感じられる仕事に集中できれば、きつさを感じる場面も前向きに捉えられるようになります。
関連記事:認定看護師と専門看護師の違いとは?9つの違いや向いている人の特徴
自分に合った職場を見つける
転職や就職の際、職場選びのポイントを意識することで、長く働き続けられる環境に出会えます。
「人間関係が良好か」「患者さまとじっくり向き合えるか」「教育体制は整っているか」など、自分が重視する条件を挙げておきましょう。
訪問看護は、病院とは異なる環境で看護師としての経験を活かせる分野です。利用者さまの生活の場でケアを提供することで、個別性のある看護を実践できます。興味のある看護師は、訪問看護専門の求人サイト「NsPace Career」を覗いてみてください。訪問看護の仕事内容や魅力、求人情報を紹介しています。
看護師の3Kについてのよくある質問
看護師の3Kについてのよくある質問に回答します。
Q1:看護師が3Kの仕事を続けるコツはありますか?
看護師が仕事を続けるコツは、自分に合った働き方を見つけることです。
夜勤のない職場に転職したり、自分に合った専門分野でスキルを高めたりと、働き方の幅を広げてみましょう。
また、同僚や先輩との人間関係を築くことで、精神的な負担も軽減されます。困ったときに相談できる相手がいることや、お互いに支え合える職場環境は、仕事を続けるうえで支えになるのです。
Q2:看護師の仕事で「汚い」と感じる業務に慣れる方法はありますか?
経験を積むことで、汚いと感じる業務に多くの看護師が慣れていきます。
排泄介助や痰の吸引なども、患者さまの健康を支える大切なケアです。これらの業務を通じて得られる情報が、患者さまの状態観察につながります。
プロフェッショナルとしての使命感を持って業務にあたることで、抵抗感は薄れていくでしょう。感染対策の知識を深めれば、安全に業務をおこなえるという安心感も得られます。
Q3:看護師の仕事は3Kだからならない方が良いですか?
看護師には大変な面もありますが、次のように魅力的でやりがいのある職業です。
- 患者さまやご家族から「ありがとう」と感謝される喜び
- 患者さまの回復に貢献できる達成感
- 社会に貢献できる誇り
看護師ならではの魅力は数多くあります。また、専門職として病棟勤務だけでなく、クリニックや訪問看護ステーションで働いたり、企業看護師としての働き方を選んだりなど、さまざまな働き方を選択できることも強みです。
3Kの厳しさを知ったうえで、それを上回るやりがいや魅力を感じられるかどうかが大切です。看護師を目指している方は、ポジティブな3K(感謝・感動・貢献)にも目を向けてみてください。
看護師の3Kは「厳しさ」と「やりがい」の両面がある
看護師の3Kは、確かに仕事の大変さを表す言葉です。きつい、汚い、危険という側面は、看護師として働くうえで避けて通れない現実であるといえるでしょう。
しかし、それと同時に、看護師にはポジティブな3Kもあります。患者さまの回復を支えられる喜び、チームで成果を出す達成感、社会に貢献できる誇りなど、看護師には多くの魅力があるのです。
3Kの厳しさを知ったうえで、それを上回るやりがいを感じながら働ける環境を探してみましょう。
<参考文献・サイト>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
