ダメな看護師長にならないために!知っておきたい9つの特徴とあるべき姿

「周りから信頼されない」「チームを疲弊させる」そんな看護師長には共通する行動パターンがあります。看護師長の行動は、病棟の雰囲気や看護師のモチベーションに大きく影響します。
看護師長を目指す立場であれば、理想のリーダー像を知り、日々の行動を見直すきっかけになるでしょう。本記事では、ダメな看護師長に見られる特徴を「管理能力」「コミュニケーション能力」「人間性・倫理観」の3つの視点から整理し、信頼される看護師長になるためのヒントを紹介します。
ダメな看護師長にならないために知っておきたい特徴【管理能力】
・看護師の意見を聞かずにトップダウンで物事を進める
看護師の声を聞かずに、管理職だけで方針を決めるトップダウン型の姿勢は、現場のモチベーション低下につながります。「自分たちの意見は無視されている」と感じた看護師は、業務に対してやらされ感を抱き、意欲を失いやすくなります。
・シフトや業務分担の偏りがある
不公平なシフトや業務負担の偏りは、スタッフの不満と不信感を生みます。「自分ばかり夜勤が多い」「重症患者ばかり担当させられる」などの状況が続けば、離職のリスクも高まります。
・他部署との連携が取れない
他部門との関係が希薄な看護師長は、調整力や連携力が不足しており、トラブル時の対応が後手に回ります。たとえば手術室との情報共有が遅れると、患者やご家族への影響が生じる可能性があります。
ダメな看護師長にならないために知っておきたい特徴【コミュニケーション能力】
・えこひいきや陰口を言う
特定のスタッフをひいきしたり、陰口をたたいたりする行動は、職場の信頼関係を壊します。日本看護協会の「2024年 病院看護実態調査」によれば、看護管理者が回答した新卒看護師の退職理由で「上司・同僚との人間関係」は29.8%で第4位に挙げられています。
| 退職理由 | 割合 |
| 健康上の理由(精神的疾患) | 52.5% |
| 自分の看護職員としての適性への不安 | 47.4% |
| 自分の看護実践能力への不安 | 41.6% |
| 上司・同僚との人間関係 | 29.8% |
| 他施設への関心・転職 | 21.8% |
・感情的に対応しやすい
感情的な叱責や八つ当たりは、現場の雰囲気を悪化させ、スタッフの発言や報告を妨げます。看護師は委縮し、必要な情報が共有されなくなり、インシデントリスクも高まります。
・ミスの責任を一方的に押しつける
問題が起きた際に、後輩看護師に責任を押しつけるような態度は、信頼を大きく損ないます。責任の所在を曖昧にせず、管理者としての説明責任を果たす姿勢が求められます。
ダメな看護師長にならないために知っておきたい特徴【人間性と倫理観】
・プライベートに過度に介入する
部下のプライベートに過度に踏み込む行為は、ハラスメントにつながる恐れがあります。恋愛や家族の事情など、個人的な質問を繰り返すことは避けましょう。
・パワーハラスメントを行う
日本医労連の「2022年 看護職員の労働実態調査」によれば、看護職員の34.5%が「パワーハラスメントを受けた経験がある」と回答しており、その60.1%が「看護部門の上司」と答えています。管理職の行動が、現場に与える影響の大きさがわかります。
・不機嫌な態度を職場に持ち込む
挨拶を返さない、常に不機嫌な表情をしているなどの態度は、職場の雰囲気を悪化させます。こうした雰囲気が続けば、スタッフの発言や協力が得られなくなり、チームとしての一体感が失われていきます。
ダメな看護師長の行動がもたらす職場への影響
ダメな看護師長の行動は、看護師の疲弊にとどまらず、職場に悪影響を及ぼします。
人間関係が悪化したり、不公平感が広がったりすることでチームの協力体制が崩れます。その結果、業務効率が低下し、医療事故やインシデントの増加につながるリスクを高めがちです。
また、看護師が「この職場を辞めたい」と日々感じるようになり、離職率の増加や慢性的な人手不足を引き起こします。ストレスを抱えながら働く環境は、患者さまへの質の高いケアを妨げる原因にもなるでしょう。
関連記事:看護師はブラック・やめとけといわれる理由は?ブラックな職場の見分け方
看護師長のあるべき姿!後輩がついていきたくなる行動
看護師が「この人についていきたい」と思える看護師長は、優れた人格と高い管理能力を兼ね備えています。
- 傾聴の姿勢で現場の声を吸い上げる
- 成長支援の視点でフィードバックする
- 公平性を保ち評価基準を明確にする
- 部下を守る姿勢を態度で示す
- 「なぜ」を大切にし、挑戦を奨励する
看護師長が看護師のモチベーションを高められると、病棟に活気が生まれ働きやすい職場になったり、患者さまへのケアの質が上がったりするでしょう。
傾聴の姿勢で現場の声を吸い上げる
看護師の声に耳を傾けることは、信頼関係を築くためには欠かせません。看護師が「自分の意見を尊重してくれている」と感じることで、業務への意識とモチベーションが高まります。
たとえば、定期的に看護師との面談の機会を設け、業務の悩みや人間関係の不安を聞く時間を確保しましょう。看護師長には、看護師が話しやすい雰囲気を作り、最後まで話を聞く姿勢が求められます。
成長支援の視点でフィードバックする
成長できる視点でフィードバックすることは、看護師の自己肯定感を高めます。今後につながるアドバイスにより、看護師は前向きに業務に取り組めるようになるからです。
「この部分は良かった。次は〇〇に注意してやってみよう」と、どうすれば良くなるかを一緒に考えます。看護師長は、看護師の努力を認めつつ、次のステップに進むためにサポートすべきです。
公平性を保ち評価基準を明確にする
公平性を守り、評価の基準をはっきりさせることは、看護師の納得感を得るために欠かせません。「何を頑張れば評価されるのか」がわからないと「努力しても意味がない」と不満や看護師長への不信感につながるからです。
たとえば、半年に一度の目標設定や面談の際に、具体的な成果や日頃の行動を看護師に提示します。看護師長は、感情を入れず、誰に対しても同じ視点で評価する必要があります。
部下を守る姿勢を態度で示す
部下を守る姿勢を態度で示すことは、看護師の安心感を育みます。トラブルが発生した際に、看護師長が矢面に立ってくれる信頼感は、看護師が安心して業務に集中できる土台になるからです。
患者さまやご家族、他部署からの厳しい意見に対しては、まず看護師長が対応し、不当な非難から看護師を守るように行動すべきです。
看護師長には、責任を率先して引き受け、看護師が安心して働ける環境を作ることが求められます。
「なぜ」を大切にし、挑戦を奨励する
「なぜ」と問いを大切にし、看護師の挑戦を応援することは、病棟の成長と活性化につながります。「どうすればもっと良くなるか」と自発的な考えが生まれるからです。
たとえば、看護師から業務改善のアイデアが出たとき、リスクを指摘するだけでなく「どうすれば実現できるか」を一緒に考え、その試みを応援します。看護師長は、看護師が失敗を恐れずに挑戦する環境にして、主体性を引き出す必要があります。
後輩がついていきたくなる看護師長の行動例
後輩がついていきたくなる看護師長は、日常からリーダーシップを発揮しています。ここでは2つの事例を紹介します。
事例1:チーム全体のモチベーションを引き上げる
| ある病棟の看護師長は、業務が単調になりがちな現状を見て、看護師のモチベーション低下に気づきました。看護師長は「患者さまの生活の質向上」をテーマに、病棟で改善提案を募りました。提出されたアイデアを壁に貼り出し率先して実行しました。 |
看護師長が現状を理解し、看護師の努力を成果として認めたため、チーム全体のモチベーションが引き上がりました。ネガティブな状況をポジティブな視点で転換する姿勢が大切です。
事例2:後輩の意見を業務に反映する
| ある看護師が、患者さまの転倒リスク管理について、既存のチェックリストは現場に合っていないのではないかと提案しました。看護師長は手間が増えると一蹴するのではなく、すぐに業務改善会議の議題として取り上げました。看護師にも会議での発表の機会を与え、その意見は病棟の新しい転倒予防マニュアルに反映されました。 |
後輩の意見を業務に反映したことで、後輩の看護師は「自分の意見が病棟運営に貢献できる」と実感しました。この行動が、ほかの看護師にも「看護師長は真剣に話を聞いてくれる」という信頼感を深めさせます。
ダメな看護師長についてのよくある質問
看護師長を目指すうえで抱きやすい疑問に答えます。
Q1:後輩からの信頼を失わない指導方法がありますか?
後輩からの信頼を失わない指導では、人格を否定しないことが原則です。事実と行動に焦点を当て「なぜその行動が問題なのか」「次にどう改善すべきか」を伝えることが信頼関係を維持するためには不可欠です。
インシデントが発生した際に「なぜ確認を怠ったのか」と責めるだけではなく「順番を〇〇から△△に変えて確認するとミスを減らせる」と改善策を提示します。また、指導後には「期待しているからこそ伝えている」といったポジティブなメッセージを添えると、前向きに指導を受け入れやすくなるでしょう。
Q2:信頼される職場作りのために看護師長が意識すべきことは何ですか?
信頼される職場作りのためには、透明性と公平性を意識しましょう。意思決定のプロセスや、看護師の評価基準をオープンにすることが大切です。
看護師に一貫した態度で接し、えこひいきはしない姿勢が欠かせません。また、コミュニケーションの機会を増やし、看護師の相互理解を深めるサポートも重要です。
Q3:看護師長に向いている人はどういう人ですか?
看護師長に向いているのは、次の能力やスキルがある人です。
- リーダーシップ
- コミュニケーション能力
- 目標設定の能力
- 豊富な臨床経験
- 看護師を成長させる教育スキル
具体的には、部下の成長を心から喜び、それをサポートできる人が適しています。看護師長に必要な能力や資質について、下記の記事でも詳しく解説しているためぜひ参考にしてください。
関連記事:看護師長の役割と求められる資質は?身につけ方やめざす方法について解説
ダメな看護師長の特徴を知って信頼される看護師長を目指そう!
ダメな看護師長の特徴を知ることは、自分を振り返り、改善すべき点をはっきりとする助けになります。
看護師長を目指すうえで大切なのは、管理能力、コミュニケーション能力、人間性・倫理観などで、誠実なリーダーシップを発揮することです。行動の積み重ねが、信頼される看護師長になれるきっかけになるでしょう。
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