看護師の初任給は手取りでいくら?リアルな明細と生活シミュレーションを解説

「看護師の初任給の手取りは、実際どのくらいなの?」「手取りのお金で生活していけるのかな…」
このような不安を抱えている新卒の看護師もいるのではないでしょうか。
看護師の求人票に書かれている給与額だけでは、具体的な生活がイメージしづらいことがあります。その結果「思ったより初任給の手取りが少なかった」と感じる看護師も少なくありません。
この記事では、看護師の初任給のリアルな手取り額や生活シミュレーション、手取りを増やすための方法をご紹介します。看護師の初任給の手取りにまつわる不安を解消し、看護師のキャリアを前向きに進めましょう。
看護師の初任給の手取りは約21万円
看護師の初任給の手取りは、21万円前後が目安です。求人票に記載されている給与は総支給額であり、そこから税金や社会保険料が差し引かれます。ここからは、看護師の月収とボーナスの手取りを見ていきましょう。

看護師の月収の手取り
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の初任給の平均は26万9,800円です。ただし、この額は総支給額のため、実際の手取りはそこから控除を引いた金額になります。
手取りは総支給額の75〜85%が目安とされているため、総支給額が26万9,800円の場合、手取りは20万2,350円~22万9,330円になります。

看護師のボーナスの手取り
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、新卒看護師のボーナスの平均は10万4,600円です。
ただ、初任給と同じようにボーナスの場合も、実際の手取りは社会保険料や税金が天引きされ、1~2割ほど少なくなります。総支給額が10万4,600円であれば、手取りは7万8,450円~8万8,910円です。
看護師の初任給から引かれるお金の内訳
看護師の初任給は、総支給額から約5~7万円が控除されます。おもな内訳は、次のとおりです。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税
- 寮の費用や組合費など任意の控除
それぞれ詳しく解説します。
健康保険料
健康保険料は加入している健康保険組合や都道府県により異なります。たとえば、全国健康保険協会に加入し東京都内で勤務している場合、保険料率は9.91%です。その半分を事業主である病院、もう半分を自分が負担します。
つまり、給与から差し引かれるのは4.96%となり、初任給の総支給額が26万9,800円の場合、約1万3,382円が控除されます。
厚生年金保険料
2025年現在、厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、健康保険料と同じように事業主と従業員が折半します。
総支給額からの差し引かれるのは給与の9.15%で、26万9,800円の初任給なら2万4,687円が差し引かれる計算です。
雇用保険料
2025年時点での雇用保険料率は、給与の0.55%と定められており、初任給26万9,800円なら1,484円となります。
所得税
所得税は、給与額や扶養条件などに応じて納める金額が変わります。看護師の初任給の平均額から計算すると、所得税は5,000円前後になるケースが多いでしょう。
住民税
住民税は、前年の所得にもとづいて課税されるため、社会人1年目である新人看護師に住民税は発生しません。2年目からは前年の所得に対して課税されるようになります。
寮の費用や組合費など任意の控除
健康保険料や厚生年金保険料など、必須の控除以外にも、次のような項目が総支給額から天引きされることがあります。
- 看護師寮の家賃:給与から家賃が天引きされるケース
- 職員組合費:病院の職員組合に加入しているケース
- 互助会費:職員同士の親睦を深めるための互助会に加入しており、会費が発生するケース
これらの控除額は、病院や個人の状況により異なるため、求人票や採用面接で確認しておきましょう。
看護師の初任給の手取りイメージ例
ここでは、看護師の初任給の手取り額をシミュレーションしてみます。たとえば、総支給額26万9,800円の新人看護師の場合、以下のような控除が想定されます。
控除の書類 | 差し引かれる金額 |
健康保険料 | 1万3,490円 |
厚生年金保険料 | 2万4,687円 |
雇用保険料 | 1,484円 |
所得税 | 約5,000円 |
控除合計 | 約4万4,661円 |
手取り額 | 約22万5,139円 |
このシミュレーションからわかるように、総支給額の約8割が手取りです。ここに寮の費用や組合費が加わると、さらに数千円~1万円程度差し引かれます。
看護師の初任給の手取りに差が出る要因
看護師の初任給は、学歴や勤務先の違いによって手取りに差があります。おもな理由は次のとおりです。
- 学歴:専門卒より大学卒の方が初任給は高い
- 勤務先の規模:クリニックや小規模な医療機関よりも、大規模な病院の方が初任給は高い傾向にある
- 設置主体:公立病院は安定性があり、私立病院は経営状況によって変動がある
- 勤務先の地域:地方に比べて都市部の方が給与水準は高い
このような初任給の手取りに差が出る条件を知っておくと、就職先を選ぶときのポイントにもなります。
関連記事:看護師の初任給はいくら?手取りや賞与事情、差が出る4つの要因
看護師の初任給の手取りで生活する家計シミュレーション
ここからは、看護師の初任給の手取りで実際どのような生活ができるのか、次のシチュエーションで考えてみます。
- 一人暮らしの場合
- 実家暮らしの場合
- 地方勤務の場合
- 都市部の勤務の場合
これからご紹介するのはあくまで一例のシミュレーションであり、実際の生活費や手取り額は地域や個人の状況によって異なることに注意してください。それぞれ詳しく見ていきましょう。
一人暮らしの場合
まずは、一人暮らしで都心部から少し離れたワンルームに住む場合を想定します。
初任給の手取り:21万円 家賃:5万円 食費:4万円 水道光熱費:1万3,000円 通信費:7,000円 交通費:5,000円 日用品・雑費:1万5,000円 交際費・娯楽費:3万円 家計の合計:16万円 手取りからの残額:5万円 |
この残額を貯金に回したり、交際費や娯楽費に使うお金を増やしたりすることも可能です。
実家暮らしの場合
実家暮らしは、一人暮らしに比べて家賃や食費の負担が軽くなります。
初任給の手取り:21万円 家に入れるお金:3万円 食費:1万円 通信費:1万円 交通費:5,000円 日用品・雑費:1万円 交際費・娯楽費:3万円 家計の合計:9万5,000円 手取りからの残額:11万5,000円 |
一人暮らしに比べて、2倍近くの金額を貯金や自己投資に回せることがわかります。実家暮らしの場合、お金を貯めるチャンスと考え、将来の目標に向けて有効活用することが重要です。
地方勤務の場合
地方は都市部に比べて給与水準は低い傾向にありますが、その分、生活費や家賃も安く抑えられます。
初任給の手取り:19万円 家賃:3万5,000円 食費:2万5,000円 水道光熱費:1万2,000円 通信費:8,000円 交通費:3,000円 日用品・雑費:1万2,000円 交際費・娯楽費:2万5,000円 家計の合計:12万円 手取りからの残額:7万円 |
手取りは都市部より低いものの、生活費も抑えられます。地方勤務は、お金を貯めたい看護師にとっておすすめの選択肢といえるでしょう。
都市部の勤務の場合
都市部は地方に比べて給与水準は高めですが、家賃や物価も高くなります。とくに家賃は、生活費を圧迫する要因となるケースもあるでしょう。
初任給の手取り:23万円 家賃:7万円 食費:3万5,000円 水道光熱費:1万5,000円 通信費:1万円 交通費:5,000円 日用品・雑費:1万5,000円 交際費・娯楽費:4万円 家計の合計:19万円 手取りからの残額:4万円 |
手取りは高いものの、家賃や交際費などがかさむため、手元に残るお金は地方勤務の場合よりも少なくなることがあります。都市部で生活する場合は、より家計の管理が重要です。
看護師の初任給の手取りを増やす方法
看護師が初任給の手取りを増やすためには、次の方法が挙げられます。
- 職場選びの時点で給与条件をしっかり確認する
- 住宅手当や看護師寮の制度を利用する
- 残業代や特殊勤務手当をチェックする
それぞれ解説します。
職場選びの時点で給与条件をしっかり確認する
入職してから後悔しないためにも、職場選びの際の情報収集が大切です。たとえば、次のポイントをチェックしてみてください。
- 基本給
- 夜勤手当の金額
- 住宅手当や通勤手当の有無
基本給が高いほど、ボーナスや退職金も増える傾向があります。また、夜勤に多く入るほど収入が増えるため、1回あたりの夜勤手当の額や頻度も確認しておきましょう。さらに、諸手当が充実している職場では、結果的に手取りが増えることにつながります。
住宅手当や看護師寮の制度を利用する
一人暮らしの場合、家賃を補助してくれる制度や看護師寮を活用し、家賃の負担を軽減することが可能です。
生活費を抑えることは、実質的に手取りを増やすのと同じ効果があります。
残業代や特殊勤務手当をチェックする
ICUや手術室などの特殊な環境で働く看護師は、通常の給与に加えて手当が支給されることがあります。
また、残業代が適切に支給される職場かどうかも、手取りを増やす重要なポイントです。
看護師の初任給の手取りについてよくある質問
ここからは、看護師の初任給の手取りについてよくある質問をまとめました。
Q1:看護師1年目でもらえるボーナスはどのくらいですか?
看護師1年目の夏のボーナスは、在籍期間が短いため「寸志」として数万円支給されるケース、または支給なしのケースが一般的です。満額が支給されるのは冬のボーナスからで、平均10万円が期待できます。
「夏のボーナスはほとんど出ない」「冬のボーナスから本格的に支給される」という点を知っておくと、入職後のギャップが少ないでしょう。
Q2:2年目以降は手取りが減るって本当ですか?
社会人2年目からは住民税が控除されるため、月々の手取りが1~2万円ほど減るのが一般的です。これが「2年目になったら手取りが減った」と感じる理由のひとつです。
あらかじめこの事実を知っておくと、2年目の給与明細を見ても慌てることなく、心構えができるでしょう。
Q3:看護師のリアルな年収はどのくらいですか?
看護師の初任給ベースでは、年収334万円くらいが目安です。夜勤手当や残業代などが加わるとさらに増えるケースもあります。また、居住している地域や病院の規模などにより年収は異なります。
看護師として経験を重ねて昇給したり、役職に就いたりすると年収アップも可能です。
看護師の初任給の手取りに関する知識を身につけ不安を解消しよう
看護師の初任給では、総支給額と手取りの差に戸惑う看護師も少なくありません。額面にとらわれず、実際に生活に使えるお金を意識することが大切です。
初任給から差し引かれる控除の内訳を理解し、生活費をシミュレーションしておくと、安心してお金のやりくりができるようになります。また、職場選びや制度の活用により、手取りを増やす工夫も可能です。初任給に不安を抱いている方は、手取りで生活設計を考え、前向きにキャリアをスタートさせましょう。
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<参考サイト>

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