看護方式とは?最新情報や種類と看護方式で職場を選ぶときの4つのコツ

「業務が忙しすぎて患者さまとじっくり向き合えない」「人間関係がうまくいかず孤立している」
こうした悩みの背景には、職場で採用されている看護方式が影響している場合もあります。
看護方式は病院や病棟によってさまざまで、業務の進め方や人間関係、キャリア形成にも深く関わります。自分に合った方式を選ぶことで、より働きやすく、やりがいを感じられる職場に出会えるかもしれません。
この記事では、代表的な看護方式の種類と特徴、職場選びの際に知っておきたいポイントを解説します。看護方式を理解して、あなたらしい働き方を見つけましょう。
看護方式とは患者さまへのケアの進め方
看護方式とは、看護師がどのような体制で患者さまを支えるかを決めた方法のことです。
たとえば、「一人の看護師が継続して担当する」「チームで役割を分担する」など、誰が・どのように・どこまでケアを担当するかをあらかじめ決めておく仕組みです。
まずは看護方式の現状や、「看護体制」との違いについて解説します。
看護方式の現状
看護方式ごとに看護師の業務内容や役割、患者さまとのかかわり方などが異なります。患者さまの状態や病棟の特性によって、さまざまな方式が使いわけられます。
医療現場では、看護師の経験やスキルがバラバラでも、質の高いケアをおこなわなければなりません。そのため、看護方式を組み合わせたり、病院独自の方法で取り組んだりしています。
看護体制との違い
看護方式はケアの進め方を、看護体制は看護師の人員配置の基準を示すものです。
たとえば、看護体制が「7対1」であれば、患者さま7人に対して看護師1人以上が配置されることをあらわします。どちらも看護師の働き方を左右するため、転職時に理解しておくべき重要な情報です。
看護方式の種類と特徴【チームでおこなう看護方式】
まずは、チーム方式から紹介します。
- チームナーシング
- 固定チームナーシング
- モジュールナーシング
- 機能別看護
それぞれの違いを知って、自分が現場で働く際に合うかどうかをイメージしてみましょう。
チームナーシング
<特徴> ・新人や経験が浅い、苦手な分野がある看護師らをカバーできる ・ケアのレベルを一定水準に維持できる ・看護師の成長が期待できる |
チームナーシングは、看護師をチームにわけ、リーダーとメンバーで患者さまの療養生活を支える看護方式です。看護師の経験や能力に差があってもカバーしながら業務を進められます。
たとえば、新人看護師や経験の浅い看護師は、ベテラン看護師にすぐに相談したり、指導を受けたりできます。「誰に相談すれば良いの?」と悩むこともなく、安心して業務に取り組めるでしょう。
一方で、リーダーの役割が多いため負担が大きくなりがちで、業務がスムーズかどうかはリーダーの力量にかかってきます。
関連記事:チームナーシングとは?機能別看護方式との違いや3つのメリットを解説
固定チームナーシング
<特徴> ・担当が6ヶ月~1年くらい変わらないため患者さまは不安になりにくい ・看護師が不在でもチームで患者さまの状況を把握できる ・計画的に新人看護師の育成に取り組める |
固定チームナーシングは、一般的に6ヶ月~1年くらいの期間、リーダーとメンバーを変えずに、患者さまのサポートにあたる看護方式です。チームナーシングでは、日にちごと、または週ごとにチームメンバーが変わるため、この点が固定ナーシングとの違いです。
看護師がそれぞれのことがわかるようになるため、協力しやすくなります。患者さまの状態も長期的に観察することで、きめ細やかなケアが可能になります。
対して、もし相性が合わない人がいる場合はストレスになったり、ケアする患者さまが変わらないため経験する症例は偏ったりしがちです。
モジュールナーシング
<特徴> ・患者さまの状況に合わせたケアやプランの立案ができる ・ケアの水準を維持できる ・看護師に足りない能力をチームで補える |
モジュールナーシングは、看護師を2つ以上のグループにわけ、そのチームでさらに小さなチームを組んで患者さまのケアにあたる看護方式です。
チームで患者さまの入院生活をサポートするため、状況に合わせたケアやプランの立案ができ、看護師の負担も軽減できます。
しかし、チーム内でのコミュニケーションが中心となるため、ほかのチームの看護師と交流する機会が限られ、同じ病棟でも人間関係の深さに差が生まれるかもしれません。また、インシデントや業務の漏れなどが起こった際に、誰に責任があるのかわかりにくいという課題もあります。
機能別看護
<特徴> ・看護師の経験やスキルに合った業務を振りわけられる ・効率的に業務を進められる ・看護師の負担を軽減できる |
機能別看護は、業務効率を優先した看護方式で、業務ごとに担当者を決めます。担当業務は、週間単位もしくは、1日ごとに変わることもあるようです。
たとえば、注射はAさん、バイタルサインの測定はBさん、清拭と陰部洗浄はCさんというようにわかれ、特定の技術を繰り返しおこなうためスキルが向上します。
その反面、患者さまと断片的なかかわりとなり、深い信頼関係を築くのは難しくなります。
看護方式の種類と特徴【専任でおこなう看護方式】
専任でおこなう看護方式は、患者さまとの信頼関係を深めたい看護師の方に人気があります。ここでは、おもな2つの看護方式を紹介します。
- プライマリーナーシング
- PNS(パートナーシップナーシング)
患者さまを理解し、それぞれの状態に合った支援をすることでやりがいを感じられます。それぞれを詳しく見ていきましょう。
プライマリーナーシング
<特徴> ・患者さまの変化に気づきやすい ・患者さまと信頼関係を築きやすい ・看護師の責任感や自立心を養える |
プライマリーナーシングは、1人の看護師が継続して患者さまをサポートする看護方式です。
たとえば、じっくり向き合うことで、患者さまの生活背景やこれまでの病歴、治療への思いなどを理解したうえで、病状に合ったケアを提供できます。
ただし、看護師の経験やスキルによってケアの質にバラつきが出やすいこともあるようです。また、受け持ちの看護師が夜勤明けや休みなどで不在のときに、患者さまの退院や転院が決まると、ほかの看護師が看護サマリーをスムーズに書けないといった課題もあります。
PNS(パートナーシップナーシング)
<特徴> ・新人や若手の看護師も安心して業務を進められる ・パートナー間のコミュニケーションが活発になり関係性が深まりやすい ・パートナーで足りないスキルや知識をカバーできる |
PNSは、2人1組でペアを組み、患者さまのケアをおこなう看護方式です。
教育の一環としてPNSが採用され、新人や若手の看護師とベテラン看護師がペアになることが多いようです。常にペアで動くことになるため、新人看護師は困ったことがあればすぐに相談でき、安心して仕事に臨めます。
一方で、新人看護師は自分で考える機会が少なくなるため主体性がなくなったり、ベテラン看護師の負担が大きくなったりすることがデメリットです。実際に、ベテラン看護師の業務負担の増加から反対意見が出て、PNS導入を見送ったという声も聞かれます。
注目を集めている看護方式である「セル看護提供方式🄬」
<特徴> ・ナースコールが鳴って対応するまでの時間を短縮できる ・患者さまとの関係性が深まりやすい ・患者さまの病状を詳しく把握できる |
「セル看護提供方式🄬」は、福岡県の飯塚病院が開発し、導入した看護方式です。近年、注目を集めており、看護師がナースステーションに戻らずに、ベッドサイドで業務をおこなえるように工夫されています。
従来の方式では、記録やケアの準備のために、ナースステーションと病室を何度も行き来する必要がありました。
しかし、パソコンやケアに必要な物品を載せたカートを使うことで、ベッドサイドやその近くでほとんどの業務を終わらせられます。そのため、患者さまの異変にすぐ気づけるようになり、看護師の負担も軽くなります。
現場での看護方式の導入事例
ここでは、実際に導入されている事例を紹介します。
事例1:PNSの導入で記録がタイムリーにできるようになった事例
A病院では2016年にPNSを導入。これまでは、ケアや処置を実施して記録するまでのタイムラグが課題でした。しかし、PNSを導入して、看護師がペアで働くことで実施後、1時間以内で記録を残せるケースが増え、多職種もタイムリーに情報を把握できるようになりました。さらに、時間外勤務も削減できるようになったため、看護師のワークライフバランスも整えやすくなりました。 |
PNSは新人看護師の教育だけでなく、病棟のスキルアップや、働きやすい職場環境の構築にも効果を発揮しています。
事例2:セル看護提供方式🄬の導入で患者さまの変化に気づきやすくなった事例
セル看護提供方式🄬は、B病院で取り入れられています。今までは看護師がバタバタと走ったり、ナースコールが鳴ったりして騒がしかった状況でした。しかし、この方式を導入してから病棟が静かになり、半年足らずで現場が変わりました。看護師がベッドサイドで業務を完結できるようになった結果、患者さまのちょっとした変化にも気づきやすくなり、細やかなケアが実現できています。 |
セル看護提供方式🄬は、業務の効率化によって看護師の業務負担を減らすだけでなく、患者さまとのコミュニケーションを増やすことで、満足度の高いケアにつながると期待されています。
看護方式で職場を選ぶときのポイント
自分に合った看護方式の職場を選ぶことで、長くやりがいを持って働けます。転職活動で注目すべきポイントを紹介します。
- 自分に合った看護方式を把握する
- 病棟や施設の看護方式の情報を調べる
- 採用面接で看護方式について確認する
- 働きやすさやキャリア形成への影響を考える
これらのポイントを押さえておくことで、入職後「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防げます。理想の働き方を見つけるために、しっかり情報収集をして、自分に合った職場を選びましょう。
自分に合った看護方式を把握する
まずは、自分がどのような働き方をしたいかを考えることから始めましょう。
患者さまとじっくりかかわりたいのであれば「プライマリーナーシング」、1人で責任を負うのが不安なら「チームナーシング」や「PNS」などがおすすめです。
それぞれの特徴を理解して、自分に合う職場を見つけることが大切です。
病棟や施設の看護方式の情報を調べる
病院や施設で取り入れられている看護方式を知りたい場合、求人情報や病院のホームページを確認しましょう。
ホームページに情報がなければ、病院見学会で質問するほかに、看護師の口コミサイトやSNSで実際に働いている人の声を探すのも1つの方法です。
採用面接で看護方式について確認する
面接で看護方式について質問することで、働きやすい職場が見つかり、入職後のミスマッチを防げます。採用担当者に「貴院の看護方式について詳しく教えていただけますか?」と尋ね、具体的な業務内容やチーム構成を確かめると良いでしょう。
働きやすさやキャリア形成への影響を考える
看護方式は、働きやすさやキャリア形成に直結します。
たとえば、チームナーシングやモジュールナーシングなど、チームで働く方式なら、新しい知識や技術を先輩から教えてもらえる機会が多く、スキルアップにつなげられます。
一方で、PNSやプライマリーナーシングなど専任で患者さまを支援する方式なら、自身の看護観を深められ、患者さまとの関係性を深められるでしょう。自分の将来像を考えながら、最適な看護方式を見つけることが重要です。
病院や施設だけではなく、訪問看護の利用者さまを担当する方法について興味がある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
関連記事:訪問看護は担当制?受け持ち制とチーム制の違いやメリット・デメリットについて解説
看護方式についてのよくある質問
ここでは、看護方式についてのよくある質問に回答します。
Q1:機能別看護方式は古いといわれる理由は何ですか?
機能別看護方式は、戦後の看護師不足期に広く導入された方式であるため、古いといわれている可能性があります。
この方式は、効率性は高いものの、患者さまとの継続的なかかわりが少ないため、近年は患者中心の看護との両立が課題となっています。そのため、導入している病院は減少傾向にあるようです。
Q2:セル看護提供方式🄬とチームナーシングの違いは何ですか?
セル看護提供方式🄬とチームナーシングの違いは、業務の場所と担当の決め方です。
セル看護提供方式🄬は、数名の看護師がチームとなり、ベッドサイドを中心にして、ケアや看護記録などの業務を完結させる方法です。一方で、チームナーシングは、チームリーダーを中心にケアを提供し、ナースステーションを拠点に業務を進めます。
Q3:新卒看護師に合う看護方式は何ですか?
新卒看護師には、チームで先輩から学べる「チームナーシング」や「PNS」が合うでしょう。
1人で責任を負うのではなく、チームで患者さまをケアするため、不安なく業務に取り組めます。
たとえば、難しい処置で心配になったときや、判断に迷ったときに、すぐに先輩に相談したり、助けてもらったりできます。また、業務のなかで先輩の技術を間近で見ることができるため、自然とスキルが身につくはずです。
まずは、チームで基礎をしっかり学び、自信をつけてから、将来的にほかの看護方式の職場に転職してみるのも良いでしょう。
看護方式も踏まえて転職先を探して理想の働き方を実現しよう!
看護方式は、看護師としての働き方を大きく左右します。それぞれの方式の特徴を理解し、自分の性格やキャリアプランに合う職場を探すことが大切です。
理想の看護師像を見つめ直し、看護方式という視点で転職活動を進めてみませんか。訪問看護師にご興味がある方は、訪問看護に特化した求人サイト「NsPaceCareer」をぜひご活用ください。
<参考サイト・文献>

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