チーム医療で大切なこと5つ!看護師に必要な役割やうまくいかないときの対処法

「在宅でも、チーム医療って本当にできるの?」「ひとりで判断するのが怖い…」——訪問看護を目指すあなたは、そんな不安を感じていませんか?
訪問看護の現場では、医師やケアマネジャー、ヘルパー、リハビリ職など、多職種との“ゆるやかな連携”が不可欠です。けれど、病院のように顔を合わせる機会が少ないぶん、連携の難しさや孤独を感じることもあるかもしれません。
本記事では、**訪問看護でも活きる「チーム医療で大切な5つのこと」**をわかりやすく解説し、現場での実例や、うまく連携できないときの対処法も紹介します。
チーム医療の基本を押さえることで、在宅の現場でも自信を持って多職種と協力し、ひとりではなく“チームの一員”として患者さまを支える力が身につくはずです。
チーム医療で大切なこと5つ
チーム医療で患者さまに最善のケアを提供するためには、それぞれの専門職が自分の役割を果たすだけではなく、お互いを尊重しあうことが重要です。
チーム医療を理解し、業務に活かせるようポイントを紹介していきます。
- チームでの看護師の役割と責任を理解する
- 積極的に報告・連絡・相談をする
- 多職種へのリスペクトと傾聴の姿勢を持つ
- 情報共有のタイミング・方法を工夫する
- 「患者さま中心」で考えることを忘れない
より良いケアを実施するために、これらのポイントを知っておくことが大切です。
チームでの看護師の役割と責任を理解する
看護師は、患者さまが入院している24時間見守り、ケアをおこなっています。患者さまに一番近い存在だからこそ、医師やほかの専門職が気づきにくい変化や情報をいち早く見つけられるのが、看護師の強みです。
たとえば、食欲がない原因を病状によるものと医師が判断しても、看護師は「味が薄く食べにくいから」と気づき、管理栄養士に相談して食事を工夫する提案ができます。
看護師ならではの視点が、患者さまの食事量の増加に向けたサポートを後押しできるのです。
積極的に報告・連絡・相談をする
チーム医療では、小さなことでも積極的に「報告・連絡・相談」をすることが、患者さまの安全を守るためには重要です。情報共有が不十分だと、ケアや処置が遅れてしまい、医療ミスにつながるリスクがあります。
たとえば、患者さまの血圧がいつもよりも低いことに気づいたら、すぐに医師に報告することで、病状の悪化を防げるのです。また、ご家族から「退院後の生活が不安」という声を聞いたら、ソーシャルワーカーに相談することで、訪問看護や訪問介護などサービスを調整できます。
多職種へのリスペクトと傾聴の姿勢を持つ
チームメンバー間の信頼関係を築くためには、相手の意見をよく聞く姿勢が欠かせません。
一例として、医師が処方した薬について薬剤師が副作用のリスクを指摘したり、ベッド上安静の指示に対して理学療法士がリハビリの観点から別の提案をしたりする場合もあるでしょう。
それぞれの専門職が意見を出し合うことで、患者さまにとって最適な治療やケアが見つかります。
情報共有のタイミング・方法を工夫する
すべて同じ方法で情報を伝えるのではなく、緊急度や内容によって伝え方を変えると効率的です。
緊急性の高い情報は、口頭ですぐに伝える一方で、バイタルサインや食事量といった情報は、電子カルテに入力することで、いつでも誰でも確認できます。
情報共有のルールを明らかにして、状況に応じた伝達方法を選ぶことで、患者さまの安全をしっかりと守ったケアを提供できます。
「患者さま中心」で考えることを忘れない
チーム医療では「患者さまにとって何が最善か」という共通の目標を忘れないことが大切です。
専門職が集まると、それぞれの専門分野の視点に偏りがちです。しかし、共通の目標を意識すると、意見の違いも解決しやすくなります。
医師とリハビリスタッフの間で意見がわかれた際でも「患者さまが早く自宅に戻れるように」という目標に立ち返ることで解決策を見つけ、協力して治療を進められるでしょう。
チーム医療の例
病院内には、特定の疾患や症状がある患者さまに対して、多職種が協力する専門のチームがあります。それぞれの専門職が力を合わせることで、患者さまの回復をサポートできます。
- 栄養サポートチーム
- 褥瘡管理チーム
- 緩和ケアチーム
- 感染制御チーム
- 呼吸サポートチーム
- 退院支援チーム
チームの活動を理解し、適切に活用することで、看護の質をさらに向上させられるでしょう。
栄養サポートチーム
栄養サポートチームは、栄養管理が必要な患者さまをサポートするチームです。
患者さまが低栄養の場合、治療の効果が下がったり合併症のリスクが上がったりする可能性があります。また、医師や看護師、管理栄養士に加えて言語聴覚士も参加して、飲み込みやすい食事形態を提案し、誤嚥性肺炎の予防と栄養摂取をサポートするケースもあります。
褥瘡管理チーム
褥瘡(じょくそう)は、1度できると治りにくく、強い痛みや感染の原因になる恐れがあるため、専門的なケアが必要です。
具体的には、医師が患部の処置や薬の処方をおこない、看護師が処置やスキンケアを指導し、管理栄養士が皮膚の回復を助ける食事を提案します。
緩和ケアチーム
緩和ケアチームは、がんや難病の患者さまに対し、痛みや不安を和らげるケアをおこなうチームです。
実際には、医師は痛みをコントロールし、看護師は精神的なサポートや日常生活の援助を担当します。ご自宅での療養を望む場合は、ソーシャルワーカーが介護サービスや経済的な支援を調整し、患者さまとご家族がその人らしい生活を送れるよう支えることもあります。
感染制御チーム
感染制御チームは、院内感染の防止と対策をおこなうことで、患者さまと医療従事者、双方の安全を守るチームです。
感染制御の専門医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師が、次のような業務をおこない、病院全体の感染リスクを最小限に抑えています。
- 手洗いの徹底
- 消毒方法の指導
- 感染症発生時の対応マニュアル作成
患者さまだけではなく、医療者も安心して働けるようにする大切な役割を担っています。
呼吸サポートチーム
呼吸サポートチームは、おもに人工呼吸器を使用している患者さまに対し、安全な呼吸管理と早期の人工呼吸器からの離脱を目指すチームです。
医師が呼吸状態を評価し、看護師が呼吸器の設定確認や患者さまのケアをおこない、理学療法士や言語聴覚士がリハビリを通して呼吸機能の回復をサポートします。また、酸素療法を受けている患者さまに対しても、より効果的な管理方法を検討し、サポートをおこないます。
退院支援チーム
退院支援チームは、患者さまが安心して退院し、在宅や施設での生活を送れるようサポートするチームです。
厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」によると、国民の60%以上が自宅での療養を望んでいることが明らかとなりました。病院での在院日数が減り、今後は在宅療養を推進していくことで入院中から退院後の生活を見据えたケアの重要性はますます高まるでしょう。
具体的には、看護師が必要なケア内容を把握し、ケアマネジャーが退院後の生活計画を立てます。退院支援チームの協力は、患者さまのQOL向上だけでなく、ご家族の介護の負担軽減にもつながります。
関連記事:多職種連携における看護師の3つの役割!具体例や大切なことを解説
チーム医療で大切なことがうまく実践できないときの対処法
チーム医療の重要性を理解していても、なかなかうまく貢献できないと感じることもあるかもしれません。そのようなときは、1人で悩まずに、次の対処法を試してみましょう。
- 先輩看護師や上司に相談する
- 伝え方を工夫する
- 看護師である自分自身を責めすぎない
これらの対処法を試すことは、自分の成長につながるだけでなく、チームのパフォーマンスを向上させるきっかけにもなります。
先輩看護師や上司に相談する
チーム医療で悩んだら、1人で悩まずに経験豊富な先輩看護師や上司に相談しましょう。
先輩たちは過去の経験から、同様の状況でどう対処すべきか知っており、具体的なアドバイスをもらえる可能性があります。「医師にどう報告すればいいかわからない」と悩んだとき、先輩から実際の伝え方を学ぶことで安心して報告できるようになります。
伝え方を工夫する
看護師が伝えようとしている内容が正しくても、伝え方が相手の状況や専門性に合っていないと、情報が正確に伝わらない恐れがあります。
忙しい医師には「〇〇さまのバイタルに変化がありました」と結論から報告するとスムーズかもしれません。また、理学療法士には「患者さまが歩くときに〇〇のようにつらそうです」と、患者さまの様子を話すと伝わりやすくなる可能性があります。
相手の立場を考慮した伝え方を意識することで、円滑な情報共有ができるようになるでしょう。
看護師である自分自身を責めすぎない
チーム医療でうまくいかないことがあっても、自分を責めすぎないことが大切です。
1人で責任を抱え込むと、精神的な負担が大きくなり、チームとしての連携もうまくいかない恐れがあるからです。失敗や課題は「ヒヤリハット・インシデント報告」や振り返りを通じてチーム全体で学び、改善につなげることが大切です。
チーム医療で大切なことを現場で活かした事例
チーム医療は、患者さまの回復を早めることもあれば、情報共有の不足でかえってケアを遅らせる場合もあります。実際の事例を確認して、その重要性を理解しましょう。
連携が機能して早期退院につながった事例
脳梗塞で入院した70代の男性。医師が抗血栓薬と降圧薬を処方し、看護師はバイタルサインをこまめに測定して血圧を管理しました。リハビリテーション開始後、歩行練習の際に患者さまが「すぐ息切れする」と訴え、看護師が医師と理学療法士に報告。リハビリ内容を調整し、プログラムを変更しました。その後、患者さまは少しずつ歩行距離を伸ばすことができ、予定より1週間早く退院となりました。 |
看護師が気づきを早めに共有したことで、リハビリが無理なく進み、患者さまの体力や自信を損なわずに早期退院が実現しました。
情報共有不足でケアがうまくできなかった事例
冠動脈バイパス術後の患者さまが、夜間に胸の違和感を訴えました。日勤の看護師は「軽度の胸痛あり」とだけ夜勤へ申し送りしましたが、心電図でST変化が出ていたことや、採血の指示があり実施したことを伝えていませんでした。夜勤の看護師は医師に報告せず経過をみてしまい、翌朝に症状が悪化しました。 |
術後の患者さまでは小さな変化も重大な合併症につながります。経過や医師の指示を正確に共有しなければ、対応が遅れて患者さまの安全を脅かす可能性があります。
チーム医療で大切なことを身につけるためにできる習慣
チーム医療で大切なことは、日々の習慣として意識的に実践することで、自然と身につけられます。
- 疑問をそのままにせず質問する
- 相手の立場になって考える
- チーム対応を振り返り評価する
これらの習慣を身につければ、チームにとってなくてはならない存在になるはずです。焦らず、一歩ずつ実践していきましょう。
疑問をそのままにせず質問する
小さな疑問でも一つひとつ質問することで、知識を深められ、チームでの信頼関係を築けます。
医師に「なぜこの指示が必要なのですか?」と質問することで、指示の意図を深く理解でき、安全なケアを提供できます。積極的に質問する習慣は、自己成長とチームへの貢献につながります。
相手の立場になって考える
相手の状況や気持ちを想像して行動することで、やり取りがスムーズになります。
たとえば、リハビリスタッフに患者さまの状況を伝える際には、バイタルサインだけでなく「食事は全量摂取できています」「夜間は痛みで眠れていないようです」といった生活面や訴えについても伝えましょう。
相手がどのような情報を求めているかを考えることで、スムーズな連携につながります。相手を思いやる気持ちは、チームメンバー間の信頼を深めるうえで不可欠な要素です。
チーム対応を振り返り評価する
チームでの対応をただこなすだけでなく、定期的に振り返り、評価する習慣を持ちましょう。これは、チーム全体のパフォーマンスを継続的に向上させるために重要です。
具体的には、カンファレンスで「〇〇さんの退院支援はスムーズだった。成功要因は何?」と話し合えば、ほかのメンバーも次回の参考にできます。もし、情報共有のミスがあったなら「あのとき、どうすれば防げたか?」とチーム全員で原因を分析し、再発防止策を立てることで、次はもっと良い対応ができるようになります。
振り返りは、チームが常に成長し続けるための重要なステップです。
チーム医療についてのよくある質問
チーム医療にまつわる疑問は、新人からベテランまで多くの看護師が抱えています。よくある質問とその回答を紹介します。
Q1:新人看護師もチーム医療で発言して良いの?
新人看護師でも、チーム医療で積極的に発言することは大切です。
新人の視点は、ベテランが気づきにくい患者さまの小さな変化や疑問を発見できる可能性があるからです。患者さまの些細な表情の変化や、訴えのニュアンスの違いなど、新人の純粋な視点が、ベテランでは見過ごしてしまいがちな重要な情報となることがあります。
ただし、発言すべきか、判断に迷う場合はまず身近な先輩や上司に相談してみるのも一手です。
Q2:看護師がチーム医療で信頼されるようになるためにはどうすれば良いの?
看護師がチーム医療で信頼されるようになるためには、次の姿勢や行動が必要です。
- 正確な報告・連絡・相談を徹底する
- 謙虚な姿勢で学ぶ
- 責任もってケアする
また、わからないことがあれば「教えていただけますか?」と多職種のスタッフに積極的にコミュニケーションを取ることで、信頼関係が深まります。これらの習慣を実践することで、チームに欠かせない存在になるでしょう。
チーム医療で大切なことを押さえて信頼される看護師になろう
チーム医療は、患者さまにより良い医療を提供するうえで不可欠であり、看護師としてチームに貢献できることはやりがいになります。
この記事で紹介したことを日々の業務で実践し、患者さまからも、チームメンバーからも信頼される看護師として、今後のキャリアを築いていきましょう。
これまで病院でチーム医療に携わってきた方も、これからチーム医療を学びたい方も、訪問看護という選択肢はいかがでしょうか。在宅での療養を支える訪問看護師は、多職種連携の中心的な役割を担います。
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<参考サイト・文献>

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