看護サマリーとは?必要な4つの理由と、施設に移る際や退院時の書き方の例文

「看護サマリーって何を書けば良いの?」「どうしてこんなに時間がかかるんだろう…」と、看護サマリーの作成に戸惑っている看護師はいらっしゃいませんか。
看護サマリーは、患者さまの入院から退院までの経過をまとめる大切な書類です。しかし、書き方に自信が持てず、不安を感じている看護師も少なくありません。
この記事では、看護サマリーの目的や書き方のコツ、例文を紹介します。患者さまの情報を正確に引き継ぐ看護サマリーは、ケアの質を高めるだけでなく、看護スキルを向上させる一歩です。この記事を読むと、看護サマリーの苦手意識がなくなり、自信をもって看護業務に取り組めるようになるでしょう。
看護サマリーとは看護要約のこと
看護サマリーとは、看護師が作成する「看護要約」のことです。患者さまが転院や退院する際に、新しい担当の看護師がスムーズに適切なケアを続けられるように使われます。
看護サマリーの定義
看護サマリーとは、患者さまの基本情報や治療の経過、日常生活動作の状況のほかに、患者さまの性格や価値観、家族構成など、個別の情報をまとめた記録です。
引き継ぐ看護師が、患者さまのことをより深く理解し、適切なケアを継続するために不可欠です。
看護サマリーが必要な場面
看護サマリーが必要になるのは、次のような場面です。
- 急性期病棟から回復期病棟へ転棟する
- 病院から介護施設に移る
- 退院して訪問看護サービスへ引き継ぐ
次に患者さまを担当する看護師が、これまでの治療やケアの経過を把握できるため、情報共有がスムーズになります。
看護サマリーが必要な4つの理由
ここでは、看護サマリーが必要な4つの理由を解説します。
- 転棟後や退院後のケアに活用できる
- 多職種連携を円滑化できる
- 看護実践を振り返る機会にもなる
- 看護ケアの質の向上に繋がる
看護サマリー作成を通して、看護師としてのスキルアップにもつながるため、積極的に取り組むことが大切です。
転棟後や退院後のケアに活用できる
患者さまが別の場所へ移るときに、その後のケアをスムーズに続けるために役立つ大切な情報源です。
これまでの治療や受けたケアの内容、その結果どうなったのかが正確にわかるため、次に患者さまを担当する看護師は、状態をすぐに把握できます。これにより、ケアが途切れることなく、安心できる医療を提供し続けられるのです。
多職種連携を円滑化できる
看護サマリーを作成することで、医師や理学療法士、管理栄養士など他職種との連携をスムーズにできます。
たとえば、医師の診療記録には書かれていない、患者さまの食事量や排泄状況、睡眠状況などを具体的に記載することで、チームで同じ情報を共有し、患者さまをサポートできるのです。
それぞれが専門的な視点から、より良い治療やケアプランを立てやすくなります。
看護実践を振り返る機会にもなる
看護サマリーには、患者さまに合わせて考えた看護計画や、実践したケアを具体的に記載するため、看護サマリーの作成は、自分の看護実践を振り返ることにもつながります。
たとえば、患者さまが抱える問題を解決するために、どのような看護診断を立てて、どのようなケアをおこなったのかがわかります。
看護師としての思考プロセスや実践能力を客観的に示すことができ、自信にもつながるでしょう。
看護ケアの質の向上に繋がる
看護サマリーは、患者さまの継続したケアを可能にし、看護ケアの質の向上につながるとされています(日本看護協会「看護記録に関する指針」参照)。というのも、患者さまの入院中から退院後までの情報を正確に記録し、ケアを振り返ることができるためです。
実際に「あのときのケアは適切だったかな?」「もっと良い方法があったかもしれない」と振り返ることで、次の患者さまにはもっと質の高いケアを提供できるようになります。
看護サマリーに書く内容
伝わりやすい看護サマリーを書くためには、記載すべき内容をしっかりと理解することが大切です。ここでは、看護サマリーに書くべき主要な項目を紹介します。
- 患者さまの基本情報
- 患者さまの既往歴と現病歴
- 患者さまの日常生活動作の状況
- 患者さまの処方薬
- ご家族の情報
- 看護問題と実際のケア
- 病院や施設情報
- 作成者の情報
とくに、患者さまの既往歴や日常生活の状況など、個別の情報を詳しく書くことが大切です。
患者さまの基本情報
看護サマリーには、まず患者さまの基本情報を書きます。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 連絡先
患者さまが誰であるのかをしっかりと把握するための情報であるため、間違いのないように注意してください。
また、看護サマリーに記載する個人情報(氏名・住所・連絡先など)は、必ず患者さまやご家族の同意を得たうえで取り扱いましょう。個人情報保護法や医療機関の規定に基づき、適切に管理することが必要です。
患者さまの既往歴と現病歴
既往歴と現病歴を記載することは、現在の病状を理解するために重要です。
これまでの病歴や手術の有無、現在患っている病気や症状、治療経過などを詳しく書きます。また、今回の入院に至った経緯も時系列で記載することで、患者さまの健康状態を把握でき、病状に合ったケアができるようになります。
患者さまの日常生活動作の状況
患者さまの日常生活動作の状況を記載することは、自立度を把握し、必要なケアを判断するために重要です。
具体的には、ご飯を自分で食べられるか、トイレに行けるか、お風呂に入れるかといったことを記録します。
患者さまが退院後どんな生活を送るのかを具体的にイメージでき、どのようなリハビリが必要かを考えるヒントにもなるはずです。
患者さまの処方薬
患者さまの処方薬を記載することは、継続して内服してもらうために重要です。
現在、服用している薬の種類や量、服用回数、過去に服用していた薬の副作用などを詳しく書くことで、薬の重複や飲み忘れを防げます。
ご家族の情報
看護サマリーでは、ご家族が患者さまをどう支えているかを記録します。
誰が中心となって患者さまを支えているか、介護の状況、ご家族同士の協力体制などを詳しく書くことで、ご家族への適切なサポートを考えられます。
また、患者さまの状態が急に変わったときや治療方針を相談したいときなど「誰に連絡すれば良いか」がすぐにわかるので、素早い対応につながるでしょう。
看護問題と実際のケア
看護問題と実際のケアを記載することは、患者さまの課題を解決するために、どのようなケアが提供されたのかを共有するために不可欠です。
入院中の看護問題と、それに対しておこなった具体的なケア、その結果を書きます。新しくケアを担当する看護師が、これまでのアプローチを理解でき、今後のケアに活かせるでしょう。
病院や施設情報
病院や施設情報を記載することは、患者さまがどこから来たのか、どのような環境でケアを受けていたのかを伝えるために必要です。
たとえば、病院名や入院期間、退院日などを書くことで、次に患者さまを診る看護師が、これまでのケアの状況を正しく把握できます。ケアが途切れることなく、患者さまは新しい環境でも安心して療養を続けられます。
作成者の情報
作成者の情報を記載することで、看護サマリーの内容について問い合わせがあった際に、誰に連絡すれば良いかがはっきりします。
作成者の氏名や連絡先などを記載することで、情報に不明な点があった場合でも、迅速に確認ができ、適切な対応につなげられます。
看護サマリーの書き方の例文
ここでは、看護サマリーの書き方がわかるように例文を紹介します。ただし、これらはあくまでも例文であり、病院や施設によって、書き方や書く内容が異なるため、自分の職場に合った看護サマリーになるように心がけてください。
病棟から転棟する際の例文
<例文> 【基本情報】 氏名:〇〇 〇〇さま 生年月日:〇〇年〇〇月〇〇日(〇〇歳) 現住所:〇〇県〇〇市〇〇区〇〇 入院日:〇〇年〇〇月〇〇日 入院目的:誤嚥性肺炎 【既往歴・現病歴】 〇〇年〇〇月 高血圧症 〇〇年〇〇月 慢性心不全 現病歴:〇〇年〇〇月〇〇日に発熱と咳嗽で入院。 【看護問題と実際のケア】 看護問題:誤嚥リスク ケア:食事の際は、上体を30度〜45度起こし、ゆっくりと咀嚼を促しました。トロミ食で提供したところムセなく食事摂取できました。また、言語聴覚士に介入を依頼して、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアや体操を実施しました。 【退院に向けた今後の課題】 今後、経口摂取を継続していくためには、口腔機能の維持が不可欠です。食事をする際の姿勢を継続的にチェックし、必要に応じてリハビリテーションをおこなっていく必要があると考えられます。 |
退院する際の例文
<例文> 【基本情報】 氏名:〇〇 〇〇さま 生年月日:〇〇年〇〇月〇〇日(〇〇歳) 現住所:〇〇県〇〇市〇〇区〇〇 入院日:〇〇年〇〇月〇〇日 退院日:〇〇年〇〇月〇〇日 【入院中の経過とケア】 看護問題:転倒リスク ケア:日中は転倒予防のために見守りや声かけを徹底しました。夜間はベッド柵を上げて、離床センサーを設置しました。転倒リスクへの意識を向上させるため、患者さまには転倒予防のためのパンフレットを配布しました。 【退院に向けた課題】 退院後も、ご自宅での転倒リスクを回避する必要があります。ご家族には、ベッド周りの環境を整えることや、夜間の見守りなどを継続していただくよう指導しました。 |
病院から介護施設に移る際の例文
<例文> 【基本情報】 氏名:〇〇 〇〇さま 生年月日:〇〇年〇〇月〇〇日(〇〇歳) 現住所:〇〇県〇〇市〇〇区〇〇 入院日:〇〇年〇〇月〇〇日 退院日:〇〇年〇〇月〇〇日 入所先:〇〇介護施設 【既往歴・現病歴】 既往歴:高血圧、糖尿病 現病歴:〇〇年〇〇月〇〇日に脳梗塞を発症し、〇〇病院に入院。右半身麻痺が残る。 【看護問題と実際のケア】 看護問題:右半身麻痺による自立での歩行困難 ケア:車いすでの移動方法を指導しました。麻痺側の関節拘縮予防のため、リハビリテーションと関節可動域訓練を継続しました。排泄は、トイレ誘導と一部介助をおこないました。 【介護施設での今後のケアに必要な情報】 食事は、自助具を使用することで自立して摂取可能です。ただし、食事に時間がかかり、食事を進めていくなかで次第に飲み込みしづらくなるため、見守りが必要です。入浴は、全介助であるため、車いすでの浴室への移動やシャワー浴の介助をおこなってください。 |
下記の記事では、高齢者看護で問題に挙がりやすい症状とケアのポイントを解説しています。看護サマリーを書く際の参考にしてみてください。
関連記事:高齢者看護で大切なこととは?3つのポイントとケアの心構え
伝わりやすい看護サマリーにするコツ
伝わりやすい看護サマリーを作成するには、いくつかのコツがあります。ここでは、とくに意識すべきポイントを紹介します。
- 看護サマリーを書く目的を理解する
- 専門用語ばかりにならないようにする
- 「5W1H」で状況を整理する
- 患者さまの最新情報を記載する
これらのコツを意識して看護サマリーを作成すれば、次にケアをする看護師に患者さまの情報が正確に伝わります。
看護サマリーを書く目的を理解する
看護サマリーを書く目的は、患者さまの情報をしっかりと伝え、継続したケアを可能にすることです。
「この患者さまが退院後に困らないようにするためには、どのような情報が必要か?」という視点を持って作成しましょう。退院後の生活をイメージして書くことができ、本当に必要な情報を盛り込めます。
専門用語ばかりにならないようにする
看護サマリーは、専門用語ばかりにならないようにすることが大切です。なぜなら、次にケアをする看護師が、必ずしも同じ専門分野とは限らず、未経験の領域の専門用語は、看護師でもわからないことが少なくないからです。
たとえば「ギネ(婦人科)」「AMI(急性心筋梗塞)」といった略語や専門用語は、正式名称を添えて説明しましょう。医師や看護師だけでなく、理学療法士や介護士などほかの職種の人にも内容が伝わりやすくなり、質の高いケアにつながります。
「5W1H」で状況を整理する
看護サマリーを書く際は「5W1H」で状況を整理することが大切です。5W1Hを意識することで、情報が整理され、具体的でわかりやすい文章を作成できるからです。
患者さまが転倒した場合「いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」という視点で事実を整理してみてください。
これにより、状況が正確に伝わるため、安全にケアを進められるでしょう。
患者さまの最新情報を記載する
看護サマリーを作成する際は、患者さまの最新情報を記載することが大切です。
というのも、患者さまの状態は日々変化するため、新しい情報を共有することが、安全なケアを継続するために不可欠だからです。
一例として、退院直前の検査データや患者さまの精神状態の変化、新しく見つかった課題などを記載します。情報が古いことによるケアの遅れや、ミスを防ぐことができます。
看護サマリーについてのよくある質問
ここでは、看護サマリーについてのよくある質問を回答します。疑問を解消して、自信を持って看護サマリーの作成に取り組みましょう。
Q1:看護サマリーと看護記録の違いは何ですか?
看護サマリーは、患者さまの情報をまとめて、継続的なケアにつなげるための書類です。
一方、看護記録は、日々の看護実践を記録するもので、患者さまの経過を時系列で把握するために使用します。
Q2:新人看護師が看護サマリーを書いても良いですか?
新人看護師が看護サマリーを書いても問題ありません。
サマリーを作成する過程で、患者さまの入院から退院までを振り返り、プロセスを体系的に理解できるためです。
しかし、新人看護師はまだ経験が浅いため、先輩看護師や指導者に確認してもらいながら書くことで、抜け漏れがなく、正確な情報を記載できるでしょう。
看護サマリーはケアを継続するために必要!相手に伝わるように心がけよう
看護サマリーは、患者さまの命と安全を守り、継続した質の高いケアを提供するために不可欠なものです。
看護サマリーを作成する過程で、患者さま一人ひとりの個性や人生背景、これまでの看護ケアを深く理解できます。それは、看護師としてのスキルを向上させ、自信を持つことにもつながるでしょう。
「相手に伝わる」ことを意識して、丁寧に看護サマリーを作成することが大切です。
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<参考サイト・文献>

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