プリセプティとは?1年間の流れと新人看護師が押さえたいプリセプター制度

「プリセプティになったけど、どう動けば良いかわからない」「プリセプターとの関係性をうまく築けるだろうか」
このような不安を抱えている新人看護師も多いのではないでしょうか。
プリセプティとして1年間を充実させるためには、指導を受ける立場としての心構えやプリセプターとの効果的なコミュニケーションが欠かせません。
この記事では、プリセプティの1年間の流れや心構え、プリセプターとの関係構築のコツを解説します。これらを理解することで、プリセプティとしての期間を有意義に過ごせるでしょう。
プリセプティとはOJT中の新人看護師のこと
プリセプティとは「プリセプター制度で指導を受ける新人看護師」を指します。まずは、制度の基本を理解したうえで、プリセプティとしての役割を確認しましょう。
プリセプティの立場
プリセプティは、プリセプターシップを採用している職場で、指導を受ける立場にある人です。医療機関では、おもに新人看護師がプリセプティとして位置づけられます。
プリセプター制度は、新人看護師が臨床現場にスムーズに適応できるよう支援する制度です。厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン」では、新人看護師の臨床現場適応を支援するための研修体制整備が求められており、その方法の1つとしてプリセプター制度が活用されています。
プリセプターからマンツーマンで指導を受ける場合もあれば、補佐役がついたり、精神面をケアする「メンター」がついたりと、新人看護師をサポートする体制は職場により異なります。
プリセプターとの関係
プリセプティは、プリセプターからさまざまなサポートを受けられます。一般的な支援内容は、次のとおりです。
支援内容 | ポイント |
業務指導とサポート | 日常業務の指導を受け、実践時にはそばでサポートしてもらえる |
看護技術の指導 | 職場ごとに定められている看護技術習熟度のチェックリストにもとづき、計画的な技術指導を受けられる |
学習面でのサポート | 事前学習や振り返りレポートなどの課題が出され、内容を確認・指導してもらえる |
精神的なフォロー | 仕事への不安や心配ごとがある際の相談相手になってもらえる |
受け身で指導を受けるだけでなく、困ったことは相談して、お互いに話し合える関係を築くことが大切です。
プリセプティの1年の流れ
ここからは、プリセプティとしての1年間の、時期ごとの特徴について解説します。
- 入職1~3ヶ月|「見て学ぶ」時期
- 入職4~6ヶ月|独り立ちできることを増やしていく時期
- 入職7~12ヶ月|振り返りながら次のステップへ進む時期
成長のスピードには施設や個人によって差があるため、あくまでも目安の時期として考えてください。
入職1~3ヶ月|「見て学ぶ」時期
入職直後は、プリセプターがそばについて手順を詳しく教えてくれたり、先輩の業務を見学して学んだりする重要な期間です。
プリセプティはこの時期に、基本的な看護技術、電子カルテの操作方法や物品の配置、緊急時の連絡体制など、日常業務に必要な知識を身につけていきます。
この時期は、プリセプターの行動をよく観察し、一つひとつの経験を積み重ねることを大切にしましょう。
関連記事:新人看護師の夜勤はいつから?5つの悩みと独り立ちの時期や基準を解説
入職4~6ヶ月|独り立ちできることを増やしていく時期
職場の雰囲気や基本的な業務に慣れ、徐々に任される仕事が増える時期です。仕事の優先順位のつけ方を学び、効率よく業務に取り組めるようにアドバイスを受けながら成長していきます。
また、プリセプターの見守りのもと、担当患者さまの看護計画を立てたり、主体的にケアに入ったりする機会も増えてきます。患者さまへの安全の意識を忘れずに、挑戦し「できた」という経験を積み重ねていくことが自信につながるでしょう。
関連記事:看護師の夜勤で優先順位が重要な3つの理由!付け方と意識するメリット
入職7~12ヶ月|振り返りながら次のステップへ進む時期
1年目の後半は、これまでの学びを振り返り、独り立ちに向けて準備をおこなう時期です。
急変対応の実践や、より重篤な状態の患者さまのケアなど、看護師としてのスキルをさらに高めていきます。
また、12ヶ月目には、1年間の取り組みを振り返り評価します。できるようになったことを認識することで「一人前になった」という自信を持てるようになるでしょう。
プリセプティとして大切にしたい5つの心構え
プリセプティとして成長していくためには、次の5つの心構えを意識してみてください。
- 素直に聞く・相談する姿勢を意識する
- 「できません」といえる勇気を持つ
- 振り返りの習慣を作る
- ほかの看護師と自分を比較し過ぎない
- 感謝の気持ちを忘れない
このような姿勢で取り組むことで、看護師としての土台をしっかりと築けます。
素直に聞く・相談する姿勢を意識する
わからないことや、不安に感じることがあれば、遠慮せずにプリセプターに相談しましょう。
「このようなことを聞いて大丈夫だろうか」と、質問することに勇気がいるかもしれませんが、疑問をそのままにしておくことは、患者さまの安全にもかかわります。些細なことでも積極的に質問し、しっかりと理解することが大切です。
「できません」といえる勇気を持つ
自分の技術レベルや知識を正確に把握し、無理をしないことも大切です。
新人看護師は「できない」ということに抵抗を感じがちです。しかし、わからないままケアや処置をして患者さまにリスクを与えてしまうよりも、正直に現状を伝える方が責任ある行動といえます。
プリセプターは、プリセプティの成長段階を理解したうえで、指導してくれます。「まだ自信がないので、見守っていただけますか」という伝え方であれば、誠実で成長意欲のある姿勢として受け取ってもらえるでしょう。
振り返りの習慣を作る
1日の業務終了後には、その日の学びや気づきを記録する習慣を作りましょう。
「今日はどのようなことを学んだか」「次はどこを改善したいか」といった視点で振り返れば、学習効果が高まります。記録を見返すことで、自分の成長を客観的に把握するための資料にもなります。
ほかの看護師と自分を比較し過ぎない
同期の看護師と比較して「自分は遅れているのではないか」と不安になることもあるかもしれません。
成長のペースは人それぞれです。他人と比較することよりも、昨日の自分と今日の自分とを比較し、小さな成長を積み重ねることに焦点を当てましょう。
感謝の気持ちを忘れない
プリセプターをはじめ、指導してくれる人への感謝の気持ちを大切にしましょう。
プリセプターは、新人看護師のために時間を作って指導してくれています。「ありがとうございます」「教えていただき助かりました」といった感謝の言葉を積極的に伝えることで、お互いに気持ち良く働けるようになります。
プリセプティのよくある不安とその乗り越え方
新人看護師として働き始めると、さまざまな不安や悩みが生じるものです。
日本看護協会「2024年病院看護実態調査報告書」では、新人看護師の離職率は8.8%でした。このことからも、一定数の新人看護師が何らかの悩みを抱えていることがわかります。ここでは、多くのプリセプティが抱える不安と、その対処法について解説します。
- 質問して良いのかわからない
- 失敗して怒られるのが怖い
- プリセプターとの距離感がわからない
それぞれ見ていきましょう。
質問して良いのかわからない
「プリセプターは忙しそうで声をかけづらい」「何度も聞いたら迷惑ではないか」という不安は、多くの新人看護師が経験します。
プリセプターや上司とのコミュニケーションを避けてしまうと、良好な関係を築けません。自分から、積極的に声をかけることが大切です。
事前に「いつごろならお時間ありますか?」とプリセプターに質問しやすいタイミングを確認しておくと、コミュニケーションのきっかけを見つけやすくなります。
失敗して怒られるのが怖い
失敗への恐怖心は誰にでもあるものですが、新人の時期は、失敗から学ぶことも重要です。
大切なのは、失敗を隠さずに報告し、なぜそのようなことが起きたのかをプリセプターと一緒に分析し、同じミスを繰り返さないようにすることです。プリセプターは、失敗を責めるためではなく、改善点を指導してくれます。
失敗を恐れ過ぎて消極的になるより、適度な緊張感を持ちながら、積極的に学ぶ姿勢を大切にしましょう。
プリセプターとの距離感がわからない
プリセプターとの適切な距離感は、相手の性格や価値観によって異なります。迷ったときは別の先輩看護師に相談してみたり「どのように接したら良いでしょうか」とプリセプターに素直に聞いてみたりすることも大切です。
基本的には、業務中は指導を受ける立場として敬意を払いながら、わからないことは遠慮なく質問できる関係を築きましょう。
休憩時間や勤務後などは、適度に親しみやすい雰囲気で接することで信頼関係も深まります。プリセプターの性格や指導スタイルを観察し、相手に合わせたコミュニケーションを心がけることが大切です。
関連記事:新人看護師のよくある悩みとは?悩んだときの対処法も解説
プリセプティがプリセプターとの良い関係を築くコツ
プリセプターとの関係性は、新人看護師としての成長に影響します。良好な関係を築くための具体的なコツを紹介します。
- 丁寧なコミュニケーションを心がける
- プリセプターの指導スタイルを理解する
- 日々の学びを記録に残す
それぞれ解説します。
丁寧なコミュニケーションを心がける
「指導を受ける立場だから」と受け身になり過ぎると、プリセプターはあなたがどのくらい理解しているのか、何を考えているのかがわからなくなってしまいます。
挨拶や相談などのコミュニケーションを丁寧におこない、相手の話を最後まで聞く姿勢を示しましょう。
また、指導を受けたあとは「今の説明でよく理解できました」「この部分がまだ不安です」など、自分の理解度や気持ちを素直に伝えることも大切です。プリセプターにとっても指導の参考になり、より効果的なサポートを受けられます。
プリセプターの指導スタイルを理解する
プリセプターによって、指導方法や重視するポイントは異なります。「手取り足取り教えてくれるタイプ」「実践を通じて学ばせるタイプ」など、さまざまな指導スタイルがあります。
プリセプターの指導方法を観察し、そのスタイルに合わせて学習姿勢を調整しましょう。プリセプターが自主性を重視するなら「事前に自分なりの考えをまとめておく」、実践を重んじるタイプなら、積極的に「やらせてください」と申し出ることが大切です。
日々の学びを記録に残す
学習内容や気づきを記録として残すことで、プリセプターとの面談や振り返りの際に具体的な話ができます。
「疑問に思ったこと」「次回挑戦したいこと」などを日記形式で記録しておきましょう。この記録は、プリセプターに自分の学習意欲や成長過程を伝える材料にもなります。また、記録を見返せば、自分の成長が実感できるため、モチベーションの維持にもつながります。
プリセプティについてのよくある質問
ここからは、プリセプティについて、よくある質問に回答します。
Q1:プリセプターが勤務日にいないときはどうしたら良いですか?
多くの職場では、プリセプターが不在の際のサポート体制が整備されているため、安心してください。プリセプターが休みの日や夜勤でいない場合は、事前に決められたサポート担当の先輩看護師に相談しましょう。
相談先がわからない場合は、その日のリーダー看護師や身近な先輩看護師に声をかければ、対応方法を教えてもらえます。
Q2:途中で関係がうまくいかなくなったら誰に相談すべきですか?
プリセプターとの関係に問題が生じた場合は、教育担当者や看護師長に相談してみましょう。状況によっては、プリセプターの変更や追加サポートなどの対応が検討されます。
Q3:プリセプティ期間が終わったらどうなりますか?
プリセプティ期間の終了後は、一人前の看護師として業務をおこなうことになります。
ただし、完全にサポートがなくなるわけではありません。多くの場合、継続的な教育プログラムや定期的な面談、先輩看護師によるフォローが受けられます。
プリセプティは焦らず着実に、自分のペースで成長しよう
プリセプティとしての1年間は、看護師としての基盤を築く大切な時期です。着実に成長することを心がけましょう。
プリセプターとの良好な関係を築き、積極的に学ぶ姿勢を持ち続けることで、技術面だけでなく人間性も成長できます。
現場に慣れてきたタイミングで、今後のキャリアを考え始める看護師も増えます。訪問看護のように、利用者さまと身近にかかわれる働き方に関心がある看護師は、まずは情報収集から始めてみましょう。
NsPaceCareerでは、訪問看護についての情報や、訪問看護ステーションの求人を豊富に取り扱っています。ぜひ覗いてみてください。
<参考文献・サイト>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。