寄り添う看護の具体例5つ!重要視される理由と実践ポイントを解説

公開日:2025/09/02 更新日:2025/09/02
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患者さまを受け持ったとき「どのような声かけをすれば安心してもらえるのか」と戸惑った経験はありませんか。

現代の看護では、患者さま一人ひとりの心や背景に目を向け、その方らしさを尊重した「寄り添う看護」が求められています。寄り添う看護とは、患者さまの思いや状況に寄り添いながら、その方の望む生活や治療への前向きな取り組みを支援するかかわりです。

この記事では、現場ですぐに活用できる寄り添う看護の具体例を5つ紹介し、実践のポイントもわかりやすく解説します。患者さまの思いに耳を傾け、安心して治療や生活に取り組めるよう支援するためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

寄り添う看護の具体例5つ

実際の看護現場では、患者さま一人ひとりの背景や想いに合わせた寄り添うかかわりが日々おこなわれています。

  1. 不安や恐怖の強い患者さまに安心感を与えた看護
  2. 自宅で過ごす希望をチームで叶えた看護
  3. 旅行の希望を実現できた看護
  4. 患者さまの好きな歌で心を通わせた看護
  5. どのような状況でも穏やかな姿勢を徹底した看護

5つの事例から「患者さまに寄り添う」とはどのようなことなのか、理解を深めましょう。

1.不安や恐怖の強い患者さまに安心感を与えた看護

<事例>
末期がん患者が強い痛みと不安を抱えており、自分の死が近いことを感じていた。そこで、痛みをやわらげるためのケアをおこない、医師と連携して安心感を提供できるよう努めた。すると、患者さまは不安や恐怖が軽減し、最期を穏やかに迎えられ、ご家族も感謝の言葉を述べてくれた。

患者さまの不安や恐怖といった心理面に目を向け、身体的ケアだけでなく安心感を提供することが寄り添う看護につながります。医師との連携や患者さまへの声かけ、痛みのコントロールなどのかかわりが重要です。

2.自宅で過ごす希望をチームで叶えた看護

<事例>
末期の肝臓がんの患者さまが、自宅で過ごしたいと強く希望したため、看護チームと医師が協力し、患者さまが自宅に戻れるよう支援した。退院後も必要なサポートをおこない、患者さまの望みどおり自宅で最後の時間を過ごせた。ご家族からも感謝の言葉をいただいた。

患者さまの生活の希望に耳を傾け、チーム全体で支援する姿勢が大切です。看護師を中心に、医師や訪問スタッフと連携して望む生活が実現できると、患者さまの安心感や満足度を高められます。

3.旅行の希望を実現できた看護

<事例>
食道がん患者さまが最期に妻と旅行に行きたいと望むが、経済的な問題もあると悩んでいた。患者さまの希望を叶えるため、医師と協力し外泊旅行を実現し、旅行の間は医療サポートを手配した。患者さまは妻と一緒に旅行を楽しみ、その後、幸せそうに旅行の話をしてくれた。

患者さまを尊重し、制限の多い状況下でも実現できる方法を考える姿勢です。こうした希望を叶えるための工夫やチームとの調整も、寄り添う看護の一環といえます。

4.患者さまの好きな歌で心を通わせた看護

<事例>
脳梗塞の女性患者さまが、リハビリテーションのなかで好きな歌を通じて心を癒しているのを知り、看護師が毎回のリハビリテーションで歌う時間を設けた。患者さまは心から喜び、前向きに楽しみながら治療に取り組めた。

患者さまの趣味や好きなことを取り入れ、心理的な支えやリハビリテーションへの意欲向上につなげた事例です。こうした小さな工夫が、心に寄り添うかかわりとして大きな効果を生みます。

5.どのような状況でも穏やかな姿勢を徹底した看護

<事例>
外傷で運ばれてきた10代の患者さまで、さまざまな苦痛から攻撃的な反応が出てしまっていた。この行動に困惑しながらも、温かい言葉かけや穏やかな態度で接し、信頼関係を築くことに努め、どんなにつらくても回復を支援した。患者さまは、徐々に目が合うようになり、最終的には歩けるようになって、笑顔で一般病棟へ送り出せた。

この事例では、患者さまの行動に一喜一憂せず、常に穏やかな態度でかかわることが信頼関係の構築につながりました。患者さまやご家族の心配事、生活上の問題にも配慮し、他職種と連携しながら一人ひとりに寄り添う看護が実践できることを示しています。

寄り添う看護はなぜ必要?重要視される理由

寄り添う看護は、患者さまが不安や痛みに向き合う力を支え、治療や日常生活の質を高める役割を果たします。

  • 患者さまの安心感が高まる
  • 患者さまとの信頼関係が深まる
  • 治療の意欲や回復に向けた力を引き出せる

ここでは、寄り添う看護がなぜ必要とされるのか、その理由を具体的に見ていきましょう。

患者さまの安心感が高まる

病気やけがによる不安を抱える患者さまにとって、看護師の共感的な支援は心の支えです。具体的に、患者さまは次のようにさまざまな不安を抱えています。

  • 治療の副作用
  • 病気の進行
  • ご家族の介護負担

看護師がその気持ちに寄り添うことで、患者さまは「自分は1人ではない」「気持ちを理解してもらえている」と実感でき、心の負担が軽くなります。この安心感は、治療に向き合う力となり、患者さまの回復を後押しするひとつの要素となるでしょう。

患者さまとの信頼関係が深まる

看護師が患者さまの気持ちや不安、日常生活の状況に理解を示せると、患者さまは「自分のことをわかってもらえている」と実感できるため、看護師への信頼感が深まります。

この信頼関係があるからこそ、看護師は服薬のタイミングや日常生活での注意点、療養計画などを患者さまの状況に合わせて調整できます。

結果として、患者さまは「これなら帰宅後も続けられそうだ」といった安心感を得られ、前向きに治療を続けられるでしょう。

治療の意欲や回復に向けた力を引き出せる

寄り添う看護は、患者さまが治療に前向きに取り組む意欲や回復への力を引き出す効果があります。

看護師が患者さまの気持ちや希望をしっかり理解し、言葉で返すことで「自分の思いが受け止められている」と実感できます。

たとえば、薬の飲み忘れに不安がある患者さまには「できる限り飲み忘れないように、医師や薬剤師と相談しながら、1日に飲む回数や管理方法を考える」と提案すると良いでしょう。

こうしたやり取りで患者さまは前向きな気持ちで治療や生活の工夫に取り組めるようになり、回復への力が引き出されます。

寄り添う看護を実践するポイント

寄り添う看護を実践するためには、いくつかのポイントを理解しておかなければなりません。

  • 患者さまとご家族の人物像・背景を理解する
  • 患者さまの気持ちに共感し、信頼関係を築く
  • 変化に気づき、柔軟なケアをおこなう
  • 患者さまとご家族の意思を尊重し、配慮する

それぞれ詳しく解説します。

患者さまとご家族の人物像・背景を理解する

寄り添う看護の実践には、患者さまとご家族の人物像や背景などの理解が欠かせません。

その方にとって大切なことや優先したいことが把握でき、個別性の高いケアを提供できるからです。たとえば、次のようにサポートできます。

患者さまの状況実際のサポート
ご家族との時間を大切にしたい面会時間やオンライン面会の調整を優先してスケジュールを組む
復職を目指す体力や生活リズムを整えるための助言や、日課の調整を一緒に考える
趣味や社会活動を続けたい入院中でも可能な範囲で活動時間を確保したり、リハビリテーション計画に入れたりする

こうした配慮によって患者さま一人ひとりの価値観や希望に沿ったケアを実現できるため、安心した入院生活をサポートできるでしょう。

患者さまの気持ちに共感し、信頼関係を築く

患者さまの気持ちに共感し、信頼関係を築くことは寄り添う看護の基本です。

共感とは、患者さまの不安や恐れ、悲しみなどの感情を否定せずに、受け止める姿勢を指します。患者さまは「その気持ちわかります」といった看護師の共感の言葉や、些細な約束でも必ず守る一貫した対応から、信頼し始めます。

こうした信頼の積み重ねが、患者さまの安心感を高め、療養や治療に前向きに取り組む力につながるのです。

変化に気づき、柔軟なケアをおこなう

日々変化する患者さまの身体的・精神的な状態に注意を払い、柔軟にケアを調整することは、寄り添う看護の実践で欠かせません。

たとえば、清潔ケアの際に患者さまが落ち込んでいる場合、ただ黙々とケアを進めるのではなく、世間話から会話を始め、気持ちの背景を探ります。

もし「退院後の生活に不安がある」ことが理由であれば、生活で困りそうな場面を一緒に整理し、リハビリテーションの計画を立てたり、訪問看護や訪問介護などのサービスを紹介したりして、具体的な支援につなげます。

こうした柔軟な対応により、少しでも前向きに治療や生活改善に取り組めるよう支えられるでしょう。

患者さまとご家族の意思を尊重し、配慮する

医師が提案する治療と患者さまの希望が異なる場合、患者さまの価値観や人生観を理解し、その方らしい選択ができるよう支援します。

たとえば、胃ろうを造設している患者さまが自宅でご家族と過ごすことを希望する場合には、在宅医療や訪問看護の利用を検討し、ご家族と一緒に退院計画を立てることもひとつのサポートです。

このように、患者さまやご家族の意思に沿った具体的な対応によって納得できるケアが実現し、安心して治療や療養に臨める環境を整えられます。

看護師が寄り添う力を育てる方法

寄り添う看護を実践するためには、単に知識や技術を身につけるだけでなく、患者さまの気持ちを理解し、柔軟に対応できる力を育てることが重要です。

  • 傾聴のスキルを磨く
  • コミュニケーションスキルを高める
  • 自分の感情と向き合う
  • チームワークを重視する
  • 継続的な学びと振り返りを大切にする

具体的な方法を見ていきましょう。

傾聴のスキルを磨く

寄り添う看護には、患者さまの話を最後まで聞き、その気持ちや思いを理解しようとする「傾聴」の姿勢が重要です。効果的な傾聴のためには、次のポイントを日常会話でも意識しましょう。

  • 患者さまと同じ目線で話を聞く
  • 相槌や頷きで関心を示す
  • 患者さまの話を遮らないように注意する

プライバシーが守られた場所の確保や、時間に余裕を持った対応を心がけ、患者さまが話しやすい雰囲気を作ることで、傾聴スキルを向上させられます。

コミュニケーションスキルを高める

患者さまの状況や理解度に合わせ、患者さまの心を開きやすくしましょう。具体的には、次の方法が挙げられます。

  • 専門用語は使用せず、平易な言葉で説明する
  • 頑張っている点をねぎらってから改善点を伝える
  • 頷きや表情など、非言語的なコミュニケーションを活用する

患者さまに安心感や信頼感を与える話し方を意識すると「この看護師なら話せそう」と感じてもらえます。

自分の感情と向き合う

看護師は、患者さまの苦痛や悲しみに寄り添いすぎて燃え尽きてしまったり、逆に感情を抑えすぎて冷たくなったりしないように、自分の気持ちのコントロールが大切です。

同僚や上司と相談しながら感情のバランスを取り、持続可能なケアを目指しましょう。

チームワークを重視する

寄り添う看護は、1人の看護師だけで完結するものではありません。

医師やほかの看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーと協力することで、患者さまにとって最適なケアを提供できます。たとえば、患者さまの退院後の生活を支援する場合、それぞれの役割は次のとおりです。

職種退院支援における役割
看護師自宅での療養環境や体調管理の指導
医師退院後の治療計画や服薬管理の方針の決定
リハビリテーションスタッフ自宅生活を想定した運動や生活動作の指導
ソーシャルワーカー訪問介護や福祉サービスの調整

このように連携を意識することで、患者さまが理想とする形に近いケアが実現します。

継続的な学びと振り返りを大切にする

寄り添う看護のスキルは、一度身につけて終わりではありません。

研修やセミナー、専門書籍などを活用して知識をアップデートするとともに、実践後の振り返りをおこない、改善点を見つけます。

うまくいったケースも課題が残ったケースも分析し、次回に活かす学びを得ることで看護スキルを向上させられるでしょう。

寄り添う看護についてよくある質問

寄り添う看護についてのよくある疑問にお答えします。現場での実践に役立ててください。

Q1:寄り添う看護を面接で語るときのコツはありますか?

寄り添う看護を面接で語る際は、具体的なエピソードを交えて話すことがコツです。

たとえば、血液検査を怖がる小児患者さまには、手順をわかりやすく説明したり、お気に入りのキャラクターの絵本や声かけで緊張をやわらげたりしたエピソードが良いでしょう。

このように、患者さまの気持ちに寄り添った具体的な対応を示すと、面接でも説得力が増して、採用につながります。

Q2:「患者さまに寄り添う看護」は看護観として持っていて良いのでしょうか?

寄り添う看護を看護観として持つことは、身体的なケアだけでなく、患者さまの心に寄り添い、精神的な支えとなる点で大切です。

患者さま一人ひとりの価値観や状況に合わせてケアをおこなうことで、より質の高い看護を実現できます。

日常生活で不安を抱える高齢患者さまに対し、ご本人さまの希望を尊重して生活リズムや環境調整をおこなうことも、寄り添う看護の一例です。この看護観を持つことで、患者さまに対する理解が深まり、より良いケアを提供できるでしょう。

寄り添う看護の具体例を参考に、患者さま中心の看護を実現しましょう

寄り添う看護では、患者さまとご家族の状況や気持ちを理解し、一人ひとりに合わせた柔軟で配慮あるケアを提供することが大切です。

今回紹介した具体例を参考に、患者さま中心の視点を意識しながら日々の看護に取り組むことで、信頼関係や安心感を育めます。

また、患者さまにより深く寄り添える働き方を目指す看護師は、訪問看護の分野が合っているかもしれません。利用者さまやご家族の希望や思いをじっくりうかがえる、魅力の多い環境です。訪問看護に特化した求人サイト「NsPaceCareer」をチェックして、利用者さまの生活に密着した看護現場を、自分の目で確かめてみてください。

<参考サイト・文献>

その人らしさに寄り添う看護実践とは|井田春子

一人一人に寄り添う看護をめざして | 東京医科大学八王子医療センター 看護部

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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