看護師の初任給はいくら?手取りや賞与事情、差が出る4つの要因

「看護師の初任給ってどのくらいもらえるのだろう?」「初任給の実際の手取り額で生活できるかな」
初任給は、就職先を選ぶうえで重要なポイントだと考える看護師もいるでしょう。
この記事では、看護師の初任給の手取りや賞与、初任給に差が出る要因について詳しく解説します。また、後悔しない病院選びのチェックポイントも紹介するため、就職活動の参考にしてみてください。
初任給にかかわる不安を解消し、希望の職場で看護師のキャリアを積み重ねていきましょう。

看護師の初任給の平均額は約27万円
「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、新卒看護師の初任給は平均26万9,800円です。
ただし、これは税込みの総支給額であり、ここから税金や社会保険料が差し引かれるため、実際の手取りは20万円前後が目安です。求人情報に記載されている金額と、実際の生活に使える金額との違いを理解しておきましょう。
初任給の内訳
初任給の総支給額は「基本給+諸手当」で構成されているのが一般的です。初任給の内訳は次のとおりです。
【初任給の内訳】
項目 | 詳細 |
基本給 | 給与のベースとなる金額 |
夜勤手当 | 夜勤をした回数に応じて支給されるもの |
時間外手当 | 残業をした場合に支給されるもの |
住宅手当 | 住居費をサポートするもの |
通勤手当 | 交通費を支給するもの |
求人票には「基本給〇万円+諸手当」と記載されているケースがあり、金額が多く表示されているように見える場合もあります。ただし、夜勤の回数や各手当の有無は病院によって異なるため、詳細を確認しておくことが大切です。
とくに、初任給をもらうタイミングでは、夜勤に入っておらず夜勤手当が見込めないため「思ったより初任給が少ない」と感じる看護師もいます。
「総支給額」と「手取り額」の違い
初任給について理解するうえで欠かせないのが「総支給額」と「手取り額」の違いです。
- 総支給額
基本給と各種手当を合計した、税金や社会保険料などを差し引く前の金額
- 手取り額
総支給額から所得税・住民税・健康保険・厚生年金などを差し引いた、実際に銀行口座に振り込まれる金額
実際に振り込まれる手取り額は、額面の約75~85%が目安です。たとえば、総支給額が28万円だった場合、社会保険料や税金が差し引かれ、手取りは21万~23万円前後となります。
「実際に生活に使えるお金はいくらか」という視点で考えることが大切です。
看護師の初任給と多職種の比較
看護師の初任給は、ほかの職業とどの程度ちがうのか、気になる看護師もいるでしょう。ここでは、同じ医療職や一般企業の初任給と比較してみました。
医療職の初任給と比較
まず、代表的な医療職と看護師の初任給を見てみましょう。
【医療職における初任給の平均月額】
職種 | 初任給の平均月額 |
医師 | 41万9,500円 |
薬剤師 | 32万7,800円 |
理学療法士 | 25万400円 |
臨床検査技師 | 25万7,300円 |
助産師 | 27万5,800円 |
看護師 | 26万9,800円 |
医師は、責任の大きさから初任給も高額です。看護師の初任給は薬剤師や助産師よりは低いものの、コメディカルスタッフのなかでは、比較的高い水準であることがわかります。
一般の会社員の初任給と比較
一般企業の大学卒の初任給と比べても、看護師の初任給はやや高い水準です。
【医療職以外の初任給の平均月額】
職種 | 初任給の平均月額 |
受付・案内事務員 | 21万6,900円 |
販売店員 | 22万2,600円 |
飲食物調理従事者 | 21万5,700円 |
表の職種と比べると、看護師は平均で4万~5万円ほど高い初任給を受け取っていることがわかります。看護師が安定した職業といわれる理由のひとつは、初任給の高さにあるといえるでしょう。
看護師の初任給が支給される時期は4月頃
多くの病院では、4月の給与支給日(25日や末日)に初任給が支払われます。
ただし、初任給は「4月1日~支給日までの勤務日数」で計算されるため、1ヶ月分満額は支給されず、やや少なくなるのが一般的です。
たとえば、4月1日~4月25日までの25日分ほどの支給となる場合、総支給額が28万円の病院でも、初任給は25万円程度になるケースもあります。「初任給が少ない」と感じるかもしれませんが、翌月からは1ヶ月分が支給されるため安心してください。
看護師の初任給に差が出る4つの要因
新卒看護師のなかでも、初任給の金額には差が出ることがあります。その理由は次のとおりです。
- 新卒看護師の最終学歴
- 勤務している地域
- 病院や施設の規模
- 病院や施設の設置主体
それぞれ詳しく解説します。
新卒看護師の最終学歴
初任給は、最終学歴によって差があります。
【新卒看護師の平均初任給】
最終学歴 | 平均基本給月額 | 平均税込給与総額 |
看護3年課程卒 | 21万2,077円 | 27万4,840円 |
看護系大学卒 | 21万7,934円 | 28万2,453円 |
看護系大学院卒 | 22万2,736円 | 28万7,936円 |
学歴によって、基本給は数千円の違いです。ただ、昇給や賞与の計算にも影響するため、将来的な収入の差は大きくなる可能性があります。
勤務している地域
地域別における看護師の初任給をみてみると、地方に比べて都市圏の方が給与水準が高い傾向にあります。
【地域における初任給ランキング(大卒の場合)】
順位 | 地域 | 税込の給与総支給額(平均) |
1 | 東京都 | 31万531円 |
2 | 神奈川県 | 30万6,721円 |
3 | 千葉県 | 30万5,542円 |
4 | 愛知県 | 29万8,745円 |
5 | 静岡県 | 29万6,611円 |
6 | 大阪府 | 29万6,571円 |
7 | 滋賀県 | 29万5,990円 |
8 | 埼玉県 | 29万2,670円 |
9 | 奈良県 | 29万2,382円 |
10 | 兵庫県 | 29万922円 |
ただし、首都圏は家賃や生活費も高くなりやすいため、手取り額だけでなく生活費を含めて考えておくことが大切です。
病院や施設の規模
「2024年度看護職員の賃金に関する実態調査」によると、病床数が多い病院ほど給与が高い傾向があります。
規模の大きい病院は、夜勤手当や住宅手当が充実しているところがあり、初任給に反映されやすいでしょう。
病院や施設の設置主体
病院や施設を運営する母体によっても、給与の水準は異なります。
「2024年看護職員の賃金に関する実態調査」の結果では、設置主体別の新卒看護師における初任給の総支給額は、日本赤十字社が最も高く、次いで社会保険関係団体、公立、国立の順でした。
同じ地域でも、設置主体によって初任給に差が出るのが事実です。求人情報の「どこが運営している職場か」という点も確認してみてください。
看護師の初任給後の賞与事情
看護師として採用された年の夏は「支給なし」または「寸志のみ」で、冬から本格的に支給されるケースが多い傾向です。
また、賞与は「勤務年数」のみで決まるわけではなく、病院や施設によって査定の基準があります。
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査報告書」によると、賞与査定の基準でも多いのは「出勤状況(68.1%)」であり、次いで「能力評価(50.8%)」「目標管理の達成度(30.9%)」の順です。
日々の勤務態度や姿勢も賞与に関係すると理解しておくと、仕事へのモチベーションを保ちやすいでしょう。
看護師の初任給で後悔しない職場選びのチェックポイント
ここからは、職場選びで注目したいポイントをご紹介します。
- 夜勤回数と手当額
- 住宅手当とスタッフ寮の有無
- 昇給と賞与の制度
- 勤務環境と離職率
- 教育制度と福利厚生の充実度
初任給の金額だけで職場を選ぶと「思っていた働き方と違った」と後悔する可能性があります。それぞれのポイントをしっかりとチェックしましょう。
夜勤回数と手当額
看護師の夜勤手当は、職場によって大きな差があるのが現状です。夜勤の平均額を表にまとめました。
【夜勤形態と手当額の平均】
夜勤形態 | 手当額 |
3交代(準夜勤) | 4,567円 |
3交代(深夜勤) | 5,715円 |
2交代 | 1万1,815円 |
夜勤回数が多ければ収入は増えますが、一方で体力的な負担は大きいのが事実です。求人票をみるときは「夜勤の平均回数」と「夜勤手当の単価」も確認しておきましょう。
住宅手当とスタッフ寮の有無
家賃補助や看護師寮の有無は、生活のしやすさに直結します。たとえ手取りの金額が少なくても、寮や住宅手当があると、月々の出費が抑えられるためです。
結果的に自由に使えるお金が増え、生活に余裕が出ることもあるでしょう。
昇給と賞与の制度
看護師の給与は、初任給だけでなく、その後の昇給や賞与によっても差が出るケースがあります。
日本看護協会の「2024年度看護職員の賃金に関する実態調査」では、年齢や勤続年数にもとづく昇給が「ある」と答えた病院は75.0%でした。そのうち73.9%は「一定の年齢で昇給が止まる」と回答しており、その平均年齢は57.1歳です。
つまり、若いうちは給与が上がっても、50代後半で昇給が止まってしまうケースがあるのです。また、賞与は査定の基準を設定しているところもあります。
昇給と賞与の制度は病院ごとに異なるため、就職先を選ぶ際は「長期的にどのくらい収入が見込めるか」を事前に確認しておくことが大切です。
勤務環境と離職率
給与が高くても、人手不足で過酷であったり、職場の雰囲気が悪かったりする勤務環境では長続きしません。労働時間は適切か、人間関係は良好かなど、働きやすさにつながるポイントも必ずチェックしておきましょう。
インターンシップや病院説明会に参加し、実際に働く看護師の雰囲気を感じてみるのもおすすめです。
教育制度と福利厚生の充実度
教育制度と福利厚生が整っているかどうかも大切なポイントです。
プリセプター制度や集合研修、専門資格取得の支援などが整っていれば、基礎をしっかり身につけながら成長できます。
また、産休・育休制度や短時間勤務制度などの福利厚生が充実しているかどうかも、長く安心して働ける環境をつくる重要な要素です。
給与だけでなく、教育と福利厚生を理解しておくことが、納得のいく職場選びにつながります。
病院経営の安定性
職場の経営状況は、見落としがちなポイントです。経営が不安定だと、給与や賞与の支給が遅れたり、減額されたりするリスクがあります。
長期的に働くことを考えているときは、経営の基盤が安定した職場を選ぶことが重要です。
看護師の初任給に関するよくある質問
ここからは、看護師の初任給についてよくある質問をまとめました。初任給や収入を具体的にイメージするための参考にしてみてください。
Q1:新卒看護師の年収はいくらですか?
新卒看護師の平均年収は344万2,200円です。
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、新卒看護師の平均給与は月額26万9,800円、1年間の賞与は10万4,600円であり、これを計算した金額です。
さらに、夜勤手当や住宅手当などの各種手当が加わると、実際の年収は400万円前後になるケースが一般的です。ただし、ここから税金や社会保険料などが差し引かれるため、手取り額はこれより少なくなります。
関連記事:20代看護師の平均年収は?初任給の実態と年収を上げる方法を解説!
Q2:看護師の年収500万円は何年目ですか?
「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、年収が500万円に達するのは30~34歳の看護師となっています。21~22歳で看護学校を卒業した看護師であれば、10年目あたりで年収500万円程度と考えておくと良いかもしれません。
ただし、病院や地域による基本給の差や、日勤のみの働き方などによっても左右されます。
Q3:看護師の初任給が高い病院の見わけ方はありますか?
初任給が高い病院を選びたい看護師は、次のポイントをチェックしてみてください。
- 夜勤手当の単価が高いか
- 住宅手当の支給はあるか
- 昇給・賞与の制度が整っているか
求人情報だけで判断せず、説明会やインターンシップで実際に確認しておくと安心です。
初任給は看護師の未来への第一歩!納得のいく病院選びをしよう
看護師の初任給は、学歴や地域、病院の規模や運営母体によって差があります。また、働く環境や教育体制が整っていないと、働き続けるのが難しくなります。
そのため、初任給の額だけでなく、手取り額や生活費、福利厚生などを含めて判断することが大切です。
将来の働きやすさやキャリアの展望も踏まえて、自分に合った職場を選びましょう。
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<参考サイト・文献>

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