臨床経験とは?看護師の臨床経験の数え方と採用試験で求められる5つの理由

「私の臨床経験って、ちゃんと評価されるのかな…」
転職や復職を考えるとき、そんな不安がふと頭をよぎることはありませんか。
ブランクがあったり、病棟以外で働いていたりすると、「これって臨床経験になるの?」と迷ってしまう方も多いはずです。
この記事では、看護師にとっての臨床経験の意味や正しい数え方、そして採用試験で重視される5つの理由をお伝えします。
あなたのこれまでの歩みが、確かな価値を持っていることを再確認し、自信を持って次の一歩を踏み出せるようになるはずです。
臨床経験とは医療現場での実務経験のこと
ここでは、看護師にとっての臨床経験の定義や数え方について紹介します。自身の臨床経験を正しく理解し、転職やキャリアアップといった次のステップに自信を持って進みましょう。
看護師の臨床経験の定義
臨床経験とは、医療現場での実務経験のことであり、患者さまにケアを行う業務全般の経験を指します。具体的には、次の業務が臨床経験に含まれます。
- 病棟での患者さまの処置
- 手術室での業務
- クリニックでの診療補助
- 訪問看護ステーションでの利用者さまケア
ただし、臨床経験の定義がすべての病院で統一されているとは限らないため、転職の際にこれらの臨床経験が含まれるのか、採用担当者に事前に確認すると安心です。
看護師の臨床経験の数え方
看護師の臨床経験は、原則として看護師として働いた期間で数えます。具体的には、次のような数え方になります。
- 大学病院で2年、クリニックで3年働いた場合:臨床経験5年
- 総合病院で1年、訪問看護ステーションで5年働いた場合:臨床経験6年
- 病院の外来で3年、介護施設で2年働いた場合:臨床経験5年
ただし、ブランク期間は含まれないため、合計の実務年数で数えるのが一般的です。また、准看護師で働き看護師になったケースでは「准看護師の臨床経験◯年、看護師の臨床経験◯年」と伝えましょう。
採用面接では、単に年数を伝えるだけでなく「どのような現場で、どのような経験を積んだか」を具体的に説明することが重要です。
看護師が臨床経験を求められる5つの理由
多くの医療機関が採用時に臨床経験を重視するのは、次の5つの理由があるからです。
- 基本的なスキルが身についている
- 患者さま・ご家族とのコミュニケーションスキルがある
- 長く働き続ける人を必要としている
- 急変対応や緊急時の判断力がある
- チーム医療の役割や流れを理解している
これらの理由は、看護師が現場で安全かつスムーズに業務を行うために不可欠な要素です。臨床経験を通して得られる実践的なスキルや知識は、患者さまの命と安全を守るうえで欠かせません。それぞれの理由を見ていきましょう。
基本的なスキルが身についている
臨床経験を積んだ看護師は、基本的な手技が身についているため、採用時に高く評価されます。即戦力として、すぐに現場で活躍できると期待されるからです。
たとえば、入職後すぐに点滴ルート確保や採血といった業務を安心して任せられることは、教育コストを抑えたい病院にとってはメリットとなります。このように、臨床経験は実践を通して得られたスキルの証明となり、採用の決め手の1つになるのです。
患者さま・ご家族とのコミュニケーションスキルがある
患者さまやご家族との信頼関係を築くコミュニケーションスキルがあるため、臨床経験が重視されます。これは、病状や治療方針をわかりやすく説明したり、不安に寄り添ったりする能力が、臨床経験を通して自然と身につくからです。
ターミナルケアでは、患者さまやご家族の心のケアをおこなったり、治療についての意思決定をサポートしたりすることも、このコミュニケーションスキルから生まれます。
臨床経験はスキルの習得だけでなく、患者さまの心に寄り添う力を養う場でもあり、それが採用において高く評価される理由です。
長く働き続ける人を必要としている
医療現場は長く安定して働いてくれる人材を求めているため、臨床経験者が重宝されます。
実際に、急性期病棟で経験した看護師であれば「多少の忙しさには耐えられるだろう」と判断される場合があります。また、厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によると、2022年度の看護師・准看護師の有効求人倍率は2.20倍であり、この人手不足の背景も定着率の高い人材が求められる要因です。
採用や教育にかかるコストを考えると、長く働いてくれることは医療機関にとって利点となります。
急変対応や緊急時の判断力がある
急変対応や緊急時の判断力は臨床経験を通じて養われるため、採用時に重要視されます。限られた時間のなかで、適切な処置をおこない医師に報告する能力は、患者さまの命を守るために不可欠です。
たとえば、急変した患者さまには、すぐに心肺蘇生を開始し迅速な対応が必要となります。臨床経験によって培われた判断力と行動力が採用においての強みとなります。
チーム医療の役割や流れを理解している
臨床経験が長いと、チーム医療の仕組みや自分の役割をよく理解していると評価されるでしょう。
たとえば、退院後の患者さまを支えるために、理学療法士やソーシャルワーカーと連携して情報を共有しながら、スムーズに仕事を進められます。さまざまな専門職と協力する力は、現場で大切なスキルです。
臨床経験を積むことで、このような連携力が自然と身につき、チーム全体の医療を円滑に進めることができるのです。
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臨床経験のない看護師でも働ける職場
「臨床経験がないから転職は難しいかも…」と不安に感じる方もいるでしょう。しかし、新卒看護師を積極的に採用している職場もあります。
- 大学病院や総合病院
- クリニック
- 訪問看護ステーション
これらの職場は、教育体制が充実していたり、未経験者向けの研修プログラムを用意していたりします。そのため、臨床経験に自信がない方でも看護師としてのキャリアをスタートできます。
大学病院や総合病院
大学病院や総合病院は、充実した研修制度や教育プログラムが用意されているため、臨床経験が浅い看護師でも安心して働けます。
幅広い診療科があり、さまざまな症例を経験できるため、看護師としてのスキルアップを目指せるのも魅力です。とくに大学病院は、教育機関も兼ねているため新卒看護師をはじめとした、未経験者を積極的に採用している傾向があります。
プリセプター制度が導入されている病院も多く、経験豊富な先輩看護師がマンツーマンで指導してくれるため、着実にスキルを身につけられるでしょう。
クリニック
クリニックは、臨床経験が少ない看護師にもおすすめの職場です。専門分野に絞ってじっくりと治療やケアに向き合うため、専門的な知識や技術をしっかり身につけられます。
たとえば、皮膚科クリニックではレーザー治療の補助、整形外科クリニックではリハビリテーションのサポートなど、限られた範囲の業務を集中して学べます。
また、アットホームな雰囲気の職場が多く、患者さま一人ひとりとじっくりかかわれるため、コミュニケーション能力を高めたい方にもおすすめです。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは病院と異なり、少人数の看護師で業務を担うためさまざまな経験と広い視野が必要です。なかには、臨床経験が少ない看護師でも働きやすい職場もあります。
ご自宅で療養する利用者さまをケアするため、基本的には1人で対応する場面も多いです。未経験の方は、先輩看護師の同行訪問や指導を通じて経験を積むことができます。
また、退院したばかりの利用者さま宅を訪問し、生活環境を整える手伝いをしたり、ご家族に服薬指導をおこなったりするなど、在宅医療ならではの実践的な経験ができます。募集要項に「未経験歓迎」や「新卒訪問看護師募集」など、教育体制に力を入れている訪問看護ステーションでは、臨床経験がなかったり、少なかったりする看護師の受け入れもしています。
病院とは異なる環境で、看護師としてのスキルと人間力を高めながら、利用者さまの生活に深く寄り添うやりがいのある仕事です。
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看護師の臨床経験についてのよくある質問
転職を考える際、臨床経験についてさまざまな疑問や不安を抱えている看護師の方は多いのではないでしょうか。ここでは、臨床経験についてのよくある質問にお答えします。
Q1:クリニックに必要な臨床経験には何がありますか?
クリニックでは、診療科に合わせた専門知識や手技が求められます。
たとえば、内科クリニックでは採血や点滴、消化器内科では内視鏡の補助経験があると有利です。しかし、患者さまへの丁寧な対応や基本的なビジネスマナーはどのクリニックでも共通して重要です。
また、受付業務や電話対応などの事務作業を担う場合もあるため、事務スキルも歓迎されることがあります。
Q2:臨床経験が3年以上ないと転職は難しいですか?
臨床経験が3年未満でも、転職は十分に可能です。
とくに、新卒採用を積極的におこなっている病院や、研修制度が充実している施設であれば、臨床経験が浅くても採用されるチャンスはあります。これまでの経験から何を学び、今後どのように貢献したいかをはっきりと伝えることが大切です。
面接前に自分のスキルや経験を洗い出して、しっかりとアピールしましょう。
Q3:オペ室で働くためにはどういう臨床経験が必要ですか?
オペ室勤務には、外科病棟や救命救急センターでの勤務経験があると有利です。
なぜなら、外科病棟での経験があれば手術の流れや術前・術後のケアについて理解していると判断され、即戦力として期待されます。また、救命救急センターでの経験は、緊急時の対応力や集中力をアピールできます。
ただし、手術で使う機材や実際の流れなどわからないことも多いかもしれません。
それでも、オペ室で働きたいという熱意があれば、未経験でもオペ室に配属されるケースがあるため、積極的にチャレンジしましょう。
Q4:施設勤務は臨床経験に含まれますか?
介護施設や特別養護老人ホームなどの施設勤務も、看護師としての実務経験に含まれます。
ですが、病院での勤務とは求められるスキルや業務内容が異なるため、転職先によっては「病院での臨床経験」として認められない場合もあります。
そのため、施設勤務で培った高齢者のケアについての知識や、ご家族への対応スキルをどのように病院に貢献していくのか、具体的に伝えることが重要です。
看護師の臨床経験を活かせる現場で働こう
臨床経験は、看護師としての知識やスキルを証明するだけでなく、強みをアピールする大切な要素です。
転職活動においては、単に臨床経験の年数を伝えるだけでなく「どのような経験から何を学んだか」を具体的に伝えることが重要です。あなたの臨床経験を最大限に活かせる職場を見つけ、キャリアアップを目指しましょう。
もし、これまでの臨床経験を活かして、利用者さま一人ひとりと向き合いたいと考えているなら、訪問看護という働き方があります。訪問看護は、ご自宅で療養する利用者さまを支える、やりがいのある仕事です。
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<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。