医療職が使う略語一覧|現場で使う用語を新人看護師向けに6つの場面別に解説

「カルテの記録が略語だらけで読めない…」「申し送り中、先輩の会話についていけない」
新人看護師として現場に立ったとき、こうした戸惑いを感じた方は少なくないはずです。医療現場では、情報伝達の効率化のために多くの略語が使われていますが、初めての人にとっては大きな壁にもなり得ます。
しかも、略語の使い方は施設ごとに異なることもあるため、正しい理解と使い分けが求められます。
本記事では、新人看護師が特に戸惑いやすい医療略語を「6つの場面」に分けて丁寧に解説します。略語の意味と使いどころを理解することで、コミュニケーションがスムーズになり、現場での自信にもつながるはずです。
医療職がよく使う略語一覧【場面別】
医療現場で使われる略語は数多くあります。ここでは、次の6つの場面にわけて、重要な略語を紹介します。
- 看護記録でよく使用する略語一覧
- 申し送りやスタッフ間でよく使われる略語一覧
- 医師のカルテ記録でよく見かける略語一覧
- 検査に関する略語一覧
- 治療や医療処置で使う略語一覧
- 介護・リハビリ職や生活支援に関する略語一覧
医療現場で使われる略語は、英語やドイツ語由来など様々な言語が使われています。また、同じ略語でも違う意味や場面に合わせて使うこともあり注意が必要です。
では、順番に見ていきましょう。
看護記録でよく使用する略語一覧
看護記録では、略語を使わず正確に記載するのが基本です。また、略語を使用する場合は「施設内で統一する」ということが日本看護協会の指針にも記されています。
ただし、バイタルサイン測定時や観察項目など、一部の用語は略語で記載されることも多くあります。実際の看護記録でよく目にする、略語を確認しておきましょう。
略語 | 正式名称 | 日本語 |
VS | Vital Signs | バイタルサイン(体温、血圧、脈拍など) |
SOAP | Subjective,Objective,Assessment,Plan | 主観、客観、評価、計画 |
BP | Blood Pressure | 血圧 |
HR | Heart Rate | 心拍数 |
SpO₂ | Oxygen Saturation | 血中酸素飽和度 |
RR | Respiratory Rate | 呼吸回数 |
BT | Body Temperature | 体温 |
FBS | Fasting Blood Sugar | 空腹時血糖 |
Wt | Weight | 体重 |
これらの略語は、バイタルサイン測定時や患者さまの状態観察時に使用します。日常業務のなかで繰り返し使うことで、自然と身につけられます。
看護師の申し送りやスタッフ間でよく使われる略語一覧
申し送りや他職種間のコミュニケーションでは、患者さまの状況を効率的に伝えるための略語が使用されます。
略語 | 正式名称 | 日本語 |
ADL | Activities of Daily Living | 日常生活動作 |
IC | Informed Consent | インフォームド・コンセント |
DNAR | Do Not Attempt Resuscitate | 心肺蘇生拒否 |
ROM | Range of Motion | 関節可動域 |
DM | Diabetes Mellitus | 糖尿病 |
CPA | Cardiopulmonary Arrest | 心肺停止 |
とくに、DNARやCPAなどの略語は、緊急時の対応に直結する重要な情報です。意味を正確に理解し、迅速に対応できるよう準備しておくことが大切です。
医師のカルテ記録でよく見かける略語一覧
医師が記載するカルテには、診断や治療方針にかかわる略語が数多く使用されます。看護師もこれらの略語を理解することで、患者さまの治療方針をより深く把握できます。
略語 | 正式名称 | 日本語 |
NPO | Non Per Os | 経口摂取禁止 |
s/o | Suspect Of | 〜の疑い |
do | ditto | 同上 |
これらの略語は、一部の医師がカルテで使用することがありますが、施設によって異なるため、わからない略語があれば、積極的に先輩や医師に確認しましょう。
検査に関する略語一覧
検査結果の確認や検査の準備において、略語の理解は必須です。検査部門との連携や検査結果の読み取りに役立つ略語を覚えておきましょう。
略語 | 英語 | 日本語 |
CBC | Complete Blood Count | 全血球計算 |
CRP | C-Reactive Protein | 炎症反応 |
BS | Blood Sugar※ | 血糖 |
UA | Urinalysis | 尿検査 |
ECG | Electrocardiogram | 心電図 |
BGA | Blood Gas Analysis | 血液ガス分析 |
XP | X-ray Photograph | レントゲン |
検査に使われる略語の理解は、検査結果の解釈や患者さまへの説明時にも重要です。正常値とあわせて覚えることで、より実践的な知識となります。
治療や医療処置で使う略語一覧
治療や処置に関する略語は、医師の指示を正確に理解し、安全な医療に繋げるために不可欠な項目です。投与経路や処置内容を示す略語を紹介します。
略語 | 正式名称 | 日本語 |
IVR | Interventional Radiology | 血管内治療 |
OP | Operation | 手術 |
sc | Subcutaneous | 皮下注射 |
im | Intramuscular | 筋肉内注射 |
iv | Intravenous | 静脈内注射 |
PEG | Percutaneous Endoscopic Gastrostomy | 胃瘻造設 |
CVC | Central Venous Catheter | 中心静脈カテーテル |
sc、im、ivなどの略語は、投与経路を示す場合が多く、薬剤投与時のミスを防ぐためにも重要です。間違いのないよう、正確な理解を心がけましょう。
介護・リハビリ職や生活支援に関する略語一覧
多職種との連携において、介護やリハビリ職との連携は欠かせません。患者さまの生活機能や退院支援にかかわる略語を理解しておくことで、チーム医療がよりスムーズに進められます。
略語 | 英語 | 日本語 |
QOL | Quality of Life | 生活の質 |
OT | Occupational Therapist | 作業療法士 |
PT | Physical Therapist | 理学療法士 |
ST | Speech-Language-Hearing Therapist | 言語聴覚士 |
MSW | Medical Social Worker | 医療ソーシャルワーカー |
これらの略語は、患者さまの退院後の生活を見据えた看護をおこなううえでも役立ちます。
医療職の略語を新人看護師が覚えるためのコツと学習法
略語は数が多く、すべてを一度に覚えるのは困難です。効果的な学習方法を身につけることで、無理なく記憶に定着させられるでしょう。ここでは、実践的な覚え方のコツを3つ紹介します。
- 語呂合わせ・分類で覚える
- 日常業務で意識して使う
- 自分だけの略語ノートを作る
それぞれ解説します。
語呂合わせ・分類で覚える
関連性のある略語をグループ化することで、記憶の定着率を高められます。
たとえば、バイタルサイン関連の略語(BP、HR、RR、BT)をまとめて覚えたり、投与経路(sc、im、iv)を同時に学習したりする方法が効果的です。
また、語呂合わせを活用することも有効な手段です。「SOAP(ソープ)は看護記録の基本」など、自分なりの覚え方を工夫してみましょう。視覚的に覚えやすい人は、略語の意味をイメージ図とともに記録することもおすすめです。
日常業務で意識して使う
机上での学習だけでなく、実際の業務で積極的に略語を使用することが重要です。看護記録を作成する際や申し送りのときに、意識的に略語を使ってみましょう。
先輩看護師との会話でも「NPOの指示が出ています」「CVCの刺入部を確認してください」など、自然に略語を取り入れることで、コミュニケーション能力の向上にもつながります。
使い慣れることで、緊急時にもスムーズに対応できるようになるでしょう。
自分だけの略語ノートを作る
覚えにくい略語や新しく出会った略語を記録するノートを作成しましょう。
単に略語と意味だけでなく、使用場面や具体例も一緒に記載することで、実践的な知識として身につけられます。
ノートには、間違いやすい略語の区別方法も記録しておくことをおすすめします。たとえば「BS」が血糖(Blood Sugar)と腸雑音(Bowel Sounds)の両方を表すことなど、注意が必要な点をメモしておくことで、ミスの防止につながります。
本屋さんで略語のポケットマニュアルを購入するのも一つの手です。ポケットに入る大きさでアルファベット順になっていたり、場面ごとにカテゴリーされていたりするので使いやすくおすすめです。自施設での略語もマニュアルに直接書き込むことでオリジナルの略語マニュアルとして活用できるでしょう。
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医療現場で略語を新人看護師が使う際の注意点
略語は効率的なコミュニケーションツールですが、使用する際には注意すべき点があります。
- 略語の誤解や多義性に注意する
- 患者さまや家族への説明では略語を避ける
- 略語の使い方は職場によって異なることがある
患者さまの安全と良好なコミュニケーションを保つために、次の点を心がけましょう。
略語の誤解や多義性に注意する
同じ略語でも文脈によって異なる意味を持つ場合があります。
代表的な例として「MS」は多発性硬化症(Multiple Sclerosis)と僧帽弁狭窄症(Mitral Stenosis)の両方を表します。
このような多義語を使用する際は、文脈を明らかにしたり、フルスペルで表記したりして誤解を避ける工夫が大切です。不明な点があれば、遠慮せずに確認しましょう。
患者さまや家族への説明では略語を避ける
医療者間では通じる略語でも、患者さまやご家族には、理解が難しい場合も多く存在します。
「IC(インフォームド・コンセント)を取りました」ではなく「十分に説明し、同意をいただきました」のように、わかりやすい表現で伝えることが重要です。
患者さまとのコミュニケーションでは、専門用語や略語を使わず、相手の理解度に合わせた説明を心がけましょう。これにより、患者さまの不安軽減や信頼関係の構築にもつながります。
関連記事:看護師のコミュニケーションで大事なこととは?スキルを上げる方法も解説
略語の使い方は職場によって異なることがある
同じ略語でも、医療機関や部署によって使い方や意味が異なる場合があります。
とくに、新しい職場に配属された際は、その施設独自の略語や表現について先輩に確認し、現場に合わせたコミュニケーションを心がけることが大切です。
医療略語についてのよくある質問
ここでは、医療略語についてのよくある質問に回答します。
Q1:医療略語は看護師だけでなく多職種も使いますか?
医療略語は、看護師以外の職種でも広く使用されています。
医師や薬剤師、リハビリ担当者などの職種が共通の略語を使用することで、効率的なチーム医療が実現されています。
ただし、職種によって、頻繁に使用する略語が異なる点には注意が必要です。
「知っていると思って使ったら伝わっていなかった…」ということもあります。
相手にきちんと伝わるように、状況を理解して使いましょう。
Q2:医療略語を覚えきれないとき、どう対処すれば良いですか?
すべての略語を完璧に覚える必要はありません。まずは、自分の配属先でよく使用される略語から優先的に覚えましょう。
わからない略語に出会った際は、その場で先輩に質問したり、書籍で調べたりする習慣をつけることが大切です。同期の看護師と「Sがついてカルテの病名のところに書いてある略語は?」とクイズ形式で覚えていくのも面白いでしょう。
また、理解が曖昧な略語を使用するのではなく、正式名称で表現することもひとつの方法です。正確性を重視し、患者さまの安全を最優先に考えましょう。
Q3:略語を使ってはいけない場面はありますか?
患者さまやご家族との会話では、基本的に略語の使用は避けましょう。また、法的な文書や正式な記録では、略語よりも正式名称を使用することが推奨されます。
「MS」を使う際は、同じ略語でも複数の意味があるため「MSの患者さま」ではなく「多発性硬化症の患者さま」「僧帽弁狭窄症の患者さま」と正式名称で伝えることで、誤解を防げます。
医療職の略語を正しく理解し、コミュニケーションに役立てよう
略語の理解は、現場でのコミュニケーションを円滑にし、業務に対する自信にもつながります。毎日の実践を通じて少しずつ知識を積み重ねていくことで、看護師としての視野も広がっていくでしょう。
そして、経験を重ねる中で「より自分らしく働ける環境とは何か」を考える機会が増えてくるかもしれません。
たとえば、じっくりと患者さまと向き合う看護を志す方には、訪問看護という働き方も一つの選択肢です。
Ns Pace Careerでは、訪問看護のキャリアを目指す看護師の方々に向けて、希望に合った職場探しをサポートしています。
将来の選択肢のひとつとして、ぜひご活用ください。
<参考サイト・文献>

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