チームナーシングとは?機能別看護方式との違いや3つのメリットを解説

「チームナーシングってよく聞くけど、どのような働き方なんだろう?」「今の病院はチームナーシングだけど、ほかと何が違うの?」
このような疑問や不安を抱えていませんか。チームナーシングは、医療現場で広く採用されている看護方式の1つです。
この記事では、チームナーシングの詳しい定義から、機能別看護方式やプライマリーナーシングとの違い、メリット・デメリットまでわかりやすく解説します。
この記事を読めば、チームナーシングの職場で働くイメージができるはずです。ぜひ、キャリアプランに合った職場選びのヒントとして活用してください。
チームナーシングとは看護師をチームに分け患者さまを受け持つ看護方式
チームナーシングは、看護師一人ひとりの負担を軽減しつつ、質の高いケアを目指すために多くの病院で採用されています。まずは、チームナーシングの基本的な定義と仕組み、ほかの看護提供方式との違いを見ていきましょう。
チームナーシングの定義
チームナーシングは、看護師をいくつかのチームに分け、チームで患者さまを受け持つ看護方式のことです。
リーダー看護師と数名のメンバーで構成され、その経験や看護実践力、専門分野は異なります。病院や病棟によっては、チームを毎日、または週ごとに変えることもあり、ルールはさまざまです。
看護師が個々の力を発揮しながら、不足している能力はチームで補い、実践できるように取り組むのがポイントです。ケアの内容や患者さまの情報は、カンファレンスで共有し、患者さまの状態を把握します。
これにより、患者さまの状態を把握し、質の高いケアを提供できるのです。
固定チームナーシング・機能別看護方式・プライマリーナーシングとの違い
チームナーシングとほかの看護方式との違いをまとめました。
看護方式 | 特徴 |
チームナーシング | 看護師をいくつかのチームに分けて患者さまを担当 |
固定チームナーシング | 同じメンバーで長期間、同じ患者さまを担当 |
機能別看護方式 | 点滴担当や配膳担当など業務ごとに担当 |
プライマリーナーシング | 患者さまに1人の看護師が計画からケアまで一貫して対応 |
ほかには、モジュール型継続受け持ち方式やセル看護提供方式、パートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)などがあります。また、ある研究では、固定チームナーシングを導入した病院で、転倒・転落事故が減少したことが報告されました。これは、メンバーが長期間同じ患者さまを担当することで、状態の変化に気づきやすくなったためと考えられます。
看護方式にはそれぞれの特徴があり、働く現場や目的によって適した方法が選ばれているのです。
チームナーシングの役割や動き方
ここでは、リーダーと各メンバーがどのような役割を担い、どのように連携して動いているのか、具体的に解説します。
メンバーの役割や動き方
メンバーは、リーダーの指示を受けて患者さまにケアをおこないます。経験や得意分野に応じて、それぞれに合った仕事が割り当てられます。
また、日本看護協会『看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド』においても、看護師は患者の状態変化を適切に報告する責任があると示されています。この報告によって、患者さまの適切なケアや処置につながります。
情報をチームで共有することで、患者さまの状態を理解し、より良いケアにつなげられるのです。
リーダーの役割や動き方
リーダーは、まとめ役としてメンバーの動きを調整しながらケアの質を保つ重要な存在です。おもな仕事は、次のとおりです。
- 患者さまのケアプランの立案
- メンバーへの指示出し
- チーム内での情報共有の促進
- 多職種との連携
リーダーは患者さまの全体像を把握しながら、チームが一丸となって動けるようサポートします。
チームナーシングの導入事例
チームナーシングは、病院の規模や病棟の特性に合わせて、さまざまな形で導入されています。ここでは、実際にどのような現場で活用されているのかを見ていきましょう。
チームナーシングを単独で導入している事例
急性期の病院や大規模な病院では、チームナーシングを単独で導入している事例が多い傾向です。患者さまの入退院が頻繁にあり、状態の変化も大きいため、複数の看護師で情報を共有しながらケアを進めることが重要です。
<事例:手術後の患者さまへの対応> 手術後の患者さまは、バイタルサインの変動が激しいため、全身を観察したり、ケアしたりなど集中的な介入が必要です。この場合、リーダーが全体のケアプランを立て、メンバーが交代でバイタルサインの測定や体位変換、点滴管理をおこないます。これにより、常に複数の看護師の目で患者さまの状態をチェックでき、異変に早く気づけるようになります。 |
チームナーシングとプライマリーナーシングを組み合わせている事例
一部の病院では、チームナーシングとプライマリーナーシングを組み合わせています。これにより、両方の利点を活かし、患者さまに最適なケアを提供できます。
<事例:日中と夜間の担当分け> 日中のケアはチームナーシングでおこない、夜間はプライマリーナーシングのように一貫して1人で担当するといった運用方法です。この組み合わせにより、日中はチームで協力してケアを提供し、夜間は専任の看護師が担当することで、患者さまと深い信頼関係を築きやすくなります。それぞれの利点を活かしたハイブリッドな運用が可能です。 |
チームナーシングの3つのメリット
チームナーシングは、複数の看護師で協力して患者さまを看るため、多くのメリットがあります。ここでは、おもな利点を紹介します。
- ケアの質が安定しやすい
- メンバー同士で協力してケアができる
- 新人教育をおこないやすい
これらは、看護師の負担を減らし、患者さまに質の高いケアを提供するために重要です。一つひとつのメリットを詳しく見ていきましょう。
ケアの質が安定しやすい
チームナーシングでは、複数の看護師で患者さまを看るため、ケアの質が安定しやすいです。
ベテラン看護師がリーダーとなり、若手看護師が加わることで、経験の差を補い合えます。もし経験の浅い看護師がケア中に困ったことがあっても、リーダーやほかのメンバーがすぐに気づいてフォローできるため、ケアの漏れやミスを防げます。
看護師のスキルのレベルを問わず、チームとして質の高いケアを維持できるため、患者さまは安心して治療を受けられるでしょう。
メンバー同士で協力してケアができる
チームナーシングは、メンバーが協力してケアを行うのが大きな特徴です。
困ったときにすぐに相談できるため、看護師の負担を減らせることが強みです。たとえば、急変対応時や緊急時に、メンバーは事前に患者さまの情報を把握しているため、電子カルテで情報を見返す必要がなく迅速に対応できます。
このように、チームで支え合うことで、1人で抱え込むことなく、安全で質の高いケアを提供できるのです。
新人教育をおこないやすい
チームナーシングは、新人看護師の教育にも適しています。というのも、チーム全体で新人看護師をサポートする体制が整っているからです。
たとえば、注射の手技や記録方法など、実践的な業務を先輩看護師がマンツーマンで指導する機会が多くあります。
新人看護師はわからないことをすぐに質問でき、安心して業務に取り組めます。チーム全体でサポートするため、新人看護師にとって成長しやすい環境といえるでしょう。
チームナーシングのデメリット
チームナーシングには、メリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、おもなデメリットを紹介します。
- リーダーの負担が大きい
- 責任があいまいになりやすい
- 患者さまとの関係を築きにくい
これらのデメリットを解消するためには、チーム内でのコミュニケーションを密にして、役割分担をはっきりとすることが不可欠です。それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
リーダーの負担が大きい
チームナーシングのデメリットとして、リーダーの負担が大きい点が挙げられます。
その理由は、リーダーはチーム全体の責任を負い、業務の指示や調整、情報共有など多くの役割を担うからです。
たとえば、新しく入院した患者さまのケアプランを作成したり、多忙な時間帯にメンバーの業務を調整したりと、チーム全体を把握して、適切に判断する必要があります。
このように、リーダーにはチーム全体を動かすためのマネジメント能力が求められるため、心身ともに大きな負担がかかることがあります。
責任があいまいになりやすい
チーム全体で患者さまを受け持つため、何かトラブルやインシデントが発生した場合に「誰の責任か」がはっきりしないことがあります。適切な役割分担や申し送りの工夫がないと責任があいまいになる恐れがあります。
一例として、患者さまの体調変化の発見が遅れた場合「朝の申し送りで伝え漏れがあったのか?」「日中の観察が足りなかったのか?」など、原因を突き止めるのが難しいかもしれません。
原因がわからなければ、再発防止策も立てにくくなります。そのため、チーム内で「誰が何をすべきか」という役割分担や責任範囲を明らかにしておくことが重要です。
患者さまとの関係を築きにくい
チームナーシングでは、患者さまに対して複数の看護師がケアを行うため、一部の患者さまには関係を築きにくいと感じられる場合がありますが、情報共有や担当制の工夫で解消可能です。日によって違う看護師が対応することになるため、患者さまは不安を感じるかもしれません。
たとえば、入院生活に不安を感じている患者さまが「この看護師さんに話を聞いて欲しい」と思っても、その看護師が担当とは限りません。そのため、特定の看護師とじっくり話す機会が減ってしまい、信頼関係を築くのが難しいケースがあります。
チームナーシングの職場に向いている人・向いていない人の特徴
ここでは、チームナーシングがどのような人に向いているのか、また向いていないのかを解説します。自分の性格や働き方の好みを振り返りながら、ぜひ参考にしてください。
向いている人の特徴
チームナーシングの職場に向いている人には、次のような特徴があります。
- 協調性がありチームで働くことが好きな人
- 積極的にコミュニケーションを取れる人
- 自分の役割を理解し、責任を持って業務に取り組める人
- 柔軟に対応できる人
これらの特徴がある人は、チームの成功に貢献するだけでなく、自分も周囲の助けを得ながら成長できるため充実した看護師生活を送れるでしょう。
向いていない人の特徴
チームナーシングの職場に向いていない人には、次のような特徴があります。
- 単独で行動したい
- 自分のペースで仕事をしたい人
- 協調性があまりない人
- 責任を負うのが苦手な人
チームでの情報共有や連携が欠かせないため、これらの特徴に当てはまる人は、チームの動きにストレスを感じてしまい、本来のパフォーマンスを発揮できない可能性があります。
関連記事:訪問看護は担当制?受け持ち制とチーム制の違いやメリット・デメリットについて解説
チームナーシングについてのよくある質問
ここでは、チームナーシングについてよく寄せられる質問にお答えします。あなたが抱えている疑問や不安を解消するのに役立ててください。
Q1:チームナーシングでも担当患者さまを持ちますか?
担当患者さまを持つかどうかは、病院やチームの運用方針によります。
しかし、一般的にはチーム全体で受け持つ運用が多いですが、病院によってはチームナーシングでも担当患者を割り当てる場合があります。その代わり、チーム内で患者さまの情報を共有することで、1人の看護師が不在でも対応できる体制を整えています。
Q2:チームはどのように決まりますか?
チームの構成は、次のことを考えて決められます。
- 経験年数
- スキル
- 勤務シフト
ベテラン看護師と若手看護師をバランス良く配置することで、チーム全体のスキルを維持できます。メンバーの多様な視点や経験を活かすことで、質の高いケアを提供できるようになるのです。
Q3:チームナーシングでは新人看護師も活躍できますか?
新人看護師でも活躍できる看護方式です。
ベテラン看護師がリーダーとなり、チーム全体でサポートする体制が整っています。業務の進め方やケアの方法を先輩看護師から学ぶ機会が多く、困ったことがあってもすぐに相談できます。これにより、新人看護師は安心して業務に取り組みながら、着実にスキルを身につけられるでしょう。
Q4:チームナーシングと機能別看護方式ではどちらがスキルアップできますか?
チームナーシングでは、患者さまの全体像を看る機会が多いため、幅広いスキルを身につけられる一方、機能別看護方式では、特定の業務を行うため、専門的なスキルを深められます。
どちらの方式がスキルアップにつながるかは、どのような看護師になりたいかによって異なります。たとえば、ジェネラリストとして多様な知識を身につけたいならチームナーシング、特定の分野のエキスパートを目指すなら機能別看護方式が向いているでしょう。
チームナーシングの特徴を理解して自分に合った職場を見つけよう
チームナーシングは、複数の看護師が協力して患者さまを看る看護方式です。
協調性やコミュニケーション能力が重要となりますが、お互いに助け合いながら質の高いケアを提供できる、やりがいのある働き方といえるでしょう。
「患者さまとじっくり向き合いたい」「1人の患者さまの生活全体をサポートしたい」と考えるなら、訪問看護という選択肢もあります。
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<参考サイト・文献>
看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド|日本看護協会
若嶋壽喜子,固定チームナーシングの導入によるリスクマネジメント効果, 医療マネジメント学会雑誌Vol.5,No.3,2004.

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