訪問看護とは?対象者やサービス内容、保険の違いをわかりやすく解説

「もっと利用者さん一人ひとりに、じっくり向き合いたい」「自分らしく働ける看護の道を探している」
そんな想いを抱えるあなたへ――注目されているのが訪問看護という働き方です。
本記事では、定義・対象者・保険の仕組み・働き方の実際まで、現場目線&制度視点で丁寧に解説します。
訪問看護とはご自宅でケアをおこなうサービスのこと
訪問看護とは、病気や障がいを抱えながらご自宅で生活する利用者さまに、看護師が訪問し、医療的なケアや日常生活の支援をおこなうサービスです。ここでは、次のポイントを解説します。
- 訪問看護の定義
- 訪問看護を受ける対象者
- 訪問する職種
- 病院との違い
訪問看護の基本をおさえることで、病院とは異なる看護の魅力や、在宅医療における新しいキャリアの選択肢としての可能性が見えてくるはずです。
訪問看護の定義
訪問看護とは、医療的な視点から利用者さまのご自宅で健康状態を管理し、生活の質が高まるように支援します。具体的には、次のような処置やケアをおこなうことが一般的です。
- 病状の観察
- 褥瘡(じょくそう)の処置
- 排泄ケア
また、日常生活の介助やご家族への介護指導などもおこない、利用者さまがご自宅でその人らしい生活を送れるように支えるためのサービスといえるでしょう。
訪問看護を受ける対象者
訪問看護の対象となるのは、病気や障がいのため、ご自宅で療養生活を送っている方で、主治医が訪問看護の必要性を認めた方です。対象年齢は、小児から高齢者までと幅広く、対応する疾患や状態も次のように多岐にわたります。
- 病気やけがで通院が難しい方
- 退院後も医療的なケアが必要な方
- がんの終末期をご自宅で過ごしたい方
- 医療機器を使用しながらご自宅で生活する方
訪問看護では急性期から慢性期、終末期のほかに、小児や障がい福祉領域まで、さまざまなライフステージに寄り添った看護が求められます。「生活を支える看護」に挑戦したい方にとって、訪問看護はやりがいを感じられるフィールドといえるでしょう。
訪問する職種
訪問看護では、おもに看護師が訪問をおこないます。ほかにも、利用者さまの身体機能の維持・向上を図るために、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など、リハビリテーションの専門職が訪問する場合もあります。
多職種が連携することで、患者さま一人ひとりの状況に合わせた、より質の高いケアを提供できるでしょう。
病院との違い
病院は治療を目的とするのに対し、訪問看護は利用者さまのご自宅で生活を支援することが目的です。ほかにも次の違いがあります。
訪問看護 | 病院 | |
場所 | 利用者さまのご自宅 | 病院・クリニック |
目的 | 生活支援・生活の質の向上 | 治療・症状改善や回復 |
ケアの内容 | 日常生活支援・服薬管理・リハビリテーション・療養相談など | 病状管理・検査・手術・リハビリテーション・日常生活支援など |
かかわる医療職 | 訪問看護師・医師・理学療法士など | 医師・看護師・専門スタッフ |
保険 | 介護保険・医療保険 | 医療保険 |
また、訪問看護では日勤、オンコール対応があり、病院では日勤、夜勤があるなど、看護師の働き方にも違いがあります。
訪問看護の仕事内容とは?できること・できないこと
訪問看護の仕事内容は多岐にわたります。しかし、なかには訪問看護ではできないこともあります。
訪問看護でできること
訪問看護でできることは、利用者さまがご自宅で安心して療養生活を送るために必要なケアです。たとえば、次のようなものがあります。
- 病状の観察:バイタルサインの測定、全身状態の確認
- 医療処置:点滴やカテーテル交換、褥瘡(床ずれ)の処置
- 身体介護:入浴や清拭の介助、食事介助、排泄の介助
- 日常生活の支援:服薬管理、栄養指導、環境整備のアドバイス
- ご家族への支援:介護方法のアドバイス、精神的なサポート
- リハビリテーション:機能訓練、日常生活動作の指導
利用者さまの体調管理だけでなく、精神的な支えとなり、利用者さまの望む生活を目指します。病院で培った知識やスキルを活かしながらケアを実践したい看護師にとって、魅力的な業務内容といえるでしょう。
訪問看護でできないこと
訪問看護は多様なケアを提供しますが、すべての医療行為ができるわけではありません。次のようなことは訪問看護ではできません。
- 医師の指示がない医療行為
- 診断や薬の処方
- 24時間体制での常駐介護
訪問看護は、医師の指示にもとづき、看護師が安全におこなえる範囲でのケアを提供します。訪問看護ではできないことは、必要に応じてほかの医療機関やサービスとの連携を図り、利用者さまをサポートします。
関連記事:訪問看護ステーションとは?役割やできること・できないことを解説
訪問看護を受けるまでの流れ
訪問看護を利用するには、介護保険を利用する場合と医療保険を利用する場合で、それぞれ手続きの流れが異なります。看護師として、この違いを理解しておくことは、利用者さまやご家族への説明にも役立ちます。
介護保険の利用者さまの流れ
介護保険を利用して訪問看護を受けるには、要介護認定が必要です。
流れ | ポイント | |
1 | 介護保険の申請 | 市町村の窓口や地域包括支援センターで申請 |
2 | 要介護認定の審査と結果通知 | 訪問調査や主治医の意見書をもとに要介護度が決定 |
3 | ケアマネジャーによりケアプランを作成 | 利用者さまの状況に合わせたケアプランを作成。訪問看護の利用回数や内容が決定 |
4 | 訪問看護指示書の交付 | 主治医が訪問看護の必要性を認めた場合に交付 |
5 | 訪問看護ステーションと契約 | ケアプランにもとづき、訪問看護ステーションを選び契約 |
6 | 訪問看護の提供 | ケアプランに沿って訪問看護が開始 |
7 | サービスの評価と見直し | 定期的にプランを見直し、必要に応じて変更 |
具体的な流れや手続きは、居住している地域の自治体や訪問看護ステーションによって異なる可能性があります。
医療保険の利用者さまの流れ
医療保険を利用して訪問看護を受ける場合は、次の流れに沿って手続きを進めます。
流れ | ポイント | |
1 | 主治医に相談 | 訪問看護の利用を希望することを主治医に相談 |
2 | 訪問看護指示書の交付 | 主治医が訪問看護の必要性を認め、訪問看護指示書を交付 |
3 | 訪問看護ステーションと契約 | 訪問看護指示書にもとづき、訪問看護ステーションを選び契約 |
4 | 訪問看護の提供 | 指示書に沿って訪問看護が開始 |
5 | サービスの評価と見直し | 定期的に主治医やケアマネと連携し、サービスの評価と見直し |
医療保険を適用する場合も、利用者さまそれぞれで流れが異なる場合があります。この利用フローを把握することは、利用者さまへの適切な説明はもちろん、関係機関との円滑な連携にも役立つため重要です。
訪問看護師の1日のスケジュール
病院勤務とは異なり、訪問看護師の1日は、利用者さまのご自宅を訪問するスケジュールが中心です。訪問看護師の1日は、次のような流れで進みます。
時間 | 業務内容 |
8:00 | 出勤・情報収集 ※直行・直帰の場合、管理者からメールや電話で朝礼の内容を伝える |
8:15 | オンコール看護師からの申し送り・朝礼 |
8:30 | 訪問バックの物品確認と補充・利用者さま宅へ向かう |
9:00 | 午前の訪問は2〜3件ほど |
12:00 | 昼の休憩 |
13:00 | 午後の訪問は2~3件ほど |
16:30 | ステーションに戻る・各種報告書や記録の作成 |
17:00 | 業務終了 |
訪問する件数や内容はその日によって異なります。利用者さまの状態や交通状況によって、スケジュールが変動することもあります。ご自身のライフスタイルと照らし合わせて、働き方をイメージしてみましょう。
訪問看護のやりがいと大変さ
訪問看護は、利用者さまやご家族と密接にかかわるため、やりがいを感じられる仕事である一方で、大変な側面もあります。転職を検討するときに、メリット・デメリットを理解することは大切です。
訪問看護のやりがい
訪問看護のやりがいは、利用者さまの生活に深くかかわり、その変化を間近で見守れることにあります。次のような点にやりがいを感じる看護師が多いです。
- 利用者さまが自分らしい生活を送れるように支援できる
- 利用者さまやご家族から感謝の言葉をかけてもらえる
- 利用者さまの回復や生活の質の向上を実感できる
- 個別性の高いケアを提供し、看護師としての専門性を高められる
- 多職種と連携してチームで利用者さまを支えられる
住み慣れた場所で、その人らしい生活を送る手助けができることは、訪問看護師にとって喜びとなります。現在の職場での働き方に物足りなさを感じている看護師にとって、利用者さま一人ひとりに深く向き合える環境は魅力的に映るでしょう。
訪問看護の大変さ
訪問看護には、やりがいと同時に大変さも伴います。次のような点が挙げられます。
- 緊急対応が必要になることがある
- プライベートな空間でケアをおこなうため配慮が必要になる
- 病状が急変する利用者さまもいるため判断力や対応力が求められる
- 1人で判断し対応する場面が多く責任が大きいと感じることもある
- ご家族との連携や調整に時間や労力を要する場合がある
予測できない事態への対応や、1人での判断が求められる場面があるため、精神的な負担を感じることもあるかもしれません。しかし、これらは看護師としてのスキルアップにもつながる経験となるはずです。
訪問看護に向いている人と向いていない人
訪問看護の仕事は、向き不向きがあります。ご自身の適性を知ることで、より良い働き方を見つけられます。
訪問看護に向いている人
訪問看護に向いているのは、自律性や判断力が高く、利用者さまやご家族に寄り添う気持ちを持てる人です。次の特徴に当てはまる人は、訪問看護師として活躍できるでしょう。
- 自ら考え行動できる人
- コミュニケーション能力が高い人
- 相手の気持ちに寄り添える共感力のある人
- 臨機応変に対応できる柔軟性がある人
- 学び続ける意欲がある人
病院での経験で培ったスキルを活かし、さらに自律した看護師として成長したい方には適した環境です。
訪問看護に向いていない人
反対に、訪問看護に向いていない可能性のある人もいます。次の特徴がある人は、訪問看護師の仕事に難しさを感じるかもしれません。
- 指示がないと動けない人
- コミュニケーションを取るのが苦手な人
- 緊急時の判断に自信がない人
- 環境の変化に対応するのが苦手な人
- 車や自転車の運転が苦手な人
しかし、これらはあくまで傾向です。苦手な部分を克服するためのサポート体制が整っている事業所を選んだり、自身のキャリアプランと照らし合わせて検討したりすることで訪問看護師として活躍できる可能性があります。
訪問看護の求人の選び方とチェックポイント
訪問看護の求人を選ぶ際は、ご自身が求める働き方やキャリアプランに合うかどうかを確認することが重要です。転職を成功させるために、次のポイントをしっかりチェックしましょう。
- オンコール・訪問件数・移動手段
- 教育体制やフォロー体制
- 利用者さまの背景
これらの要素は、入職後の満足度に大きく影響します。ホームページや求人情報を確認し、自分に合った職場を選びましょう。
オンコール・訪問件数・移動手段
訪問看護師についての求人情報を確認する際には、次の3点は注意してチェックしてください。
情報 | ポイント |
オンコール | 緊急時に電話対応や訪問が必要となるオンコール体制があるか、その頻度や手当はどうかを確認 |
訪問件数 | 1日あたりの訪問件数や、1件あたりの訪問時間の目安を確認 |
移動手段 | 訪問先への移動手段が、車・バイク・自転車などなのかを確認 |
これらの条件は、日々の業務負担やプライベートとの両立に影響します。それぞれの情報が自分の働き方と合っているかしっかり確認することで、入職後のミスマッチを防ぎ、安心して働き続けられる職場を見つけられます。職場選びは慎重におこないましょう。
教育体制やフォロー体制
訪問看護が未経験の場合、教育体制やフォロー体制が整っているかは重要なポイントです。
- 研修制度:入職後の研修や、継続的なスキルアップのための支援制度があるか
- 職場内での研修:先輩看護師による同行訪問といった実践的な指導があるか
- 相談体制:相談できる先輩や管理者がいるか、心理的なサポート体制が整っているか
不安なく新しい環境でスタートするためにも、これらの点は必ず確認しておきましょう。
利用者さまの背景
どのような患者さまを対象としているか、その事業所の特徴を知ることも大切です。
- 対象疾患:特定の疾患に特化しているか、幅広い疾患に対応しているか
- 年齢層:高齢者が中心か、小児や若年層の利用者さまもいるか
- 重症度:医療依存度の高い利用者さまが多いか、比較的安定した利用者さまが多いか
ご自身がどのような利用者さまにケアをおこないたいのかを明らかにすることで、より働きやすい職場を見つけられます。訪問看護師が職場環境に抱くギャップについて、下記の記事で調査しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:訪問看護転職調査レポート:訪問看護師が職場環境に抱くギャップとは?
訪問看護に関するQ&A
訪問看護について、転職を検討している看護師からのよくある質問をまとめました。
Q1:未経験でも訪問看護師として働けますか?
未経験でも訪問看護師として働くことは可能です。多くの訪問看護ステーションでは、未経験者向けの研修やOJT制度を設けています。
入職後も先輩看護師が丁寧に指導し、段階的に業務に慣れていけるようなサポート体制が整っている事業所を選ぶことで、自分に合った働き方ができるでしょう。
Q2:訪問看護は1人で訪問しますか?
訪問看護は1人で訪問することが一般的です。
しかし、最初のうちは先輩看護師との同行訪問で、業務の流れや利用者さまとのかかわり方やケアの方法などを学べる場合が多いです。また、緊急時や医療処置の内容によっては、複数人で訪問する場合もあります。
事業所によっては、タブレットやスマホでほかの看護師と連絡を取りながら訪問できる体制が整っています。1人で責任を負いすぎる心配はないでしょう。
Q3:訪問看護ではオンコールや緊急対応はありますか?
訪問看護ステーションによっては、オンコールや緊急対応がある場合があります。
これは、利用者さまの容態が急変した際に、電話での相談対応や緊急訪問をおこなう必要があるからです。オンコールの頻度や内容は事業所によって異なり、なかにはオンコールがない事業所もあります。求人応募の際にこれらの情報を確認することで、自身のライフスタイルに合わせて選択できるでしょう。
訪問看護とは看護師がご自宅でケアをおこなうサービスのこと!自分に合った働き方を見つけよう
訪問看護とは、病気や障がいを抱える利用者さまが、住み慣れたご自宅で安心して療養生活を送れるよう、看護師が医療的なケアや生活支援をおこなうサービスです。
訪問看護では、緊急対応や1人で訪問する場面もあるため、責任感や判断力が求められる一方で、利用者さま一人ひとりに寄り添いケアを提供するなかでやりがいを感じられるでしょう。
訪問看護の仕事に興味がある方は「NsPaceCareer」で、まずは情報収集から始めてみましょう。ぜひ、新たなキャリアの選択肢として、訪問看護を検討し、自分に合った働き方を見つけてください。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。