小規模多機能型居宅介護の看護師の仕事内容7選!やりがいや給料事情を解説

「小規模多機能型居宅介護(小多機)」は、泊まり・通い・訪問のサービスを柔軟に組み合わせた地域密着型サービスです。
利用者さまの状態や家庭環境に合わせて支援内容を調整でき、住み慣れた地域での生活を支えられる点が特徴です。厚生労働省の公表データによると、2023年時点の小規模多機能型居宅介護の事業所数は5,523件です。近年は5,500件前後で推移しており、地域に根ざした介護拠点として安定的に整備が進められています。
この記事では、小規模多機能型居宅介護で働く看護師の仕事内容に注目し、役割や働くうえでのやりがい、向いている人の特徴などを紹介します。「自分に合っているか知りたい」と考えている方にとって、ヒントが見つかる内容であるため、最後までご覧ください。
小規模多機能居宅介護の看護師の仕事内容7選
小規模多機能型居宅介護では、看護師が医療だけでなく介護面でも幅広く活躍しています。ここでは、現場で求められるおもな業務内容を7つにわけて紹介します。
- バイタルサインの測定と健康管理
- 服薬の管理
- 医療処置
- 通院の付き添い
- ご家族のフォローと情報共有
- 主治医への報告
- 介護業務のサポート
看護師は利用者様が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、医療と介護の両面から質の高いサポートを提供しています。多職種連携を密におこない、利用者さま一人ひとりの状態に合わせた柔軟な対応が求められるやりがいのある仕事です。
バイタルサインの測定と健康管理
小規模多機能型居宅介護の看護師は、利用者さまのバイタルサインを定期的に確認し、体調の変化をいち早く把握します。
血圧・脈拍・体温・呼吸のチェックをはじめ、日々の小さな変化から、早期対応につなげる姿勢が求められます。基礎的な観察力と記録の正確さが重要です。
服薬の管理
利用者さまが薬を正しく服用できるよう、薬の準備や飲み忘れ防止の声かけをおこないます。薬の種類や服用する時間が複雑になる場合もあるため、正確な把握と記録が欠かせません。
また、副作用の有無を観察し、必要に応じて医師への連絡や迅速な対応も必要です。
医療処置
利用者さまの健康状態に応じて、看護師は医療的な処置もおこないます。たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 点滴
- 褥瘡処置
- インスリン注射
医療機関とは異なり医療設備が限られるため、利用者さまの状態を注意深く観察し、これまでの経験と判断力を活かして、処置をおこなうことが大切です。
通院の付き添い
利用者さまの通院時には、看護師が付き添う場合があります。移動中の体調管理や診察内容の確認、主治医との情報共有などの役割があるからです。
利用者さま本人だけでは伝えきれない症状や状態を医師に代弁し、必要な治療や指示を確認する必要があります。
また、診察後にはケアチームやご家族への報告をおこない、施設と医療機関をつなぐ橋渡し役が求められるため、通院の付き添いは看護師の重要な仕事の1つといえます。
ご家族のフォローと情報共有
利用者さまのご家族とのコミュニケーションも大切な役割です。
一例として、不安や疑問を聞き取りながら、必要に応じてアドバイスしたり、服薬や健康管理のサポート方法を説明したりします。
ご家族としっかり協力することで、利用者さまが安心して生活できる環境を整えられるでしょう。
主治医への報告
利用者さまの状態に変化が見られた際は、適切なタイミングで主治医に報告します。日々の観察記録をもとに、症状の経過や処置の効果、副作用の有無などを正確に伝えましょう。
主治医との円滑な連携によって、利用者さまの安全な生活を支えられます。
介護業務のサポート
小規模多機能居宅介護では、看護師も介護職と協力して日常生活のケアをサポートします。具体的には次のような場面です。
- 入浴や排泄の補助
- 食事介助
- 送迎時の見守り
医療ケアだけでなく、利用者さまが快適に過ごせるように、生活全体を支える姿勢が必要です。ときには認知症のある利用者さまへのケアもあるため、柔軟な対応力が求められます。看護師がチームの一員として協力することで、サービスの質を高めます。
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護の違いとは?
「小規模多機能型居宅介護(小多機)」と「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」には、いくつかの違いがあります。看護師の配置基準や対応できる医療の範囲など、制度面を比較しながらわかりやすく解説します。
看護師の配置基準の義務の有無
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護では、看護師の配置基準の義務について、次のような違いがあります。
施設の種類 | 看護職員の配置基準 |
小規模多機能居宅介護 | ・本体事業所は従業者のうち1名以上が必要となる ・サテライト型は本体事業所から支援を受けられる場合、置かないことができる |
看護小規模多機能型居宅介護 | ・本体事業所は看護職員を常勤換算で2.5名以上が必要となる ・サテライト型は1人以上の配置が義務づけられている |
看多機では、医療依存度の高い利用者さまが多いため、常時医療対応が可能な体制が求められます。配置基準の違いは、対応できる医療の範囲や業務分担に直結します。働く職場を選ぶ際には、本体・サテライトそれぞれの体制をよく確認することが大切です。
*サテライト型施設(本体と同じ法人が運営し、連携しながらサービスを提供する小規模な拠点)
医療行為の内容・対応範囲の違い
小規模多機能型居宅介護では、日常的な健康管理や軽度な医療的対応が中心です。一方で看護小規模多機能型居宅介護では、より医療依存度の高い利用者さまへの対応が可能です。次の専門的な処置にも対応できる体制が整っています。
- 胃ろうの管理
- カテーテル管理
- 気管切開の管理
- 褥瘡(床ずれ)の処置
- 認知症状への看護
医療ニーズの高い利用者さまが住み慣れた地域で安心して生活できるようにサポートしています。
業務量や負担感の違い
小規模多機能型居宅介護では、介護職と連携しながら健康管理を進める必要があります。看護師が1人の場合、医療対応を全て担う負担に加え、入浴介助や送迎などの介護業務も兼務する場面が多くなります。
一方、看護小規模多機能型居宅介護では看護師が複数配置されますが、医療依存度の高い利用者さまが多く、急変時の緊急対応も求められるため、医療面での負担が大きくなりがちです。
両者ともに、それぞれで業務量や負担感が異なるため、自分のスキルや希望に合った職場選びが大切です。
小規模多機能型居宅介護で働く看護師の1日のスケジュール
小規模多機能型居宅介護で働く看護師のスケジュールは施設や勤務体制によって異なります。一例として、日勤の流れを表にまとめました。
時間帯 | 業務内容 |
8:00 | 出勤・夜勤看護師からの申し送り・バイタルチェック |
9:00 | 服薬確認・入浴や排泄介助の補助・記録作成 |
10:30 | 医療処置(褥瘡ケア・インスリン注射など) |
12:00 | 食事介助・服薬確認・休憩 |
13:30 | 訪問対応または通所利用者さまの健康観察 |
15:00 | ご家族への報告・主治医との情報連携 |
16:30 | 記録整理・夜勤者への申し送り |
17:00 | 退勤 |
このように、小規模多機能型居宅介護の看護師には、利用者さま一人ひとりに応じた柔軟な対応が求められるのが特徴です。
小規模多機能居宅介護の看護師の給料と待遇
小規模多機能型居宅介護で働く看護師の給料は、月給28万円前後といわれています。ただし、働く施設や地域、経験年数などによって異なります。
基本給に加えて、住宅手当や資格手当に加えて、オンコール対応や夜勤がある施設では、その分の手当が加算されるため、看護師の給料は高くなる傾向です。
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小規模多機能型居宅介護の看護師のやりがいとメリット
ここでは、小規模多機能型居宅介護で働く看護師のやりがいやメリットを具体的に紹介します。
- 利用者さまと深くかかわれる
- 地域医療に貢献できる
- ワークライフバランスを整えやすい
- 「泊まり」「通い」「訪問」など多彩な業務に携われる
それぞれを具体的に見ていきましょう。
利用者さまと深くかかわれる
小規模多機能型居宅介護では、泊まり・通い・訪問の各サービスを通じて、利用者さまと日常的に接する機会が多くあります。そのため、健康状態や生活背景を深く理解でき、利用者さまと信頼関係を築きやすい職場です。
利用者さまやご家族の声を間近で感じられる点が、やりがいにつながります。
地域医療に貢献できる
小規模多機能型居宅介護は、住み慣れた地域での生活を支える在宅支援の拠点として重要な役割があるため、地域医療に貢献できるというやりがいがあります。
具体的に、地域の医師や訪問看護ステーションなどと連携しながら支援をおこないます。
急性期の病院とは異なる立場で、地域全体の健康を支える存在です。自分の知識や経験が地域に根ざした支援に生かされる実感を得られる点も、働く魅力といえるでしょう。
ワークライフバランスを整えやすい
多くの小規模多機能型居宅介護では、次のような働きやすい環境が整っています。
- 日勤中心のシフト体制のところもある
- 残業も少ない施設が多い
- 育児や家事と両立しやすい
急性期病院に比べて緊急対応の頻度が低いため、心身への負担は少なく、無理のない働き方が可能です。オンオフの切り替えがしやすく、ライフステージに合わせた勤務を希望する看護師にとっても安心です。
「泊まり」「通い」「訪問」など多彩な業務に携われる
小規模多機能型居宅介護の看護師は、通所サービスに加え、宿泊中の見守りや訪問看護にも携わります。異なる形態のケアにかかわるため、対応力や柔軟性が身につきます。
医療処置のスキルを生かしつつ、介護職と協力して生活支援をおこなう場面も多く、幅広い知識と経験を積める点が魅力です。多様な業務を通して成長できる環境は、キャリアアップを目指す看護師にも適しています。
小規模多機能型居宅介護の看護師の大変なところとデメリット
小規模多機能型居宅介護の看護師はやりがいが多い反面、負担を感じる場面もあります。ここでは、実際の業務で感じやすいデメリットについて紹介します。
- 介護業務との兼務が求められることがある
- 医療設備が限られている中での対応が必要
- 看護師1名体制の場面もあり、主体性が問われる
- オンコール体制がある施設もあり、事前確認が重要
これらの課題は、小規模多機能型居宅介護の特性上、看護師が多岐にわたる業務を担うことによって生じます。メリットと合わせて、自身のスキルアップやキャリア形成を考えたうえで検討しましょう。
介護業務との兼務が求められることがある
小規模多機能型居宅介護では、看護業務に加えて、入浴介助や排泄支援、レクリエーションの補助など、介護職と協力して生活支援に携わることがあります。
身体的な負担を感じることもあるかもしれませんが、医療だけでなく生活面も含めて利用者さまを支えられる点は、大きなやりがいにもつながります。介護職との役割分担や連携がしっかりしている施設では、業務バランスも保ちやすくなります。
医療設備が限られている中での対応が必要
病院のような高度な医療設備は整っていないため、利用者さまの急変時などには迅速な判断と的確な対応が求められます。限られた設備の中で行うケアには不安もあるかもしれませんが、その分、日々の観察力や判断力を活かしやすい環境です。
医師や医療機関との連携体制が整っている施設を選ぶことで、安心して業務に取り組むことができます。
看護師1名体制の場面もあり、主体性が問われる
施設によっては看護師が1人体制で勤務する場合があり、緊急時の判断や対応を一人で担う場面もあります。責任の重さを感じることもありますが、その分、看護師としての判断力や対応力が大きく伸ばせる環境ともいえます。
勤務体制やバックアップ体制、情報共有の仕組みが整っている職場であれば、孤独を感じにくく、安心して働くことができます。
オンコール体制がある施設もあり、事前確認が重要
一部の施設では、夜間や休日に緊急時の連絡対応を担うオンコール体制を導入しています。勤務時間外でも呼び出しに備える必要があり、プライベートとのバランスを考える際に重要なポイントです。
オンコールの有無や対応頻度は施設ごとに異なるため、応募時にしっかり確認しておくことが大切です。手当やサポート体制が整っている施設では、無理のない働き方が可能です。
小規模多機能型居宅介護の看護師に向いている人・向いていない人
ここでは、どのような人が小規模多機能型居宅介護の看護師に向いているか、また向いていないのかを詳しく紹介します。
向いている人|利用者とじっくり向き合いチームで協力できる人
小規模多機能型居宅介護、利用者さまと継続的にかかわれる環境です。そのため、一人ひとりの状態や生活背景を把握し、丁寧に向き合える人が適しています。
また、介護職やケアマネジャーなど多職種と連携しながら支援をおこなうため、チームワークを大切にできる姿勢も欠かせません。
向いていない人|変化の多い環境が苦手な人
小規模多機能型居宅介護の現場では、日によって担当業務が変わったり、利用者さまの体調や状況に応じて臨機応変に動いたりする必要があります。
そのため、決まった業務を淡々とこなしたい方や、予期せぬ変化に強いストレスを感じやすい方には、少し負担に感じられる場面があるかもしれません。
また、チームでの連携が多いため、単独作業を好む方には働きにくさを感じることもあります。
ただし、こうした環境は対応力やコミュニケーション力を磨く機会にもなります。経験を積むことで、看護師としてのスキルや視野を大きく広げられるでしょう。
小規模多機能型居宅介護の看護師の求人を探すコツと注意点
小規模多機能型居宅介護の看護師求人を探す際は、施設によって看護師の役割や1日のスケジュールが異なるため、現場の様子を直接確認するのがおすすめです。見学や面接の際に事前に確認しましょう。次のような点を事前にチェックしておくと安心です。
- 医療処置がどの程度あるか
- 介護業務との割合はどうか
- オンコール体制はあるか
- 看護師は何名配置されているか
看護師が複数いれば情報共有しやすく、精神的な負担も軽減されやすいです。ハローワークや転職サイトを活用する際には、これらの情報を確認して比較検討しましょう。自分に合った職場を選ぶことが、長く働き続けるための第一歩です。
小規模多機能居宅介護の看護師についてのよくある質問
ここでは、実際によくある質問をピックアップし、わかりやすく解説します。気になる点の整理に役立ててください。
Q1:小規模多機能居宅介護は看護師がいない場合もありますか?
小規模多機能型居宅介護では、本体事業所に看護職(准看護師・看護師)を1名以上配置する必要がある一方、サテライト型施設では、看護職の配置は必須ではありません。そのため、看護師がいないケースもあります。
Q2:小規模多機能居宅介護の看護師の医療行為はどこまでできますか?
小規模多機能型居宅介護の看護師がおこなう医療行為は、施設の方針や医師との連携体制によって異なります。基本的には、バイタルチェック、服薬管理、軟膏の塗布、血糖測定、インスリン注射などの医療ケアが中心です。
高度な処置や急変対応は困難な環境であるため、必要に応じて医療機関と連携をとります。自分が対応可能な範囲や施設の医療支援体制を事前に確認しておくことが重要です。
小規模多機能型居宅介護の看護師の仕事内容を把握して、自分に合った働き方を見つけよう!
小規模多機能型居宅介護の看護師は、医療ケアだけでなく介護業務や多職種連携にも深く関わります。利用者さま一人ひとりとじっくり向き合えるやりがいがある一方で、業務範囲の広さやオンコール対応など、負担を感じやすい側面もあります。
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<参考サイト・文献>

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