新卒でICU看護師になれる?5つの仕事内容ややりがい、向いている人の特徴

「新卒でICU看護師になれるのかな?」「いきなりICU勤務なんて、自分にできるだろうか」
ICU(集中治療室)は、高度な知識とスキルが必要な場所だからこそ、新卒で飛び込むことに悩む方もいるでしょう。
この記事では、新卒でICU看護師になるための具体的な道筋を示します。ICUの仕事内容、やりがい、向いている人の特徴を解説します。漠然とした不安が自信に変わり、ICU看護師としての最初の一歩を踏み出せるでしょう。
新卒でもICU看護師になれる
新卒でもICU看護師になれます。その理由は、多くの病院が新卒看護師の育成に力を入れており、実際に新卒でICUに配属されるケースも少なくないからです。
とくに、充実した研修プログラムや、プリセプター制度を導入している病院であれば、基礎から専門知識をじっくりと学べるため、安心してICUで働けるでしょう。
新卒でICU看護師になるための心構えとスキル
新卒でICU看護師として活躍するためには、基礎能力に加え、ICUならではの心構えとスキルを身につけておくことが大切です。
- 実習でICUを選ぶ
- 患者さまの変化に気づける観察力を身につける
- 先輩看護師にすぐに報告するコミュニケーション能力を身につける
- オン・オフの切り替えができるようにする
これらの心構えとスキルを学生時代から意識し、実践することで、ICUという特殊な環境でスムーズに順応し、成長できるでしょう。
実習でICUを選ぶ
実習でICUを選ぶことは、ICU看護師になるための重要なステップです。というのも、実際の現場を経験することで、ICUの特殊性を肌で感じられるからです。
たとえば、重症患者さまのケアや医療機器の操作、緊急時の対応などICUならではの状況について学べます。この経験があると、新卒でICU看護師となったときに理想と現実とのギャップを感じにくいでしょう。
患者さまの変化に気づける観察力を身につける
患者さまの変化に気づける観察力は、新卒のICU看護師に不可欠なスキルです。患者さまは状態が変わりやすく、わずかな変化が命にかかわる場合があるからです。
たとえば、心筋梗塞の術後の患者さまは、心電図の波形の変化やバイタルサインの傾向、呼吸の様子などを観察することで、合併症の兆候や容態悪化を早めに察知し、迅速に対応できます。
ただし、新卒で確実に判断するのは難しいため、まずは変化に気づき、先輩看護師に報告することが大切です。
先輩看護師にすぐに報告するコミュニケーション能力を身につける
先輩看護師への速やかな報告は、患者さまに安全な医療を提供するために重要です。ICUでは患者さまの急変が起こりやすく、タイムリーな情報共有が適切な対応につながるからです。
具体的には、バイタルサインに異変を感じたときに「収縮期血圧が70mmHg、脈拍が50回/分に低下して、意識レベルがJCSⅡ-20です。どのように対応すべきでしょうか?」と、先輩看護師に伝え指示を仰ぎましょう。
この迅速な報告こそが、新卒のICU看護師が安全に業務をおこない、成長するための大切な一歩になります。
オン・オフの切り替えができるようにする
ICU看護師の仕事は精神的な負担が大きいため、新卒で長く働くためにはリフレッシュが欠かせません。
実際に、同僚と旅行に出かけたり、好きな映画を観たりしてオン・オフを切り替えている方もいます。心身のバランスを保つことが、質の高いケアにもつながります。
新卒のICU看護師の仕事内容5つ
新卒でICUに配属されると、一般病棟とは異なる業務をおこないます。ここでは、新卒のICU看護師が実際におこなう5つの仕事内容を紹介します。
- 術前術後のケア
- 日常生活のケア
- モニタリング
- 医療機器の操作と管理
- チーム医療での情報共有
いずれも患者さまの命を守り、回復を支えるうえで欠かせない業務です。先輩看護師から指導を受けながら、着実にスキルを習得していきましょう。
術前術後のケア
ICUでは、手術前後の患者さまのケアも重要な役割です。術前には、患者さまやご家族への説明補助や精神的サポート、必要な検査や準備の確認を行います。
術後は、バイタルサインや出血・感染の有無、疼痛の程度などを細かく観察し、急変時には迅速に対応します。人工呼吸器やドレーン、点滴ルートの管理も重要です。
こうした術前術後のサポートを行うことで、患者さまの安全と回復を支えることができます。
日常生活のケア
ICUでは、患者さまの快適さと安全を守るため、清潔保持や生活介助を行います。
清潔ケアでは、清拭や陰部洗浄、おむつ交換などを安全に実施し、感染や皮膚トラブルを予防します。生活介助では、食事、体位変換、座位保持などを行い、褥瘡予防や早期離床をサポートします。
患者さまは、わずかな動きがバイタルサインに影響する可能性があるため、身体を動かして良いのか医師に確認したり、モニターをチェックしたりして安全に実施することが大切です。
モニタリング
ICUの患者さまは、重篤な病状や生命の危機に直面しているケースが多く、継続的なモニタリングが欠かせません。
全身状態を総合的に把握し、わずかな変化から異常を早期に察知して医師へ報告・相談することで、迅速かつ適切な治療を支えます。
医療機器の操作と管理
ICUには人工呼吸器やシリンジポンプ、人工心肺装置など患者さまの命に直結する医療機器が多数あるため、これらの正確な操作と管理は、新卒のICU看護師にとって必須の業務です。
たとえば、人工呼吸器のアラームが鳴った際に、まずは内容を確認し、先輩看護師にすぐに報告します。
最初は難しく感じるかもしれませんが、研修やOJTで少しずつ学び、できることを増やしていくことでスキルを身につけられます。
チーム医療での情報共有
チーム医療における情報共有は、新卒のICU看護師が患者さまにより良いケアを提供するために不可欠なプロセスです。
ICUでは医師や薬剤師、リハビリの専門職など多職種が協力してケアをおこなっています。それぞれの専門的な視点から情報を共有することで、患者さまをサポートできます。
たとえば、カンファレンスで「〇〇さまは夜間に興奮していたようです」と、積極的に共有してみてください。
ほかの専門職の意見を聞き、質問することで、ICU看護師として成長できるだけではなく、ケアプランを考える一員として貢献できるでしょう。
関連記事:ICU看護師とは?向いている人の特徴や仕事内容・平均年収を解説
新卒でICU看護師として働く際の1日の流れ
ここでは、新卒のICU看護師のスケジュールを紹介します。
時間 | 業務内容 |
8:00 | 出勤・情報収集 |
8:30 | 申し送り・朝礼・患者さまの情報や1日のスケジュールを先輩看護師と確認 |
9:00 | バイタルサインの測定、清潔ケア、点滴投与、処置 |
12:00 | 先輩看護師と進捗状況の確認、昼食休憩 |
13:00 | 午後のケア、処置、カンファレンス参加、転棟の対応 |
16:00 | 先輩看護師と申し送り内容の打ち合わせ、申し送り |
16:30 | 看護記録の記載、先輩看護師からの指導 |
17:30 | 退勤 |
新卒看護師は、安全にケアを実施できるよう逐一、先輩看護師やリーダー看護師に報告しながら業務をおこないます。

新卒のICU看護師の給与事情
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、20歳~24歳の看護師の平均年収は427万7,200円(計算式:月収31万5,200円×12か月分+賞与49万4,800円。小数点以下は四捨五入処理)であるため、新卒看護師はこの金額と同じくらいの年収であると考えられます。
ただし、ICUに配属されている場合、危険手当が支給されたり、夜勤回数が多くなり手当が増えたりすることから、年収が高くなる可能性があります。
新卒のICU看護師のやりがい
ICU看護師の仕事は大変なことも多いですが、それ以上にやりがいを感じられる場面があります。ここでは、ICU看護師として働くうえで感じられるやりがいを紹介します。
- 命の最前線で患者さまの回復を支える充実感がある
- 専門知識・技術が身につき自己成長を実感できる
- チーム医療の一員として貢献できる喜びがある
- 患者さまやご家族からの感謝の言葉が励みになる
これらの経験は、看護師としての成長を後押しします。命の尊さを肌で感じ、チームで支え合う喜びは、ICU看護師ならではの魅力となるでしょう
命の最前線で患者さまの回復を支える充実感がある
新卒のICU看護師は、患者さまの回復を支えることにやりがいを感じます。
なぜなら、日本集中治療医学会が「患者1.5人に対して看護師1人以上の配置が望ましい」と推奨しており(法的義務ではなく学会推奨基準)、そのような手厚い看護体制のもとで、重い病気の患者さまに集中的なケアを提供できるからです。
重症の患者さまが元気になっていく姿を間近で見守り、その回復を助けられる喜びは、ほかの病棟ではなかなか味わえない経験です。
手術後に人工呼吸器が外れて自力で呼吸できるようになる瞬間や、救急搬送後に意識が戻り会話できるようになる瞬間に立ち会うと、感動と達成感を得られるでしょう。
専門知識・技術が身につき自己成長を実感できる
ICU看護師として専門知識や高度な技術が身につき、自身の成長を実感できることはやりがいの1つです。
たとえば、入職したばかりの頃「心電図のアラームが鳴ったらどうしよう」と焦っていたのが、先輩に教わり設定や波形の見方を理解できるようになったという成長を実感できます。
このように、着実にスキルアップできる環境が、看護師としての可能性を広げてくれます。
チーム医療の一員として貢献できる喜びがある
チーム医療の一員として貢献できることは、新卒のICU看護師にとって喜びとなります。
たとえば、カンファレンスに参加し、先輩の意見を聞きながら、夜間の不眠や表情の変化といった患者さまの気づきを共有することも大切な貢献です。
多職種と協力し、一丸となって患者さまを支える経験は、新卒看護師としての自信と成長につながるでしょう。
患者さまやご家族からの感謝の言葉が励みになる
患者さまやご家族からの感謝の言葉は、新卒のICU看護師にとって励みです。
意識が回復した患者さまから「あなたが担当で心強かったよ」と声をかけてもらったり、ご家族から「親身に話を聞いてくれたから安心できました」といった言葉をかけてもらえたりすると、やりがいを実感できます。
このような温かい言葉は、新卒のICU看護師の困難を乗り越える原動力となり、喜びと成長につながります。
関連記事:ICU看護師の役割7つ!スケジュールや年収、向いている人の特徴
新卒のICU看護師の大変さ
新卒でICU看護師になることは、やりがいがある一方で、大変さもあります。ここでは、ICU看護師として働くうえで覚悟しておくべき側面を解説します。
- 高度な医療知識と技術の習得が求められる
- 緊張感の高い環境での精神的な負担がある
- 夜勤や長時間勤務の体力的な負担がかかる
- オープンフロアで常に見られているという緊張感がある
それぞれの大変さを知って、入職後に後悔しないようにしましょう。
高度な医療知識と技術の習得が求められる
ICUでは多様な疾患の重症患者さまに対応するため、一般的な病棟よりも幅広い専門知識が必要です。
たとえば、人工呼吸器のアラームで戸惑ったり、急変対応時に何からすべきか迷ったりすることがあるでしょう。多種多様な薬剤の作用や心電図の判読なども、先輩から学び、復習を重ねることで、少しずつ理解が深まります。
最初は大変に感じるかもしれませんが、経験を重ねることで専門性を高め、自信を持って患者さまのケアにあたれるようになります。
緊張感の高い環境での精神的な負担がある
ICUの緊張感は、新卒看護師にとって精神的な負担となることがあります。患者さまの命と向き合い、わずかなミスも許されないプレッシャーがかかりがちです。
たとえば、患者さまの容態が急変し、緊急で処置が始まった際の雰囲気は、新卒の頃はとくに緊張するでしょう。また、患者さまのお看取りに携わるなかで、落ち込むかもしれません。
しかし、先輩や同僚に相談したり、オン・オフの切り替えを意識したりすることで、精神的な負担を軽減し、働き続けられるでしょう。
夜勤や長時間勤務の体力的な負担がかかる
夜勤や長時間勤務による体力的な負担は、新卒のICU看護師が直面する現実的な課題の1つです。一般病棟と比べて、ICUは1か月あたりの夜勤の回数が多くなり、時間外勤務も多くなりやすいからです。
さらに、緊急手術や緊急入院がある場合は、緊張している状況が続くため、体力的な負担に加えて、精神的なきつさが増すでしょう。
オープンフロアで常に見られているという緊張感がある
ICUのオープンフロアは、新卒看護師にとって常に注目されているような緊張感があります。自分の行動や言葉は、ほかのスタッフの目に常に触れるためです。
たとえば、不慣れな手つきで医療機器を操作するときや、ケア中に「間違っていないか」というプレッシャーを感じやすいでしょう。些細なミスも許されないという重圧のため、慣れるまでは手が震えたり、処置に時間がかかったりして、自分の力を出しにくいと感じるかもしれません。
しかし、経験を積むにつれて自信がつき、正確で迅速に行動ができるようになれば、緊張感も成長の糧となるはずです。
新卒でICU看護師に向いている人・向いていない人
新卒でICU看護師を目指すときに「ICUに向いているのだろうか?」と悩むことは自然なことです。ここでは、ICU看護師として活躍できる人と、別の部署の方が向いているかもしれない人の特徴を解説します。自分の性格や看護観と照らし合わせながら、ぜひ参考にしてください。
向いている人の特徴
ICU看護師として活躍できる人は、患者さまの命と真摯に向き合い、常に成長しようとする意欲を持つ方です。
- 責任感が強い
- 学び続ける意欲がある
- 冷静な判断と行動ができる
- 精神的・体力的にタフである
これら特徴がある方は、ICUで自己成長を実感できるでしょう。
向いていない人の特徴
もし次の特徴に当てはまる場合は、ICU以外にも、看護師として活躍できる多様な部署があります。自分の特性に合った環境を選ぶことで、より長く安心して働けるでしょう。
- 急な変化が多い環境に対して負担を感じやすい
- 学び続けるよりも、同じ業務を安定して行うほうが得意
- 精神的負担が大きい環境では疲れやすい
- ストレス解消の方法が見つけにくい
ICUの多忙で緊張感のある環境では、心身の負担が大きくなる可能性があります。別の部署への配属を検討すると、自分の希望に沿った働き方を実現できるでしょう。
新卒看護師向けのICU求人の探し方
新卒でICU看護師になるためには、適切な求人情報を効率的に見つけることが重要です。新卒の育成に力を入れている病院を見つけるためには、いくつかのポイントがあります。
「新卒OK」「未経験者歓迎」の求人を探す
「新卒OK」「未経験者歓迎」の求人を探すことが、ICU看護師を目指す新卒にとって大切です。これらの条件が明記されている求人は、新卒看護師の育成に力を入れている病院である可能性が高いため、入職後に成長できるでしょう。
福利厚生や教育体制を確認する
福利厚生や教育体制を確認することは、長く働き続けるうえで重要です。というのも、ICU看護師の仕事は継続的な学習が必要となるため、病院のサポート体制が充実しているかどうかが、自身の成長に大きく影響するからです。
一例として、新人研修の内容や、専門資格取得への支援制度、育児支援制度などが充実しているかは、重要なチェックポイントです。
新卒のICU看護師についてのよくある質問
新卒でICU看護師として働くうえで気になることや、就職活動において知っておきたいことなど、よくある質問とその答えをまとめました。ここで疑問を解消し、安心して次のステップに進むための参考にしてください。
Q1:新卒でICU看護師になるのは難しいですか?
多くの病院が新卒看護師の教育に力を入れており、ICU配属の実績もあるため、新卒でICU看護師になるのは不可能ではありません。
ただし、一般病棟と比べて、患者さまの重症度が高く専門的な知識やスキルが求められるため、強い意志と学習意欲を持つことが大切です。
Q2:新卒でICU看護師になる際の志望動機を書くコツはありますか?
新卒でICU看護師になる際の志望動機では、ICUへの熱意と看護観を結びつけることが大切です。
興味だけではなく、なぜICUで働きたいのか、ICUでどのように貢献したいのかを具体的に伝えることで、採用担当者に好印象を与えられます。
例文として「患者さまの回復を支えたいという思いがあり、貴院のICUが取り組んでいる早期離床に向けたリハビリに魅力を感じ、貢献したいと考えています」といった目標を盛り込むと良いでしょう。
自身の経験とICUの特徴を結びつけることで、説得力のある志望動機となり、採用への一歩となるはずです。
Q3:新卒のICU看護師は何回くらい夜勤をしますか?
新卒のICU看護師の夜勤回数は、病院や部署の方針、スキルの獲得状況によって変わります。一般的には、月に4~8回程度の夜勤が入ることが多いようです。
ただし、多くの病院では、新卒が安心して慣れるよう入職後3か月くらいは日勤のみとし、その後、ベテランの先輩とマンツーマンの夜勤からスタートします。
このように、新卒看護師が夜勤に慣れていけるようなサポート体制が整っているため、不安を軽減しながら経験を積めるでしょう。
新卒でもICU看護師になれる!大変さを理解してスキルアップしよう
新卒でICU看護師を目指す道は決して平坦ではありません。
それでも、命の現場で患者さまの回復を支え、日々の成長を実感できる経験は、ほかの部署ではなかなか得られない貴重なものです。
もしICUでの経験が「自分には合わない」と感じても、それはキャリアの選択肢を広げるきっかけになります。看護師の働き方は多様であり、あなたの強みを活かせる場は必ずあります。
たとえば、「NsPaceCareer」では訪問看護に特化した求人を紹介しています。地域の患者さまやご家族と深く関わりながら、生活の場で医療を支える訪問看護は、新卒からでも成長を実感できるフィールドです。
ICUで培った観察力や判断力を糧に、理想のキャリアへの第一歩を踏み出しましょう。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。