看護師は衛生管理者になるには?資格取得の条件と2つの仕事内容、年収を紹介

「看護師は衛生管理者になれるの?」「看護師の資格を別の場所で活かしたい」
キャリアについて不安を感じている看護師は少なくありません。この不安を解消する選択肢の1つが「衛生管理者」です。
この記事では、看護師が衛生管理者の資格を取る方法や、資格を持つメリットを紹介します。理想の働き方を見つけ、新しい一歩を踏み出すきっかけにしましょう。
看護師が衛生管理者になるには?受験資格と資格の取り方
実は、看護師も衛生管理者を目指せます。ただし、特定の条件を満たし、試験に合格しなければなりません。ここでは、具体的な受験資格と、資格の取り方など解説します。
- 看護師が衛生管理者を目指すなら「第一種衛生管理者」
- 看護師に必要な受験資格
- 受験の申込みから合格までの流れ
- 試験の概要
- 試験の合格率と難易度
これらのステップに沿って進めることで、看護師としての経験を活かし、新たなキャリアパスを切り開けます。
看護師が衛生管理者を目指すなら「第一種衛生管理者」
衛生管理者には第一種と第二種がありますが、看護師は「第一種衛生管理者」を目指すと良いでしょう。両者の違いを次の表にまとめました。
項目 | 第一種衛生管理者 | 第二種衛生管理者 |
従事できる業種 | すべての業種 | 一部の業種(情報通信業、金融業、小売業など)に限定 |
活躍できる職場例 | 医療機関、製造業、建設業、工場など | IT企業、銀行、デパート、オフィスビルなど |
看護師の受験資格 | 学歴に応じた労働衛生の実務経験があれば受験可能 | 学歴に応じた労働衛生の実務経験があれば受験可能 |
より幅広い職場で活躍できるため、看護師には第一種衛生管理者の資格の取得をおすすめします。
看護師が衛生管理者になるための受験資格
看護師が衛生管理者の試験を受けるためには、労働衛生業務の一定期間の実務経験が必要です。看護師の業務は労働衛生業務とみなされます。最終学歴別に必要な実務経験の年数について、以下の表にまとめました。
最終学歴 | 実務経験の年数 |
大学(短期大学含む)・高等専門学校 | 1年以上 |
高等学校・中等教育学校 | 3年以上 |
中学校 | 10年以上 |
大学を卒業している場合は1年以上の実務経験が必要となるため、看護師2年目以降であれば試験を受けられます。
受験の申込みから合格までの流れ
衛生管理者の試験の申込みから合格までの流れは、いくつかのステップがあります。
流れ | ポイント | |
1 | 受験申請書を用意 | <オンライン申請> 不要 <書面での申請> 「安全衛生技術試験協会」のホームページから取得 |
2 | 受験申請書類を作成 | ・卒業証明書、事業者証明書を準備 ・試験手数料(8,800円)を振込 ・証明写真(2.4cm×3.0cm)を準備 |
3 | 受験に必要な書類を提出 | <オンライン申請> 受付期間は試験日の2か月前から試験日の14日前まで <郵送> 試験日の2か月前から14日前までに申請先のセンター、試験場に簡易書留で郵送 <センター窓口持参> 希望日の2か月前から休業日を除く2日前まで |
4 | 受験票の受取 | <オンライン申請> マイページを確認 <書面での申請> 自宅に届いているか確認 <センター窓口持参> その場での受け取り |
5 | 受験 | 学科試験 |
6 | 試験結果の通知 | 合格の場合は「免許試験合格通知書」、それ以外の場合は「免許試験結果通知書」でお知らせ |
オンライン申請と書類申請で、流れが異なるため、事前に確認しておくと安心です。卒業証明書や事業者証明書は、申請してから手元に届くまで時間がかかるため、早めに取り寄せましょう。
試験の概要
ここでは、試験の概要を紹介します。下記の表にまとめました。
第一種衛生管理者 | 第二種衛生管理者 | |
出題方式 | 五者択一の44問 | 五者択一の30問 |
試験時間 | 3時間 | 3時間 |
試験科目 | ・関係法令(有害業務) ・労働衛生(有害業務) ・関係法令(有害業務以外) ・労働衛生(有害業務以外) ・労働生理 | ・関係法令(有害業務以外) ・労働衛生(有害業務以外) ・労働生理 |
それぞれを確認して、試験の準備を進めましょう。
試験の合格率と難易度
衛生管理者の試験の合格基準は「科目ごとの得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上であること」です。合格率(令和6年度)は、次のとおりです。
- 第一種衛生管理者:46.3%
- 第二種衛生管理者:49.8%
例年50%前後で推移しています。これは、国家資格のなかでは高い傾向であるため、しっかりと準備をすれば合格を目指せる難易度といえます。
看護師が衛生管理者になった際の2つの仕事内容
看護師が衛生管理者の資格を取った場合、おもな業務は「従業員の健康管理」や「職場環境の改善」です。病院よりも企業で活躍しやすい傾向にあります。
たとえば、従業員の定期健康診断の実施計画を立て、受診状況や結果を確認して、異常があった従業員への受診勧奨や保健指導をおこないます。また、長時間労働者への面談や、メンタルヘルス不調者の早期発見・対応も大切な仕事です。
看護師として培った医療知識や判断力が、これらの業務で役立つでしょう。
看護師が衛生管理者として企業で働く際の1日のスケジュール
企業で衛生管理者として働く看護師の1日は、病院勤務とは異なります。一般的なスケジュールの例を紹介します。
時間 | 業務内容 |
8:30 | 出社、メール確認、健康診断結果の整理 |
9:00 | 長時間労働者の面談、産業医との連携 |
10:30 | 職場巡視、安全対策チェック |
12:00 | 昼休憩 |
13:00 | ストレスチェック結果の確認、対応計画 |
15:00 | 衛生委員会の準備、会議資料作成 |
17:00 | 退社 |
このように、デスクワークと面談が中心で、体力的な負担は少なく、ワークライフバランスを取りやすいのが特徴です。

看護師が衛生管理者として働く際の年収
看護師が衛生管理者として働く際の年収は、一般的に350万円~550万円が目安です。
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は519万7,000円です。看護師が衛生管理者として働くケースでは、企業規模によっては病院の看護師の年収以上になる可能性もあります。
とくに、大手企業や上場企業では、衛生管理者に資格手当や役職手当がつくため、年収600万円以上を目指せることもあります。一方、中小企業では手当が月1,000円~3,000円程度にとどまる場合もあるため、企業選びが重要です。
看護師が衛生管理者になるメリット
看護師が衛生管理者の資格を取得すると、多くのメリットがあります。ここでは、具体的な4つのメリットを紹介します。
- 病院以外の働き方を実現できる
- 職場の安全・感染対策のスキルを強化できる
- 職場でのキャリアアップにつながる
- 市場価値が高まり転職に強みになる
臨床経験を活かしつつ、新たな分野で活躍できる道が開けるでしょう。
病院以外の働き方を実現できる
衛生管理者の資格は、病院以外の働き方を実現するきっかけとなります。具体的には、次の職場で活躍できるでしょう。
- 企業:従業員の健康管理、ストレスチェック、健康相談
- 学校:学生や教職員の健康管理、保健指導、感染症対策
- 自治体:地域住民の健康増進、公衆衛生についての指導、啓発活動
これにより、夜勤がない働き方や、土日休みの働き方も選びやすくなり、ワークライフバランスを重視した生活を送れるようになるでしょう。
関連記事:看護師の病院以外の職場・職種20選
職場の安全・感染対策のスキルを強化できる
感染予防や衛生管理についての専門知識を学べるため、職場の安全や感染対策のスキルを強化できます。
一例として、手洗いの徹底のほかに、インフルエンザや新型コロナウイルス対策の計画に携わることもあります。これにより、専門性が高まり、職場で一目置かれる存在になれるでしょう。
職場でのキャリアアップにつながる
衛生管理者の資格は、職場でのキャリアアップに直結します。企業内で健康管理の専門家として、より責任のあるポジションを任される機会が増えるからです。
具体的には、健康管理室のリーダーや衛生管理部門のマネージャーなど、管理職としての道も開けます。さらに重要な役割を担えるでしょう。
市場価値が高まり転職に強みになる
多くの企業が衛生管理者を必要としているため、この資格を持つことで、市場価値が高まり、転職活動においての強みになります。看護師の資格と衛生管理者の資格を両方持っている人材は、企業にとって魅力的です。
たとえば、大手の健康経営推進部門や、産業保健サービスを提供する企業からの求人などが増える可能性があります。
この資格は転職の選択肢を広げ、より良い条件の求人を見つける手助けとなるでしょう。
看護師が衛生管理者の資格を活かして働ける求人の探し方
看護師が衛生管理者の資格を活かせる求人を見つけるには、いくつかの方法があります。適切な探し方を知ることで、希望する職場に出会える可能性が高まります。ここでは、具体的な求人の探し方を紹介します。
- 必要資格や歓迎要件をチェックする
- 求人サイトで「衛生管理者」と入力して検索する
- 「衛生管理者 求人」で検索する
それぞれの方法を見ていきましょう。
必要資格や歓迎要件をチェックする
求人を探す際には、企業が求める人材像を把握するために、まず必要資格や歓迎要件をチェックしてください。
たとえば「看護師資格必須、衛生管理者可」や「保健師・看護師いずれかの資格、産業保健の実務経験3年以上」といった記載に注目しましょう。自分の資格や経験が、求人の条件と合致しているかを確認することで、応募できる求人を絞り込めます。
求人サイトで「衛生管理者」と入力して検索する
求人サイトを活用して「衛生管理者」と入力し、検索をかけてみましょう。
大手求人サイトはもちろん、医療系の専門求人サイトも有効です。検索結果から、自分の希望する勤務地や給与、業種などを絞り込んでいきます。具体的なキーワードで検索することで、効率的に関連性の高い求人を見つけられます。
「衛生管理者 求人」で検索する
検索エンジンで「衛生管理者 求人」と入力して検索するのも有効な方法です。求人サイトに掲載されていない企業の採用情報を見つけられる場合があります。
具体的には「〇〇(企業名) 衛生管理者 採用」のように、企業名を加えて検索するのも良いでしょう。多くの選択肢から、自分に合った職場を見つけるために、積極的に活用してみてください。
看護師資格を活かした病院以外でも役立つ資格
看護師資格は、病院以外でも役立つ多くの資格の基礎となります。専門性を高めることで、キャリアの選択肢がさらに広がるでしょう。衛生管理者以外にも、看護師が取得すると有利な資格をいくつか紹介します。
- 労働衛生コンサルタント
- ケアマネジャー
- 保健師
- 感染管理認定看護師
それぞれの資格の特徴を把握して、自分に合ったものを選んでみてください。
労働衛生コンサルタント
労働衛生コンサルタントは、企業の労働衛生について専門的にアドバイスする厚生労働大臣が認めた国家資格です。衛生管理者の上位の資格といわれています。
衛生管理者が自社の労働環境の改善をおこなう一方で、労働衛生コンサルタントは、企業からの相談に応じ、労働環境の改善を目指します。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、介護が必要な方やその家族をサポートする専門家です。介護保険制度にもとづき、ケアプランを作成し、介護サービスが受けられるように調整します。
病院以外に、訪問看護ステーションや介護施設などで活躍できます。高齢化社会において、ますます需要が高まる資格の1つです。
保健師
保健師は、地域の人々の健康を守る専門家です。保健所や企業、学校などで健康指導や予防接種の推進、健康相談などをおこないます。
病気の治療ではなく、病気の予防に重点を置く仕事であり、地域の健康増進に貢献したいと考える看護師におすすめの資格です。
感染管理認定看護師
感染管理認定看護師は、病院内での感染症の予防と管理に特化した専門家です。
手術室での清潔操作の指導や、MRSAやVREといった耐性菌の発生時の対応策を立てることが仕事です。感染症についての高度な知識を身につけ、医療安全に貢献したい看護師に適しています。
衛生管理者について看護師からのよくある質問
衛生管理者について、看護師からよくある質問とその答えをまとめました。資格取得やキャリアについての疑問を解消し、次のステップに進むための参考にしてください。
Q1:保健師の資格があれば衛生管理者の受験は免除されるんですか?
保健師の資格を持つ方は、衛生管理者試験が免除されます。所定の手続きをおこなうことで、衛生管理者の免許を申請・取得することが可能です。
Q2:看護師は衛生管理者の資格を独学で取得できますか?
独学でも衛生管理者を目指せます。ただし、出題範囲が広く、看護師として働きながら資格の取得を目指す方が多いため、計画的に学習を進めることが重要です。
安全衛生技術試験協会のホームページに過去問が載っているため、うまく活用してみてください。
Q3:衛生管理者の資格取得後のキャリアアップ方法はどのようなものがありますか?
衛生管理者の資格取得後のキャリアアップ方法は多岐にわたります。企業内で健康管理室の責任者になったり、産業保健師として専門性を高めたりできます。将来的には、労働衛生コンサルタントの資格を取得し、独立して企業にアドバイスする道も開けるでしょう。
Q4:労働衛生の業務の経験がなくても衛生管理者の資格取得は目指せますか?
労働衛生の業務が未経験でも、衛生管理者の資格取得は目指せます。ただし、最終学歴によって看護師としての一定期間の実務経験が必要となるため注意してください。
看護師が衛生管理者の資格を取得して活躍の幅を広げよう!
看護師が衛生管理者の資格を取得すると、キャリアの選択肢が広がり、病院だけでなく企業や自治体、学校などの場所でも働けるようになります。
年収アップや待遇改善、ワークライフバランスの向上など多くの魅力がある資格です。
もし、今の働き方を変えたい、新たな分野に挑戦したいと考えているなら、衛生管理者以外にも、看護師の資格を活かせる道はたくさんあります。訪問看護もその1つです。もし訪問看護の分野にも興味があれば、訪問看護の求人サイト「NsPaceCareer」を見てみてください。あなたの活躍の場を広げ、理想の働き方を実現しましょう。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。