看護主任とは?5つの仕事内容や給料、なり方をわかりやすく解説

病棟の中心でチームを支え、看護師と管理職の橋渡し役を担う——それが「看護主任」です。
「リーダーとして現場を回す責任とやりがいを感じたい」「次のキャリアステップを見据えたい」そんな看護師が挑戦するポジション。
本記事では、看護主任の仕事内容・年収・なり方から、やりがいと現実まで、現役主任経験者の声も交えてわかりやすく解説します。
看護主任とは
看護主任とは、看護師の管理職の1つで、看護ケアの質を維持し、看護師と管理職の橋渡し役となる役職です。一般的に、看護師としてのスキルや経験が豊富で、リーダーシップがある看護師歴8~10年の方が任される傾向にあります。
ここでは、看護主任の役割、看護師長や看護師との違いを解説します。
看護主任の役割
看護主任のおもな役割は、看護業務がスムーズに進むようにチームの力を引き出すことです。加えて、後輩指導やスタッフ間の調整役としての役割も重要で、現場の中心的な存在です。
看護師長や看護師との違い
看護主任は、看護師長と看護師の中間の立場で、現場の実務とマネジメントをつなぐ重要な役割を担っています。看護主任と看護師長や看護師との違いをまとめました。
役職 | 役割 | おもな担当業務 |
看護師 | 患者ケアが中心 | ケア業務全般 |
看護主任 | リーダーで看護師の指導や業務調整担当 | 現場の指導・調整やスタッフ育成 |
看護師長 | 部署全体の管理責任者 | 病棟運営や人事・経営面 |
看護師が患者ケアに集中できるよう、チーム内の意見をまとめたり、業務の偏りを調整したりするのも主任の役割です。
関連記事:看護師の役職とは?役職一覧と給与事情、役職に就く3つの基準を解説
看護主任の5つの仕事内容
看護主任は、看護現場の中核として多くの業務を担っています。具体的な仕事内容は次の5つです。
- 看護師の指導・教育
- 勤務表の調整・業務の割り振り
- トラブルやクレーム対応
- 看護師長との連携・報告
- 現場業務
それぞれの業務には、看護主任ならではの視点や工夫が求められます。ここからは、その内容を詳しく解説します。
看護師の指導・教育
看護主任の中心的な仕事の1つが、スタッフの指導と教育です。新人看護師の成長を支えるだけでなく、チームの看護スキルや意識の底上げにもかかわります。
一例としては、複雑な症例のケアの方法を指導したり、対応が難しい患者さまとのコミュニケーション方法をフィードバックしたりします。
さらに、病院全体の研修企画や運営にも携わり、新しい医療技術や特定疾患についての研修を企画・実施することで、看護師が学べる環境を整える責任もあるのです。
勤務表の調整・業務の割り振り
勤務表の作成は、施設や病棟の体制によって異なりますが、看護主任が中心となって作成し、看護師長が承認するという流れが一般的です。
看護主任はスタッフ一人ひとりの勤務希望やスキルレベルなどを把握しており、現場の状況に合わせたシフト調整が可能です。一方で、看護師長は病棟全体の方針や人員配置のバランスを見ながら、勤務表の最終チェックを担当するケースが多く見られます。
また、人工呼吸器の管理やがん性疼痛のケアといった専門的なスキルが必要な場合、スタッフの能力に応じて割り振りを考える際にも看護主任の手腕が問われます。そのような調整力は、看護師の負担やケアの安全性のバランスを保つために欠かせません。
トラブルやクレーム対応
トラブルやクレーム対応も看護主任の仕事です。
実際に、看護師間の意見の対立や、患者さまからの不満の声などに対し、状況を整理し、適切に対応することが求められます。
また、誤薬や転倒といったインシデントが起きた際には、まず何が起こったかを確認し、二度と起こらないように改善策を考えて、部署内に周知することも看護主任の仕事です。
看護師長との連携・報告
看護主任には、現場と看護師長をつなぐ橋渡し役として、報告・連絡・相談を行うことが求められます。次の情報を看護師長に伝えています。
- 看護師の様子
- 患者さまの状態
- 業務上の課題
また、看護師長からの指示や方針を看護師にわかりやすく伝え、会議では現場のリアルな声を代弁し、課題解決に向けた意見を出すことも主任の仕事です。こうした役割を果たすことが、看護師が安心して働ける環境作りには不可欠です。
現場業務
基本的に、看護主任は管理業務をおこないますが、病棟が慌ただしい場合や患者さまの病状が悪化している場合は、迷わず現場に入って看護業務をフォローします。看護師の負担感や患者さまの変化をみることで、的確な判断やサポートが可能になるためです。
たとえば、患者さまの病状が悪化した際には、看護主任がバイタルサインの測定や観察をおこない看護師から報告を聞いたうえで、看護師にアドバイスしたり医師に相談したりします。

看護主任の平均年収
一般的に、看護主任の平均年収は500万~600万円といわれています。
日本看護協会の「2021年看護職員実態調査」によると、中間管理職(看護師長・副看護師長・看護主任)の平均税込み給与総額は43万4,895円です。
この額をもとに計算すると、看護主任の年収は521万8,740円(43万4,895円×12か月)と想定されます。ただし、中間管理職には看護師長が含まれていることや、地域や病院の規模によって実際の年収が変わることがあるため注意が必要です。
看護主任になるには?必要な経験と資格
看護主任を目指すには、経験だけでなく特定の資格も役立ちます。
- 看護主任になる経験年数の目安は8年~10年
- 昇進のプロセス
- 認定看護管理者資格があると有利
看護主任になるためには、どのような準備が必要なのかを確認しておきましょう。
看護主任になる経験年数の目安は8年~10年
看護主任になるための経験年数は、一般的に8年~10年程度が目安とされています。現場のあらゆる状況に対応できる幅広い知識と、リーダーシップが必要だからです。
まずは、数年間臨床で経験を積み、一人前の看護師として自立することが求められます。その後、チームリーダーや後輩看護師の育成を経験し、スキルを磨くことで、主任として活躍できる土台ができます。
病院によっては、昇進のための基準や試験を設けている場合もあるため、事前に確認しておくと看護主任への道筋がはっきりするでしょう。
昇進のプロセス
看護主任への昇進プロセスは、病院によってさまざまですが、一般的にはいくつかのステップを踏みます。
- 看護師として経験を積む
- 部署内でリーダー的な役割を担う
- 看護師長からの推薦・看護師長に申し出る
- 面接や論文、昇進試験などを受ける
- 看護主任に任命される
勤務態度やチームへの貢献度も看護主任に昇格する評価の対象となるため、日頃から意識して業務に取り組むことが大切です。地道な努力と実績の積み重ねが、昇進への道を切り開きます。
関連記事:主任看護師の目標管理シートの書き方と例文4つ!看護スタッフとの違い
認定看護管理者資格があると有利
認定看護管理者資格は、看護管理の専門知識や実践能力があることを証明するため、看護主任を目指す際に強みになります。資格を取るためには、5年間の実務経験に加え、次のいずれかの条件を満たし、認定審査に合格する必要があります。
- 認定看護管理者教育課程(ファーストレベル、セカンドレベル、サードレベル)を修了
- 看護管理に関連する修士以上の学位を取得
この資格を持つことで、管理職としての資質が認められます。さらに、看護主任だけではなく、看護師長や看護部長への昇進のチャンスが広がったり、条件の良い病院への転職に役立ったりするでしょう。
看護主任のやりがいと大変さ
看護主任の仕事は、やりがいがある一方で、大変さもあります。この両方を理解しておくことが看護主任を目指すために大切です。
看護主任のやりがい
看護主任の仕事には、多くのやりがいがあります。スキルアップはもちろんのこと、チーム全体を支え、より良い医療現場を築き上げる手応えを感じられるでしょう。
- 後輩の育成に貢献できる
- チームを動かす達成感
- 現場と管理をつなぐ存在
患者さまだけでなく、看護師や組織の成長に貢献できるのが主任のやりがいといえます。リーダーシップを発揮することで充実感を得られるはずです。
看護主任の大変なこと
やりがいがある一方で、看護主任には特有の大変さもあります。リーダーとしての責任と、現場と管理職の間に立つという立場からプレッシャーが生じがちです。
- 看護師と看護師長からの板挟み
- スタッフ間の人間関係の調整
- トラブル対応のプレッシャー
これらの困難を乗り越えることで、看護主任として、より信頼される存在にステップアップできる機会にもなります。
看護主任に向いている人の特徴
看護主任として活躍するには、チームをまとめ、多様な課題に対応するための特定の資質が必要になります。具体的には、次の特徴がある人が看護主任に向いています。
- リーダーシップがある
- 冷静な判断力がある
- コミュニケーション力が高い
- 現場と管理、両方の視点を持てる
これらの資質があると、現場の課題を把握し、スタッフの能力を引き出しながら、質の高いケアを提供できます。
リーダーシップがある
チームの目標達成に向けて看護師を導き、モチベーションを高めなければならないため、看護主任にとって、リーダーシップは重要な資質の1つです。
困難な状況に直面したときでも、率先して行動し、チームを前向きな方向に引っ張る力が求められます。たとえば、若手看護師が壁にぶつかっているときには、ただ指示するのではなく、一緒に解決策を考え、成長を促すようなアドバイスを送ります。
看護師の意見に耳を傾け、サポートすることでリーダーとして信頼されるでしょう。
冷静な判断力がある
どのような状況でも冷静に判断できる力は、看護主任にとって不可欠な能力です。医療現場では予期せぬ事態が発生しやすく、的確な対応が求められるためです。
実際に、患者さまの容態が急変したり、医療機器のトラブルが起こったりした際には、最善の行動を選択する必要があります。また、スタッフ間の意見の対立や、業務上の問題が発生した際にも、感情的にならず解決策を見出すことが大切です。
コミュニケーション力が高い
看護主任には、看護師やほかの医療スタッフ、患者さまなど、さまざまな人と関係を築かなければならないため、高いコミュニケーション力が必要です。
具体的には、看護師の意見や悩みを聞きフィードバックすることで、チーム内の信頼関係を深めます。また、患者さまやご家族に対しては、専門用語を避け、わかりやすい言葉で説明することで安心感を与えます。
コミュニケーション力は、チームのパフォーマンス向上と質の高い医療提供に直結するため重要です。
現場と管理、両方の視点を持てる
看護主任には、現場と管理、両方の視点を持つことが求められます。現場の状況を理解しつつ、病院全体の目標や方針を踏まえて判断する力が必要です。
一例として、現場の看護師が「人手が足りないからすぐに増やしてほしい」と要望したとします。このとき、看護主任は上司に増員をただ要求するのではなく、病院の経営状況や予算、ほかの部署との人員配置のバランスも考慮して提案しなければなりません。
あるいは、残業が多い現状に対して「業務フローを見直すことで負担を軽減できないか」といった現場の負担軽減と、病院の経営効率を両立させる改善策の提案が求められます。
この2つの視点を持つことで、看護主任は現場の課題を解決しながら、同時に組織全体の発展に貢献できるようになるのです。
看護主任からキャリアアップするには?
看護主任としてさらにキャリアアップするためには、計画的な学習と行動が不可欠です。
- 主任から師長へのステップ
- 研修・認定制度
- 病院以外のキャリア
これらの選択肢を検討する際には、専門分野や将来の目標を明らかにして計画を立てることが成功へのカギです。情報収集をおこない、最適なキャリアパスを見つけましょう。
主任から師長へのステップ
看護主任から看護師長へのステップアップは、部署全体のマネジメントや病院経営への関与など、より広範な業務を担うことになるため、キャリアの大きな節目となります。
看護師長になるためには、看護主任として現場での実績はもちろん、病院の経営方針を理解したり、人材育成の知識を深めたりする必要があります。また、外部の研修に参加して管理能力を磨くことが、昇進への後押しとなるでしょう。
研修・認定制度
看護主任としてのスキルアップには、さまざまな研修や認定制度の活用が有効です。
認定看護管理者教育課程のほかに、地域看護協会が主催するリーダーシップ研修や認定看護師制度など多種多様な学びの機会があります。
これらの制度を積極的に利用し、キャリアプランに合った学習を進めることが重要です。
病院以外のキャリア
看護主任として培った管理能力や教育スキル、コミュニケーション能力などのスキルは、病院以外の場所でも活かせます。たとえば、次のような場所で活躍できるでしょう。
- 訪問看護ステーションの管理職
- 企業の健康管理室の管理職
- 看護学校の教員
これまでの経験を活かしてキャリアを築くことも可能です。多様な選択肢から、自分の興味や目標に合った道を探してみるのも良いでしょう。
看護主任についてのよくある質問
看護主任を目指す方からのよくある質問をまとめました。看護主任への理解を深めていきましょう
Q1:看護主任になるには試験があるの?
看護主任になるための試験の有無は、病院によって異なります。
たとえば、ある病院では、筆記試験や面接、論文提出などを課す場合があります。一方で、別の病院では、実績や勤務態度、看護師長からの推薦が重視され、試験がないケースも珍しくありません。
勤務先の病院の人事規定や昇進制度を確認し、それに合わせた準備を進めることが看護主任になる第一歩です。
Q2:看護主任と副看護師長の違いは?
看護主任と副看護師長は、どちらも管理職であり、一般的には役割が似ていますが、詳細は施設ごとに異なります。
現場のリーダーとしてスタッフの指導や業務調整をおこなったり、看護師長の補佐として部署全体の運営や管理業務にかかわったりします。勤務先の病院の組織図や職務規定を確認して、具体的な役割を把握しましょう。
Q3:看護主任は夜勤がある?
看護主任が夜勤をおこなうかどうかは、病院の方針や部署の状況によって異なります。
看護主任も一般のスタッフと同様に夜勤を担当することがある一方で、日勤業務に専念するケースもあります。夜勤の有無は年収に影響するため、事前に確認しておくと安心です。
Q4:40代からでも看護主任になれる?
40代からでも看護主任になることは十分に可能です。看護主任には、豊富な臨床経験と人間性が特に求められるため、年齢は大きな障壁にならないでしょう。
実際に、40代以降で看護主任に昇進するケースも少なくありません。経験を活かし、積極的に学ぶ姿勢があれば、年齢に関係なく看護主任を目指せます。
看護主任は現場と管理をつなぐ重要な役割
看護主任は、病院組織において現場と管理層をつなぐ、重要な役割を担っています。日々の業務調整からスタッフ育成、トラブル対応などをおこない、質の高いケア提供に貢献しています。
看護主任は、看護師としてのキャリアアップを目指すうえで魅力的な選択肢といえるでしょう。
ただし、看護主任のポジションは、病院によって仕事内容や求められるスキルが異なり「自分には合わない」と感じる方もいるでしょう。自分に合った職場や役割を見つけるためには、訪問看護に特化した求人サイトの活用が有効です。
「NsPaceCareer」では、訪問看護の求人に特化しているため、看護主任としてスキルアップを目指せる魅力的な職場を見つけやすいでしょう。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。