急性期とは?看護師の仕事内容や給料事情、3つの大切なことを解説

急性期という言葉を耳にしても「具体的にどのようなケアをするの?」「私に務まるのか不安…」と不安を感じる看護師はいらっしゃいませんか。
急性期は、患者さまの命にかかわる状況が多く、精神的・体力的な負担が大きいというイメージを持つ方もいます。
この記事では、急性期看護についての疑問や不安を解消します。急性期とは何かという基本的なことから、看護師の仕事内容や給料事情、そして働くために大切なことまで解説します。急性期看護の全体像がわかり、現場で働くイメージを描けるようになるでしょう。
急性期とは「不安定な病状から治療により安定した状態になるまでの時期」
急性期とは、病気やケガの発症で不安定な病状から治療により安定した状態になるまでの期間を指します。集中的な治療やケアが必要となるため重要な期間です。
- 急性期の患者さまの特徴
- 急性期の入院期間
- 医療制度・診療報酬での「急性期」の位置づけ
- 急性期と回復期や慢性期との違い
回復期や慢性期との比較をおこなうことで、急性期の医療にある特性と重要性を理解できるでしょう。
急性期の患者さまの特徴
急性期の患者さまは、病状が急激に変化する恐れがあるため、状態のわずかな悪化も見逃さないことが不可欠です。たとえば、次の病気がある患者さまが入院しています。
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 消化管穿孔
- 重症感染症
バイタルサインが不安定であったり、意識レベルの変化が見られたりする患者さまが多いため、細やかな観察と、異変を察知した際の素早い判断が重要です。
急性期の入院期間
急性期の患者さまが入院する期間は、病院の制度によって少しずつ違います。平均すると次のようになっています。
入院料 | 平均在院日数 |
急性期一般入院料1 | 11.83日 |
急性期一般入院料2~3 | 14.18日 |
急性期一般入院料4~6 | 15.80日 |
一方で、地域包括ケア病棟では平均27.66日、回復期リハビリテーション病棟では平均66.65日と、急性期よりも長い入院期間になっています。さらに診療報酬改定後、急性期一般入院料1の平均在院日数要件は16日以内へ変更になっています。これは、急性期では病状が重くても短期間で集中して治療をおこない、安定したらすぐに回復期や慢性期に移るからです。
たいてい、手術後や救急搬送された患者さまは、状態が良くなればすぐに退院したり、転院したりします。
医療制度・診療報酬での「急性期」の位置づけ
医療制度や診療報酬において、急性期は手厚く評価されています。急性期の医療が患者さまの生命予後を左右する段階といえるからです。
集中的な治療やケアに費用がかかる分、診療報酬も高めに設定されています。また、患者さまの状態に迅速に対応できるように、看護師の配置人数も厳しく定められています。
急性期と回復期や慢性期との違い
急性期と回復期、慢性期は患者さまの病状と医療の目的によって区別されます。
病期 | 患者さまの特徴 | ケア |
急性期 | ・病状が不安定 ・集中的な治療が必要 ・急な容態変化が多い | ・バイタルサインの測定と異常の早期発見 ・迅速な急変対応と医師への報告 ・患者さまやご家族の精神的サポート |
回復期 | ・病状が安定し、機能回復を目指す時期 ・リハビリテーションが中心 ・日常生活動作の改善が目標 | ・リハビリテーションのサポート ・日常生活動作の自立に向けた援助 ・退院後の生活を見据えた指導や調整 |
慢性期 | ・病状が安定し、長期的な療養が必要 ・疾患と生活の両立が目標 ・症状の緩和や合併症の予防が重要 | ・服薬管理や症状の観察、合併症の予防 ・日常生活動作の援助と生活の質向上 ・患者さまやご家族の精神的・社会的なサポート |
それぞれの期間で、看護師に求められる役割も異なるため、特性を理解することが大切です。
急性期の看護師の仕事内容
急性期の看護師の仕事は、患者さまの命を守り、回復を支援するために多岐にわたります。高い専門性と迅速な判断力が求められるため、やりがいを感じる場面も多いのが特徴です。
観察・処置・急変対応などの具体的業務
急性期では、看護師が患者さまのバイタルサインの測定や身体状況の観察をおこない、異常の早期発見に努めることが大切です。
術後の患者さまには、動脈ラインの挿入や心電図モニターの装着などをおこない、24時間リアルタイムで状態を測定できるようにすることがあります。また、状態が安定するまでは、顔色の観察や呼吸音の聴取を繰り返し、異常があればすぐに医師へ報告します。
これらの業務は、患者さまの生命を守るために不可欠です。
1日のスケジュール
急性期病棟で働く看護師の1日は、患者さまの状態によって変わります。突発的な対応が発生することが多く、定期的な業務だけでなく、臨機応変な対応も必要だからです。
日勤は申し送りから始まり、清潔ケアや処置、記録などをおこないます。ただし、緊急入院や急変があった場合は、その対応が最優先となります。急性期の看護師には、予測不能な状況に柔軟に対応する力が求められます。

急性期の看護師の給料事情
急性期の看護師の給料は、ほかの病棟と比較して高い傾向にあります。夜勤の回数が多く、時間外勤務が増えやすいためです。
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は519万7,000円です。東京都を例にすると568.9万円と地域差も大きく、都市部では夜勤や地域手当で高水準です急性期で働く場合は、これに夜勤手当や時間外勤務手当などがプラスされるため、さらに年収が高くなると考えられます。
急性期看護での大切なこと
急性期看護では、患者さまの命にかかわる状況が多いため、高いスキルと心構えが求められます。
- 的確なアセスメント
- チーム医療での連携
- 短時間で患者さまやご家族との信頼関係を築くスキル
それぞれを詳しく見ていきましょう。
的確なアセスメント
患者さまの容態は刻一刻と変化するため、的確なアセスメントは急性期看護の基本です。わずかな変化も見逃さず、迅速に判断することが、患者さまの命を救うことにつながります。
たとえば、バイタルサインだけではなく、患者さまの訴えや表情、検査データなどの情報を集め「どのような状態にあるのか」「病状が悪くなる兆候はないのか」を判断する必要があります。
高いアセスメント能力は、急性期の看護師にとって重要なスキルの1つといえるでしょう。
チーム医療での連携
急性期の現場では、医師や薬剤師、理学療法士、管理栄養士など、さまざまな職種が連携して治療にあたります。
たとえば、脳梗塞で入院した患者さまの場合、医師が治療方針を決め、看護師がバイタルサインの測定やケアをおこない、薬剤師が薬の効果や副作用を確認します。さらに、理学療法士が早期からのリハビリテーションを担当し、管理栄養士が嚥下状態に配慮した食事を提案するなど、それぞれが専門性を活かしてかかわることが重要です。
患者さまの情報をチームで共有し、役割分担を明らかにすることで、スムーズな対応が可能です。こうした円滑なコミュニケーションが、患者さまにとって最善のケアにつながります。
短時間で患者さまやご家族との信頼関係を築くスキル
患者さまやご家族は、突然の病気やケガで不安を感じているため、気持ちに寄り添い、信頼関係を築くことが安心した治療につながります。
専門用語は使わずに現状や今後の見通しを説明したり、患者さまやご家族の言葉に耳を傾け不安や思いを受け止めたりすることが挙げられます。
短期間で良好な人間関係を築くスキルは、急性期看護において患者さま中心のケアを提供するために不可欠です。
関連記事:急性期看護とは?大切な3つのことや急性期看護のやりがいを紹介
急性期看護のやりがい
急性期看護は厳しい環境ですが、その分やりがいを感じられる仕事です。
- 患者さまの命を支える現場で達成感を得られる
- 多様な疾患や治療を学べる
- 教育体制が整っている
患者さまの回復に貢献できることは、大きな自信と誇りとなるでしょう。
患者さまの命を支える現場で達成感を得られる
急性期の現場は、患者さまの回復に貢献できたときに達成感を得られます。
患者さまの容体が安定したり、困難な状況を乗り越えて患者さまが退院したりする姿を間近で見ることは、かけがえのない喜びとなります。
多様な疾患や治療を学べる
急性期病棟には、心筋梗塞や脳出血、肺炎、手術後の合併症など、さまざまな疾患の患者さまが入院しています。そのため、幅広い知識と技術を自然と身につけられます。
たとえば、循環器疾患ではモニター管理や心電図の読み取り、呼吸器疾患では酸素療法や吸引の技術、消化器ではドレーン管理や輸液の観察など各領域で専門的なケアを学べます。
このように多様なケースに対応することで、看護師としての経験値が上がり、自信にもつながります。
教育体制が整っている
急性期看護には高度な専門性が必要であり、安全な医療を提供できるように教育体制が充実しています。
たとえば、経験豊富な先輩からのOJTや、専門性を高めるための院内研修、資格取得の支援などが手厚くおこなわれています。そのため、急性期は、キャリアを積んでいきたいと考える看護師にとって学びやすい環境です。
急性期看護の大変なこと
急性期看護にはやりがいがある一方で、大変な側面もあります。
- 担当する患者さまが多い
- 精神的なプレッシャーが強い
- 体力的な負担が大きい
- 人間関係が難しい
- インシデントのリスクが高い現場での責任が重い
- 時間外や休日での勉強会や研修が多い
転職後に後悔しないように、あらかじめこれらの情報を押さえておきましょう。
担当する患者さまが多い
急性期病棟では、病状が不安定な患者さまが多く、一人ひとりに手厚いケアが必要です。しかし、限られた看護師で多くの患者さまを担当するため、業務量が多くなります。
複数の患者さまのバイタルサインの測定や点滴管理、身体介助などを並行しておこない、さらに急変対応も加わるため、時間に追われる感覚を抱くこともあります。
精神的なプレッシャーが強い
患者さまの命にかかわる場面が多いため、精神的なプレッシャーは大きくなりがちです。
緊急性の高い状況での迅速な判断や、患者さまの容体悪化に対する責任感など、重いプレッシャーを感じることがあります。
体力的な負担が大きい
急性期は、体力的にきついと感じる場面が多い現状です。患者さまが病状により動けない場合があるため、体位変換や移乗介助といった身体を使う業務を繰り返しおこなわなければなりません。
重症患者さまの体位変換を1人でおこなったり、夜間に急変対応で走り回ったりすることもあります。
人間関係が難しい
急性期の現場ではチーム医療が欠かせませんが、その分、意見の食い違いやすれ違いから人間関係で悩むこともあります。
たとえば、医師が急変対応の優先順位を決めているときに、看護師がその判断に疑問を持って意見を伝えたものの、うまく意思疎通ができずに摩擦が生じる場合があります。また、リハビリスタッフとの間で患者さまのケア計画について認識が違い、調整が難しくなることもあるかもしれません。
こうした状況では、お互いの立場や意見を尊重し、話し合いを重ねることが人間関係を円滑にするカギです。
インシデントのリスクが高い現場での責任が重い
急性期の現場では、患者さまの容態が急変することが多く、迅速かつ正確な判断が必要です。そのため、ミスが起きるリスクも高くなります。
例として、ショック状態の患者さまに投与するノルアドレナリンの量を間違えると、血圧が急激に変動して命にかかわる恐れがあります。また、心停止の緊急対応中に酸素投与の手順を飛ばしてしまうと、患者さまの状態悪化を招くかもしれません。
こうしたリスクがあるため、看護師には高い注意力と責任感が求められます。ミスを防ぐためのダブルチェックやチーム内での連携も重要です。
時間外や休日での勉強会や研修が多い
専門性の高い知識やスキルが求められるため、勤務時間外や休日に勉強会や研修に参加する機会が多くなりがちです。
新しい治療法や医療機器についての勉強会、認定看護師や専門看護師を目指すための研修などに、自身の時間を使って参加することが求められる場合もあります。
急性期の看護師に向いている人の特徴
急性期の看護師には、高い専門性と迅速な対応が求められるため、次の資質がある方は活躍しやすい環境です。
- 体力に自信がある人
- マルチタスクが得意で臨機応変に動ける人
- 観察力と判断力がある人
- 緊張感を前向きに捉えられる人
- 学ぶ意欲が高い人
これらの特徴に当てはまる方は、急性期の現場でやりがいを感じ、看護師として成長を遂げられるでしょう。
急性期の看護師におすすめの資格
急性期の看護師としてさらに専門性を高めたい場合、次のような資格がおすすめです。
クリティカルケア認定看護師
クリティカルケア認定看護師は、集中治療室(ICU)や救命救急センターなどで、生命の危機的状況にある患者さまに高度なケアを提供する専門家です。
たとえば、人工呼吸器を装着している患者さまや、多臓器不全の患者さまに対し、専門的なケアを提供できます。そのため、専門性を高めたい看護師にとって、強みとなる資格です。
急性・重症患者看護専門看護師
急性・重症患者看護専門看護師は、複雑な病態を持つ急性期の患者さまに対して、水準の高い看護を実践し、多職種と連携しながらケアを調整する専門家です。
生命倫理にかかわる難しい意思決定の場面で、患者さまやご家族の意向を尊重し、精神的なサポートを提供できます。高度なレベルでケアを実践し、チーム医療に貢献したいと考える看護師におすすめの資格です。
関連記事:看護師で急性期病棟の経験なしでも急性期病棟で働ける理由4つ!向き不向きも解説
急性期の看護についてのよくある質問
急性期の看護についてのよくある質問をまとめました。回答例を参考にして、実践の場で役立ててください。
Q1:急性期病棟では未経験でも働けますか?
未経験でも急性期病棟で働くことは可能です。多くの病院で新人看護師向けの教育プログラムがあり、専門性の高いケアを学べる環境が整っているからです。
プリセプター制度や定期的な研修を通じて、基礎から実践的なスキルまで段階的に習得できます。
Q2:急性期病棟の夜勤は何回くらいありますか?
急性期病棟の夜勤回数は、病院や勤務形態によって異なりますが、一般的には月に4回から8回程度が多いようです。
病院によっては、2交代制や3交代制、夜勤専従や変則勤務など、多様な働き方を提供しているところもあります。ご自身のライフスタイルに合った職場を選ぶことが大切です。
Q3:急性期病棟を経験するのに最適な時期はいつ頃ですか?
急性期病棟を経験するのに最適な時期は、一概にはいえません。
若いうちに経験することで、幅広い疾患や病態を学び、基礎を築けるという考え方がある一方で、ある程度の臨床経験を積んでから、専門的な知識を深めるために急性期に挑戦する人もいます。
自身のキャリアプランや学びたい内容によって、最適な時期は異なります。
急性期の看護はハードだけど成長できる場所!
急性期の看護は、患者さまの命と向き合う責任の重い仕事であるため、体力的な負担や精神的なプレッシャーも大きいと感じるかもしれません。
しかし、その分、患者さまの回復を間近で支える達成感や、多様な疾患や治療を通して看護師として成長できるといった、やりがいを感じられる場所でもあります。
高い専門性を身につけたい方や、患者さまの命を救う現場で活躍したいと考える看護師にとって、急性期はキャリアを広げられる選択肢です。
一方で、急性期の働き方が合わない、向いていないと感じる方は訪問看護もおすすめです。訪問看護では、これまでの経験を活かして、利用者さま一人ひとりにじっくりケアができます。
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<参考サイト・文献>

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