看護師の夜勤は何歳まで続けられる?つらいときの3つの選択肢とキャリア

「体力的に夜勤がつらくなってきた」「何歳まで夜勤を続けるべきか悩んでいる」
看護師として夜勤を続けていると、年齢を重ねるにつれて体力的・精神的な負担を感じる方も多いでしょう。一方で、夜勤手当による収入面のメリットもあり、いつまで続けるべきか判断に迷う看護師も少なくありません。
この記事では、年代別での夜勤との向き合い方、夜勤がきついと感じたときの選択肢について解説します。自分にとって最適な夜勤との向き合い方を見つけて、これからも自信を持って看護師として長く活躍するための第一歩が踏み出せます。
看護師の夜勤に年齢制限はない
実は、夜勤には年齢制限はなく、何歳でも働くことは可能です。ただし、続けられるかどうかは人それぞれです。ここでは、次の3つのポイントについて解説します。
- 法律上、夜勤に年齢制限はない
- 夜勤が原因で退職する看護師は20歳〜30歳代に多い
- 年齢・体力・家庭状況によって続け方は異なる
それぞれ見ていきましょう。
法律上、夜勤に年齢制限はない
労働基準法により18歳未満の深夜業が制限されますが「何歳まで」という上限は存在しません。つまり、病院が雇用を続ける限り、何歳でも夜勤をすることが可能です。
看護師個人の体力や健康状態、家庭の事情などから判断し、それぞれが夜勤を続けるかどうかを決めています。
夜勤が原因で退職する看護師は20歳〜30歳代に多い
夜勤が原因で辞める看護師は、25歳~34歳の若い世代に多い傾向があります。日本看護協会の「2023年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書」によると「夜勤の負担が大きいため」という理由が若い世代の看護師のランキング上位に挙がっています。
退職したいと考える理由に「夜勤の負担が大きいため」を選んだ看護師の順位
全体 | 第8位 | 5.8% |
24歳以下 | 第6位 | 11.0% |
25~29歳 | 第3位 | 11.6% |
30~34歳 | 第4位 | 12.7% |
35~39歳 | 第10位 | 6.3% |
40~44歳 | 第10位 | 5.7% |
45~49歳 | 第16位 | 4.1% |
50~54歳 | 第8位 | 5.7% |
55~59歳 | 第10位 | 4.5% |
60歳以上 | 第19位 | 2.2% |
一方で、35歳以降の看護師では「夜勤の負担」が上位にランクインしていません。このデータより「夜勤がつらい」と感じる看護師の多くが、35歳までに夜勤の少ない働き方を検討していることがわかります。
年齢・体力・家庭状況によって続け方は異なる
夜勤を続ける期間に正解はありません。個人の体力や健康状態、家庭の状況、希望年収などを総合的に考えて決めることが大切です。
年齢を重ねても夜勤を続ける看護師もいれば、若いころから日勤のみの働き方を選ぶ看護師もいます。自身の状況を客観的に判断し、無理のない働き方を選択しましょう。
年代別・看護師が夜勤と向き合うポイント
ここからは、20代から50代以降まで、それぞれの年代における夜勤との向き合い方について解説します。
- 20〜30代:夜勤で経験を積む時期
- 40代:家庭や体力を考えた働き方を意識する時期
- 50代以降:夜勤を見直すタイミング
なお、家庭環境や体力はそれぞれ違います。実際には、自身の状況に合わせて考えてみてください。
20〜30代:夜勤で経験を積む時期
20代から30代前半は、夜勤をこなすことで経験を積める時期です。この時期に培った夜勤の経験は、将来的に管理職や専門職を目指す際の土台となります。
夜勤では「主治医が不在中の急変対応」「少人数チームでの連携」など、日勤では経験できない場面に遭遇します。これらの経験は、看護師としての判断力や対応力を向上させる機会にもなります。
また、30代は結婚や出産、子育てなど、家庭の事情も重なりやすくなる時期です。早い段階で理想のライフスタイルと夜勤のバランスを考えておきましょう。
40代:家庭や体力を考えた働き方を意識する時期
40代になると、20代のころと比べて体力の回復に時間がかかるようになり、夜勤明けの疲労感が翌日まで残る看護師もいます。
家庭面でも責任が重くなり「子どもの受験のサポート」「親の通院の付き添い」など、平日の日中にしかできない用事が増えます。夜勤と家庭の両立が難しくなる年代といえるでしょう。
40代の看護師は、働き方の見直しを検討する人が多くなります。転職を考えたり、夜勤のない部署への異動を希望したりするケースも増えてきます。無理をせず、自分と家族の状況に合った働き方を見つけることが重要です。
50代以降:夜勤を見直すタイミング
50代以降は、病棟の師長や看護部での教育担当など、指導的なポジションで活躍する道が開ける看護師も増えてきます。
また「血圧や血糖値が気になり始めた」「親の介護で平日の時間が必要になった」など、健康面・家庭面でも変化が現れやすい時期です。そのため、夜勤のある働き方を見直すタイミングともいえます。
夜勤を減らすと手当がなくなりますが、昇給や役職手当の加算など、経験や役職により収入面の影響を抑えられるケースもあります。健康を意識して、長期的な視点で働き方を選ぶことが、看護師として長く活躍できるコツです。
看護師が夜勤を続けるメリット
年齢を重ねても夜勤を続ける看護師が存在する理由には、次のメリットがあります。
- 夜勤手当で年収アップが期待できる
- 日中の時間を活用できる
- 経験値が高まりスキルアップにつながる
ここからは、夜勤を続けるメリットについて見ていきましょう。

夜勤手当で年収アップが期待できる
夜勤を続けるメリットのひとつとして、夜勤手当による収入増加が挙げられます。
日本看護協会「2023年病院看護実態調査報告書」によると、平日夜勤1回あたりの夜勤手当額の平均は次のとおりです。
勤務形態 | 夜勤手当額 |
3交代制(準夜勤) | 4,234円 |
3交代制(深夜勤) | 5,199円 |
2交代制(夜勤) | 1万1,368円 |
たとえば、2交代制で月に4回夜勤をすれば、夜勤手当は合計で約4万5,000円になります。年間では54万円ほどの収入アップが見込めます。
日中の時間を活用できる
平日の昼間の時間を有効活用できることも、夜勤のメリットです。
「市役所での手続き」「子どもの習い事の送迎」など、平日昼間に対応したい用事を無理なくこなせます。また、平日に旅行やレジャーを楽しめることも魅力です。人気のテーマパークや観光地、ショッピングモールなども平日なら空いているところが多く、ゆっくりと満喫できるでしょう。
経験値が高まりスキルアップにつながる
夜勤で培ったスキルは、将来的に主任や師長などの管理職を目指す際のアピールポイントとなります。
たとえば、深夜に患者さまが転倒した際は、次のように一連の対応を主体的におこなう必要があります。
- ケガの状態を素早く判断
- 医師への連絡
- 検査オーダーの確認・対応
- 家族への連絡
- 報告書の作成
このような経験を重ねることで「状況を冷静に分析する力」「優先順位を判断する力」が身につけられます。
関連記事:看護師の夜勤の働き方とは?勤務体制やメリット・デメリットを解説
看護師が夜勤を続けるデメリット
夜勤にはメリットがある一方で、年齢を重ねるにつれてデメリットも無視できなくなってきます。
- 年齢とともに体力の消耗が激しくなる
- 健康リスクが高まる
- 家庭やプライベートとの両立が難しくなる
とくに「夜勤がつらい」と感じている看護師にとって、夜勤を継続することによる身体的・精神的な負担は、深刻な問題となります。
年齢とともに体力の消耗が激しくなる
年齢を重ねると、夜勤による体力の消耗が若いころと比べて激しくなりがちです。
睡眠の質が低下し、夜勤明けの仮眠では十分な休息を取りにくくなります。深い眠りに入れなかったり、途中で目が覚めやすくなったりするため、慢性的に睡眠不足になる可能性はあります。
疲れが取れない状態が続くと、不眠症や体調不良の原因となり、日常生活にも支障をきたすため注意が必要です。
健康リスクが高まる
夜勤を続けることで身体に負担がかかり、健康に影響することがあります。
夜勤の身体的な健康リスクとして、生活習慣病の発症率が上昇することがわかっています。不規則な食事、運動不足、ストレスなどが重なることで、肥満や高血圧、糖尿病などのリスクが高まるのです。
また、6時間未満の睡眠で、うつ病の発症率が上がることが判明しています。夜勤を続けることで慢性的に睡眠が不足すると、うつ病をはじめとする精神疾患につながる場合もあります。
家庭やプライベートとの両立が難しくなる
家族との時間が合わなくなることも、夜勤のデメリットです。夜勤をしている子育て世代の看護師は、次のような悩みに直面します。
- 夜勤明けで疲れているのに、子どものお迎えや夕食の準備をしなければならない
- 夜勤中の子どもの預け先が確保できない
- 子どもの体調不良時に付き添ってあげられない
また、40代以降の看護師にとって深刻な問題となるのが親の介護です。「日中は親の病院への付き添い、夜は夜勤」という生活では、自身の休息時間が取れません。
看護師の夜勤がきついと感じたときの選択肢
夜勤による体力的・精神的な負担が限界に達したとき、看護師にはいくつかの選択肢があります。
- 夜勤回数やシフト調整を看護師長に相談する
- 深夜勤のない部署に異動する
- 日勤のみの働き方ができる職場に転職する
年齢や家庭状況、健康面を考慮して、自分に合った働き方を見つけましょう。
夜勤回数やシフト調整を看護師長に相談する
夜勤がつらいと感じ始めたら、1人で悩まず、看護師長に相談してみましょう。以下のような調整が可能な場合があります。
- 月の夜勤回数を4回から2回に減らす
- 深夜勤をやめて準夜勤のみにする
- 連続夜勤を避けたシフトにする
ただし、病棟の人員配置やほかのスタッフとの兼ね合いもあるため、すべての希望が通るとは限りません。まずは相談してみることが大切です。
深夜勤のない部署に異動する
夜勤のない部署への異動を検討する方法もあります。手術室や外来、透析室、健診センターなど、日勤のみで働ける部署であれば、生活リズムを安定させられます。
同じ職場内での異動は、収入や人間関係を維持しながら働き方を変えられる点がメリットです。これまで培った経験や知識を活かしつつ、新しい分野でのスキルアップも期待できます。
日勤のみの働き方ができる職場に転職する
現在の職場での調整が難しい場合は、転職を検討することもひとつの選択肢です。
転職を検討する際は、まず優先順位を整理しましょう。「年収をできるだけ下げたくない」「通勤時間は30分以内」など、譲れない条件と妥協できるポイントを洗い出し、希望の職場を見つけることが大切です。
関連記事:看護師は夜勤で何している?8つの業務内容ときついときの対処法
何歳まで夜勤ができるか悩んでいる看護師におすすめの職場
夜勤なしで働けるおすすめの職場として、次が挙げられます。
- 訪問看護ステーション
- 介護施設
- 健診センター
それぞれの職場の特徴やメリットについて見ていきましょう。
訪問看護ステーション
訪問看護では、利用者さまの自宅でケアをおこないます。利用者さまと深くかかわりながら、その人らしい生活を支援できるやりがいのある仕事です。
日勤のみの職場が多いですが、ステーションによってはオンコール体制を取っている場合もあります。転職を考える際は勤務条件をよく確認しましょう。
「NsPaceCareer」では、訪問看護ステーションの求人を多数掲載しています。経験者による無料相談もおこなっているので、訪問看護の仕事について詳しく知りたい方はぜひご活用ください。
介護施設
介護施設は医療現場というよりも「生活の場」としての側面が強く、利用者さまが自分らしく生活できるよう、一人ひとりに寄り添った看護を実践できます。
施設によって入居者さまの医療依存度や要介護度が異なり、看護師の働き方もさまざまです。特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、夜勤なしで働ける求人も多数あります。
健診センター
健診センターで働く看護師のおもな業務は、診察の介助や採血、血圧測定、身体測定、問診票の記入サポートなどです。決められた検査項目を効率的に進める必要があるため、テキパキとした対応力が求められます。
基本的に日勤のみの勤務で、土日休みの職場も多いため、プライベートとの両立を図りやすい環境です。
看護師の夜勤についてのよくある質問
看護師の夜勤の継続についての疑問や不安について、よくある質問に回答します。
Q1. 夜勤を辞めたら年収はどれくらい下がる?
夜勤手当がなくなることにより、年収は数十万円単位で減少することが一般的です。ただし、日勤だけでも好条件の職場を見つけられれば、年収の減少を抑えることは可能です。
基本給が高い職場や各種手当が充実している職場、昇給制度が整っている職場を選ぶことで、夜勤手当に頼らずに収入を確保できます。
Q2. 夜勤を続けるために必要な自己管理のコツは?
夜勤を継続するためには、規則正しい生活リズムの維持が重要です。夜勤前後の睡眠時間を確保し、できるだけ同じ時間に就寝・起床することを心がけましょう。
食事のタイミングも重要です。夜勤中は軽めの食事を心がけ、消化に良いものを選ぶことで身体への負担を軽減できます。
Q3. 体力の消耗を抑える夜勤明けの過ごし方は?
夜勤明けは、2〜3時間程度の仮眠をとることをおすすめします。長時間眠り過ぎると夜の睡眠に影響するため、アラームをセットして適度な時間で起きるようにしましょう。
仮眠前には、ぬるめのお風呂やシャワーでリラックスすることも効果的です。遮光カーテンで部屋を暗くすることで、質の良い仮眠を取りやすくなります。
Q4:50歳で夜勤している人はどのくらいいますか?
50歳で夜勤を続けている看護師もいますが、全体的には少ない傾向にあります。
夜勤を続けている看護師のなかには、夜勤専従として生活リズムを整えていたり、日中の自由時間をうまく活用したりと、うまく適応している方もいます。年齢ではなく、個人の体力や健康状態、家庭状況に応じて判断することが重要です。
夜勤の限界を見極めて、自分らしい働き方を選ぼう
看護師の夜勤には法的な年齢制限はありませんが、体力面や家庭の事情により、夜勤との向き合い方を見直すことは大切です。夜勤がきついと感じたときは、まず現在の職場でのシフト調整や部署異動を検討してみましょう。
それでも解決しない場合は、転職も選択肢のひとつです。自分に合ったライフスタイルを見極めて、長く活躍できる働き方を見つけてください。
<参考文献・サイト>
2023(令和5)年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書 日本看護協会
睡眠時間、夜勤とその他の生活習慣病リスクとの相乗効果に関する研究 厚生労働省分担研究報告書

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。