看護師の夜勤で優先順位が重要な3つの理由!付け方と意識するメリット

「夜勤中に何から手を付けて良いかわからない」「業務に追われて気持ちに余裕がない」
このような悩みを抱えている看護師は多いのではないでしょうか。
本記事では、夜勤で絶対に意識したい優先順位の3ステップと具体的な進め方・その効果を徹底解説。あなたの夜勤がグッとラクになるヒントが満載です。
看護師の夜勤で優先順位が重要な3つの理由
夜勤では次の3つの理由から、優先順位の判断が重要となります。
- 夜勤は少人数でのトラブル対応が求められるから
- すべてを1人で完璧にこなそうとするとミスにつながるから
- 患者さまの安全と自分の負担軽減につながるから
それぞれ見ていきましょう。
夜勤は少人数でのトラブル対応が求められるから
夜勤帯は、配置される看護師の人数が大幅に少なくなります。日本医療労働組合連合会「2023年度 夜勤実態調査結果」によると、2交代制夜勤の平均人数は、2人〜4人の施設が全体の89.3%を占めています。
夜勤人数 | 割合 |
1人 | 2.2% |
2人 | 13.7% |
3人 | 50.7% |
4人 | 24.9% |
5人 | 4.2% |
6人 | 1.9% |
7人 | 0.9% |
8人 | 0.7% |
9人 | 0.1% |
10人以上 | 0.6% |
合計 | 100% |
少人数体制では、患者さまの急変やナースコールが重なると、すぐに手が足りなくなってしまいます。そこで重要になるのが優先順位の判断です。
すべてを1人で完璧にこなそうとするとミスにつながるから
夜勤では、1人あたりの受け持ち患者数が多くなります。
すべての業務を同じレベルで完璧にこなそうとすると、時間が足りなくなり、焦りが生まれます。この焦りこそが、投薬ミスや観察不足といったミスにつながるのです。
患者さまの安全と自分の負担軽減につながるから
優先順位を付けて業務を進めることで、患者さまの安全を守りながら、看護師自身の精神的な負担も軽減できます。
たとえば、転倒リスクの高い患者さまのベッド周辺の環境を優先的に整えれば、転倒事故を未然に防げます。優先順位を意識して心配事に早めに対処することで、落ち着いて夜勤を続けられるのです。
実際に、夜勤帯では受け持ち患者数が多いことや眠気により、日勤帯と比べてヒヤリ・ハット事例が多く発生するという研究報告もあります。
関連記事:看護師は夜勤で何している?8つの業務内容ときついときの対処法
看護師の夜勤における優先順位の付け方
優先順位を付けることで、夜勤業務をより安全かつ効率的に進められます。次の5段階で業務を分類し、取り組みましょう。
- 急変・緊急対応など「患者さまの命を守る業務」が最優先である
- 転倒防止や観察など「安全確保」を徹底する
- 投薬・点滴など「時間厳守の業務」を確実にこなす
- 環境整備や記録など「効率を意識する業務」はまとめておこなう
- ルーチン業務や物品補充は余裕のあるときに対応する
それぞれ紹介します。
1.急変・緊急対応など「患者さまの命を守る業務」が最優先である
最も優先すべきは、患者さまの生命にかかわる業務です。急変対応やナースコールへの対応、医師の指示による緊急処置などが該当します。
これらの業務は、ほかの作業を中断して対応する必要があります。普段から救急カートの位置や緊急時の連絡体制を確認し、いざというときに迷わず行動できるよう準備しておきましょう。
2.転倒防止や観察など「安全確保」を徹底する
患者さまの転倒・誤嚥・誤薬など、事故を防ぐための観察や声かけが重要です。巡視による安全確認、転倒転落リスクのある患者さまへの見守り、ベッド周囲の環境整備なども含まれます。
夜勤帯はスタッフの数が少なく、事故のリスクが高まります。事故を防ぐためにも、予防的な対応を心がけましょう。
3.投薬・点滴など「時間厳守の業務」を確実にこなす
決められた時間におこなう投薬や点滴管理、医師の指示による定時の処置は、患者さまの治療効果に影響するため、遅れることなく実施する必要があります。
夜勤開始時に、時間指定のある業務をリストアップし、アラームやタイマーなどを活用して時間管理を徹底しましょう。また、複数の患者さまの処置や投薬時間が重なる場合は、先輩看護師に相談したり、効率的な順番を検討したりと、事前の準備が大切です。
4.翌日準備や記録など「効率を意識する業務」はまとめておこなう
翌日の準備や備品補充、看護記録の作成などは「今すぐでなくても良いが、やっておかないといけない」業務です。バラバラにおこなうと時間がかかるので、まとめて効率よく進めることがポイントです。
たとえば、患者さまの巡視で各部屋を回るときに「一緒に備品もチェックして、足りないものはメモしておこう」といった具合に、一度の移動で複数のことを済ませます。
また看護記録も、まとめて集中して書くと効率的です。無駄な動きを減らし、時間を有効に活用しましょう。
5.ルーチン業務や物品補充は余裕のあるときに対応する
物品整理や清掃などのルーチン業務は、優先度の高い業務がすべて落ち着いたときに取り組みましょう。
ただし「優先度が低いから」と無視してはいけません。これらの業務も病棟をスムーズに運営するために大切な仕事です。
もし夜勤中に手が回らなかった場合は「備品整理ができませんでした」と先輩看護師に報告し、いつまでに対応すべきか相談しましょう。自分だけで判断せず、チーム全体で優先順位を相談することが大切です。
夜勤で優先順位を付けないと起こるトラブル例
優先順位を意識せずに業務を進めると、さまざまな問題が発生することがあります。次のようなトラブルを避けるためにも、適切な優先順位の判断が必要です。
- ナースコール対応が遅くなる
- 投薬やケアが遅れる
- 業務が終わらず、申し送りに間に合わなくなる
それぞれについて紹介します。
ナースコール対応が遅くなる
物品の補充や清掃作業中にナースコールが鳴った場合「あと少しで終わるから」と作業を続けてしまうと、患者さまを待たせてしまうことになります。
患者さまがコールを押すときは「トイレに行きたい」「気分が悪い」「ベッドから落ちそう」など、緊急性の高い状況である可能性も考えられます。対応が遅れることで、転倒や体調の悪化につながることもあるでしょう。
「ナースコールが鳴ったらすぐに対応できるようにする」ということを意識しながら、業務に取り組む必要があります。
投薬やケアが遅れる
薬剤には、投与する時間が決まっているものがあります。
たとえば、糖尿病の患者さまの速効型インスリンは、食事の時間に合わせて打たなければ血糖値をうまくコントロールできません。また、抗生剤は決められた間隔で投与しないと、細菌に対する効果が弱くなってしまいます。
これらの薬を「時間があるときに」と後回しにすると、患者さまの病状が悪化したり、治療期間が長引いたりする可能性があります。そのため、夜勤が始まったらまず「何時に誰にどのような薬を投与するか」をリストアップし、忘れない・遅れない仕組みを作ることが大切です。
業務が終わらず、申し送りに間に合わなくなる
「備品の整理整頓をきちんとやろう」「記録もしっかり書こう」と思って丁寧に作業していたら、気がつくと朝の申し送りを過ぎてしまった、という経験のある看護師もいることでしょう。
申し送りが遅れると、日勤看護師の業務に影響します。時間に追われて焦ると余裕がなくなり、情報を間違えたり、重要事項を伝えそびれたりと、悪循環に陥りがちです。
こうした状況を防ぐには「今夜絶対にやらなければいけないこと」と「時間があればやりたいこと」をはっきり分けて考え、効率的に行動することが大切です。
新人・中堅看護師が夜勤を乗り切るコツ
優先順位を付ける力は一朝一夕では身につきません。しかし、次のコツを意識して実践することで、着実にスキルアップできます。
- 優先順位を意識してシミュレーションをおこなう
- 優先順位に困ったら先輩に相談する
- 状況に応じて優先すべきことを見直す
それぞれのコツを見ていきましょう。
優先順位を意識してシミュレーションをおこなう
夜勤が始まる前の15分間を使って「今夜の作戦会議」をしてみましょう。
受け持ち患者さまの中で「この方は転倒リスクが高いから定期的にラウンドが必要」「この方は食前にインスリンがある」といった重要なポイントをチェックします。
そして「まずは環境整備、つぎに全体の見回り、夕食前にはインスリンの準備」というように、時系列で業務の流れを頭の中で組み立てます。また、急変やイレギュラーな対応が発生した場合のことも想定し、どの業務を中断・延期できるかも考えておくことが大切です。
このように事前に作戦を練っておくことで、実際に予想外のことが起きた際に、落ち着いて対応できるようになります。
優先順位に困ったら先輩に相談する
夜勤中に「今は何を優先すべきだろう」と迷ったときは、遠慮せずに先輩に聞いてみましょう。
経験豊富な先輩は、状況に応じたより良い選択肢を瞬時に判断してくれます。理由も一緒に聞くことで、次に同じような状況になったときに、自分でも判断できるようになります。
また、先輩看護師の様子を観察することも効果的です。「いつも患者さまの安全確認から始めているな」「この時間にうまく記録の時間を作っているな」のような気づきが、自分の判断力アップにつながります。
状況に応じて優先すべきことを見直す
夜勤では「今夜はこの順番でやろう」と計画を立てても、急変やナースコールで予定が崩れることがよくあります。そのような場合は、状況に合わせて臨機応変に変更することが大切です。
状況に応じて柔軟に対応するには、ナースコール対応や患者さまの安全確認など「今やらなければいけない業務」と記録や薬剤のチェックなど「遅れても問題のない業務」を普段から区別しておくことがポイントです。
融通のきくタスクを把握しておくことで、いざというときも慌てずに判断できるようになります。
関連記事:看護師の夜勤で大切なこと5選!安全管理の意識と順応できる心構え
看護師が夜勤の優先順位を意識するメリット
業務の優先順位を付けることには、看護師自身にとってもメリットがあります。
- 業務の流れがスムーズになり、心に余裕ができる
- ミスやトラブルが減る
- 先輩や同僚からの信頼を得やすくなる
メリットを意識することで、優先順位を付けることが習慣として身につきやすくなります。
業務の流れがスムーズになり、心に余裕ができる
優先順位がはっきりしていると、迷う時間がなくなり、心に余裕が生まれます。
たとえば、夜勤が始まったとき「まずは転倒リスクの患者さまの安全確認、つぎに投薬準備、それから全体の巡視」という流れが頭に入っていれば、スムーズに動けるでしょう。
無駄な動きが減ることで、患者さまとじっくり向き合う時間も確保できるようになり「今日は余裕をもって話を聞けたな」という充実感も得られます。
ミスやトラブルが減る
「あれもこれもやらなければならない」と精神的に余裕がなくなると、つい判断を間違えたり、観察項目を忘れたりしがちです。
しかし、優先順位を決めて「今はこれだけに集中すれば良い」という状態を作ることで、業務に丁寧に取り組めます。焦らず確実に業務をこなしていくことで、結果的にミスも減るのです。
先輩や同僚からの信頼を得やすくなる
優先順位を意識して働くようになると「あの人は段取りが良いな」「安心して任せられる」と周りから思われるようになります。
スタッフから「いつもきちんとしている」と評価されると、チーム内での居心地も良くなるでしょう。周囲の信頼を得られれば、困ったときに相談しやすい雰囲気も生まれます。
職場の人間関係が良好になることで、夜勤への不安も和らぎ、長く安心して働き続けられるようになります。
夜勤の優先順位に関するよくある質問
ここからは、夜勤の優先順位について、よくある質問に回答します。
Q1:夜勤で優先順位を付けるコツは何ですか?
まずは命にかかわる緊急対応を最優先に考えましょう。その後は時間厳守の投薬や処置、効率的にまとめられる業務、余裕があるときにできる作業の順に取り組むことが基本です。
経験を積むうちに、状況に応じた柔軟な判断力も養われます。日々の業務を通じて「なぜこの順番にしたのか」を意識的に振り返ることで、判断力の向上につながります。
Q2:新人看護師でも夜勤業務の優先順位をうまく付けられますか?
最初は誰でも「どれから手をつけて良いかわからない」状態です。不安なことは先輩に聞きながら、少しずつ判断のコツを覚えていきましょう。
また「バイタル測定は1人10分、点滴準備は15分」といったように、自分がそれぞれの業務にどのくらい時間がかかるかを把握しておくことも大切です。
時間の目安がわかると「22時の投薬があるから、15分前には準備を始めよう」のように、具体的な計画が立てられるようになります。
Q3:優先順位を意識して付けると夜勤がラクになりますか?
優先順位を明らかにすることで業務が効率よく進み、ミスや焦りが減ります。結果として心に余裕が生まれ、夜勤の負担を軽減できるといえるでしょう。
しかし、それでも夜勤の身体的・精神的な負担が大きいと感じる看護師もいます。その場合は、夜勤のない働き方も選択肢のひとつです。
たとえば、訪問看護には、基本的に夜勤がなく、毎日決まった時間に出勤・帰宅できるため、生活リズムを維持しやすくなります。夜勤の負担を感じている看護師は、訪問看護専門の求人サイト「NsPaceCareer」をぜひチェックしてみてください。新しい職場へ転職してあなたらしい働き方が見つかるはずです。
まとめ:看護師は夜勤で優先順位を意識して、安全・効率よく働こう
看護師の人数が少なく、時間も限られた夜勤では、優先順位を見極める力がとくに重要です。最初はうまくいかないこともありますが、経験を重ねるうちに、適切な判断ができるようになります。
迷ったときは先輩に相談し、チーム全体で協力しながら、より安全で働きやすい夜勤を目指していきましょう。
<参考サイト・文献>

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