市役所で働く看護師の7つの仕事内容!年収と募集を見つけるコツ

公開日:2025/07/08 更新日:2025/07/08
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「病院勤務に少し疲れてきた」「子育てと両立しながら地域に関わりたい」──そんな看護師の新しい選択肢が“市役所勤務”です。医療行為は少なくても、地域の健康を支える重要な役割。この記事では、仕事内容・年収・募集の実態まで、あなたのキャリア転機に役立つリアルな情報をお届けします。

この記事では、市役所で働く看護師の具体的な仕事内容や年収、やりがい、募集を見つけるコツを詳しく解説します。理想の看護師像を見つけ、安定した環境で地域に貢献できるキャリアを築くためのきっかけとなるでしょう。

市役所で働く看護師の仕事内容7つ

厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況に関する参考資料」によると、保健所や都道府県、市区町村で働く看護師は全体の0.8%にすぎません。そのため、市役所で働く看護師はまれで、具体的な仕事内容について知らない方も多いでしょう。ここでは代表的な7つの仕事内容をご紹介します。

  • 健康相談と健康指導
  • 予防接種の業務
  • 乳幼児健康診査と発達相談
  • 感染症の対策
  • 高齢者支援と介護予防
  • 特定健診(特定健康診査)・特定保健指導の実施
  • 地域住民への健康教育・情報提供

病気の治療だけでなく、予防や健康増進に力を入れる点が特徴です。それぞれを詳しく見ていきましょう。

健康相談と健康指導:住民の健康増進を支える身近な窓口

地域住民の健康増進のため、病気の予防や健康的な生活習慣について相談に応じ、適切にアドバイスします。具体的には、次のような相談・指導をおこないます。

  • 生活習慣病予防のための食生活指導や運動指導
  • メンタルヘルスについての相談対応
  • 禁煙やアルコールについての健康相談
  • がん検診の受診勧奨

地域住民の身近な健康の窓口として、幅広い世代の健康をサポートします。

予防接種の業務:乳幼児から高齢者まで地域の感染症予防に貢献

乳幼児から高齢者まで、さまざまな年代の予防接種業務に携わります。たとえば、次のような業務が挙げられます。

  • 予防接種のスケジューリング
  • 接種時の問診
  • 予防接種の広報・啓発活動
  • 接種記録の管理とデータ入力

集団接種の会場で業務をおこなうこともあり、スムーズな運営のために重要な役割を担います。

乳幼児の健康診査と発達相談:子どもの成長を支援し保護者の不安に寄り添う

乳幼児の健康診査(乳幼児健診)では、次の業務を担当します。

  • 身体測定
  • 診察介助
  • 育児相談

保護者から子育てについての悩みや不安を聞き、子どもの発達に気になることがある場合には、児童発達支援センターや発達外来のある病院といった専門機関への紹介もおこないます。

感染症の対策:地域の安全を守るため、発生予防から拡大防止まで尽力

地域における感染症の発生動向を監視し、次のような感染症対策をおこないます。

  • 感染症予防のための啓発活動
  • 発生時の疫学調査
  • 濃厚接触者の特定

食中毒やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などに対して専門知識を活かして地域住民の健康を守ります。

高齢者支援と介護予防:住み慣れた地域で安心して暮らせるよう生活をサポート

高齢者がいつまでもその人らしく、健康で暮らせるように、市役所の看護師はおもに次の業務をおこないます。

  • 介護予防教室の開催
  • 個別訪問による健康状態の確認
  • 介護についての相談対応

体操教室や認知症予防プログラムなどをおこなって、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように支援します。

特定健診・特定保健指導の実施:生活習慣病のリスクを減らし健康的な未来へ導く

生活習慣病の予防を目的とした特定健診(メタボリックシンドロームに着目した健診)では、おもに次の業務をおこないます。

  • 受診勧奨
  • 健診結果にもとづく特定保健指導
  • 個別面談による継続的なサポート
  • 健康教室の開催

対象者一人ひとりに合わせた保健指導をおこない、生活習慣の改善をサポートし、健康リスクの低減を目指します。

地域住民への健康教育・情報提供:正しい知識を伝え、地域全体の健康リテラシーを向上

健康についてのテーマで、地域住民向けの講座やセミナーを企画・実施します。その内容は多岐にわたり、たとえば次のようなテーマが挙げられます。

  • 糖尿病予防についての知識と食事・運動の指導
  • がん検診の重要性と受診勧奨
  • 禁煙や防災時の健康管理の啓発

地域全体の健康リテラシー向上に貢献し、住民が自ら健康を守る力を育むことを目指します。

市役所で働く看護師の1日の流れ

市役所で働く看護師の1日は、担当する業務内容によって異なります。定時退社が可能な日も多く、プライベートと両立しやすいのが特徴です。

時間業務内容
8:30出勤・朝礼・メールチェック・スケジュールの確認
9:00健康診断の結果の確認・健康相談(電話・窓口)・予防接種業務
12:00昼休憩
13:00地域住民向け健康教室の準備・資料作成
15:00家庭訪問
16:30記録業務・翌日の準備
17:30退勤

あくまで一例ですが、日によって健康相談が中心の日もあれば、イベントの準備や家庭訪問が多い日もあります。

市役所で働く看護師の年収

市役所で働く看護師の年収は、地方公務員法に基づく給与条例で規定されています。

総務省「令和5年地方公務員給与の実態」によると、地方公共団体の「看護・保健職」の給与月額の合計は、扶養手当や地域手当を含め32万1,202円です。

このデータには保健職の給与も含まれますが、市役所で働く看護師も、一般的に安定した収入が見込めます。さらに、ボーナスや各種手当も整っており、長く働きやすい環境といえるでしょう。

市役所で働く看護師のやりがいとメリット

市役所で働く看護師には、病院勤務にはない多くのやりがいとメリットがあります。

  • 地域住民の健康を支援できる
  • 保健・福祉・介護など幅広い知識を習得できる
  • ワークライフバランスを確保できる
  • 感染症や災害など社会的に貢献できる
  • 雇用と待遇が安定している

地域住民の健康を支援できるだけでなく、働きやすさも魅力です。それぞれを詳しく見ていきましょう。

地域住民の健康を支援できる

病気になってから治療するのではなく、病気の「予防」に力を入れられるのが、市役所で働く看護師の特徴です。

たとえば、健康診断のデータから生活習慣病のリスクが高い住民に介入したり、健康教室をおこなって地域の健康意識を高めたりなど、地域住民一人ひとりの健康増進に貢献できます。

その成果を肌で感じることがやりがいにつながります。

保健・福祉・介護など幅広い知識を習得できる

市役所には保健、福祉、介護などさまざまな分野の部署があり、看護師はそれぞれの現場で専門職と連携しながら働きます。

具体的には、高齢者支援ではケアマネジャー、子育て支援では保育士や社会福祉士と協力するなど、多職種と連携するなかで自然と幅広い知識が身につきます。

地域包括ケアシステムの一員として、看護師としての専門性を活かしながら、多分野の知見を深めることで、住民に合ったサポートができるようになります。

ワークライフバランスを確保できる

市役所で働く看護師は公務員であり、土日祝日が休みで、残業も少ない傾向にあります。

育児休暇や介護休暇などの福利厚生も充実しているため、子育てや介護と仕事を両立しやすく、プライベートの時間を大切にしながら働けます。

家族との時間や趣味の時間をしっかり確保できるため、心身ともに健康的に働き続けたい方には最適な環境です。

感染症や災害など社会的に貢献できる

感染症が流行した際や災害が発生したとき、市役所の看護師は地域の健康を守る最前線で活躍します。具体的には、次のような役割を担います。

  • 感染症の正しい知識を伝える情報提供
  • 住民からの健康不安についての相談対応
  • 避難所での体調不良者のケアと衛生管理

このような緊急時に看護師としての専門性を発揮し、地域社会に直接貢献できることは、使命感とやりがいにつながるでしょう。

雇用と待遇が安定している

市役所で働く看護師は公務員であるため、倒産やリストラのリスクが低いのが特徴です。

給与や福利厚生も国の基準に準じており、景気の変動に左右されにくいため、安心して長期的に働けます。これは、将来にわたって安定したキャリアを築きたい方にとって、メリットといえるでしょう。

市役所で働く看護師の大変さとデメリット

多くのメリットがある一方で、市役所で働く看護師にはいくつかの大変さやデメリットもあります。

  • 募集が少ない
  • 医療行為のスキルが低下する
  • 保健師との役割の違いがはっきりしない
  • 住民対応にストレスを感じることもある
  • 昇進やキャリアアップの機会が限られている

病院勤務との違いを理解し、自分に合うかどうかを考えることが大切です。それぞれを詳しく見ていきましょう。

募集が少ない

市役所の看護師は、欠員が出た場合にのみ募集されることがほとんどです。

たとえば、定年退職者が出た場合や、産休・育休の代替要員として募集がかかるなど、毎年決まった時期に多くの求人が出るわけではありません。

そのため、希望する自治体での採用枠は限られ、採用倍率も高くなる傾向があります。チャンスを逃さないよう、気になる市区町村のホームページや求人情報をこまめにチェックしておくことが大切です。

医療行為のスキルが低下する

病院勤務と異なり、市役所では採血や点滴といった医療行為をおこなう機会はほとんどありません。そのため、臨床から離れることで、こうしたスキルが衰える可能性があります。

将来、病院やクリニックに戻ることを考えている場合は、自己学習や日本看護協会の研修に参加するなど、スキルを磨く努力が必要です。

保健師との役割の違いがはっきりしない

市役所には保健師も多く勤務しており、看護師と業務内容が重なる場面があります。

どちらも「地域住民の健康を支える」ことが目的のため、役割分担があいまいになり、戸惑うこともあります。

たとえば、乳幼児健診後のフォローや健康教室の運営などで、どちらが担当・主導するかが明確でなく、連携に悩む場面もあるそうです。

住民対応にストレスを感じることもある

市役所の看護師は、健康についての相談に対応します。

同じ内容の電話を繰り返す方や医療的な介入を拒む方、感情の起伏が激しい方など、対応に配慮が必要なケースも少なくありません。

一人ひとりに寄り添った丁寧な対応が求められるため、精神的なストレスを感じることもあります。

昇進やキャリアアップの機会が限られている

市役所の看護師は、公務員の組織体制上、昇進のスピードが比較的ゆるやかです。

また、病院のように認定看護師や専門看護師、診療看護師など専門職としての多様なキャリアパスが用意されているわけではありません。

管理職を目指す道はありますが、医療技術のスペシャリストとしてキャリアを積みたい人にとっては、物足りなさを感じることもあります。

なお、公務員看護師のメリット・デメリットについては、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事:公務員看護師とは?5つのメリット・デメリットや年収を詳しく紹介 

看護師が市役所で働くために必要な資格と経験

市役所で看護師として働くためには、いくつかのステップを踏む必要があります。看護師資格だけでなく、公務員採用試験の合格が必要であり、地域保健や行政分野での実務経験といった公務員としての適性も求められます。

公務員採用試験の合格

市役所の看護師は地方公務員となるため、各自治体の公務員採用試験に合格しなければなりません。試験内容は、次のように多岐にわたります。

  • 筆記試験(教養試験と専門試験)
  • 面接試験
  • 論文試験

また、市役所によっては、看護師としての専門性を問う口頭試問がおこなわれることもあるため、しっかり準備して臨む必要があります。

地域保健や行政分野での実務経験

地域保健活動や行政機関での実務経験は必須ではありませんが、採用試験で有利に働くことがあります。

地域の健康課題への理解や多職種と連携した経験があると、即戦力として期待されるためです。もちろん臨床経験も評価されますが、地域住民とのかかわりや予防医療への意識が重要視されます。

市役所の看護師の募集を見つけるコツ

市役所の看護師求人は数が少ないため、希望の職場を見つけるにはいくつかのコツがあります。

  • 自治体公式ホームページを定期的に確認する
  • ハローワークや公務員専門サイトを活用する
  • 地元自治体に問い合わせて情報収集する

これらを続けることで、自分の希望や条件に合った職場を見つけやすくなります。

自治体公式ホームページを定期的に確認する

各自治体の公式ホームページの「採用情報」「職員募集」のページを定期的にチェックすることが確実な方法です。

市役所の看護師募集は毎年決まったタイミングでおこなわれるとは限らず、欠員が出たときや年度末に翌年度の採用が発表されることがあります。

複数の自治体を希望する場合は、それぞれのページをこまめに確認することが欠かせません。

ハローワークや公務員専門サイトを活用する

ハローワークや公務員専門の求人サイトも、市役所で働く看護師の募集情報を見つけるための有効な情報源です。

ハローワークには、地方自治体の求人が掲載されることも多く、希望する地域の募集がないか、定期的に確認することが大切です。また、公務員専門サイトでは、試験対策の情報も得られることがあります。

地元自治体に問い合わせて情報収集する

希望する自治体の保健センターや健康課に問い合わせてみるのも1つの方法です。

たとえ採用予定がなくても、今後の募集の可能性や非常勤としての働き方など、具体的な情報を得られるかもしれません。

これは、インターネット上では得られない貴重な情報となるだけでなく、熱意を伝える良い機会にもなるでしょう。

市役所で働く看護師へのよくある質問

市役所で働く看護師について、よくある質問とその回答をまとめました。疑問を解消してキャリア選択の参考にしてください。

Q1:公務員と看護師はどっちがいいですか?

これは個人の価値観やキャリアプランによって異なります。

安定した雇用やワークライフバランスを重視するなら公務員、高度な医療技術や専門性を追求するなら病院の看護師が良いでしょう。それぞれにおすすめの人の特徴は次のとおりです。

<公務員がおすすめの人>

  • 安定した雇用と収入を重視する
  • ワークライフバランスを確保したい
  • 地域住民の健康増進や予防医療に貢献したい
  • 医療行為よりも、健康相談や教育に興味がある

<病院の看護師がおすすめの人>

  • 高度な医療技術を追求したい
  • 多様な疾患や症例に携わりたい
  • 迅速なキャリアアップを希望する

どちらが良い悪いではなく、自分の働き方や目指す看護師像に合わせて選択することが重要です。

Q2:市役所で働く看護師に保健師の資格は必要ですか?

市役所では保健師の資格が必須の求人も多いですが、看護師資格のみで応募できる求人もあります。ただし、一部の市町村に限られ、保健師資格を要件とする場合が多いので注意が必要です。

保健師資格を持っていると、より幅広い業務を担当できる可能性があるため、採用において有利に働くことがあります。将来的に保健師の資格取得を検討するのも良いでしょう。

市役所で働く看護師の仕事内容を理解し、自分に合った働き方を選ぼう!

市役所で働く看護師は、地域住民の健康を支えるやりがいのある仕事です。

病院勤務とは異なる働き方ですが、安定した環境でワークライフバランスを保ちながら、専門性を発揮できる魅力があります。

ただし、募集は限られているため、日頃からの情報収集と公務員試験の対策が重要になります。

市役所での勤務を目指す方のなかには「地域で活躍したい」「臨床以外の道を探している」という方も多いはず。そんな方におすすめなのが、訪問看護という選択肢です。地域に密着した看護を実践でき、働き方の柔軟さや専門性の発揮という点でも魅力があります。もし、訪問看護という分野にもご興味があれば「NsPaceCareer」にご相談ください。

<参考サイト・文献>

看護師等(看護職員)の確保を巡る状況に関する参考資料|厚生労働省

令和5年地方公務員給与の実態|総務省

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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