看護師は妊娠しても夜勤するの?夜勤免除となる2つの制度とリスク

公開日:2025/07/08 更新日:2025/07/08
記事サムネイル画像

妊娠がわかった直後、あなたの頭をよぎったのは「これからも夜勤があるのかな…?」という不安ではないでしょうか。夜勤は看護師の宿命――そう思い込んで無理を重ねる前に、知っておいてほしい制度とリスクがあります。

この記事では、妊娠中に夜勤をしなくても済む制度の根拠や、母体と赤ちゃんを守るための対処法を解説します。「夜勤がつらいけれど、ほかのスタッフに迷惑をかけたくない」と悩む看護師の方も、安心して働き続けるヒントを見つけましょう。

看護師が妊娠したら夜勤はやめてもOK!夜勤免除の根拠になる2つの制度

看護師が妊娠したら、夜勤を無理に続ける必要はありません。次の2つの制度があるため、妊娠中の看護師は夜勤免除になる可能性があります。

  • 労働基準法「深夜業制限」
  • 男女雇用機会均等法「夜勤免除を請求したときの不利益扱いの禁止」

これらの内容を理解できていると、職場に遠慮なく申し出ができ、身体の負担を軽減できます。それぞれの制度を詳しく見ていきましょう。

1.労働基準法「深夜業制限」

労働基準法六十六条では、妊産婦が「夜勤ができない」と申し出た場合、午後10時から午前5時までの深夜業務をさせてはならないと決められています。

ただし、妊娠中の看護師が申し出なければ、夜勤を続けなければならない可能性があります。妊娠中は夜勤を避けたい看護師は、まず病棟の看護師長にその旨を伝えましょう。

2.男女雇用機会均等法の「夜勤免除を請求したときの不利益扱いの禁止」

男女雇用機会均等法の第九条では、妊娠した女性が夜勤免除を申請した場合、解雇したり、不利な待遇をしたりしてはならないと定められています。

たとえば、パートへ雇用変更を促されたり、部署移動の打診をされたりすることもあるかもしれません。異動提案自体は必ずしも違法ではないですが、「本人の意向に反して強制的に行った場合」は違反の可能性があります。

「周りのスタッフに迷惑をかけるかもしれない」「夜勤をしたくないとわかったら嫌な顔をされそう」と心配している看護師も、法律に守られている事実を知っておくと少しは安心できるでしょう。

自分と赤ちゃんを守るためにも、制度を活用して無理のない働き方を選んでください。

看護師の妊娠中における夜勤免除の実態

妊娠中の夜勤免除の制度があるとはいえ、すべての看護師が夜勤免除を受けられるわけではありません。

日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、夜勤免除を受けた看護師は60.8%、夜勤の回数を減らした看護師は27.0%でした。これは、約4割の看護師が夜勤免除されていないことを示しており、人材確保ができていないことが原因と指摘されています。

実際に「夜勤免除を申し出にくい」といった声もあり、看護師特有の職場環境が夜勤免除に影響しているといえます。

看護師が妊娠中に夜勤をするリスク

妊娠中の夜勤は、自分の身体はもちろん、お腹の赤ちゃんにとっても、さまざまなリスクをともないます。どのような影響があるのかを理解できると「無理して夜勤を続ける必要はないんだ」と思えるでしょう。

早産・流産のリスクを高める可能性がある

夜勤にともなう不規則な生活リズム、長時間労働などは、妊娠中の身体への負担を大きくします。

日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、看護師の切迫流産・早産率は35.0%でした。すべてが夜勤による影響とはいえませんが、疲労やストレスが蓄積されると、切迫流産や切迫早産のリスクが高まる恐れがあります。

現場からも「妊娠初期でも夜勤をしなければならず、無理をして仕事を続けた結果、切迫早産や流産になる看護師がいる」といった声があがっています。

母体のストレス・睡眠不足は胎児の健康にも影響を及ぼす

妊娠中は、ホルモンバランスの変化によって、精神的にも不安定になりやすい時期です。つわりをはじめとする身体的な不調に加えて、出産や子育てへの不安、職場環境の変化など、さまざまな要因がストレスとなるからです。

夜勤による睡眠不足によって生活リズムが乱れ始めると、身体的な疲労だけでなく、精神的なストレスもさらに溜まりやすくなってしまいます。

こうした母体の過度なストレスや睡眠不足は、お腹の赤ちゃんの発育や生まれたあとの情緒の発達にも悪影響を及ぼすと指摘した報告もあります。

夜勤の継続は、自分の身体に負担がかかるだけでなく、赤ちゃんの成長にも影響しかねないことを理解しておくのが大切です。

看護師が妊娠して夜勤免除をスムーズに申し出るコツ

夜勤免除を申し出るときは、伝え方やタイミングが重要です。職場との関係性を崩さないように、2つのコツを押さえましょう。

妊娠報告・夜勤免除を申請するタイミングを逃さない

妊娠に気づいたら、できるだけ早めに職場へ報告し、その際に夜勤免除の希望も一緒に伝えるようにしましょう。早めに報告すると、職場は看護師の配置を調整する時間ができるため、スムーズに受け入れられます。

具体的には、赤ちゃんの心拍が確認できる妊娠8週目前後やつわりが落ち着き、身体が比較的安定する妊娠16週目のいわゆる安定期に報告するのが良いとされています。

ただし、妊娠したときの症状は人それぞれ異なるため、自分の体調を第一に考えて、ご家族と相談してから職場に伝えてください。可能であれば、母子手帳の交付を受けてから相談すると説得力が増すためおすすめです。

制度を理解して理論的に伝える

夜勤がつらいから休みたいと感情的に訴えるのではなく「労働基準法と男女雇用機会均等法にもとづいて申請する」という姿勢を伝えましょう。制度に沿った申請であることを強調できると、職場の理解をより得やすくなります。

ただし、上司が制度を知らない可能性もゼロではないため、厚生労働省の資料を準備しておくと、いざというときに役立ちます。

看護師が妊娠中でも夜勤免除してもらえないときの対処法

夜勤免除を申し出たものの、スムーズに受け入れてもらえない場合もあるかもしれません。そのようなときでも、自分と赤ちゃんを守るための手段はあります。

  • 医師の診断書や母性健康管理指導事項連絡カードを活用する
  • 夜勤のない部署への異動を願い出る
  • 休職する
  • 退職も選択肢のひとつと考える

それぞれの対策を見ていきましょう。

医師の診断書や母性健康管理指導事項連絡カードを活用する

職場に夜勤免除を申請する際は、医師に診断書や母性健康管理指導事項連絡カードの作成を依頼し交渉してみましょう。

これらの書類は、男女雇用機会均等法にもとづいて利用でき、勤務制限や業務内容の調整を職場に求める際に役立ちます。

医学的な根拠があると、職場も対応せざるを得ません。もし職場の理解を得られにくいと感じたときに備えて、覚えておくと安心です。

夜勤のない部署への異動を願い出る

夜勤免除が難しい場合は、夜勤のない部署への異動を検討してもらうよう願い出るのも有効な方法です。たとえば、次のような部署は日勤のみの勤務が多いためおすすめです。

  • 外来
  • 透析室
  • 健診センター

日勤のみの部署であれば、夜勤と比べると、妊娠中の身体の負担が軽減できるでしょう。

休職する

どうしても夜勤免除が認められない、または体調が優れない場合は、休職も視野に入れてみてください。

妊娠中は無理をせず、しっかり休むことが母体や赤ちゃんを守るのに重要です。休職制度は病院によって異なりますが、申請すれば安心して出産に臨めます。健康保険の加入状況によっては、傷病手当金を受け取れる可能性があります。

退職も選択肢のひとつと考える

最終的な手段にはなりますが、勤務の調整が難しい、または職場の理解を得られない場合は、退職を考えるのも選択肢のひとつです。

ただし、退職のタイミングによっては出産手当金や育児休業給付金の支給が受けられなくなる恐れがあります。また、失業保険の受給にも時間を要する場合があります。

退職を検討する際は、まずはパートナーとよく相談し、経済的な状況や今後の生活設計について慎重に検討することが大切です。

看護師が妊娠中に考えたい産後の働き方

出産後は、仕事と子育てを両立できる働き方を考えるのが重要です。

  • 常勤か非常勤か
  • 夜勤「あり」か「なし」か
  • 復帰するか退職して転職するか

自分に合った働き方を見つけるために、確認しておきたいポイントを紹介します。

常勤か非常勤か

産後に復職する際は「常勤」と「非常勤」のどちらが自分に合っているかをよく検討してください。それぞれのメリットとデメリットは、次のとおりです。

働き方メリットデメリット
常勤・安定した収入が得られる
・長期的なキャリア形成に有利になる
・勤務時間が長い
・子どもの体調不良に対応しづらい
非常勤・シフトの融通がききやすい
・家庭と両立しやすい
・常勤よりも収入が減る可能性が高い
・福利厚生が限られる場合がある

常勤でも時短勤務や日勤のみで働く、もしくは産後しばらくは非常勤として働き、生活に余裕ができてから常勤に切り替える働き方も選べます。家庭環境やパートナーの協力体制、保育園・幼稚園の利用状況なども踏まえて選択しましょう。

夜勤「あり」か「なし」か

産後に夜勤を再開するかどうかは、体力面や家庭の支援体制を考慮して決めてください。

たとえば、子どもがまだ小さくて夜間のケアが必要なうちは、夜勤なしで働くほうが安心です。実際に、産後しばらくは日勤のみで復帰し、子どもが成長してから夜勤に戻る看護師も多くいます。

夜勤を再開する場合でも、無理のない勤務日数やスケジュールに調整してもらえるか、あらかじめ職場に相談しておくと良いでしょう。

復帰するか退職して転職するか

育児休暇を利用して現在の職場に復帰するか、あるいは転職して新しい職場を探す選択もあります。

看護師のなかには、出産後に自分のキャリアを見つめ直して、子育てに集中できる職場に転職する方もいます。たとえば、次のような特徴のある職場は、子育て中の看護師への理解を得られやすいでしょう。

  • 日勤のみで働ける
  • 残業が少なく土日休みが多い
  • 急な休みにも理解がある
  • 子育て中のスタッフが多く働いている
  • 有給休暇率が高く休みやすい
  • 保育園が併設されている
  • 時短制度がある

子育て中の看護師は働きやすい職場の一例として、訪問看護ステーションが挙げられます。日勤のみで勤務調整がしやすく、子育て中の看護師も働きやすい環境が整っている事業所が多い傾向です。

訪問看護について詳しく知らない方は、訪問看護に特化した求人サイト「NsPaceCareer」をご覧ください。求人だけでなく、転職に役立つ情報を多数用意しております。

看護師の妊娠中の夜勤に関するよくある質問

妊娠中の看護師の夜勤についての疑問に回答します。少しでも不安なく仕事を続けるためのヒントを得てください。

Q1:看護師が妊娠したら夜勤はいつまで続けますか?

妊娠がわかった時点で、夜勤免除の申し出は可能です。

早めに職場へ相談しておくと、体調不良による急な休みや業務調整にも対応してもらいやすくなります。

ただし、スタッフ数や職場環境によっては、引き継ぎや人員確保のために時間がかかる場合もあります。自分の体調や医師の指示をもとに、無理のないタイミングで申し出ましょう。

Q2:看護師の妊娠報告は心拍確認前でも良いですか?

体調に不安がある場合は、心拍確認前でも妊娠を報告して問題ありません。無理な勤務が続かないよう、早めの対応が大切です。

職場の対応状況によって判断する、もしくは職場への報告タイミングを医師に相談するのも良いでしょう。

Q3:妊娠初期の看護師が力仕事するのは避けたほうが良いですか?

妊娠初期は流産のリスクが高まる時期であるため、重い物を持つ、長時間立ち続けるなどの業務はなるべく避けたほうが良いでしょう。

とくに看護業務では、急変の場面や、移乗や体位変換などの力仕事が多いため、体調に不安がある場合は上司へ相談し、業務の調整をお願いしてください。安全に働ける環境にすることが、母体と赤ちゃんの健康を守ります。

Q4:看護師が妊娠中に夜勤免除してもらうとマタハラを受けやすいですか?

日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、マタニティハラスメント(マタハラ)を受けた方は9.7%であり、その相手は看護部門の上司や同僚であった事例も報告されています。

不安がある場合は、職場の相談窓口や労働基準監督署に相談し、自分の権利を守りましょう。

Q5:看護師が妊娠初期で休むのは可能ですか?

つわりや体調不良があるときは、仕事を休めます。休む際は有給休暇の利用が一般的ですが、欠勤扱いとなる職場もあります。

自分の体調と相談しながら、必要に応じて医師の診断書を提出する、⺟性健康管理指導事項連絡カードを活用するなどで対処しましょう。

看護師の妊娠中の夜勤は無理しなくてOK!制度を使って負担を減らしましょう

妊娠中の夜勤は、身体にも赤ちゃんにも負担がかかるため、無理をせずに制度を活用するのが大切です。

労働基準法や男女雇用機会均等法など、夜勤免除を支える制度はしっかり整っています。

妊娠中でも安心して働き続けられるよう、正しい知識をもって自分の健康と働き方を守りましょう。

<参考サイト・文献>

労働基準法 | e-Gov 法令検索

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律| e-Gov 法令検索

2022年看護職員の労働実態調査|日本医療労働組合連合会

日本看護協会「時間外労働および夜勤・交代制勤務に関する実態調査」の自由意見欄に記載された看護師の労働・生活条件に関する訴えと改善要求|酒井一博ら

胎生期ストレス刺激が惹起する ストレス脆弱性と脳内 5-HT 神経機能異常|宮川和也ら

SNSシェア

  • LINEアイコン
  • facebookアイコン
  • Xアイコン
記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

関連する記事

NsPaceCareerとは-PCイメージ画像左 NsPaceCareerとは-SPイメージ画像左

NsPaceCareerとは

訪問看護・在宅看護に特化した
求人情報検索・応募のほか、
現役の訪問看護師や在宅経験者への無料相談や、
事業所への事前見学申し込みが可能です。

NsPaceCareerとは-PCイメージ画像右 NsPaceCareerとは-SPイメージ画像左