治験看護師の仕事内容4つ!きついところや求人を探すコツを紹介

「治験に興味があるけれど、治験看護師の仕事ってどんな内容?」「病棟看護師以外の新しい分野に挑戦したい」
そんな方にとって、治験にかかわる看護の仕事は魅力的な選択肢の一つです。
夜勤や急変対応に追われる病棟勤務から離れ、医療の進歩に貢献できるやりがいを感じながら、ワークライフバランスを保ちやすいのが治験看護師の大きな特徴です。
この記事では、治験看護師の仕事内容や病棟看護師との違い、やりがいなどについて解説します。治験看護師として一歩を踏み出したい方に役立つ情報をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
治験看護師の仕事内容4つ!
治験看護師とは、一般的に「治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)」として臨床試験に携わる看護師を指します。主な仕事内容は次の4つです。
- 患者さま対応
- 医療機関内での調整業務
- 製薬会社とのやり取り
- データ収集と報告書の作成
患者さまのケアとデータの正確な記録を通じて、新薬が安全に世に出るための橋渡し役を担うやりがいのある仕事です。それぞれの業務内容を見ていきましょう。
患者さま対応
治験看護師の業務は、患者さまが治験を滞りなく進められるようにサポートすることです。
患者さまは治験の参加について不安を抱く場合があるため、安心して治験に取り組めるよう、きめ細やかな配慮が必要になります。
おもな仕事内容 | ポイント |
医療行為とケア | ・点滴や採血などの医療行為をおこなう ・身体的介助や清潔ケアをおこなう |
被験者リクルート | ・治験の条件に合う患者さまの選定 ・参加希望者への説明会を実施する |
同意説明のサポート | ・治験の目的やリスク、メリットを説明する ・患者さまの疑問や不安を解消する |
通院スケジュール管理とリマインド | ・診察や検査の予約調整をする ・患者さまに忘れずに通院を促す |
副作用・症状の聞き取りと記録 | ・患者さまの体調変化を詳細に把握する ・報告書に正確に記載する |
医療機関内での調整業務
治験が円滑に進むためには、医療機関内の部署との連携が不可欠です。治験看護師は、医師や薬剤部、検査室などの関係者と連携を取りながら、治験の進行をサポートします。多部門との調整は、治験の効率を左右します。
おもな仕事内容 | ポイント |
医師との連携 | ・診察や処置の時間を調整する ・医師の指示を正確に伝える |
治験担当部署(薬剤部・検査室)との連携 | ・治験薬の管理や調剤を依頼する ・検査の予約や結果を確認する |
被験者の検査・通院導線の設計 | ・患者さまが迷わないよう案内を作成する ・待ち時間を減らす工夫をする |
製薬会社とのやり取り
治験看護師は、治験を依頼する製薬会社の担当者とも連絡を取り合います。治験の進捗状況の報告や、問題が発生した際の相談など定期的なコミュニケーションが重要です。製薬会社との良好な関係は、治験の成功に直結するでしょう。
おもな仕事内容 | ポイント |
CRA(モニター)とのミーティング調整 | ・定期的な会議の日程を決める ・治験の進捗状況を報告する |
治験スケジュールや変更点の伝達 | ・治験計画の変更を共有する ・関係者に速やかに情報提供する |
会議や研修参加 | ・治験に関する知識を深める ・新しい情報やガイドラインを学ぶ |
データ収集と報告書の作成
治験データは新薬の承認に欠かせない大切な情報です。
治験看護師は正確なデータ管理を担います。
おもな仕事内容 | ポイント |
症例報告書の入力・確認作業 | ・患者さまのデータを正確に入力する ・記載内容に誤りがないか確認する |
有害事象の報告とモニタリング | ・副作用や合併症を速やかに報告する ・患者さまの経過を継続的に観察する |
モニターとのデータ照合・問い合わせ対応 | 製薬会社からの問い合わせに対応する データに不備がないか確認する |
治験看護師の1日のスケジュール
治験看護師は基本的に日勤のみで、残業も比較的少なく、安定した働き方ができます。
一例として、ある日の流れをまとめます。
時間 | 業務内容 |
9:00 | 出勤・メールチェック・担当治験の進捗確認 |
9:30 | 患者さま来院対応・バイタルサイン測定・問診・診察室への案内 |
10:30 | 医師との情報共有・検査室や薬剤部との調整・患者さまの検査誘導 |
12:00 | 昼休憩 |
13:00 | 製薬会社CRAとのミーティング・治験に関する資料作成 |
16:00 | 症例報告書(CRF)へのデータ入力と確認・有害事象の記録 |
17:30 | 明日の準備・未完了業務の確認 |
18:00 | 退勤 |
データ入力などのデスクワークが多く、体力的な負担が少ない点も魅力です。
治験看護師と病棟看護師の仕事内容や働き方の違い
治験看護師と病棟看護師は、仕事内容や働き方に違いがあります。
- 夜勤や急変対応の有無
- 患者さまとのかかわり方
- 求められるスキルや対応力
これらの違いを理解することは、キャリアの選択において重要です。それぞれの特徴を比較してみましょう。
夜勤や急変対応の有無
治験は計画的に進むため、夜勤がなく、急変対応もほとんどありません。
患者さまの状態も比較的安定しているケースが多いため、生活リズムを整えやすいのが特徴です。
ただし、治験薬の投与後に副作用が出るなど、まれに迅速な対応が必要になる場面もあります。
一方で、病棟看護師は24時間体制で患者さまをケアする必要があり、急変対応の頻度も高めです。そのため、夜勤や不規則な勤務が避けられず、身体的な負担は比較的大きくなります。
患者さまとのかかわり方
治験看護師は、患者さまの健康状態の観察や、治験についての説明がおもな業務です。
対して、病棟看護師は日常生活の援助や幅広い疾患へのケアを提供します。
求められるスキルや対応力
治験看護師には治験についての専門知識や書類を作成する能力、関係者との調整能力が求められます。これは、治験が厳格なルールにもとづき、多くの関係者との連携が必要なためです。
具体例として、治験計画書を理解し、計画に沿って業務を進める能力や、製薬会社のCRA(臨床開発モニター)とスムーズに情報交換するコミュニケーション能力が挙げられます。
病棟看護師には、幅広い疾患への知識と看護技術、多職種との調整能力が必要であるものの、治験の知識やスキルはほとんど求められません。
治験看護師と治験コーディネーターの違い
「治験看護師」はあくまでも通称であり、実際には治験コーディネーター(CRC)の業務を担うことが多いです。
CRCは医療資格がなくてもなれる職種ですが、看護師資格を持つ人は「治験看護師」として呼ばれるケースがあります。
治験看護師になるためのスキルや資格
看護師資格以外に特別な資格は必要ありませんが、次のスキルがあるとより活躍できます。
スキルや資格 | ポイント |
基本的な看護知識と経験 | ・病院での看護経験があることは、患者さまの健康状態を理解するうえで役立つ ・患者さまの訴えを聞き取った際に、疾患の症状なのか、副作用なのかをある程度判断できる |
コミュニケーション能力 | ・患者さまや医師、製薬会社などの関係者と円滑にコミュニケーションをとる能力は不可欠 ・患者さまの不安を傾聴し、わかりやすい言葉で説明する、医師に治験の進捗状況を報告するなどの場面で役立つ |
書類作成能力とPCスキル | ・症例報告書といった書類の作成が多いため、書類の作成能力とPCスキルが求められる ・治験データ入力システムの情報入力や、報告書の作成があるため、WordやExcelなどの操作ができるとスムーズに業務を進められる |
情報収集能力と学習意欲 | ・治験の新しい情報や規制が更新されるため、積極的に学び続ける姿勢が大切 ・治験のガイドラインの変更や新しい疾患の知識など情報をキャッチアップする人が向いている |
治験看護師は楽しい?やりがいとメリット
治験看護師として働く魅力は多くあります。
- 新薬開発にかかわる達成感
- 規則的な生活リズムで働ける
- 身体的な負担が少ない
とくに、新しい薬が承認されて患者さまに希望を与える瞬間に立ち会えるのは大きなやりがいです。
新薬開発にかかわる達成感
治験看護師は、新しい薬が世に出る過程に関与できます。
たとえば、難病の治療薬の治験に携わり、薬が承認され、患者さまの命を救うきっかけになったり、苦痛を軽減できたりすると達成感を得られます。この経験は、病棟看護師の仕事ではなかなか得られません。
規則的な生活リズムで働ける
治験業務が基本的に日中におこなわれ、緊急対応がほとんどないため、平日の夜や週末に自分の趣味の時間を持ったり、家族とゆっくり過ごしたりできます。
仕事とプライベートのバランスを保ちやすく、規則的な生活を送れるため、心身の健康維持にもつながるでしょう。
身体的な負担が少ない
治験看護師の業務はデスクワークが中心で、身体的な負担が少ない傾向があります。病棟看護師のように、患者さまの体位変換や入浴介助などをおこなう機会がないため、業務中に腰を痛めるリスクはほとんどありません。
厚生労働省「令和5年業務上疾病発生状況調査」によると、保健衛生業における腰痛に発生率は2,194件であり、これは全業種の35.8%を占めます。このデータからもわかるように、病院での看護業務は腰に負担がかかりやすいといえます。
治験看護師であれば、身体の負担を減らせるため、体力に自信がない方や、看護師の仕事を長く続けたいと考えている方にとって、より良い働き方となるでしょう。
治験看護師はきつい?大変さとデメリット
治験看護師には多くのメリットがある一方で、大変さもあります。
- 医療行為のスキルが落ちやすい
- 覚える専門用語やルールが多い
- 多職種調整の難しさ
- 夜勤手当がない分、年収がやや下がる
- ルーチン業務の繰り返しで変化が少ない
これらの側面も理解しておくことで、転職後のギャップを減らせます。
医療行為のスキルが落ちやすい
治験看護師の仕事では採血や点滴などの医療行為をおこなう機会が少なくなるため、臨床スキルが落ちる可能性があります。
将来的に病棟看護師に戻りたいと考えた場合、自主学習や研修への参加が必要になるでしょう。
覚える専門用語やルールが多い
治験は信頼性と安全性を確保できるように法律やガイドラインに沿って進められるため、覚えるべき専門用語やルールが多くなりがちです。
具体例を挙げると「GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)」や「治験実施計画書」といった厳密なルールを理解し、遵守する必要があります。
治験看護師の仕事に慣れるまでは学習量が多く、大変だと感じるかもしれません。
多職種調整の難しさ
医師や薬剤師、製薬会社のスタッフなど多くの関係者と携わり治験を進めるため、それぞれの立場や意見が異なり調整が難しく、人間関係で悩むこともあります。
医師と製験会社の意見が食い違った際に、治験看護師はその間に入って調整する役割を担います。また、患者さまからの急な要望に対応しなければならない場合もあるでしょう。
そのため、治験看護師には、円滑なコミュニケーション能力が不可欠です。

夜勤手当がない分、年収がやや下がる
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は519万7,000円です。
治験看護師は、基本的に日勤が中心で、病棟看護師のような夜勤手当や残業手当が期待できないため、治験看護師の年収は病棟看護師を下回るケースもあります。
ルーチン業務の繰り返しで変化が少ない
治験は、同じ手順でおこなう必要があるため、定められた手順に沿って進めなければなりません。
たとえば、毎日同じ形式で患者さまのバイタルサインを記録したり、決められた手順で書類を作成したりします。
病棟看護師のように、日々異なる患者さまの容態変化に対応するような刺激は少ないと感じるかもしれません。新しいことに挑戦したい、多様な経験を積みたいと考える方にとっては、治験看護師の仕事は物足りなさを感じる可能性もあります。
現状の働き方に不満を感じている方は、訪問看護師に転職してみてはいかがでしょうか。訪問看護は、ほかの専門職と連携して利用者さまをケアするため、新しい発見があり、やりがいを感じられます。「NsPaceCareer」は訪問看護に特化した求人サイトであり、希望や条件に合った職場を見つけられるため、理想の働き方を実現できます。
治験看護師に向いている人
治験看護師の仕事は、向き不向きがあります。次に挙げる特徴に当てはまる方は、治験看護師としてやりがいを感じながら活躍できるでしょう。
- 几帳面でルールを守れる人
- スケジュール管理が得意な人
- サポート役にやりがいを感じる人
- 新しい医療や薬に興味がある好奇心旺盛な人
- ワークライフバランスを重視して働きたい人
それぞれの特徴を見ていきましょう。
几帳面でルールを守れる人
治験看護師は、几帳面でルールを守るのが得意な方に向いています。
というのも、治験が厳格なルールにもとづいておこなわれるため、細かな点まで気を配り、定められた手順を守れることが不可欠だからです。
具体例として、治験実施計画書に記載された手順通りに情報収集し、正確にデータ入力できる方、書類の記載漏れや誤りがないかチェックできる方が挙げられます。
正確なデータ管理は、治験の信頼性を高めるうえで重要です。
スケジュール管理が得意な人
治験看護師は、多くの関係者と連携してスケジュールをスムーズに進める必要があるため、スケジューリングが好きな方に向いています。
たとえば、患者さまの通院日と医師の診察日を調整したり、薬剤部や検査室と連携して治験薬の準備や検査の手配をおこなったりします。
複数のタスクを効率よく管理し、期日を守って業務を進められる方が活躍できるでしょう。
サポート役にやりがいを感じる人
治験看護師は聞き役やサポート役にやりがいを感じる方に向いています。
治験参加に不安を感じる患者さまに丁寧に説明をしたり、治験薬の副作用が出た際に患者さまの訴えを聞き取り、医師に報告したりしなければなりません。
患者さまの細かな変化に気づき、気持ちに寄り添うことで、治験に貢献する喜びを感じられるでしょう。
新しい医療や薬に興味がある好奇心旺盛な人
治験看護師は、最新の医療情報や薬の知識などを学び続ける姿勢が欠かせないため、好奇心旺盛な方に向いています。
新しく開発される薬の作用機序や副作用について積極的に学習したり、最新の医学論文や研究発表に目を通したりする方が挙げられます。知的好奇心を満たしながら働きたい方におすすめです。
ワークライフバランスを重視して働きたい人
治験看護師はワークライフバランスを重視して働きたい方に向いています。
仕事終わりに習い事をしたり、週末に家族や友人と過ごす時間を確保できたりします。仕事と生活のバランスを重視し、規則的な生活を送りたい方に適しているでしょう。
治験看護師の求人を探すコツ
治験看護師の求人を探す際には、いくつかのポイントを押さえることで、希望に合った職場を見つけやすくなります。
- 看護師専門の求人サイトを利用する
- 治験コーディネーター専門の転職支援サイトを活用する
- 病院や治験施設支援機関の採用情報を確認する
それぞれのコツを押さえて、効率的に転職活動を進めましょう。
看護師専門の求人サイトを利用する
治験看護師の求人を探すためには、看護師専門の求人サイトを利用することが効果的です。
一般の求人サイトでは見つけにくい求人も、看護師に特化したサイトであれば多く掲載されており、非公開求人や、特定の条件に合った求人を紹介してもらえるでしょう。
治験看護師のほかに、治験コーディネーターや治験ナースといった職種で検索すると、多くの求人が見つかります。
治験コーディネーター専門の転職支援サイトを活用する
治験コーディネーター専門の転職支援サイトを活用するのも良い方法です。
これは、治験看護師の求人が、治験コーディネーター(CRC)の求人として扱われることも多いためです。専門サイトでは、治験業界に詳しいコンサルタントが、治験の仕事内容や企業の文化、給与体系などきめ細やかなサポートを提供してくれます。
治験についての専門知識を持ったエージェントが、経験や希望に合わせた求人を紹介してくれるでしょう。
病院や治験施設支援機関の採用情報を確認する
病院や治験施設支援機関の公式ホームページで、採用情報を確認することも有効です。
大学病院の治験管理室のホームページや、一般企業などの採用ページを定期的にチェックしてください。
治験看護師についてのよくある質問
治験看護師への転職を検討している方からの、よくある質問とその回答を紹介します。
Q1:未経験でも治験看護師になれますか?
未経験でも治験看護師になることは可能です。
ただし、治験看護師には、病棟看護師とは異なるスキルが求められるため、入職後に治験についての研修やOJT(On-the-Job Training)の機会があるかどうかを確認してください。
新薬開発のプロセスや治験のガイドライン、書類作成の方法について、研修や先輩看護師から習得できるでしょう。
Q2:治験看護師の離職率は高いですか?
治験看護師の離職率は、次のような要因で、病棟看護師と比較して低いといわれています。
- 残業が少なく夜勤がないためワークライフバランスが取りやすい
- デスクワーク中心で身体的な負担が少ない
- 福利厚生や労働環境が整備されている
一方で、業務内容がルーチンワークだと感じる場合や、人間関係で悩むことで離職に至るケースもあります。キャリアプランや仕事の価値観と照らし合わせることが重要です。
まとめ:治験看護師は医療の質を支える大切な仕事!医療機関以外で働きたい方は転職を検討してみよう
治験看護師は、新しい薬が世に出るための重要な役割を担う、やりがいのある仕事です。
病棟看護師とは異なり、夜勤や急変対応が少なく、ワークライフバランスを保ちやすいというメリットがあります。デスクワークが中心のため、身体的な負担を抑えられます。
しかし、治験のルールや専門用語を覚えなければならない、医療技術が鈍る可能性があるといった側面もあるため、自分のキャリアプランに合うかどうか考えてみると良いでしょう。
「今の働き方を変えたい」「医療機関以外で看護師の経験を活かしたい」と考えているなら、治験看護師への転職を検討してみてはいかがでしょうか。
専門の求人サイトや転職支援サービスを活用して、あなたにぴったりの職場を見つけてください。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。