看護師がクレームで落ち込む6つの事例!患者さまの本音と対処法を解説

「また名指しで怒られた」「何度説明しても納得してもらえない」──そんな瞬間に「看護師、向いてないのかも」と弱音を吐きたくなるあなたへ。
実際、日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」によると、患者さまやご家族からのクレームに対するストレスは、看護職員の7割以上が感じていました。看護師がクレームを受けることはまれな経験ではなく、精神的な負担となりやすいことがうかがえます。
この記事では、現場で傷ついた声に寄り添いながら、実例に基づく心の支え方と具体的な対処法6選を紹介します。読むたびに、少しずつ前を向ける一歩を。
看護師がクレームで落ち込む6つの事例
看護師が落ち込みやすいクレームの例として、以下があげられます。
- 患者さまから名指しでクレームを受けたとき
- 患者さまからのクレーム内容が理不尽だと感じるとき
- 患者さまやご家族が高圧的な態度でクレームを訴えるとき
- 患者さまのクレームの内容が明らかな自分のミスだとわかったとき
- 患者さまからクレームを受けたときに周囲に助けを求められないとき
- 献身的なケアが報われないと感じるとき
それぞれを詳しく見ていきましょう。
1.患者さまから名指しでクレームを受けたとき
「看護師さんがちゃんと説明しなかったから、こんなに痛い思いをした」と個人的に責任を追及されたとき、精神的ダメージが大きくなりがちです。
看護師は患者さまに近い距離でケアをおこなうため、患者さまから名指しで評価される機会が少なくありません。
しかし、その評価がクレームという形になると、人間性やプロ意識が否定されたかのように感じ、自己嫌悪に陥ることがあります。
とくに、日頃から誠実に業務に取り組んでいる看護師ほど「こんなに頑張っているのに、なぜ私だけ」と傷つきやすい傾向にあります。
2.患者さまからのクレームが理不尽だと感じるとき
「検査の結果が遅いのは看護師のせいだ」「食事がおいしくない、どうにかして」などという理不尽なクレームに、看護師は納得できずストレスになりがちです。
こうしたクレームの多くは、患者さまやご家族の不安や焦り、ほかの医療従事者への不満が、看護師に向けられてしまうことで起こる可能性があります。
反論できない状況で、根拠のない非難を浴びることが、看護師の心をじわじわと疲弊させていくのです。
3.患者さまやご家族が高圧的な態度でクレームを訴えるとき
大声で怒鳴られる、威圧的な言葉を投げつけられる、人格を否定されるといった高圧的な態度に身の危険を覚えることがあります。
実際に「看護師に言うことを聞かせればいい」といった心ない言葉を浴びせられたケースや、物を投げられた看護師もいるようです。
このような経験が重なると、不安や恐怖により仕事へのモチベーションが低下してしまいます。
4.患者さまのクレームが明らかな自分のミスだとわかったとき
自分の不注意や確認漏れが原因でクレームにつながった場合、看護師は自己嫌悪に陥る恐れがあります。
採血を何度も失敗したり、投薬の際に明らかなミスがあったりというケースでは「看護師に向いていないかもしれない」と自らを責め、自信を失う瞬間といえるでしょう。
看護師は人の命を預かるという強い責任感を持ち、常にミスの許されない現場にいるため、ミスが患者さまからのクレームとなったときに落ち込むことがあります。
関連記事:看護師がミスで落ち込むときのNG行動5つ!対処法を知って乗り越えよう
5.患者さまからクレームを受けたときに周囲に助けを求められないとき
職場の人間関係が希薄だったり、忙しさから誰にも相談できなかったりすると、クレーム対応の重圧をひとりで抱え込むことになりがちです。
とくに、ミスをしたときに責められるような環境であると、精神的な疲弊につながります。
クレームは、チームで共有して対応すべきものですが、風通しの悪い職場や余裕のない状況であると、周囲に助けを求めにくくさせ、落ち込みが深くなります。
6.献身的なケアが報われないと感じるとき
患者さまに寄り添い、時間をかけて丁寧にケアをおこなっても、クレームになったという事例もあります。
たとえば、痛みが生じないように何度も声をかけたり、相手に細かい気配りをしたりしても、患者さまから「そんなことより処置を早く終えてほしい」といわれてしまうことがあります。
こうした場面では「何のために頑張っているのだろう」という感情に襲われ、やりがいを見失ってしまいがちです。
とくに、心から患者さまに寄り添ってきた看護師ほど衝撃は深く、仕事への情熱ややりがいを失い、看護師という職業そのものに対して疑問を抱いてしまうでしょう。
看護師がクレームで落ち込んだときに立ち直る方法
クレームによる心の傷は深く、すぐに立ち直るのは難しいかもしれません。しかし、次のような対処法を知り実践することで、前向きな一歩を踏み出せるでしょう。
- 先輩看護師や上司に報告・相談する
- クレームの内容を客観的に分析する
- 積極的に専門家のサポートを受ける
- クレームでひどく落ち込んだら転職を検討する
それぞれの方法を詳しく解説します。
先輩看護師や上司に報告・相談する
まずは、クレームを“ひとりで抱え込まない”という、あなた自身の安全配慮を最優先に、先輩看護師や看護師長にすぐ相談・報告してください。
これは組織として患者さまに謝罪するといった対応をするためだけでなく、看護師の心の負担を軽くするために重要です。
というのも、信頼できる人に相談することで、客観的に状況を整理でき、ひとりで抱えていたストレスもやわらぐからです。
先輩看護師や上司も似た経験を乗り越えてきているかもしれず、アドバイスや体験談は大きな支えとなるでしょう。
また、職場のクレーム対応のマニュアルに沿って進めることで、自分を守ることにもつながります。
クレームの内容を客観的に分析する
クレーム内容を掘り下げるのはつらいことですが、事実確認をして、しっかり分析できれば成長につながるかもしれません。次のポイントでクレーム内容を整理してみましょう。
- 事実にもとづいたクレームだったか
- 患者さまやご家族の誤解ではないか
- 自分の対応に改善できる点はなかったか
- 病院やチーム、システムの問題はないか
原因を明らかにすることで、漠然とした不安から解放され、具体的な対策に目を向けられるようになります。
休息と気分転換で心を充電する
心身ともに疲弊している状態で無理を重ねてしまうと、回復は遠のいてしまいます。意識的に次のようなリフレッシュできる機会をつくり、心の健康を守ってください。
- 有給休暇を活用してまとまった休みをとる
- 映画鑑賞、読書、スポーツなど好きな趣味に没頭する
- 自然のなかでゆっくり過ごす
- デジタルデトックスする
仕事から離れることで冷静に自分を見つめ直せ、心が軽くなるでしょう。
積極的に専門家のサポートを受ける
ひとりで抱え込まないことが、クレームから立ち直るためには必要です。
身近な人に話すのも効果的ですが、ときには専門家のサポートが有効になるでしょう。
- 職場の相談窓口や産業医に相談する
- 地域の保健所や保健センターの相談窓口を利用する
- 精神科や心療内科を受診する
産業保健スタッフや臨床心理士など“あなた専属のプロ”は、ひとりで抱えているつらさを理解し、適切なアドバイスや助けをくれる頼もしい存在です。
夜眠れない、食欲がない、集中力が続かないといった精神的な不調が続く場合は、専門家に相談してみましょう。
クレームでひどく落ち込んだら転職を検討する
職場環境が悪くクレームが頻発したり、サポート体制が不十分だったりする場合、精神的に限界を感じることもあります。
そのようなときは、転職を検討することも心を守るための大切な選択肢です。
無理に同じ職場で続けることで、心身の負担を増す場合もあるため、より良い環境で安心して働くための前向きな決断をしましょう。
病院勤務がつらいと感じるなら、利用者さまにじっくりケアができる訪問看護師への転職も検討してみてはいかがでしょうか。
「NsPaceCareer」は訪問看護ステーションの求人に特化した看護師専門の転職サイトです。
新しい働き方を探す選択肢のひとつとしてご検討ください。
看護師が受けやすいクレームと患者さまの本音
クレームは、患者さまやご家族の本音や要望が隠れていることも少なくありません。
- 説明不足・不親切
- 処置・ケアへの不満
- 待ち時間への不満
- 態度・言葉遣いへの不満
- プライバシーへの配慮不足
- 病状説明・診断への不満
クレームの内容を理解し、その背景にある患者さまの気持ちに目を向けてみましょう。
説明不足・不親切
「何も説明してくれなかった」「話を聞いてくれなかった」といったクレームは、患者さまやご家族が抱える不安が背景にあります。
慣れない環境で病状や治療についての情報が少ないと、安心できないでしょう。また、患者さまの訴えが十分に聞いてもらえないと感じると、不信感や不満が募りがちです。
そのため、専門用語を避けてわかりやすい言葉で丁寧に説明して、患者さまの話に耳を傾け共感する姿勢が、クレームを防ぐカギとなります。
処置・ケアへの不満
「注射するときに2回も刺されて痛かった」「トイレの介助をしてもらったけど乱暴だった」といった声は、処置やケアに対する患者さまの恐怖心、痛みへの過敏な反応などから発生します。
注射や点滴、処置には少なからず痛みがともない、感じ方は患者さまそれぞれです。
また、看護師の動きが忙しさから無意識に早くなったり、確認や声がけが不十分だったりすると、患者さまは乱暴だと感じてしまいがちです。
処置の前に「少し痛いかもしれません」と一言添える、痛みの度合いをこまめに確認するなど、患者さまの身体的・精神的な苦痛に配慮したケアが求められます。
待ち時間への不満
「予約して来たのにいつまで待たせるのか」「スタッフの手が空いているように見えたけど、まだ診察に呼ばれないのか」といったクレームは、患者さまの焦りや、状況が見えないことへの不満がおもな原因です。
病院での待ち時間は、患者さまにとって不安と疲労をともなうものです。また、患者さまのなかには症状が悪化するのではないか、次の予定に間に合わないのではないか、と感じている方もいるでしょう。
こまめに「診察まであと30分ほどお待ちいただきます」「今、緊急の対応をしております」など、状況を伝える声かけひとつで、患者さまの心理的な負担を軽減できる可能性があります。
態度・言葉遣いへの不満
「話を聞いてもらえなかった気がした」「馴れ馴れしい口調でバカにされた気がした」といったクレームは、患者さまの尊厳への配慮不足や言葉の受け取り方の違いが原因です。
高齢者に対する口調が幼稚になったり、忙しさから表情が硬くなったり、事務的な言葉遣いになったりすることも、患者さまに悪い印象を与えかねません。
丁寧な言葉遣いを心がけ患者さまを尊重し、温かい表情で接することで信頼関係を築けるでしょう。
プライバシーへの配慮不足
「隣の人に自分の病気の話を聞かれてしまった」「おむつを交換するときにカーテンが閉まっていなかった」といったクレームは、患者さまの個人情報の意識や羞恥心への配慮などが足りないことが背景にあります。
個人情報が漏れることへの不安や、自分の姿を見られることへの羞恥心は、患者さまにとってストレスになりがちです。
診察室やベッドサイドでの会話は声の大きさに注意し、着替えや身体のケアの際はかならずカーテンを閉めるなどの基本的な配慮が、信頼関係を深めるうえで欠かせません。
病状説明・診断への不満
「病気の説明がわかりづらい」「診断に納得できない」といったクレームは医師への不満がおもな原因ですが、看護師にぶつけられることがあります。
患者さまやご家族は、病状の悪化や診断内容に対する不安、医療への不信感から、その感情をぶつけてしまいます。
こうした場合、看護師だけの問題ではなくても、まずは患者さまの感情を傾聴し「つらいですよね」といった共感を示すことが重要です。
そのうえで、医師やほかの医療スタッフと連携し、患者さまの疑問や不安解消に努める姿勢を見せることが求められます。
看護師がクレームで落ちこむのは自然なこと!ゆっくり次のステップを踏み出しましょう
看護師の仕事において、クレームを避けることが難しいものです。
看護師がクレームによって深く落ち込んでしまうのは、真摯に患者さまと向き合っている証拠であり、決して弱いからではありません。
クレームを受けた経験をそのままで終わらせず、成長の材料として捉えてください。
つらいときはひとりで抱え込まず、頼れる人に相談することが回復を早めることもあるため、自分のペースでゆっくりと次のステップを踏み出しましょう。
<参考サイト・文献>

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