地域医療とは?看護師の7つの役割と貢献できる場を詳しく紹介

「病院だけじゃない、自分の看護が地域の誰かを支える力になる」──そう感じたことはありませんか?
高齢化が進む今、地域医療の現場では、あなたの力が必要とされています。本記事では、看護師が果たすべき7つの役割と、実際に活躍できるフィールドを詳しく解説します。地域に根ざした看護の一歩を踏み出すためのヒントが、ここにあります。
地域医療とは
地域医療とは、地域住民が、それぞれのニーズに応じて医療や介護、福祉サービスを受けられるように構築された医療提供体制のことです。高齢化や人口減少が進む現代において、地域医療の重要性はますます高まっています。ここでは「地域医療構想」「地域包括支援」それぞれの取り組みを見ていきましょう。
地域医療構想
地域医療構想は、都道府県が主体的に地域の実情に応じた医療提供体制を構築するものです。
病床の機能分化と連携を進め、効率的で質の高い医療提供を目指しています。
具体的には、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの医療機能に着目し、それぞれの役割分担と連携を推進しています。
地域包括支援
地域包括支援は、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるよう、医療や介護だけではなく住まいや生活支援が一体的に提供される体制のことです。
看護師は、この地域包括支援のなかで、多職種と連携しながら、利用者さまやご家族の生活を支える役割を担います。
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地域医療で看護師が担う8つの役割
地域医療における看護師の役割は多岐にわたり、地域住民の健康と生活を幅広くサポートします。ここでは、看護師が地域医療で担う主要な役割を解説します。
- 病院や病棟でのケアや急性期対応
- 訪問看護や在宅医療での実践
- 多職種連携と調整
- 利用者さまとご家族の意思決定のサポート
- 入退院の支援
- 慢性疾患への対応
- 地域住民の健康管理と予防活動
- 教育や研修を通した地域医療活性化への貢献
看護師は、専門性を活かしながら、地域社会の健康を支えています。それぞれを詳しくみていきましょう。
病院や病棟でのケアや急性期対応
病院や病棟で看護師は、病気やケガで入院している患者さまに対し、医師の指示のもとでケアを行います。具体的には、患者さまの病状の変化を的確にアセスメントし、日常生活の援助や医療処置です。
急性期対応では、容態が急変した患者さまに対し、迅速かつ適切な処置が求められます。これらは、患者さまの早期回復を支援するうえで不可欠です。
患者さまの命を守るための迅速な判断と行動が求められ、その貢献は大きいといえるでしょう。
訪問看護や在宅医療での実践
訪問看護や在宅医療での実践は、自宅で療養する利用者さまのもとへ訪問し、必要な医療ケアや生活支援を行います。
利用者さまやご家族の意向を尊重し、次のような業務を行いその人らしい在宅生活を送れるよう支援するのです。
- 医療処置
- 日常生活の援助
- ご家族への介護指導
- 精神的なサポート
利用者さまやご家族の意向を丁寧に聴き取り、そのニーズに合わせた柔軟な対応が求められます。在宅医療は、地域包括ケアシステムの重要な一環であり、訪問看護師はその中心的な役割を担っています。
多職種連携と調整
地域医療では、次のようなさまざまな専門職と連携し、利用者さまに必要なサービスが円滑に提供されるように調整することが看護師の役割です。
- 医師
- リハビリテーションのスタッフ
- ケアマネジャー
- ソーシャルワーカー
地域医療においては、利用者さまのニーズは多岐にわたるため、看護師だけですべてのニーズに対応することは困難です。
看護師は、チーム医療の連携の中心となり、情報共有を促し、専門職の意見を調整する重要な役割を担います。
利用者さまとご家族の意思決定のサポート
治療方針やケアの選択について、利用者さまとご家族の意思決定をサポートすることも、地域医療における看護師の役割です。
この意思決定は、その後の療養生活の満足度にも影響します。情報提供を十分におこない利用者さまやご家族が納得のいく選択ができるようにしなければなりません。
看護師は、わかりやすい言葉で情報を提供し、それぞれの価値観や希望を丁寧に聴き取ることが重要です。
入退院の支援
入退院の支援は、患者さまが入院する前から退院後の生活を見据え、必要な準備や情報提供をおこなうことです。看護師は、患者さまが入院中、安心して治療に専念できるよう、退院後はスムーズに地域での生活へ戻れるよう支援します。
入退院は、患者さまやご家族にとって大きな変化であり、不安を感じやすい時期です。
入院前から患者さまやご家族と面談したり、入院中も入院生活や治療の流れについて説明したりすることで、不安の軽減に努めます。
慢性疾患への対応
糖尿病や高血圧などの慢性的な病気を抱える患者さまに対し、療養指導や自己管理の支援をおこなうことも看護師の役割のひとつです。
具体的には、糖尿病の患者さまは、食事や運動の注意点を指導したり、薬や注射の管理方法について説明したりします。慢性的な病気は長期にわたる自己管理が必要となるため、それぞれの患者さまの状態や生活背景に合わせた療養指導をおこなうことがポイントです。
また、患者さまの精神的なサポートや、ご家族への情報提供もおこない、慢性疾患のある患者さまが、病気と上手に付き合いながら、自分らしい生活を送れるよう支援します。
地域住民の健康管理と予防活動
看護師は、健康診断や保健指導などを通して、地域住民全体の健康増進や疾病予防に取り組みます。
病院や診療所内だけでなく、地域社会において人々の健康を守るために次のような活動をおこないます。
- 健康診断や各種がん検診の啓発
- 生活習慣病予防のための保健指導
- 感染症予防のための啓発活動
地域住民一人ひとりの健康意識を高め、規則的な生活習慣を身につけるためのサポートをおこなうことで、地域全体の健康レベルの向上に貢献します。
教育や研修を通した地域医療活性化への貢献
地域医療の質を高めるためには、医療従事者の知識やスキルの向上が欠かせません。
研修会の企画・運営を通して、最新の知識を地域に広めることも重要な役割です。教育と研修は、地域医療の発展に不可欠といえます。
地域医療で看護師が貢献できる場
看護師が活躍する場は多岐にわたり、病院から在宅、地域に根ざした施設まで広がっています。
- 急性期の病院
- 回復期の病院
- 慢性期の病院
- 訪問看護ステーション
- クリニック
- デイサービス
- 役所や保健所
それぞれの場所で、看護師は専門知識やスキルを活かし、患者さまのニーズに応じたケアを提供することで、地域社会の健康を支えています。
急性期の病院
急性期の病院の看護師は、救急搬送されてくる方や、治療が必要な患者さまに対し、集中的な医療的ケアを提供することで、その命と健康を守っています。
そのため、高度な医療知識と技術はもちろんのこと、患者さまの容態の急な変化に迅速に対応できる能力が不可欠です。チーム医療の一員として、身体的なケアに加えて、患者さまの早期回復を支えるための精神的なサポートも重要な役割となります。
回復期の病院
回復期の病院において、看護師は急性期治療を終えられた患者さまが、自宅や社会へ復帰するための支援をおこないます。
患者さまが再び自分らしい生活を送れるよう、多職種と協力し、意欲を引き出しながら日常生活を取り戻せるようサポートすることが重要です。それぞれの専門性を活かし、患者さまの自立に向けた支援をおこないます。
慢性期の病院
慢性期の病院では、長期にわたる療養を必要とする患者さまに対し、日常生活の援助や医療的ケアが提供されます。看護師はそのなかで、患者さまが安心して療養生活を送れるよう、生活の質の維持・向上を目指したケアをおこないます。
なぜなら、ここでは患者さま一人ひとりの尊厳を尊重し、その方らしい生活を送れるよう支援することが大切だからです。
そのため、看護師には長期的な視点とともに、患者さまやご家族の意向に丁寧に寄り添ったケアが求められます。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションでは、自宅で療養する利用者さまのもとへ訪問し、次のような多岐にわたる支援をおこないます。
- 医療処置
- 療養上の相談
- 日常生活の援助
利用者さまの生活の場に入るため、その方らしい療養を支えるための専門的な知識や技術が不可欠です。
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クリニック
クリニックでは、外来の患者さまに、医師の診察の補助をはじめ各種検査や注射、生活習慣病予防などの保健指導をおこないます。
地域住民にとって身近な医療機関であるクリニックにおいて、看護師は日々のケアを通じて患者さまの健康管理や疾病予防に貢献します。
そのため、患者さまの不安な気持ちに丁寧に寄り添い、わかりやすい説明をおこなうことが重要となります。
デイサービス
デイサービスの看護師は、高齢者や障がいのある利用者さまに対し、次のようなサービスを提供します。
- 健康チェック
- 日常生活の支援
- レクリエーション
これらのサービスを通じて、利用者さまが住み慣れた地域で生き生きと生活できるようサポートすることが、デイサービスにおける看護師の重要な役割です。
また、医師や介護士、機能訓練指導員といった多職種と連携し、それぞれの専門性を活かしながら、利用者さま一人ひとりの生活の質向上を目指します。
役所や保健所
役所や保健所では、地域住民全体の健康増進や疾病予防のために次のような活動をおこないます。
- 健康相談
- 保健指導
- 感染症対策
看護師は、公衆衛生についての幅広い業務に携わり、住民の健康意識を高めることで、地域の健康レベルの向上に貢献しています。
地域医療に貢献するために看護師に求められていること
地域医療に貢献するためには、看護師は専門的な知識やスキルだけでなく、次のような役割や視点が求められます。
- アセスメント能力によって現状を把握すること
- 多職種とスムーズに連携すること
- 幅広いスキルを身につけること
それぞれを詳しくみていきましょう。
アセスメント能力によって現状を把握すること
地域医療に貢献するために看護師に求められる重要な要素のひとつに、アセスメント能力による現状の正確な把握があります。
なぜなら、看護師が利用者さまの状態はもちろんのこと、生活環境や社会的な状況までを理解することは、その人に本当に必要な支援を見極める上で不可欠だからです。
そして、質の高い地域医療の提供は、このアセスメントにもとづいたケアを計画することによって実現します。
利用者さまの身体的な状態に留まらず、心理的な側面や社会的な背景までをも含めたアセスメントをおこなうことで、一人ひとりに合った支援を提供できるでしょう。
多職種とスムーズに連携すること
多職種とスムーズに連携することは、専門職がその知識やスキルを最大限に活かし、利用者さまにとって適したサービスを提供するために不可欠です。
そのため、看護師には、多職種とコミュニケーションを図り、情報を共有し、意見交換をおこなうことが求められます。
地域医療においては、医師やケアマネジャー、ソーシャルワーカーをはじめとする専門職が協力し合うことで、より質の高いケアの提供が可能になるのです。
幅広いスキルを身につけること
地域医療において、看護師が幅広いスキルを身につけることは、多様なニーズに対応するために必要です。
- 病院での急性期ケア
- 在宅での慢性期ケア
- 地域住民への健康教育
ひとつの分野に特化した知識だけでなく、幅広い視点と対応力が求められます。
地域医療で看護師が直面している課題
地域医療には、看護師がやりがいを感じながら活躍できる一方で、いくつかの課題も存在します。
- 医療と介護との連携が不十分
- 看護師の人材不足
- 看護師の役割の多様化と能力格差
- 高齢化による需要の増加とニーズの複雑化
これらの課題を理解し、改善に向けて取り組むことが、より良い地域医療の実現につながります。
医療と介護との連携が不十分
地域医療では、情報共有の不足や連携体制の不備により、利用者さまへのスムーズなサービス提供が妨げられる場合があります。
たとえば、退院する高齢の患者さまが、在宅介護サービスが必要であるにもかかわらず、介護事業所への情報伝達が遅れたり、情報が十分に伝わらなかったりするケースがあります。
情報共有の不足や連携体制の不備により、利用者さまへのスムーズなサービス提供が妨げられるのです。
その結果、退院後すぐに介護サービスが開始されず、ご家族の負担が増加したり、必要なケアが継続されずに再入院のリスクが高まったりする可能性があります。
看護師の人材不足
看護師の人材不足は、地域医療における深刻な課題です。
また、看護師だけではなく医療・介護業界における人材不足も課題です。
厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によると、看護職(看護師・准看護師)の2022年度の有効求人倍率は2.20倍です。全職業は1.19倍であることから、看護師は人手不足の傾向です。
とくに、地方や過疎地では看護師の確保が難しいといわれ、負担が増加しがちです。
人材不足は、一人当たりの業務負担を増やし、医療の質の低下につながるため、現職の看護師への支援だけではなく、潜在看護師の復職支援も重要な対策となります。
看護師の役割の多様化と能力格差
看護師の役割が多様化している一方で、看護師一人ひとりの持つ知識やスキルにばらつきがちです。
実際に、病院で急性期ケアをしてきた看護師が、訪問看護ステーションに転職した場合、在宅での処置や生活支援といった経験の少ない分野でスキル不足を感じるかもしれません。
地域包括ケアの推進により、看護師には、病院内でのケアだけでなく、在宅医療や地域連携など、幅広い知識とスキルが求められるようになっています。
個々の能力差を埋め、質の高いケアを提供するためには、新卒からベテランまで、それぞれの経験や配属先に合わせた教育体制の整備が重要です。
高齢化による需要の増加とニーズの複雑化
高齢化が進むにつれて、医療や介護の需要が増加し、ニーズも複雑化します。
というのも、歳を重ねると、複数の病気を抱えるようになり薬の種類も増える傾向にあるからです。
たとえば、心不全とうつ病を抱える高齢者の場合、それぞれの病気の専門的な知識を持ったうえで、地域での生活をサポートしなければなりません。
看護師は、これらの複雑なニーズに対応できるよう、学会や研修会への積極的な参加、専門資格の取得といった継続的な学習とスキルアップが大切です。
まとめ:看護師として幅広いスキルを身につけて地域医療に貢献しよう
地域医療は、地域住民がいきいきと安心して暮らすための大切な基盤であり、看護師はその未来を支える欠かせない存在です。
幅広い役割を理解し、それぞれの現場で必要とされるスキルを磨いていくことで、地域医療における活躍のフィールドは無限に広がっていきます。
この記事をきっかけに、「私も地域に貢献する看護師になりたい」と感じた方は、ぜひその想いを大切に、一歩を踏み出してみてください。
新たなスキルを身につけながら、地域医療の現場で輝くあなたの姿は、きっと多くの人の力になります。地域医療での経験は、看護師としての成長だけでなく、人としての豊かな歩みにもつながっていくはずです。
<参考サイト・文献>

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