看護師が公認心理師を取得するには?ダブルライセンスの4つのメリット

公開日:2025/05/26 更新日:2025/05/26
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「患者さまの心のケアにもっと寄り添いたい」「専門的な心理支援の知識やスキルを身につけてケアに活かしたい」

このように感じている看護師はいませんか。公認心理師の資格を取得することで、その働き方を実現できるかもしれません。

この記事では、看護師が公認心理師の資格を取得する方法やダブルライセンスを持つメリット・デメリットを解説します。ぜひ最後まで読んで、キャリアプランの参考にしてください。

看護師が公認心理師を取得するには

公認心理師は、心理分野における唯一の国家資格です。国家試験に合格すると資格を取得できます。

  • 受験資格と区分ごとのルート
  • 試験までの流れ
  • 試験の概要
  • 試験の合格率と難易度

看護師から公認心理師を目指す道は複数あります。自分の状況に合わせて、最適なルートを選びましょう。

受験資格と区分ごとのルート

看護師が公認心理師の受験資格を得るには、大きくわけて「大学卒業後に大学院へ進むルート」と「特定の条件を満たす実務経験を経て受験するルート」があります。

区分受験資格
A4年制大学で25科目を履修後、大学院で10科目を履修
B4年制大学で25科目を履修後、プログラム施設で2年以上の実務を経験
C区分A・Bと同等以上の知能と技能があると認定
D1公認心理師法の施行前に大学院で6科目を履修
D2公認心理師法の施行前に大学院に入学、施行日前に6科目を履修
E公認心理師法の施行前に4年制大学で12科目を履修または履修中で、施行後に大学院で10科目を履修
F公認心理師法の施行前に4年制大学で12科目を履修または履修中で、プログラム施設で2年以上の実務を経験
参考:公認心理師の資格取得方法について|厚生労働省 

区分A~Fまでの区分がありますが、区分D~Fは、公認心理師法が施行される前(2017年9月15日以前)に大学や大学院で心理学を学んだ人、または実務経験を積んだ人を対象とした特例措置での受験資格です。

そのため、これから公認心理師の資格取得を目指す方は、区分A~Cの基準を満たす必要があります。

試験までの流れ

公認心理師の試験は、年に一度実施されます。公認心理師試験研修センターから「受験の手引き」が公表された後、試験までのおもな流れは次のとおりです。

  1. 「受験関連書類作成システム」にメールアドレスを登録してWEB受付番号とパスワードを取得
  2. 受験関連書類作成システムに「顔写真アップロード」と「受験申込情報」を入力
  3. 受験手数料(28,700 円 非課税)を振り込む
  4. 受験関連書類作成システムから「公認心理師試験受験申込書(控え)」「証明書等郵送用ラベル」をダウンロード
  5. 受験申込区分ごとの提出書類を確認後、簡易書留で郵送
  6. 試験

2025年3月2️日におこなわれた第8回公認心理師の試験では、2024年12月2日から12月27日までが受験申込の期間でした。例年同じような流れになるため、必要書類を揃えてしっかりと準備を進めましょう。

試験の概要

試験の概要は次のとおりです。

出題形式全問マークシート方式で、四肢択一または五肢択一
出題範囲公認心理師として必要な知識および技能

試験会場は「東京都」「大阪府」のいずれかです。

試験の合格率と難易度

公認心理師の試験の合格基準は「総得点の60%程度以上を基準とし、問題の難易度で補正するという考え方を基に決定する」と明記されています。

過去3年間の合格率を次の表にまとめました。

年度合格率(%)
2023年73.8
2024年76.2
2025年66.9
参考:第6回公認心理師試験(令和5年5月14日実施)合格発表について第7回公認心理師国家試験(令和6年3月3日実施)合格発表について第8回公認心理師国家試験(令和7年3月2日実施)合格発表について

年によって変動しますが、おおよそ70%前後で推移しています。国家資格の中では合格率が高いものの問題数は200問を数え、試験時間が約4時間と長く、さらに出題範囲も広いため、難易度は低いとはいえないでしょう。

公認心理師と看護師のダブルライセンスのメリット

看護師が公認心理師の資格を取得することには、多くのメリットがあります。

  • メンタルヘルスのスキルアップにつながる
  • 精神科や心療内科の患者さまのケアに役立つ
  • 年収アップが期待できる
  • 転職で有利になりやすい

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

メンタルヘルスのスキルアップにつながる

公認心理師の資格を取得することで、心理学に関する専門的な知識や、カウンセリングの技術を学べます。

これは、看護師として患者さまの精神的な苦痛を深く理解し、そのニーズに合わせた適切な心理的サポートを提供するうえで、大きな力となります。

たとえば、不安や抑うつを抱える患者さまへの共感的なかかわりや、効果的なコミュニケーションを通じて、患者さまが安心できるケアの実践につながるでしょう。

日々の看護業務において、患者さまの心の声に耳を傾け、心に寄り添えるようになります。

精神科や心療内科の患者さまのケアに役立つ

精神科や心療内科では、患者さまの心理的なケアがとくに重要です。

公認心理師の資格がある看護師は、薬物療法や作業療法といったほかの治療と並行して、患者さまの心理的な側面からサポートできます。

年収アップが期待できる

看護師資格に加えて公認心理師の資格を取得することは、専門性を高めることにつながります。職場によっては、その専門性が評価され、年収アップが期待できます。

精神科や心療内科など心のケアの専門知識がある人材が必要な病院では、資格手当が支給されたり、専門的な業務に携わったりすることで給与水準が高くなるでしょう。

転職で有利になりやすい

公認心理師と看護師の両方の資格を持つ人材は、医療機関や福祉施設にとって魅力的な存在です。

身体的なケアと精神的なケア、両方を担える人材が求められているため、希望やキャリアプランに合った職場を選びやすくなります。

精神科や心療内科のほかに、緩和ケア病棟や児童福祉施設など、心のケアを重視する現場では、専門性が高く評価され、転職活動を有利に進められるでしょう。

公認心理師と看護師のダブルライセンスのデメリット

ダブルライセンスには多くのメリットがある一方で、資格取得までに時間と費用がかかったり、キャリアアップにつながるとは限らなかったりなど考慮すべき点もあります。

資格取得までに時間と費用がかかる

公認心理師の資格を取得するためには、大学や大学院での学習、または実務経験が必要です。

どちらのルートでも、時間と費用がかかります。働きながら資格取得を目指す場合は、学習時間の確保も課題となるでしょう。

キャリアアップにつながるとは限らない

ダブルライセンスを取得したからといって、必ずしもキャリアアップにつながるとは限りません。

職場によっては、業務内容が大きく変わらず昇格のチャンスも得られない恐れがあります。

資格取得を目標にするだけでなく、その資格をどのように活かしたいのか、具体的なキャリアプランを考えることが大切です。

看護師で心理学を学びたい人におすすめの資格

公認心理師以外にも、看護師が心理学を学ぶうえで役立つ資格があります。

  • 臨床心理士
  • 心理カウンセラー
  • メンタルケア心理士

これらの資格を取得することで、看護の現場で患者さまやご家族の心のケアに貢献できるでしょう。

臨床心理士

臨床心理士は、心理に関する専門的な知識やスキルを用いて、人々の心の健康を支援する専門家です。

専門的な知識やカウンセリング技術は、患者さまの心理的な問題を深く理解し、次のような場面で精神的サポートをするのに役立ちます。

  • 慢性疾患のある患者さまの心理的なケア
  • 終末期医療における患者さまやご家族への心理的支援
  • トラウマを抱える患者さまのケア

チーム医療のなかで、心理的な視点から患者さまの全体像を捉え、多職種と連携する役割も担えます。

心理カウンセラー

心理カウンセラーは、相談者の悩みや問題を聞き、心理学的な知識にもとづいてアドバイスやサポートをおこなう専門家です。

この資格で得た傾聴力や共感力、問題解決のためのカウンセリングスキルは、患者さまとのコミュニケーションをスムーズにします。

さらには、患者さまだけでなく、ご家族の精神的なケアにも活かせるでしょう。

メンタルケア心理士

メンタルケア心理士は、日本医学心理カウンセリング学会が認定する民間資格です。

この資格で学んだストレスケアやメンタルヘルスに関する知識は、患者さまのストレス反応を早期に発見し、適切なケアを提供するのに役立ちます。

具体的には、入院生活の悩みや、治療への不安を軽減するためにアプローチできます。また、自身のメンタルヘルス管理にも役立ち、より良い状態で仕事に取り組めるでしょう。

関連記事:看護師がカウンセラーになるには?活かせる資格7つと求人の探し方

公認心理師と看護師についてよくある質問

ここでは、公認心理師と看護師に関するよくある質問にお答えします。

Q1:看護師から公認心理師になった際、年収が低くなるのはなぜですか?

看護師から公認心理師になると、基本給が下がったり、夜勤手当が見込めなくなったりするため、年収が下がる可能性があります。

ただし、公認心理師としての専門性を高く評価する医療機関や福祉施設、教育機関などもあります。看護師としての経験を活かしつつ、公認心理師としての専門性を発揮できる職場を選ぶことが、年収の維持・向上には重要です。

Q2:公認心理師のGルートって何ですか?

Gルートは、公認心理師の受験資格のひとつである区分Gのことを指します。

公認心理師法が施行される前の特例措置でしたが、この措置は令和4年7月17日で終了しました。

Q3:公認心理師と看護師の資格は精神科以外でも活かせますか?

精神科以外でも十分に活かせます。具体的には、次のような領域で心のケアの専門知識が求められています。

  • 緩和ケア病棟
  • 高齢者施設
  • 児童福祉施設

また、教育機関や企業の人事部門などで活躍する道もあります。

まとめ:公認心理師の資格取得を慎重に検討してメンタルヘルスケアに活かそう

看護師が公認心理師の資格を取得することは、スキルアップとキャリアの多様化につながる可能性があります。

専門的な心理支援の知識とスキルを習得することで、患者さま一人ひとりの心の状態に、寄り添ったケアを提供できるようになるでしょう。

しかしながら、資格取得には時間と費用を要し、その努力が必ずしも年収増といったキャリアアップにつながるとは限りません。

公認心理師の資格取得が長期的なキャリアプランにおいて本当に必要かどうか、慎重に検討してみてください。看護師としての貴重な経験と、公認心理師としての専門性を兼ね備えることは、ほかにはない強みとなるはずです。

<参考サイト・文献>

公認心理師の資格取得方法について|厚生労働省

第6回公認心理師試験(令和5年5月14日実施)合格発表について

第7回公認心理師国家試験(令和6年3月3日実施)合格発表について

第8回公認心理師国家試験(令和7年3月2日実施)合格発表について

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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