緩和ケアの看護師の役割5つ!向いている人の特徴とやりがいを解説

「緩和ケアの看護師はどんなことをしているの?」「緩和ケアを受けている患者さまに寄り添えるか自信がない」
緩和ケアは患者さまやご家族の大切な時間を支えるやりがいのある分野ですが、その分、看護師として求められる役割も多く、不安や迷いを抱くのは当然のことです。
この記事では、緩和ケアの看護師の具体的な役割や仕事内容、向いている人の特徴、やりがいについて解説します。
自分に向いているかどうかを知りたい、これから緩和ケアにかかわりたいと考えている方にとって、選択肢を広げるヒントになれば幸いです。
緩和ケアでの看護師の役割と仕事内容5つ
緩和ケアで働く看護師には「病気による痛みを和らげる」だけでなく、次のような役割も求められます。
- 身体的苦痛のアセスメントとケア
- 精神的・社会的苦痛やスピリチュアルペインへのサポート
- ご家族のケア
- 患者さまとご家族の意思決定を支援
- 多職種連携による患者中心のケアの実現
詳しく見ていきましょう。
1.身体的苦痛のアセスメントとケア
緩和ケアにおける看護師の役割のひとつが、身体的な苦痛をやわらげることです。
がんによる痛みや呼吸のしづらさ、だるさ、吐き気など、患者さまの症状をアセスメントして、医師や薬剤師と連携しながらケアを実施します。
たとえば、モルヒネをはじめとした鎮痛薬の使用や副作用への対応など、薬の管理も緩和ケアにおける看護師の業務のひとつです。
患者さま一人ひとりの訴えに耳を傾け、QOL(生活の質)を尊重したケアを提供します。
2.精神的・社会的苦痛やスピリチュアルペインへのサポート
緩和ケアを受ける患者さまは、身体の痛みだけでなく不安や恐怖を抱えています。
緩和ケア病棟の看護師は、医療的な処置やバイタルサイン測定にとどまらず、患者さまの心のケアにもかかわります。
「死への恐れ」「家族への申し訳なさ」「人生への悔い」など、さまざまな感情に寄り添い傾聴する姿勢が大切です。
必要に応じて、臨床心理士やカウンセラーと一緒に、気持ちの整理を援助する場面もあります。
3.ご家族のケア
緩和ケアでは、患者さま本人だけでなくご家族への支援も欠かせません。
看護師は、患者さまの闘病に向き合うご家族の苦しみや悲しみだけではなく、看取り後、大切な人を失った深い悲しみにも寄り添います。
ご家族が「後悔のない看取り」ができるよう、心理的な面でサポートします。
4.患者さまとご家族の意思決定を支援
「どこで最期を迎えたいのか」「延命治療をどうするか」など、人生の最終段階に関する選択肢について、思いをくみとり、ご家族とともに考えることも、緩和ケアの看護師の役割です。
ターミナルケアにおける治療方針の選択は、患者さま本人だけでなくご家族にとっても大きな決断を求められるため、精神的な負担を感じやすい傾向です。
医師の説明を補足しながらわかりやすく伝え、患者さまやご家族が後悔しないようにサポートします。
5.多職種連携による患者中心のケアの実現
緩和ケアは、以下のさまざまな職種がかかわって成り立っています。
- 医師
- 看護師
- 薬剤師
- 管理栄養士
- 理学療法士
- ソーシャルワーカー
看護師の役割は、患者さまの希望や変化をチームに伝える「橋渡し」です。
多職種との情報共有や連携を通じて、患者さまが望むかたちを実現できるよう支援します。
緩和ケアの看護師になるには看護師資格があればOK
看護師資格があれば、緩和ケアの現場で働くことは可能です。
ただし、患者さまを支えるには、身体的な苦痛をやわらげるだけでなく、精神的・社会的な不安に向き合う姿勢が大切です。
ここでは、緩和ケアに必要なスキルや、さらに専門性を高めたい看護師向けの資格を解説します。
緩和ケアの看護師に求められるスキル
緩和ケアの現場では、医療的な知識や技術以上に以下のような「人と向き合う力」が求められます。
- 傾聴力
- 観察力
- 共感力
患者さまの言葉に耳を傾け、小さな変化にも気づいて気持ちに寄り添う姿勢が、最期の時間をおだやかに支える看護につながります。
また、医師や薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種と連携する力や、想定外の状況に対応する柔軟性も不可欠です。
医療技術に自信があっても、感情面のサポートが苦手な場合は戸惑うこともあるため、日頃からコミュニケーション力を磨いておくことが大切です。
緩和ケアのスキルを高めたい看護師に必要な資格
緩和ケア病棟で働くのに特別な資格は必要ありませんが、より深く緩和ケアにかかわりたいと考える看護師には、次のような専門資格の取得が役立ちます。
- 緩和ケア認定看護師
- がん薬物療法看護認定看護師
これらの資格は、一定の実務経験や研修が必要なため、キャリアアップの選択肢として検討することをおすすめします。
また、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)やEOL(エンド・オブ・ライフ)といった、ターミナルケアに関する知識を深めることも有効です。
各種研修や勉強会への参加を通じて、実践に役立つ知識を積み重ねていきましょう。
緩和ケアの看護師に向いている人の特徴
緩和ケアの看護師には、患者さまへ思いやりをもってケアできる人が向いています。
- 相手の気持ちに寄り添ってかかわれる
- 患者さまやご家族と長期的にじっくりかかわりたい
- 死と向き合う覚悟をもっている
- チーム連携・カンファレンスに興味がある
- 看護ケアの質にこだわりたい
自分の価値観や志向に合っているか、チェックしてみましょう。
相手の気持ちに寄り添ってかかわれる
緩和ケアでは「治すこと」よりも「どう生きるか」を大切にすることが多く、明確な答えがない場面に直面することもしばしばです。
そのような中で欠かせないのが、患者さまやご家族の気持ちをくみとる姿勢です。
たとえば「家で過ごしたいけど、家族に迷惑をかけたくない」といった思いを受け止め、患者さまが大切にしたい価値観に寄り添う対応が求められます。
さらに、表情の変化や話すスピード、沈黙の長さなど、さりげないサインに気づける観察力と共感力は、緩和ケアにおいて強みになります。
患者さまやご家族と長期的にじっくりかかわりたい
急性期のようなスピード感のある看護よりも、患者さまとじっくり向き合う時間を大切にしたい看護師には、緩和ケアが向いています。
症状の変化はゆるやかでも、会話や表情から読みとる「小さな変化」に気づく感受性が活かされます。
患者さまと長くかかわりながら信頼関係を築くことにやりがいを感じる看護師にとって、適した環境といえるでしょう。
死と向き合う覚悟をもっている
緩和ケアでは、患者さまの死に日常的に向き合います。
病気の治癒を目指す医療とは異なり、限りある時間をどのように過ごすかを支えるケアだからこそ、命の終わりに対する自身の価値観や覚悟が問われる場面も少なくありません。
ときには、看護師が迷いや葛藤を抱えることもあります。
こうした過程も含めて、最期までその人らしさを支える看護にやりがいを見いだせる看護師に向いています。
チーム連携・カンファレンスに興味がある
緩和ケアでは、医師や薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーなど多職種によるチームケアが基本です。
意見を出し合いながら、より良いケアを追求する場面も多く、連携する力やコミュニケーション力が活かされます。
チームの一員として患者さまを支えたいと考える看護師には、やりがいを感じやすい現場です。
看護ケアの質にこだわりたい
緩和ケアでは、日々のケア一つひとつが患者さまのQOLや満足度にかかわります。
たとえば、からだを拭く、声をかける、そばにいるといった些細なケアが、安心感や心の支えとなります。
「丁寧な看護を提供したい」「質の高いケアを追求したい」と考える看護師にとって、緩和ケアは適しているでしょう。
緩和ケアの看護師に向いていない人
緩和ケアは、患者さまの最期の時間に寄り添うという、繊細な看護を求められる分野です。
そのため、以下のような傾向がある看護師は、現場とのミスマッチを感じる可能性があります。
- 死や別れに極端な苦手意識がある
- 常に変化のある環境を求める
- 感情移入し過ぎてしまい切り替えが難しい
- スピード重視の看護にやりがいを感じる
- 患者さまの回復や退院支援などの「改善」がモチベーションにつながる
「緩和ケアには興味があるけれど、自分には向いていないかも」と感じた看護師には、訪問看護という選択肢もおすすめです。
在宅での看取りや慢性疾患ケアに携われるほか、ご家族と患者さまをチームで支え合うため、やりがいを感じられるかもしれません。
どのような働き方が自分に向いているのか迷っている看護師は、一度「NsPaceCareer」へ相談してみませんか。価値観に合ったキャリアを、一緒に見つけていきましょう。
緩和ケアの看護師のやりがい
緩和ケアは、限られた時間で患者さまの最期を支えるため、一つひとつのかかわりが深く、感謝される瞬間や自身の成長を実感できる場面が多くあります。
- 患者さまやご家族と深いつながりが生まれる
- 自分の成長を実感できる
- 感謝される瞬間が多い
緩和ケアにおける看護師のやりがいについて、具体的に見ていきましょう。
患者さまやご家族と深いつながりが生まれる
緩和ケアでは、限られた時間のなかで患者さまやご家族とじっくり向き合えます。
日々の会話やケアを通じて築かれる信頼関係は深くなりやすく「あなたがいてくれてよかった」と言葉をかけられる瞬間は、看護師としてのやりがいにつながります。
自分の成長を実感できる
緩和ケアの現場では、身体的・精神的ケア、グリーフケア、家族看護といった多岐にわたるスキルが求められます。
そのため、看護師としてだけでなく、一人の人間としても大きな成長を実感できる機会が豊富です。
患者さまやご家族とのかかわりを通じて、自分の看護観や生き方に新たな視点が加わることも少なくありません。
たとえば、患者さまとの信頼関係を築くなかで、コミュニケーションスキルや気配りの大切さを学べます。
最期のときをともに過ごすことで、どんな支援がもっとも心に響くのかを実感し、人間関係の深さや思いやりの大切さを改めて認識できるでしょう。
感謝される瞬間が多い
緩和ケアの現場では、日々の何気ないかかわりに対しても「ありがとう」と感謝の言葉をいただくことが多い傾向にあります。
侵襲的な医療行為が少ない分、寄り添う姿勢や思いやりが伝わりやすく、看護師としての存在意義を強く感じられる職場です。
緩和ケアの看護師のつらいこと
緩和ケアの現場ではやりがいがある一方で、死と向き合い続けることや、精神的な負担に直面することもあります。
- 死に向き合い続けるストレス
- 業務や環境になれるまでに感じやすいギャップ
- ご家族対応や看取りにともなう精神的な負担
緩和ケアの看護師が感じやすい、つらいことについて見ていきましょう。
死に向き合い続けるストレス
緩和ケアでは、患者さまの「人生の終末期」をおもに支えるため、看取りの場面に日常的に立ち会います。
そのため、長期間かかわってきた患者さまが亡くなるたびに、喪失感を覚えることは避けられません。
死を受け入れる力、悲しみと向き合いながらも心のバランスを保つ力が必要です。
業務や環境になれるまでに感じやすいギャップ
急性期病棟と比べると、緩和ケア病棟は医療行為が少なく、看護の質や関係性の構築が重視されがちです。
はじめは戸惑いや自分の役割に迷いを感じる場面もあるかもしれません。
そのため、新しい価値観への切り替えが必要となるでしょう。
ご家族対応や看取りにともなう精神的な負担
患者さまだけでなく、ご家族の不安や葛藤に寄り添うことも緩和ケアの看護師の重要な役割です。
ときには、患者さまやご家族強い感情をぶつけられることもあり、精神的な負担が重なる場面もあります。
そんなときでも冷静さと共感のバランスが求められるため、精神的につらいと感じやすい職場といえるでしょう。
緩和ケアの看護師を目指すなら転職も検討
緩和ケアに興味がある看護師は、転職を選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
たとえば、急性期病棟で働いている看護師が「もっと患者さまとじっくり向き合いたい」と感じるようになったら、緩和ケアの現場が自身に合う場所かもしれません。
ただし、転職を急ぐ必要はありません。
まずは緩和ケア病棟のある施設や転職サイトで、求人情報を確認することから始めましょう。
仕事内容や求められるスキルを把握することで、今の職場でも活かせる学びが得られるはずです。
緩和ケアの看護師に関するよくある質問
これから緩和ケアの看護師を目指す、転職して緩和ケアに携わることを考えている看護師が、疑問に感じやすいポイントにお答えします。興味のある項目をチェックして、さらに理解を深めていきましょう。
Q1:緩和ケア病棟の看護師になるには何年目からでも大丈夫ですか?
緩和ケア病棟の看護師になるために、特定の年数を必要とするわけではありません。
実際に、看護師1年目から緩和ケア病棟に配属される場合もあります。
経験年数にかかわらず緩和ケアに興味があり学ぶ意欲があれば、どのタイミングでも転職や異動は可能です。
Q2:緩和ケアとホスピスの違いは何ですか?
緩和ケアとホスピスのおもな違いは、以下のとおりです。
項目 | 緩和ケア | ホスピス |
目的 | 症状をやわらげQOLの改善を目指す | 終末期の苦しみをやわらげ「その人らしい人生」のために援助する |
おもな対象者 | 終末期に限らない患者さま | 苦痛を抱える終末期の患者さま |
ケアのタイミング | 診断されたタイミングから | 余命が近づいたタイミングから |
病気による痛みや苦しみをやわらげる点では共通しているものの、おもな対象者やケアの提供タイミングに違いがあります。
Q3:緩和ケアの看護師の給料はどのくらいですか?
緩和ケア看護師の平均年収は519万7,000円の可能性があります。
緩和ケアに絞った看護師の給料は、具体的に公表されていないものの、緩和ケア病棟にも夜勤があり、一般的な看護師と変わりはないと考えられるからです。
病院や施設の規模や地域、勤務形態によって異なるため、詳細は求人情報で確認することをおすすめします。
緩和ケアの看護師として心のこもった看護を実践しましょう
緩和ケアの看護師は、患者さまの最期の時間に寄り添い、不安な気持ちに丁寧に応えながらケアを提供する役割を担っています。
精神的につらさを感じることもありますが、その分、やりがいや成長を実感できる場面も多くあります。
患者さま一人ひとりの「その人らしい」最期を支えるために、緩和ケアの看護では思いやりと共感が大切です。
緩和ケアの実践を通じて、人としても看護師としても成長を実感できるでしょう。
<参考サイト・文献>

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