看護師がスキルアップできる資格とは?救急に役立つ8つの種類を紹介

「救急の現場でもっと役立つスキルを身につけたい」「専門性を高めてキャリアアップを目指したい」
このような思いを抱きながらも、どの資格に挑戦すればいいのか迷っている看護師もいるのではないでしょうか。
救急看護の現場では、一瞬の判断が患者さまのその後を大きく左右することがあります。こうした厳しい環境で働き続けるためには、スキルを磨き続けなければなりません。
この記事では、救急看護師に求められるスキルやスキルアップに役立つ8種類の資格を解説します。救急看護のスキルを向上させて自分の成長を図りたい看護師は、ぜひ参考にしてください。
救急看護師に求められるスキル
救急の現場で確かな看護を提供するためには、単なる知識や経験だけでなく、さまざまなスキルが必要です。
たとえば、次のような能力が求められます。
- 高度なアセスメント力
- 的確な判断力と迅速な対応力
- 幅広い医療知識と技術
- チームワークとコミュニケーション能力
- ストレスマネジメント能力
- ご家族への対応力
- 継続的な学習意欲
救急看護師として活躍するためには、これらのスキルをバランス良く高めていくことが大切です。
看護師がスキルアップを目指せる救急分野の資格8種類
救急の看護師がスキルアップを目指すなら、次の資格がおすすめです。
- BLS(一次救命処置)ヘルスケアプロバイダー
- ACLS(二次救命処置)プロバイダー
- ICLSアシスタントインストラクター
- PALS(小児二次救命処置)プロバイダー
- JPTECプロバイダー
- 3学会合同呼吸療法認定士
- クリティカルケア認定看護師
- 急性・重症患者看護専門看護師
これらの資格を取得すると、転職する際の採用試験に合格しやすくなるというメリットもあります。それぞれの資格が救急の現場でどのように活かせるのか見ていきましょう。
1.BLS(一次救命処置)ヘルスケアプロバイダー
救急の現場では、心肺蘇生(CPR)や除細動器の使用に携わる機会が多くあります。
看護師だけではなく、一般市民の方も受講対象です。
すでに経験のある看護師でもBLS資格を取得することで、一次救命処置の基本的なスキルを学びなおせるでしょう。
2.ACLS(二次救命処置)プロバイダー
ACLS資格は、より高度な救命処置に対応できる力を証明するもので、BLSプロバイダーを習得している看護師にとって、次のステップとなる資格です。
たとえば、心停止を起こした患者さまに対し、医師と連携してアドレナリン投与や気道確保のサポートをし、スムーズに対応できるようになります。
ACLSプロバイダーは、現場での自信を強めるためにも重要です。患者さまの回復を支援するチームの一員として、救命率の向上に貢献できるようになるでしょう。
3.ICLSアシスタントインストラクター
ICLSとは、患者さまの急変から最初の10分間に必要な処置を中心に学ぶ、日本救急医学会が主催するコースです。
看護師や国家資格のある医療職が受講でき、救急の現場で初期対応を担うこの資格は、一歩進んだ役割を果たすために役立つといえます。
また、救急対応だけでなく、トレーニングや研修における教育にもかかわるチャンスが広がります。
上位資格であるICLSインストラクターやICLSディレクターを目指すことも可能で、さらなるスキルアップがのぞめる点もメリットです。
4.PALS(小児二次救命処置)プロバイダー
小児の患者さまを対象とした救急対応スキルを身につけるPALSも、救急で働く看護師がスキルを高めるのに有効です。BLSプロバイダーやPEARSプロバイダーの資格を持つ看護師は受講できます。
小児の救急対応は、成人とは異なる特性があり、専門的な知識とスキルが欠かせません。
たとえば、幼児が熱性けいれんで意識障害を起こした場合、呼吸のサポートをおこない、医師へ引き継ぐことができます。
小児救急の現場にかかわる機会がある場合、PALS取得によって、小児から成人までの幅広い層の患者さまに対応できる看護師を目指せます。
5.JPTECプロバイダー
JPTEC(Japanese Prehospital Trauma Evaluation and Care)プロバイダーは、救急現場での初期対応能力を高めるための資格です。看護師の資格があると受講できます。
とくに、外傷患者さまに対して、迅速に判断するために必要なスキルを習得できます。JPTECで学ぶおもな内容は、次のとおりです。
- 外傷のメカニズム
- 急性期の治療方法
- 現場でのトリアージ方法
資格を取得することで、連携をよりスムーズにできるようになった結果、救命率の向上につながり、看護師としての自信にもなるでしょう。
6.3学会合同呼吸療法認定士
3学会合同呼吸療法認定士は、実務経験が2年以上ある看護師が受講でき、この資格を取得すると、より高度な呼吸管理ができるようになります。
たとえば、呼吸不全の患者さまに対して、人工呼吸器の設定変更や適切な酸素投与量の調整を医師に提案し、患者さまの回復をサポートできます。
呼吸ケアチームの一員として、患者さまの早期回復を手助けできる存在となれるでしょう。
7.クリティカルケア認定看護師
クリティカルケア認定看護師とは、救急や集中治療の現場で、専門的な知識と高い看護技術を持つ看護師のことです。
「実務経験が通算で5年以上(そのうち3年以上は認定看護分野の実務研修)」と「養成機関での教育が修了」の条件を満たすと、認定試験を受けることができます。
クリティカルケア認定看護師は、次のような幅広いスキルを活かして活躍します。
- 急変・重症化を防ぐための全身管理
- 早期回復を目指したサポート
- 呼吸管理のスキル
- 薬剤投与管理の知識と技術
これらを駆使して、重症患者さまの回復を支える重要な役割を果たします。
現場で直面する緊急事態にも柔軟に対応できる能力を身につけられるため、チームの中心的な存在となれるでしょう。
関連記事:救急看護の分野で認定看護師になるには?4ステップと試験の難易度を解説
8.急性・重症患者看護専門看護師
急性・重症患者看護専門看護師は、急性期の患者さまにケアを提供し、早期回復をサポートします。
「看護系大学院の修士課程を修了して、日本看護系大学協議会が指定する専門看護師の教育課程基準の単位(38単位)を取得していること」と「実務研修が通算5年以上であること(うち3年以上は専門看護分野の実務研修)」の条件を満たしていると、認定審査を受けることができます。
また、医療スタッフへの教育や患者家族への支援も大切な役割のひとつです。
救急現場だけでなく、集中治療室(ICU)をはじめとした急性期医療の現場でも、リーダーシップを発揮できる存在となるでしょう。
救急看護師がスキルアップするための資格勉強法
救急看護師がスキルアップのために資格を取得するには、モチベーションの維持と効率的な勉強が欠かせません。
- 目標を明確にしてモチベーションを維持する
- スキマ時間を活用する
- 先輩看護師からアドバイスをもらう
ここでは、多忙な救急看護師におすすめの資格勉強法を解説します。
目標を明確にしてモチベーションを維持する
資格の勉強を始める際、モチベーションを維持できるように、まずは自分の目標を明らかにすることが大切です。
たとえば「呼吸器管理をより深く知りたい」「チームリーダーとして成長したい」といった目標を具体的にすることで、日々の勉強に前向きに取り組めます。
ただし、多くの看護師が日々の業務をおこないながら、帰宅後に勉強したり、休日に研修に参加したりするため、目標を見失い挫けそうになるかもしれません。
そのときは、最初に立てた目標を再確認し、原点に立ち返ることも大切です。
スキマ時間を活用する
資格勉強を効率よく進めるためには、スキマ時間をうまく活用できるかがポイントになります。
たとえば、次のような工夫でコツコツと勉強を進めることが大切です。
- 出勤前のコーヒータイムに10分だけテキストを読む
- 通勤中にスマートフォンで音声講義を聞く
- 仕事の休憩中に1問だけ過去問題を解く
日常生活のなかに組み込めるように工夫すると、習慣化しやすくなります。小さな努力の積み重ねで、実力が着実についていくでしょう。
先輩看護師からアドバイスをもらう
すでに資格を取得している先輩看護師から、実際の勉強法や試験対策のポイントを聞くことも有効です。
とくに、現場で役立った知識や、勉強中に工夫した点などの体験談は、自分の勉強の方向性に自信をもつきっかけにもなります。
先輩とコミュニケーションを積極的にとり、コツを吸収していくことで、実践的なスキルが身につき、新たな資格の獲得に近づくでしょう。
救急看護師が資格取得以外でスキルアップする方法
救急看護師として成長できる方法は、資格取得だけではありません。
- セミナーを受講する
- 看護研究や学会発表で視野を広げる
- OJTやローテーションで実務経験を積む
- キャリアパスを見越して転職を検討する
ここでは、救急分野のスキルアップに役立つ方法を解説します。
セミナーを受講する
セミナーや講習会に参加して、新しい知識や技術を学ぶのもスキルアップに効果的です。
とくに、次のような学会が主催するセミナーでは、救急看護師向けの内容が充実しており、現場ですぐに活かせる知識を得られます。
- ISLS(神経救急蘇生)
- トリアージナースコースセミナー
- JNTEC(外傷初期看護セミナー)
- 救急病態セミナー
「もっと救急看護を深く学びたい」「患者さまに貢献したい」と感じ、積極的に講義を受けると、救急看護師としてスキルアップできるでしょう。
看護研究や学会発表で視野を広げる
ステップアップを目指すなら、看護研究や学会発表に挑戦するのもおすすめです。
興味のあるテーマを調べるなかで、根拠に基づいてわかりやすく説明できるようになり、救急の現場での患者対応に役立ちます。
たとえば、患者さまの状態が悪化した場面で「この症状だからまず呼吸を確保しよう」といったように、理由を明らかにした上でアセスメントと行動ができるでしょう。
看護研究や学会発表はハードルが高いと感じる看護師は、学会に参加するだけでも新しい知識や気づきを得られます。
ほかの施設の取り組みや新しい医療の考え方に触れることで、視野が広がり学びを深められるでしょう。
OJTやローテーションで実務経験を積む
勉強だけでなく、実際の現場でたくさん経験を積むことも大切です。
OJT(On-the-Job Training)では、先輩から直接アドバイスを受けながら成長できます。
また、ICUやHCU(高度治療室)、手術室など救急に関連するほかの部署へローテーションする機会があれば、チャレンジしましょう。違う現場で働く経験は、判断力や対応力を磨くことにつながります。
さまざまな場面に対応できる救急看護師を目指して、実践を重ねていくことがスキルアップするうえで欠かせません。
キャリアパスを見越して転職を検討する
救急看護師としてさらに成長したいと考えるなら、転職するのも手段のひとつです。
たとえば、将来的にフライトナースを目指すなら、三次救急を担当している大規模な病院で経験を積むと強みになります。
進む道によって、身につけるべきスキルや経験は変わるため、広い視野でキャリアを考えてみましょう。
救急看護師がスキルアップ後に目指せるキャリアパス
救急看護師としてスキルアップしたあとは、さらに専門性を高めた次のようなキャリアパスを目指せます。
- フライトナース
- 災害医療コーディネーター
目標とするキャリアから逆算して、必要な資格を優先的に取得していくのもひとつの方法です。それぞれを詳しく見ていきましょう。
フライトナース
フライトナースは、ドクターヘリに乗って患者さまを運びながらケアをおこなう看護師です。
限られた時間のなかで患者さまに最善のケアを提供しなければならないため、高い判断力と技術が求められます。
特別な資格は必要ありませんが、次のような条件が目安となります。
- 看護師経験5年以上
- 救急看護師3年以上
- ACLSプロバイダー、JPTECプロバイダーの取得
フライトナースは、命を救う最前線で活躍できる、やりがいのある仕事です。
災害医療コーディネーター
災害医療コーディネーターは、大きな災害が起きたときに、医療チームをまとめる役割を担います。
医療支援をスムーズにおこなえるように迅速な判断とリーダーシップが必要であるため、次の経験が求められることがあります。
- 災害拠点病院やDMATでの実務経験
- 災害医療に関する研修・資格の取得
日ごろから災害に備える医療体制の構築にも携われるため、地域医療を支えるやりがいを感じられる仕事です。
救急看護師がスキルアップするメリット
救急看護師がスキルアップを図ることには、次のようなメリットがあります。
- 自身の成長を実感できる
- 昇給や昇進のチャンスが広がる
- 患者さまの救命率向上に貢献できる
- 高度な医療現場でも自信をもって対応できる
スキルアップを重ねることで、看護師としてのやりがいや誇りを一層深められます。日々の努力が自分の力になり、救急医療の現場でも落ち着いた行動がとれるようになるでしょう。
看護師のスキルアップは資格取得だけではない!救急でキャリアを積み上げましょう
救急看護師が資格をとることで、より専門的な知識や技術が身につき、命を守るケアに自信が持てます。
また、資格はキャリアアップの道を開く重要な要素でもあり、資格取得にとどまらず、実際の現場で学び続けることも大切です。
救急の現場でより質の高い看護を提供するために、常にスキルアップを目指していきましょう。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。