訪問看護と精神科訪問看護の違い7つ!メリットやきついと感じる理由

「訪問看護と精神科訪問看護の違いを知りたい」「自分に合っている職場を選びたい」
このように不安を感じている看護師は多いでしょう。
訪問看護と精神科訪問看護は、どちらも利用者さまがご自宅で安心して療養生活を送れるように支援するサービスですが、対象となる利用者さまやケアの内容には違いがあります。
この記事では、7つの異なる点に焦点を当て、それぞれの特徴を詳しく解説します。訪問看護と精神科訪問看護の違いを理解することで、自分に合った職場を選べるようになるでしょう。
訪問看護と精神科訪問看護の7つの違い
訪問看護と精神科訪問看護のおもな違いは次のとおりです。
- 対象となる利用者さまの違い
- ケアの目標の違い
- サービス内容の違い
- 指示書の違い
- 訪問するスタッフの違い
- 緊急時の対応の違い
- 利用までの流れの違い
それぞれを詳しく見ていきましょう。
対象となる利用者さまの違い
訪問看護と精神科訪問看護では、対象となる利用者さまが異なります。
訪問看護は、身体的な病気や障がいのある方が対象です。一方、精神科訪問看護は、次のような病気がある方を対象としています。
主病名 | 割合 |
統合失調症・妄想性障害 | 50.2% |
気分障害 | 18.1% |
アルコール・薬物使用障害 | 3.9% |
不安障害・ストレス関連障害 | 6.1% |
発達障害 | 6.5% |
パーソナリティー障害 | 1.6% |
高次脳機能障害 | 0.6% |
その他 | 12.9% |
このように、対象となる利用者さまの健康状態の違いが、提供されるケアの内容や目標に影響します。
ケアの目標の違い
訪問看護と精神科訪問看護では、それぞれのサービスが、利用者さまの健康問題やニーズに対応するため、重視する点が違います。そのため、ケアのおもな目標が異なるのです。
サービスの種類 | ケアの目標 |
訪問看護 | 身体機能の維持・向上(心理的安定も含む) 合併症の予防 生活の質の向上 |
精神科訪問看護 | 精神症状の安定 再発予防 地域での自立支援 |
このように、ケアの目標は、利用者さまの健康問題によって変わります。
サービス内容の違い
訪問看護と精神科訪問看護では、提供するサービス内容の重点が異なります
サービスの種類 | おもなサービス内容 |
訪問看護 | バイタルサインの測定 医師の指示による医療処置 家族指導や相談食事や排泄の介助などの身体的なサポート |
精神科訪問看護 | 心のケア(本人、家族の支援) 服薬管理 生活リズムの調整 社会復帰の支援 |
精神科訪問看護では、利用者さまが妄想や幻覚の症状によって身の回りを清潔にできない場合には、心のケアをおこないながら、シャワー浴や爪切りなどを通してセルフケアができるようにサポートします。
訪問看護と精神科訪問看護は、利用者さまのニーズに応じた、それぞれ特化したサービスを提供しているといえるでしょう。
指示書の違い
それぞれの指示書について、次の表にまとめました。
指示書の種類 | 交付 | 適用される保険 |
訪問看護指示書 | 主治医 | 医療保険または介護保険 |
精神科訪問看護指示書 | 精神科医 | 医療保険 |
このように、必要な指示書の種類や交付できる医師、適用される保険が異なります。
精神科訪問看護指示書が交付されると、介護保険ではなく、医療保険が優先されます。
訪問するスタッフの違い
利用者さまの多様なニーズに対応するために、訪問するスタッフの専門性が異なります。
サービスの種類 | おもなスタッフ |
訪問看護 | 看護師 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 ケアマネ―ジャー |
精神科訪問看護 | 看護師 作業療法士 精神保健福祉士 保健師 |
精神科訪問看護では、健康問題だけでなく、社会生活への支援も重要であるため、場合によっては市区町村の役場の相談員や生活保護の担当者などが訪問するケースもあります。
緊急時の対応の違い
利用者さまに起こりうる緊急事態の種類が異なるため、対応も異なります。
訪問看護は、呼吸困難や意識消失、転倒など身体的な急変に対し、酸素投与や心肺蘇生、医療機関への連絡をおこないます。
一方、精神科訪問看護では、精神症状の急な悪化(興奮、パニック発作、自殺企図など)に対応するため、薬剤調整の検討や精神科医への連絡、救急搬送の手配などが重要です。
それぞれの緊急時対応の違いを理解し、適切な行動をとることが、利用者さまの安全を守るうえで大切です。
利用までの流れの違い
訪問看護は、自治体の相談窓口や地域包括支援センターに相談し、主治医に訪問看護の指示書を作成してもらうことで、サービスを利用できます。
対して、精神科訪問看護を利用したい場合は、まず精神科医が訪問看護の必要性を判断して、精神科訪問看護指示書を書いてもらうことで、そのサービスを利用できます。
場合によっては、自治体の相談窓口を介して精神科医へつなぎ精神科訪問看護指示書を書いてもらうこともあります。
精神科訪問看護の利用には、原則として精神科医の指示が必要ですが、訪問看護は主治医の指示で利用できるのです。
関連記事:訪問看護での精神科看護 – NsPace Career(ナースペース キャリア) – 訪問看護業界に特化した求人サイト
訪問看護と精神科訪問看護の共通点
両者には、共通するポイントが4つあります。
- 在宅での療養をサポート
- 医師の指示にもとづくケア
- かかる費用はいずれも1~3割負担
- ご家族へのケア
どちらのサービスも、利用者さまが安心して在宅療養を送るための支えとなります。それぞれを見ていきましょう。
在宅での療養をサポート
利用者さまがご自宅で安心して療養生活を送れるようにサポートすることは、両者の共通点です。
たとえば、独居の高齢者ががんの終末期を自宅で過ごす場合、訪問看護師が痛みの管理や清潔ケアの支援をおこないます。また、精神科訪問看護では、統合失調症の方が日常生活を送れるよう、生活リズムの調整や服薬管理の支援をおこないます。
このように、それぞれの専門性を活かし、利用者が自宅で安心して療養生活を送れるようサポートしているのです。
医師の指示にもとづくケア
どちらのサービスも、医師の指示書にもとづいておこなわれます。
医師は、利用者さまの病状や治療方針、必要なケアの内容などを指示書に記載し、訪問看護師や精神科訪問は、その指示に従ってケアを提供します。
また、利用者さまの状態やケアの内容を医師に報告し、必要に応じて指示が見直されるため、利用者さまの状況に合ったケアを続けられるのです。
かかる費用はいずれも1~3割負担
訪問看護も精神科訪問看護も、医療保険や介護保険が適用されるサービスであるため、利用者さまの自己負担額は、年齢や所得に応じて1割から3割となります。
経済的な負担を軽減でき、必要なサービスを受けられる点は、利用者さまとそのご家族にとって安心材料となります。
ただし、保険の種類や利用するサービス内容によっては、必要な費用が異なる場合があるため、事前に確認してください。
ご家族へのケア
訪問看護と精神科訪問看護のどちらも、利用者さまのケアに加えて、ご家族へのサポートも重視しています。
ご家族は、清潔ケアや食事介助のほかに、排泄介助や通院の付き添いなどさまざまな役割を担わなければならないため、身体的・精神的な負担になりがちです。
看護師は、ご家族が安心して利用者さまを支えられるように次のようなサポートをおこない負担軽減に努めます。
- 病状やケアに関する情報提供をおこなう
- 不安や悩みの相談に乗る
- 必要に応じて地域の支援サービスを紹介する
ご家族の状況に合わせたきめ細やかなサポートは、在宅療養を継続するうえで不可欠です。
関連記事:精神科訪問看護とは?対象の疾患や看護師の仕事内容、1日の流れや向いている人も解説!
訪問看護と精神科訪問看護は併用できない
訪問看護と精神科訪問看護は、原則として併用できません。
これは、制度上、利用者さまに対して二重にサービスを提供することが認められていないためです。
どちらのサービスが適切かは、利用者さまの主治医が病状や支援内容を踏まえて判断します。
精神科訪問看護のメリット・デメリット
ここでは、精神科訪問看護のメリット・デメリットを紹介します。それぞれを知って、転職した後で後悔しないようにしてください。
精神科訪問看護のメリット
精神科訪問看護の現場で働くことは、多くの魅力的な側面があります。
- 精神科領域の幅広い知識とスキルが身につく
- 利用者さまの「その人らしさ」に寄り添える
- ワークライフバランスを調整しやすい
- 体力的なハードさが低い
精神疾患に関する専門知識はもちろん、コミュニケーションスキルや危機管理能力など、幅広い知識とスキルを磨くことができます。
これは、看護師としての専門性を深めるうえで貴重な経験となります。
精神科訪問看護のデメリット
メリットがある一方で、知っておくべき側面も存在します。
- 安全管理への責任
- 訪問を拒否されるストレス
- 精神的な負担が大きい場合がある
- 1人で対応しなければならないプレッシャー
自傷行為や他害行為のリスクがある利用者さまへの訪問では、常に安全を意識した行動が求められます。また、利用者さまの精神状態は不安定なこともあり、ときには感情的な訴えや対応に難しさを感じることもあります。
※安全性の担保のため、複数名の看護師で訪問する場合もあります。
このような場面で、精神的な負担を感じやすい看護師は、事業所のサポート体制が整っているか事前に確認することが重要です。
関連記事:精神科訪問看護がきついと言われる理由とは?辛いと感じた時の対策ややりがいを感じる場面を紹介
訪問看護と精神科訪問看護の展望
高齢化が進む現代において、在宅医療のニーズはますます高まっており、訪問看護の重要性は増大しています。
また、地域包括ケアへの移行が進むなかで、精神科訪問看護は、精神疾患がある利用者さまが地域で自分らしく生活するためのサービスとして、その役割はますます重要になっています。
今後は、ICT技術を活用した情報共有の効率化や専門性の高い看護師の育成などが求められるでしょう。
訪問看護と精神科訪問看護の違いに関するQ&A
ここでは、訪問看護と精神科訪問看護の違いについて、よくある質問とその回答を見ていきましょう。
Q1:訪問看護と精神科訪問看護、それぞれの訪問回数に違いはありますか?
訪問看護と精神科訪問看護、それぞれの訪問回数は、利用者さまの状態や主治医の指示によって異なります。
精神科訪問看護では、症状の安定を図るために週に1~2回の訪問されることが多い傾向です。利用者さまの病状が悪化した際には訪問回数を増やして対応することもあります。
Q2:訪問看護と精神科訪問看護との求人の探し方に違いはありますか?
求人の探し方に違いはありません。看護師専門の求人サイトや、訪問看護ステーションのホームページを確認することが有効です。
Q3:精神科の経験がなくても精神科訪問看護はできますか?
精神科の経験がなくても精神科訪問看護に携わることは可能です。
ただし、精神科訪問看護に従事する際には、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
・精神科看護での1年以上の経験
・精神科訪問看護基本療養費算定要件研修を受講
精神疾患についての基本的な知識や、利用者さまの精神状態に合わせたコミュニケーションスキルが求められるため、経験があった方が望ましいです。
訪問看護ステーションによっては、精神科領域における経験やスキルを重要視しているところもあります。
まとめ:訪問看護と精神科訪問看護との違いを踏まえて自分に合った職場を選ぼう!
訪問看護と精神科訪問看護は、どちらも在宅で療養する利用者さまやご家族を支えるやりがいのある仕事です。
しかし、対象となる利用者さまの特性や求められる専門性には違いがあります。
この記事でご紹介した両者の違いやメリット・デメリットなどを参考に、ご自身の興味やスキル、キャリアプランを考えて、どちらが自分に合っているかを検討してみてください。
それぞれの現場で活躍する看護師の声を聞いたり、インターンシップに参加したりすることも、自分に合った職場選びの助けとなるでしょう。
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<参考サイト・文献>

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