看護学校に社会人で入学すると学費は安い?補助金制度5つも紹介

「看護師になりたいけど、学費が高くて通える気がしない」「今の仕事を辞めて看護学校に通うことになるけど、生活費はどうしよう」
看護師になりたいと考えているものの、このように悩む社会人も少なくありません。
看護学校にかかる費用は、入学金や授業料だけでなく、教材費、実習にかかる交通費など、思った以上に負担が大きいものです。
ただし、社会人で看護師を目指す人に向けた学費支援制度は数多くあり、うまく活用することで金銭的なハードルが下がります。
この記事では、社会人が看護師を目指す際に活用できる制度や学費をおさえる方法を解説します。学費の不安を軽減でき、一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
看護学校に社会人が通うときの学費
看護学校に通うときの学費は、次のように推測できます。
国立大学の額は国が示す標準額で、公立・私立大学の額は平均です。
看護学校の種類 | 入学金 | 年間授業料 | 通う年数 |
国立大学 | 28万2,000円 | 53万5,800円 | 4年 |
公立大学 | 39万1,305円 | 53万6,363円 | |
私立大学 | 24万5,951円 | 93万943円 |
大学のなかには「社会人入試制度」を導入しているところもあります。すべての大学で導入しているわけではありませんが、この制度の用件を満たしている場合は最短2年で看護大学を卒業できます。
また、専門学校に通う場合は、入学金の平均額は18万1,000円、1年間の授業料は70万円です。
通学期間は3年であるため、大学よりも在籍年数が少なくなり、学費も安く済む可能性があります。
とはいえ、かかる費用は学校により異なるため、事前の情報収集で確かめておきましょう。
看護学校に社会人が通うときの学費の負担を減らす奨学金・補助金制度5つ
社会人が看護学校に通うときに活用できる奨学金や補助金制度は、次のとおりです。
- 看護師等修学資金貸与制度
- 専門実践教育訓練給付金
- 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金
- 高等職業訓練促進給付金
- 病院や自治体独自の奨学金
制度によって、申請タイミングや補助を受けられる金額が異なります。ひとつずつ見ていきましょう。
1.看護師等修学資金貸与制度
看護師等修学資金貸与制度は都道府県がおこなっている貸付型の奨学金制度で、在学中に無利子で借りられます。
貸与額は都道府県ごとに異なり、東京都の場合は月額2万5,000円、5万円、7万5,000円、10万円のなかから選択できます。
卒業後に指定された病院や施設で一定期間働けば、返済が免除されることが特徴です。
たとえば、東京都の場合、条例の改正(令和7年4月1日施行)により返済免除額が拡大します。
卒業後に働く施設 | 勤続年数 | 返済免除額 |
都内施設 | 5年 | 5万円×貸与月 |
指定施設 | 5年 | 7万5,000円×貸与月 |
7年 | 10万円×貸与月 |
この制度を活用する場合の申請は、学校を通しておこなうのが一般的です。進学予定の学校や都道府県の公式ホームページで、事前に確認しましょう。
2.専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、雇用保険法で定められている制度であり、雇用保険に2年以上加入している方が給付の対象です。
在学中の入学金や授業料の50%(年間上限40万円)が支給されます。さらに、卒業後1年以内に看護師(雇用保険の被保険者)として就職すると、追加で20%の給付金が支給されます。つまり、学費の最大70%(年間最大56万円)まで支援されるのです。
ただし、次のように事前申請や更新手続きが必要な点に注意しましょう。
- 原則、受講開始日の2週間前までにハローワークで受給資格確認を申請する
- 6ヶ月ごとに給付金の支給申請をおこなう
- 受講終了後もハローワークに申請する
- 就職後の追加給付も申請する
学費を安くおさえたい社会人には、欠かせない制度といえるでしょう。
3.日本学生支援機構(JASSO)の奨学金
JASSOが給付する奨学金のうち、社会人がおもに活用できるのは「貸与型」です。貸与型の奨学金には、第一種と第二種の2つの種類があり、違いは次のとおりです。
項目 | 第一種奨学金 | 第二種奨学金 |
利息 | なし | あり |
貸与額 | 月1万~月12万2,000円 (進学先と自宅・自宅外から通うかにより変動) | 月2万円~月12万円 (大学院の場合は15万円) |
第一種奨学金は、第二種と比べて、無利子で借りられる分、条件が厳しくなる傾向です。
たとえば、成績の基準(5段階のうち3.5以上)、生計維持者の収入などの条件があります。返済の負担や利用条件をよく比較して、自分に合った制度を活用してください。
4.高等職業訓練促進給付金
ひとり親家庭の方が、看護師や准看護師などの資格取得を目指して学校に通う場合に使える制度です。
高等職業訓練促進給付金で受けられる補助は、次のとおりです。
- 月額10万円が支給され(住民税非課税世帯は月額7万500円)
- 修了後には5万円の給付が受けられる(住民税非課税世帯は2万5,000円)
この制度は生活費の補助が中心であるため「学費+生活」の両面で支援が得られます。申請は住んでいる都道府県、または市区町村の窓口でおこないます。
5.病院や自治体独自の奨学金
病院や各自治体が独自に設けている奨学金制度もあり、内容はさまざまです。
病院が設けている奨学金制度の場合、多くが卒業後にその病院で働くことを条件としています。看護師として働きたい病院が決まっている社会人には、魅力的な制度です。
また、自治体が支援制度を整備しているケースもあります。たとえば、ある自治体では看護大学と協力して、市内で4年以上看護師として勤務することを条件に、返済が免除される制度を設けています。
進学先を決める前に、働きたい病院や自治体の公式ホームページで情報収集しましょう。
看護学校に通う社会人が学費をおさえる工夫
社会人が看護学校に通う場合、以下の方法で学費をおさえられます。
- 学費の安い看護学校を選ぶ
- 学費分納・延滞制度を活用する
- アルバイトをして学費をまかなう
- 学生寮や実家から通学して出費をおさえる
こうした工夫が、社会人の学費の不安を少なくします。それぞれをくわしく見ていきましょう。
学費の安い看護学校を選ぶ
看護学校には運営元によってさまざまな種類があり、公立の専門学校や高等看護専門学校は、学費が比較的安く設定されている傾向です。
授業料を例にあげると、私立大学では年間平均額が約93万円かかるのに対し、公立大学は約53万円と約40万円の差があります。
学校によっては独自の補助金や給付金制度を準備している場合もあります。
受けられる補助金の概要や金額も確かめたうえで、学費を把握することが大切です。
学費分納・延納制度を活用する
看護学校の多くは、学費を一括で支払うのが難しい人向けに「分納」や「延納」が可能な制度を用意しているところもあります。
- 分納制度:学費を何回かにわけて納める
- 延納制度:支払い期限を延ばしてもらう
これらの制度を利用すれば、生活費とのバランスを取りながら無理なく通学できるでしょう。利用には事前申請が必要な場合が多いため、入学前に学校に相談しておくと安心です。
アルバイトをして学費をまかなう
時間の使い方に工夫が必要ですが、学業と両立しながらアルバイトで学費を補うことも可能です。
医療機関や介護施設などでの看護助手(ナースエイド)のアルバイトは、実務を経験できるためおすすめです。
医療の現場に慣れることができるだけでなく、アルバイト先での実績が評価されて優先的に採用される可能性もあるため、就職活動にもプラスに働きます。
学生寮や実家から通学して出費をおさえる
看護学校に通ううえで負担になるのが、生活費や家賃などの住居費用です。
学校に学生寮がある場合は、一般的なアパートより家賃が抑えられ、生活費の負担を軽くできます。
また、実家から通える範囲で学校を選べば、家賃がかからない分、学費や教材費にあてる余裕ができます。
住まいの選択も、全体の支出をおさえるための重要なポイントです。学校選びの際には、通学可能な範囲や寮の有無も確認しておくとよいでしょう。
看護学校の入学前に社会人が準備しておくと安心なこと
看護学校の入学前に、以下のことを準備しておくと経済的な不安が少なく済むかもしれません。
- 貯金や生活費の見通しを立てておく
- 家族や職場の理解と支援を得る
ひとつずつ解説します。
貯金や生活費の見通しを立てておく
社会人で看護学校に進学すると、収入が減るまたは途絶える恐れがあるため、事前の資金計画が重要です。
看護学校に通う間、入学金や授業料にくわえ、おもに次の費用がかかります。
- 教材費
- 実習費
- ユニフォームの費用
- 家賃
- 食費
- 交通費
奨学金や補助金制度を活用する場合も、受給開始までにタイムラグがあることも多いため、あらかじめ見通しを立てて準備しておくと、余裕を持って進学できるでしょう。
家族や職場の理解と支援を得る
社会人が看護師の資格を取得するには、時間もお金もかかるため、学業に集中するのに身近な人の理解や協力が欠かせません。
配偶者や同居家族がいる場合は、生活スタイルの変化や家計への影響を話し合い、協力してもらえるように協力を依頼しておきましょう。
一人暮らしの方でも、親や友人など、精神的なサポートを得られる環境をつくっておくと、学業を継続する励みになります。
現在の職場を退職する場合は、退職時期や手続き、失業保険の活用なども含めてスムーズに準備しておくと安心です。
社会人から看護師になるメリット
社会人が看護学校に進学する際、費用面での心配が大きくなりがちですが、社会人から看護師になるメリットもあります。
- 長期的なキャリアを築ける
- 幅広い働き方が選べる
- 給与水準が高い傾向にある
- 社会人経験が活かせる場面がある
社会人だからこそ感じられる看護師の魅力を見ていきましょう。
長期的なキャリアを築ける
看護師は年齢やライフステージに左右されず、長く働き続けられる職業です。
結婚や出産、親の介護といったライフイベントを経ても復職しやすく、専門性を磨けば認定看護師や管理職などへのステップアップも目指せます。
「この仕事はいつまで続けられるだろう」と将来に不安を感じたことのある社会人にとって、看護師は生涯を通じてキャリアを築ける選択肢になり得ます。
幅広い働き方が選べる
看護師の勤務先は病院に限らず、次のように多岐にわたります。
- 訪問看護ステーション
- 健診センター
- 一般企業の健康管理室
- 保育園
夜勤のない日勤常勤やパートタイムといった選択肢も多く、生活スタイルに応じた柔軟な働き方が可能です。一方で「夜勤に多く入って収入を増やしたい」という希望にも対応できる職場もあり、一般的な社会人では選べない働き方ができるのも特徴です。

給与水準が高い傾向にある
看護師の給料は、ほかの業種に比べて水準が高く、福利厚生が整っている職場も多い傾向です。
令和6年賃金構造基本統計調査によると、全職種と看護師の平均年収は以下のとおりです。
区分 | 平均年収 |
全職種 | 330万4,000円 |
看護師 | 519万7,000円 |
両者には、189万3,000円の差があり、看護師の年収が高めであることがわかります。
社会人からの転職では、収入を確保したいという気持ちが強い方も少なくありません。
そのため、看護師の給与水準の高さは魅力的であるといえるでしょう。
社会人経験が活かせる場面がある
社会人としてのマナーやコミュニケーションスキルは、患者さまや多職種との連携時に役立ちます。
たとえば、丁寧な言葉遣いや相手に配慮した対応は、患者さまからの信頼を得やすく、安心感を与える要素になります。
また、業務の優先順位を見極めながら動く力や報連相の意識も、チーム医療を支えるうえでの強みです。
看護師としての技術や知識はこれから学ぶものですが、それを支える土台として社会人経験が活かされる場面は多いでしょう。
看護学校への入学を考える社会人に関するよくある質問
社会人が看護学校に入学する際に抱きやすい疑問にお答えします。不安を軽減し、自分に合った学校選びのポイントをおさえましょう。
社会人入学の割合と年齢層はどのくらいですか?
近年、社会人から看護学校に進学する人が増えているといわれています。
看護師3年課程に入学した2万1,724名の内訳を次の表にまとめました。
年齢層 | 入学者数 | 入学者の割合 |
20才未満 | 1万7,874名 | 82.2% |
20~24才 | 1,400名 | 6.4% |
25~29才 | 929名 | 4.2% |
30~34 | 575名 | 2.6% |
35~39 | 470名 | 2.2% |
40才以上 | 476名 | 2.2% |
20代未満の年齢層がもっとも多くなりますが、なかには30代、40代で入学する方もいます。これらのことから、年齢や前職を問わず社会人を経験してチャレンジしている方も一定数いるといえます。
社会人が看護学校を選ぶときのコツはありますか?
社会人から看護学校を選ぶ際は、次のポイントに注目すると良いでしょう。
- 学費の負担感
- 通いやすい立地・時間割
- 社会人入試の有無
- 実習先や就職先のサポートの手厚さ
費用面の負担はもちろん、毎日通い続けるには立地も検討しなければなりません。
オープンキャンパスに参加したり、学校に問い合わせたりして、自分のライフスタイルに合う環境を選ぶことが成功のカギです。
看護学校を目指す社会人は学費をおさえる補助金をうまく活用しましょう
看護学校に進学する社会人の学費負担を減らすためには、補助金制度をうまく活用することが大切です。
また、アルバイトをしたり、実家から通ったりするなど、生活費の工夫も有効です。
これらをうまく組み合わせて経済的な負担を軽減して、看護学校への進学を目指しましょう。

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