認定看護管理者とは?資格を取る方法や試験の難易度、メリット4つを紹介

「看護師としてもっとキャリアアップしたい」「病院や施設の運営にもっと貢献したい」
看護師としてのキャリアを考えるとき、認定看護管理者は選択肢のひとつとなるでしょう。この資格は、マネジメントのエキスパートといわれ、取得するためには長年の実務経験と専門的な教育課程の修了が求められます。
この記事では、認定看護管理者の概要から資格取得の方法、メリットまで詳しく解説します。ぜひ最後まで読んで、あなたのキャリアプランに役立ててください。
認定看護管理者とは日本看護協会に認められた資格
認定看護管理者とは、日本看護協会が認定する資格で、看護サービスの質の向上に貢献できるマネジメントスキルを持つ看護師のことです。ここでは、次の3つのポイントを紹介します。
- 認定看護管理者の制度
- 認定看護管理者の役割
- 認定看護管理者の人数
それぞれを詳しく見ていきましょう。
認定看護管理者の制度
多様なヘルスケアのニーズに対応するため、看護管理者としての専門性を高め、患者さまにより良いケアを提供することを目的に制度が設けられました。
質の高いケアには、現場の看護師が意欲的に働き続けられる環境を整え、組織を効果的に運営できる管理者の存在が不可欠です。
この資格は、看護の現場におけるリーダーシップとマネジメントの質を保証し、患者ケアの質向上に貢献しています。
認定看護管理者の役割
認定看護管理者は、患者さまやご家族に充実したケアを提供するために、次のような役割を担います。
- 病院や施設の理念にもとづき看護部門の運営方針を示し実行する
- 看護部門をまとめ目標達成に向けて指導する
- 看護師の教育体制を整えて人材を育成する
- 医師やほかの医療従事者と協力し最善のケアを提供する
看護師一人ひとりの能力を最大限に引き出し、質の高いケアを提供できるようなチーム作りが欠かせません。
認定看護管理者は、そのようなチームを育成し、組織の運営にも深くかかわることで、医療の質向上にも力を尽くしています。
関連記事:看護管理者の役割とは?求められる能力6つや課題、やりがいを解説
認定看護管理者の人数
2024年12月現在、認定看護管理者数は5,488名です。
厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2022年の時点で働いている看護師は131万1,687名です。これらのデータは、取得年度が異なるため、単純な比較はできません。
しかし、認定看護管理者の人数は、看護師全体から見るとごく一部であり、専門性が高いといえるでしょう。
認定看護管理者の教育課程
認定看護管理者になるには、次の教育課程を修了しなければなりません。
- ファーストレベル
- セカンドレベル
- サードレベル
それぞれの教育課程の詳しい内容を見ていきましょう。
ファーストレベル
看護管理の基礎を学ぶ課程です。
看護師長や主任などの管理職に就いている方、これから管理職を担っていく方を対象としています。この課程では、組織運営や人材育成、業務改善などの基本的なマネジメントスキルを習得します。
セカンドレベル
ファーストレベルを修了した看護師を対象に、より高度な管理能力を養う課程です。看護部長や副部長など、組織全体のマネジメントを担う立場の方に適しています。この課程では、戦略的な組織運営や人材開発、財務管理などを学びます。
サードレベル
セカンドレベルを修了した看護師を対象に、高度な看護管理能力を養う課程です。この課程を修了することで、認定看護管理者の認定審査を受ける資格が得られます。
組織の理念やビジョンにもとづき、看護部門を牽引し、医療・介護の質の向上に貢献できる高度な管理能力が習得できます。
認定看護管理者になるには
認定看護管理者になるためには、いくつかの要件を満たし、認定審査に合格する必要があります。次に、その具体的なステップを説明します。
- 日本の看護師免許を取得している
- 実務経験を通算5年以上積んでいる(うち通算3年以上は看護師長相当以上の看護管理の経験が必要)
- 次のいずれかの要件を満たしている
・サードレベルを修了している
・看護管理にかかわる学問領域で修士以上の学位を取得している
- 認定審査に合格する
これら4ステップをすべてクリアすると、認定証が交付・登録され、認定看護管理者として活動できるようになります。
認定看護管理者の認定審査の概要
認定審査は、年に1回実施され、合格者に資格が与えられます。認定看護管理者になるために必要な申請の手続きや、認定審査の詳細などを説明します。
- 申請の手続き
- 認定審査の詳細
- 認定審査の合格率と難易度
- 更新の手続き
それぞれを詳しく見ていきましょう。
申請の手続き
認定看護管理者の試験を受けるためには、次の4つの手続きをおこなわなければなりませせん。
- 「資格認定制度 審査申請システム」(日本看護協会のホームペー)から申請する
- 審査料:51,700円(税込)を振り込む
- オンラインで審査書類を提出する
- 郵送で審査書類を提出する
ただし、提出期間外の消印がある場合や送付方法に不備がある場合は、受理されず認定審査を受けられない恐れがあるため、十分に確認して提出しましょう。
認定審査の詳細
認定看護管理者の認定審査には、書類審査と筆記試験があります。
- 書類審査:実務経験や教育課程の修了状況などが評価される
- 筆記試験:看護管理に関する知識や実践力が問われる
書類審査に合格した看護師が、筆記試験に進みます。筆記試験は「客観式一般問題(マークシート方式・四肢択一)20問」と「論述問題2問」で構成されており、試験時間は120分です
認定審査の合格率と難易度
認定審査の合格率は70~80%といわれています。
合格率は高いものの、認定審査を受けるまでに一定の基準を満たさなければならず、時間と労力も必要です。そのため、難易度の低い資格とはいえないでしょう。
更新の手続き
認定看護管理者のレベルを維持するため、5年毎に認定更新の審査を受けなければなりません。
認定審査を受けるためには、次の条件をクリアする必要があります。
- 認定看護管理者であること
- 自己研鑽の実績が5年間で50点以上あること
自己研鑽の実績は「自己研鑽の点数換算表」で計算でき、実績を証明する書類の提出も求められます。なお「看護管理実践の実績」は、2025年度から問われないことになりました。
認定看護管理者になるメリット
認定看護管理者になるには、次のように多くのメリットがあります。
- マネジメント能力を高められる
- 給料アップが期待できる
- 管理職に昇進できる可能性がある
- 活躍できる場が広がる
自分の成長を追求し、チーム医療に貢献したいという意欲があるあなたにとって、この資格は、目標を実現するための後押しとなるでしょう。
マネジメント能力を高められる
認定看護管理者の教育課程では、次のように看護管理に必要な知識やスキルを学ぶことができます。
- リーダーシップ
- 組織運営
- 人材育成
これらの学びを通して、効果的なマネジメントができるようになり、看護チームや組織の質の向上に貢献できます。

給料アップが期待できる
認定看護管理者の資格は、専門性の高い知識やスキルがあることの証明となるため、資格手当が支給されたり、昇給の際に有利になったりする可能性があります。
役職 | 平均支給額 |
総看護師長 | 53万9,846円 |
看護師長 | 43万1,007円 |
看護師 | 35万9,618円 |
看護師と総看護師長の平均支給額の差は18万228円です。その分、責任がもとない業務内容も複雑になりますが、評価され給料がアップすることはモチベーションの向上につながるでしょう。
管理職に昇進できる可能性がある
管理職への昇進の際に有利に働くことがあります。
看護師長や看護部長など、責任のあるポジションを目指すうえで、この資格はあなたのマネジメント能力を証明する武器となります。
キャリアアップを目指すあなたにとって、アドバンテージとなるでしょう。
活躍できる場が広がる
認定看護管理者の資格を持つことで、病院だけでなく、介護施設や教育機関など幅広い分野で活躍できます。
所属施設 | 割合(%) |
病院 | 79.8 |
学校・大学 | 4.2 |
看護協会 | 3.6 |
クリニック・診療所 | 3.3 |
介護保険施設等 | 2.0 |
訪問看護ステーション | 1.1 |
認定看護師教育機関 | 0.3 |
会社 | 0.3 |
病院で働く看護管理者が約8割いるものの、専門性の高い知識とマネジメント能力を活かして、さまざまな場所で看護の質向上に貢献しています。
近年では、在宅医療への移行が進められているため、訪問看護ステーションといった病院外での活躍も期待できます。
認定看護管理者になるデメリット
多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも考えておく必要があります。
認定審査を受けるまでに時間と費用がかかる
資格を取得するためには、教育課程の受講や受験料など、時間と費用がかかります。
とくに、サードレベルの教育課程は約3月間と時間がかかり、費用も高額になる傾向があります。現職を続けならが、課題レポートを書いたり、週末に講義を受けたりなど精神的な負担もかかりがちです。
資格取得を目指す際には、これらの負担も含めて計画を立てなければなりません。
認定看護管理者の資格を取得しても管理者になれない可能性がある
資格を取得したからといって、必ずしも管理職になれるとは限りません。
所属する組織の状況や人事の方針によっては、資格があっても管理職のポストに就けない場合もあります。
資格取得はキャリアアップの可能性を高めるものですが、それを保証するものではないことを理解しておく必要があります。研修を受ける前に、キャリアアップについて看護部長や人事課に相談しておくことも有効です。
認定看護管理者の資格なしで管理職を目指す道
認定看護管理者の資格なしで、看護師が管理職を目指す方法はいくつかあります。ここでは、具体的な方法を解説します。
研修に参加して現職でスキルアップを図る
日本看護協会や都道府県の看護協会などが主催する看護管理のセミナーに参加することで、管理に必要な知識やスキルを習得できます。
これらの研修での学びを通して、現職でリーダーシップを発揮したり、業務改善に取り組んだりすることで、管理職への道が開けるでしょう。
関連記事:看護師にキャリアプランは必要?ない場合はどうする?
管理者級の求人を探して転職する
資格がなくても、経験やスキルによっては、管理者級の求人に転職するという選択肢もあります。
これまでの経験や実績をアピールすることで、新たな職場で管理職として活躍できる可能性もあります。
管理職を目指している看護師は、訪問看護師への転職を検討してみませんか。近年、在宅医療への移行を進めていることから、訪問看護ステーションの施設数は増加傾向です。「NsPaceCareer」で求人を探して、まずは現場のスタッフとして働き、将来、管理職を目指すと良いでしょう。
認定看護管理者に関するQ&A
認定看護管理者に関して、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1:認定看護師と認定看護管理者の違いは何ですか?
専門分野でのスペシャリストが認定看護師、管理運営のスペシャリストが認定看護管理者と考えると分かりやすいでしょう。
認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を持ち、質の高いケアを実践したり、ほかのスタッフに指導したりする役割を担います。
一方、認定看護管理者は、組織全体の看護サービスの質向上を目指し、看護チームや組織を管理・運営する役割を担います。
Q2:認定看護管理者の費用負担を軽減できる制度はありますか?
資格を取得するまでの費用の負担を軽減できる制度があります。具体的には、次のとおりです。
- 日本看護協会の認定看護師教育課程奨学金
- 地方自治体の助成制度
- 病院独自の補助制度
所属している病院や施設によっては、教育課程の受講費用や受験料をサポートする制度があります。詳しくは、日本看護協会のホームページをチェックしたり、職場の人事課のスタッフに確認したりしてみましょう。
Q3:認定看護管理者会って何ですか?
資格を持つ人々が集まり、情報交換や交流をおこなう団体です。
最新の看護管理に関する知識や情報を共有したり、課題解決に向けた意見交換をおこなったりできます。
地域や全国規模で活動しており、自己研鑽やキャリア形成において貴重なネットワークとなります。
まとめ:認定看護管理者の資格を取得して活躍の幅を広げよう!
認定看護管理者の資格は、あなたの看護師としてのキャリアを広げる可能性を秘めています。
資格取得までの道のりは決して楽ではありませんが、得られる知識やスキルがキャリアアップにつながるでしょう。
この記事を参考に、資格取得を目指し、より質の高いケアの提供と、充実したキャリアを実現してください。
<参考サイト・文献>

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