看護師は有給休暇を取れる?平均取得率と取れないときの6つの対処法

公開日:2025/05/09 更新日:2025/05/09
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「看護師はなんで有給休暇を取れないの?」「有給休暇をもらって、ゆっくり休みたい!」

看護師は仕事が忙しく、24時間体制で患者さまをケアしなければならないため、思うように有給休暇を取得できないといわれています。

今回の記事では、看護師の有給休暇の基本や取得の現状、そして有給休暇を取りやすくするためのコツを解説します。

どうしても有給休暇を取れないときの対処法も紹介しているため、疑問や不安の解消にお役立てください。

看護師の有給休暇の基本

看護師には、労働基準法で決められた有給休暇を取得する権利があります。ここでは、有給休暇の取得条件と取得日数を確認しましょう。

有給休暇の取得条件

有給休暇を取得するためには、労働基準法(第三九条)の「一定期間の勤務」と「出勤率」の条件を満たさなければなりません。

  • 仕事を始めてから6か月間継続して勤務している
  • 全労働日の8割以上出勤している

これらの条件をクリアすることで、有給休暇を取得できます。たとえば、4月1日に入社した場合、労働日の8割以上出勤すると、10月1日に有給休暇が付与されます。

有給休暇の取得日数

有給休暇の取得日数は、勤続年数に応じて増えます。仕事を始めてから6か月後に10日間の有給休暇が付与され、6か月以降は、次のように日数が増える仕組みです。

継続勤務年数有給休暇の付与日数
6か月10日
1年6か月11日
2年6か月12日
3年6か月14日
4年6か月16日
5年6か月18日
6年6か月以上20日
参考:【リーフレットシリーズ労基法39条】|厚生労働省

6年6か月以上働くと、年間で20日間の有給休暇が付与されます。これらの日数は労働基準法で定められた最低基準であり、職場によってはさらに多くの有給休暇が付与される場合もあります。

ただし、有給休暇には2年という期限があります。そのため、自分にはどれくらいの有給休暇が付与されるのか、就業規則をチェックしたり、人事課に確認したりして期限切れにならないように注意しましょう。

看護師の有給休暇の平均取得率は67.7%

日本看護協会「2023年病院看護実態調査 報告書」の調査によると、看護師の有給休暇の平均取得率は67.7%であると明らかになっています。

厚生労働省の調査によると、全産業の平均取得率62.1%であり、看護師の取得率はやや高い水準といえます。

しかし、この平均値だけを見て「看護師は有給休暇を取りやすい」と考えるのは早計かもしれません。この数字はあくまで平均であり、実際には有給休暇を十分に取得できていないと感じている看護師の方もいるからです。

病床規模別の有給休暇の取得率を見てみましょう。

病床数有給休暇の平均取得率
99床以下68.7%
100~199床69.1%
200~299床68.5%
300~399床66.4%
400~499床64.3%
500床以上60.9%
参考:2023 年 病院看護実態調査 報告書|日本看護協会

有給休暇の平均取得率は、病床数が100~199床では69.1%ある一方で、500床以上では60.9%と全産業の平均を下回っています。

そのため、勤務先や転職先のホームページを確認して、実際の取得率を確認することが大切です。

看護師の有給休暇の現状とその理由

「看護師は有給休暇を取りにくい」といわれる現状には、看護師特有の事情が深くかかわっているようです。

  • 罪悪感やプレッシャーから取れない
  • 患者さまの状況から急な取得は難しい
  • 不規則な勤務であり取りにくい
  • 上司から勝手に使われることもある

ここでは、看護師の有給休暇の現状を詳しく見ていきましょう。

罪悪感やプレッシャーから取れない

看護師が有給休暇を取りにくい理由のひとつは、同僚への罪悪感やプレッシャーです。

とくに、慢性的な人手不足の職場では、ひとりでも欠けると業務が回らなくなるというプレッシャーが強くのしかかります。

「私が休んだら、◯◯さんが残業することになるかもしれない」といった考えが頭をよぎり、有給休暇の申請をためらってしまうこともあります。

患者さまの状況から急な取得は難しい

次のようなケースでは、前もって申請していても、有給休暇を取りづらくなることがあります。

  • 重症の患者さまが多い
  • 介護度が高い患者さまが多い
  • 緊急搬送の件数が多い

患者さまの状況に左右されやすいことも、看護師が有給休暇を取得しにくい理由といえます。

不規則な勤務であり取りにくい

多くの看護師の方が、日勤や夜勤、準夜勤など不規則な勤務体制で働いているため、計画を立てにくく、有給休暇の取得が難しいという事情があります。

また、シフト制の職場では、自分が希望する日に有給休暇を取得するためには、ほかの看護師の方との調整が不可欠です。

このように、不規則な勤務と人員調整の難しさが、有給休暇の取得を妨げる要因となっています。

上司から勝手に使われることもある

一部の職場では、看護師の意思とは関係なく、上司が有給休暇を消化してしまうというケースもあるようです。

本来、有給休暇は看護師が自由に取得できるものです。

ただし「人件費を抑えるために、有給残日数の多い人から消化」といわれたり「忙しくない夏の時期に消化」と半ば強制的に取得日が指定されたりして、不自由さを感じる看護師がいるかもしれません。

看護師が有給休暇を取得するときのコツ

看護師が少しでも有給休暇を取りやすくするためには、いくつか工夫が必要です。

  • 有給を早めに申請する
  • 忙しい時期を避けて取得する
  • 理由を伝えておく
  • 別の看護師に引き継ぎをしておく

これらのコツを実践できると、周囲の理解や協力を得やすくなり、希望通りの有給休暇を取得できる可能性が高まるでしょう。

有給を早めに申請する

有給休暇を取得したい日が具体的に決まっている場合は、できるだけ早めに上司に申請することが大切です。

早めに上司に伝えると、人員配置を調整でき、あなたの希望日に沿って準備しやすくなるからです。また、希望日が重なり、ほかの看護師と勤務の調整が必要になった場合でも、余裕をもって対応できます。

具体的には、2か月前には上司に伝えておくと良いでしょう。

早めの申請は、スムーズに有給休暇を取得するための第一歩です。

忙しい時期を避けて取得する

職場のスケジュールや忙しい時期を把握し、業務が落ち着いている時期に有給休暇を申請することも、取得しやすくするためのコツです。

一般的に、年末年始や大型連休の前後などは、どの職場でも休みを希望する看護師が多くなり人手が不足しがちです。また、病棟によっても忙しさは異なります。

たとえば、夏には熱中症、冬には心臓病やインフルエンザといった感染症に対応している病棟は患者さまが搬送されるケースが増え、忙しくなる傾向にあります。

職場の1年間のスケジュールを確認したり、先輩看護師に忙しい時期を聞いたりして、余裕のある時期を見計らって有給休暇を申請しましょう。

理由を伝えておく

有給休暇を申請する際には、取得したい理由を上司や同僚に伝えると、スムーズな取得につながる可能性があります。

「子どもの学校行事に参加したい」「家族との時間を取りたい」といったプライベートな理由でも問題ありません。

理由を伝えることで、周囲もあなたの状況を理解しやすくなり「それなら仕方ないね」と快く送り出してくれるでしょう。

お互い様の文化を作っていくことも重要です。

別の看護師に引き継ぎをしておく

自分が有給休暇を取得する期間、担当している患者さまのケアや業務が滞りなく進むように、ほかの看護師へ引き継ぎをしっかりしておくことが大切です。

具体的には、次のような情報を伝えておきましょう。

  • 患者さまの病状や治療方針
  • 処置の内容
  • 注意すべき点

口頭だけではなく、記録に残したり、資料を作成したりして伝えると、あなたがいない間でも迷わずに業務に取り組めます。あなたも安心して有給休暇を取得でき、プライベートの時間を楽しめるでしょう。

看護師が有給休暇を取れないときの6つの対処法

さまざまな工夫をしても有給休暇を取得できない状況が続く場合は、次の6つの対処法を検討してみてください。

  • 就業規則で法的な権利を再確認する
  • 上司に相談する
  • 職場の労働組合に相談する
  • 有給休暇にルールを設ける
  • 労働基準監督署(労基)や弁護士に相談する
  • 有給休暇を取得しやすい職場に転職する

これらの対処法をおこなって現状を打破し、有給休暇を取得するために行動しましょう。

就業規則で法的な権利を再確認する

まず、職場の就業規則を確認して、有給休暇についての規定がどのように定められているかを正確に把握してください。

労働基準法では、一定の条件を満たした労働者には有給休暇が付与されることが定められており、看護師も例外ではありません。

就業規則に書かれている次の情報をチェックしましょう。

  • 有給休暇の付与日数
  • 申請の手続き
  • 取得の条件

就業規則をしっかりと読んで、不明な点があれば人事課や上司に確認しましょう。

上司に相談する

一人で悩まずに、まずは上司に有給休暇を取得したいという意思を伝え、希望を相談してみることが大切です。

あなたの状況や休暇を取得したい理由、今後の働き方の希望を伝えることで、上司も解決策を一緒に考えてくれるでしょう。

たとえば「〇月〇日にどうしても外せない用事がある」「心身のリフレッシュのために連休を取りたい」など、具体的に伝えることが重要です。

率直な意見を伝えられると、解決策が見つかるかもしれません。

職場の労働組合に相談する

上司に相談しても有給休暇の取得が難しい場合や、上司との話し合いがうまくいかない場合は、職場の労働組合に相談しましょう。

労働組合は、労働者の権利を守るための組織であり、有給休暇の取得についても、病院側と交渉したり、交渉の進め方をアドバイスしてくれたりなどサポートしてくれます。

あなたの職場に労働組合がある場合は、積極的に相談してみることをおすすめします。

有給休暇にルールを設ける

職場で、看護師が有給休暇を取得しやすいようなルールを設けることを提案してみるのも、有効な解決策のひとつです。

たとえば「月に2人まで有給休暇を取得できる」「連休と組み合わせて取得することを推奨する」「30日前までに申請すれば取得できる」などのルールです。

有給休暇は看護師の権利であり、本来ならこういったルールは必要ないかもしれませんが、具体的なルールを作ることで、有給休暇を計画的に取得できるようになるでしょう。

まずは同僚と話し合い、まとまった意見を上司や管理部門に提案してみてください。

労働基準監督署(労基)や弁護士に相談する

労働基準法に明らかに違反するような有給休暇の扱われ方を受けている場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

たとえば、有給休暇の申請を理由もなく拒否されたり、一方的に買い取りを強要されたりするケースです。

あなたの状況を分析したうえで、適切にサポートしてくれます。

有給休暇を取得しやすい職場に転職する

さまざまな対策を講じても、今の職場で有給休暇の取得が難しいと感じ、心身ともに疲弊している場合は、転職を検討してみませんか。

労働環境が整っている職場では、スタッフに余裕があったり、有給休暇の取得を推奨する文化があったりするため、有給休暇を取得しやすい傾向があります。

求人情報を集めたり、求人サイトを活用したりして、以下の情報に注目することで、より良い労働環境の職場を見つけられるかもしれません。

  • 有給休暇の消化率
  • 看護師の人員配置
  • ワークライフバランス重視

心身の健康を守り、長く働き続けるためには、より良い環境が必須です。訪問看護師は、予定されているスケジュールを中心に業務を行うため休みの取得がしやすい傾向です。「NsPaceCarerr」は、訪問看護業界に特化した求人サイトであり、働きやすい職場への転職を実現できます。登録は無料であるため、まずは登録だけでもしてみませんか。

看護師の有給休暇に関するQ&A

ここでは、看護師の有給休暇について寄せられる質問とその回答をまとめました。Q&Aであなたの疑問や不安を解消できれば幸いです。

Q1:看護師が有給休暇を取れないのは違法ですか?

看護師が有給休暇を取れないのは、違法の可能性があります。

労働基準法では、いくつかの条件を満たすと有給休暇を取得できる権利があるとされているからです。

ただし、病院や施設の正常な運営を妨げる場合に限って、取得時期を変更する権利(時季変更権)が認められています。

同じ時期にたくさんの看護師が有給休暇を申請して患者さまのケアができない場合や、特定の資格を持つ看護師がいなければ仕事ができない場合に使われます。

「忙しいから」という理由で時季変更権を使うことは、基本的にはできません。

Q2:看護師の有給休暇が勝手に使われることはありますか?

看護師の有給休暇を、上司や病院側が本人の同意なしに一方的に消化することは、原則として労働基準法に違反する行為の恐れがあります。

ただし、例外として、労使協定が締結されている場合に限り、計画的に有給休暇を割り振ることが認められています。

もし、身に覚えのない有給休暇の消化がおこなわれている場合は、まずは上司や人事担当者に確認し、納得のいかない場合は労働基準監督署への相談も検討しましょう。

Q3:新人看護師の有給はいつからもらえる?

新人看護師であっても、働き始めてから6か月間継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上を出勤していると、有給休暇が付与されます。

実際には、10月頃に10日間付与されることが多い傾向です。

Q4:看護師が退職するときに有給休暇は消化できますか?

看護師が退職する際に、残っている有給休暇をすべて消化することは、権利として認められています。

ただし、職場によっては「20日残っているが10日のみの付与」「1日も付与されない」ケースもあるようです。

可能な限り有給休暇を取得できるように、退職日までに、残りの有給休暇を取得したい旨を、早めに職場の上司や人事担当者に伝えることが重要です。

早めに伝えることで、スタッフの配置を調整しやすくなり、比較的スムーズに有給休暇を消化できる可能性があります。

Q5:看護師も時季指定義務の対象ですか?

看護師の方も対象です。

ただし、対象者には一定の条件があるため自身が該当するかは、上司や人事担当者へ確認しましょう。

基本的には「全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要」というもので、有給休暇の取得推進のために2019年4月から労働基準法が改正されました。

まとめ:看護師の有給休暇にはハードルがある!転職も視野に入れて検討しよう

看護師の有給休暇の取得には、慢性的な人手不足や入院患者さまへの対応、そして自身の責任感や罪悪感など多くのハードルが存在するのが現実です。

しかし、有給休暇は、心身をリフレッシュさせ、質の高いケアを提供し続けるために、看護師にとって不可欠な権利です。

もし、今の職場で有給休暇の取得が難しいと感じているのであれば、今回ご紹介した取得のためのコツや、取れない場合の対処法をぜひ試してみてください。

それでも状況が改善しない場合は、有給休暇を取得しやすい、ワークライフバランスを重視する職場への転職も、健康とキャリアを守るための選択肢として検討することをおすすめします。

<参考サイト・文献>

労働基準法|e-GOV 法令検索

【リーフレットシリーズ労基法39条】|厚生労働省

年次有給休暇の時季指定義務

2023 年 病院看護実態調査 報告書|日本看護協会

令和5年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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