派遣看護師の注意点6つ!派遣禁止の理由やよくあるトラブルを解説

「派遣看護師として働きたいけどわからないことばかり」「家庭を優先したいから派遣看護師になりたいけどトラブルってあるの?」
このような悩みがある看護師の方もいるでしょう。看護師が派遣で働くことは、多様な働き方を実現する選択肢のひとつです。
しかし、派遣という働き方には、常勤とは異なる注意点もあり、なかなか一歩を踏み出せないでしょう。
ここでは、派遣看護師への転職を考えている方が押さえておくべき注意点や働くまでの流れ、メリット・デメリットなどを解説します。この記事が、理想の働き方を実現するためのきっかけとなれれば幸いです。
看護師が派遣で働く際の6つの注意点
看護師が派遣で働くためには、まずは派遣会社への登録が必要です。そこで、紹介された求人に応募して選考を通過すると、派遣看護師として働けます。しかし、常勤の看護師とは、あらゆる点で異なることを踏まえておくことが不可欠です。
- 法律によって禁止されている職場がある
- 教育体制がない職場がある
- ずっと派遣ではキャリアアップが期待できない
- 常勤と比べると給料が低い
- 社会保険に加入できない可能性がある
- インシデントやアクシデントによっては自分で責任を追う恐れがある
これらの注意点をあらかじめ知っておくと、派遣看護師になった際に後悔せずに済むでしょう。
法律によって禁止されている職場がある
原則として、医療機関への派遣が禁止されています。
なぜなら、看護師の業務は、患者さまの生命や健康に関わり、高度な専門性と責任が求められるからです。厚生労働省によると、次の場所での就労が禁止されています。
- 病院・診療所
- 助産所
- 介護医療院
- 介護老人保健施設
- 医療を受ける者の居宅
ただし、紹介予定派遣の場合や育児休業・介護休業などを取得した看護師の業務を補う形での派遣の場合では、病院や施設でも派遣看護師が認められています。
一方で、次の職場では禁止されていません。
- 障害者支援施設
- 養護老人ホーム
- 生活保護法にもとづく救護施設・更生施設などに設置された診療所
あなたが働きたい職場が、法律の規制の対象施設ではないか、派遣会社に確認してみましょう。
教育体制がない職場がある
派遣看護師は、即戦力として期待される場合が多く、派遣先によっては十分な教育が受けられないでしょう。
とくに、経験の浅い看護師にとって、教育体制が整っていない職場では、スキルアップできないと感じるでしょう。
また、経験豊富な看護師でも、新しい職場に慣れるまでは不安を感じるものです。ひとつの処置をとっても、手順や準備する物品がこれまでの職場とは異なったり、胸部レントゲン室に患者さまを搬送する場合でも、検査をする場所がわからなかったりします。
そのため、働く前に、職場の教育体制を派遣会社に尋ねたり、職場見学に参加して職場の雰囲気やサポート体制を確認したりすることをおすすめします。
ずっと派遣ではキャリアアップが期待できない
派遣看護師は、派遣先での昇進や昇給が少なく評価を受ける機会がないため、キャリアアップが難しい場合があります。
しかし、派遣会社によっては、キャリアアップ支援制度を設けているところもあります。たとえば、専門スキルを高めるための研修や、資格取得にかかる費用を補助する制度などです。
これらの制度を活用することで、認定看護師や専門看護師などの資格取得を目指したり、キャリアアップに役立つスキルを身につけたりが可能です。
キャリアアップを目指すのであれば、まずは派遣会社の担当者に相談し、どのような支援制度を受けられるのか確認しておきましょう。

常勤と比べると給料が低い
一般的に、派遣看護師は常勤の看護師と比べて給料が低い傾向にあります。
ほとんどは時給制であり、ボーナスや退職金がない場合が多いからです。厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の時給は1,849円(短時間労働者の1時間当たりの所定内給与額)です。派遣会社によって異なりますが、この時給額が基準になると考えられます。
しかし、派遣会社や派遣先によっては、高時給の求人やボーナス・退職金制度を設けている場合があります。
給料を重視する場合は、複数の派遣会社の求人情報を比較し、高待遇の求人を探しましょう。また、一定期間、派遣先で働いたあと、病院や施設と雇用契約を結ぶことで、給料アップの道を目指せる可能性もあります。
関連記事:派遣看護師の給料はいくら?派遣の方が稼げる理由3つと向いている人を解説
社会保険に加入できない可能性がある
派遣看護師は、派遣先の雇用契約によっては、社会保険に加入できない可能性があります。
社会保険に加入できないと、将来の年金や医療費の負担が大きくなる恐れがあります。また、国民健康保険に加入することとなり、社会保険に加入していたときより保険料の負担が増えるかもしれません。
派遣看護師として働く前に、派遣会社に社会保険の加入条件を確認しておきましょう。
インシデントやアクシデントによっては自分で責任を追う恐れがある
派遣看護師は、派遣先のスタッフではないため、インシデントやアクシデントが発生した場合、責任の所在が曖昧になることがあります。
そのため、場合によっては、自分で責任を負うリスクも考慮しなくてはなりません。
派遣看護師として働く場合は、派遣会社にインシデントを起こした際の責任の所在を事前に確認しておくことが重要です。万が一に備えて、損害賠償責任保険に加入することも検討しましょう。
看護師が派遣で働くまでの流れ
看護師が派遣で働くまでの流れは、次のとおりです。
- ホームページから派遣会社に登録する
- 希望の条件や勤務先などを相談する
- 派遣先を見学する
- 業務を開始する
複数の派遣会社に登録することがおすすめです。より多くの求人情報を比較検討できると、あなたの希望や条件に合った求人を見つけやすくなります。
看護師が派遣で働くメリット
看護師が派遣という働き方を選ぶと、自分のライフスタイルに合った働き方ができたり、残業なく仕事を終えられたりするメリットがあります。ここでは、派遣看護師として働くメリットを4つにまとめました。
- ライフスタイルに合わせた働き方ができる
- 基本的には定時で業務を終えることができる
- 人間関係のトラブルに巻き込まれにくい
- 委員会活動や研修などへの参加が求められない
それぞれを詳しく見ていきましょう。
ライフスタイルに合わせた働き方ができる
派遣看護師は、働く時間や日数などを選べるため、比較的自由度が高い働き方といえます。
たとえば、短時間勤務や1週間のうち数日間のみの勤務も可能であるため、子育てや介護などで忙しい看護師の方におすすめです。
また、派遣看護師は、働く場所も選べます。都市部や地方、病院や介護施設など、さまざまな選択肢があるため、自分の希望に合った場所で働けるでしょう。
基本的には定時で業務を終えることができる
基本的に、派遣看護師は、定時で業務を終えることが前提となっているため、残業が少ない傾向にあります。
たとえば、派遣契約時に勤務時間が明確に定められているため、残業が発生する場合は、事前に派遣会社と派遣先の合意が必要です。また、派遣看護師は、休日や休暇も比較的取りやすく、自分の時間を確保しやすいでしょう。
このように、派遣看護師は、定時で業務を終えやすく、プライベートの時間を大切にしたい方にとって魅力的な働き方です。
人間関係のトラブルに巻き込まれにくい
派遣看護師は、職場での人間関係に悩むことなく、働きやすい環境といえるでしょう。
派遣看護師は期間限定で働くことが多く、派遣先のスタッフとの間に適度な距離感を保てるからです。
たとえば、派遣期間が終了すれば別の職場に移るため、面倒な人間関係に深入りする必要がありません。また、万が一トラブルに巻き込まれた場合でも、派遣会社が間に入って仲介してくれるので、安心して働くことができます。
このように、派遣看護師は、人付き合いが苦手な方や、淡々と業務に集中したい方におすすめです。
委員会活動や研修などへの参加が求められない
派遣看護師は、派遣先の医療機関や介護施設のスタッフではないため、委員会活動や研修などへの参加を求められない場合が多いようです。
そのため、自分の業務に集中しやすく、残業が発生にしくいでしょう。実際に「残業なしで働けるから、日勤後の時間も充実している」「ほかのスタッフに気兼ねなく退勤できるからスムーズに子どもの迎えに行ける」といった声が聞かれます。
また、派遣看護師は、基本的に指示された業務をおこなうことが中心となるため、責任のある仕事を任されることが少ない傾向にあります。
そのため、責任の重い仕事にプレッシャーを感じる方にとって派遣看護師は理想の働き方といえるでしょう。
関連記事:派遣看護師に向いている人を4つの雇用形態別に徹底解説!
看護師が派遣で働くデメリット
派遣看護師のメリットがあるのに対して、デメリットもいくつかあります。
- 派遣会社が医療専門でないと対応に不慣れなことがある
- 経験が浅い看護師は業務に対応できない場合がある
- 昇給やボーナスが期待できない
- キャリアアップしにくい
それぞれを詳しく見ていきましょう。
派遣会社が医療専門でないと対応に不慣れなことがある
派遣会社が医療専門でないと、医療業界特有の事情や専門知識への理解が十分ではないかもしれません。
何か困った際に、医療業界に特化していると相談や対応がしやすいです。
医療専門の派遣会社を選ぶと、医療業界の最新情報や求人情報を把握しており、あなたの希望に合った派遣先を紹介してくれるでしょう。
経験が浅い看護師は業務に対応できない場合がある
経験の浅い派遣看護師が働き始めた場合、派遣先が求めるスキルレベルに達しておらず、業務をスムーズに遂行できないケースがあります。
なぜなら、派遣先は慢性的な人手不足に悩まされていることが多く、あなたに即戦力としての活躍を期待しているからです。
具体的には、経験の浅い看護師は、次のような仕事内容に戸惑うかもしれません。
- 高度な医療処置:専門的な知識と技術が求められる処置
- 急変時の対応:迅速かつ的確な判断と行動が求められる状況
- 複雑な医療機器の操作:専門的な知識と熟練したスキルが求められる機器の操作
これらの業務は、経験豊富な看護師であっても、新しい職場では一定の慣れが必要であるため、経験の浅い看護師にとっては、より一層の困難さがともないます。
そのため、経験の浅い看護師は、教育体制が充実している派遣先を選ぶことが大切です。研修制度やOJT制度などが整備されていると、働きながらスキルアップを目指せるでしょう。
自己学習も積極的に取り入れると、知識が広がります。
昇給やボーナスが期待できない
時給制での雇用形態となるため、定期的な昇給や賞与などは見込めないかもしれません。
給料アップを希望するのであれば、派遣以外の働き方を検討しましょう。具体的には、正社員として働く、夜勤手当や残業手当など手当が充実している職場を選ぶといった方法が考えられます。
キャリアアップしにくい
派遣看護師は契約期間が決められており、職場を転々としがちです。
特定の職場で長期的なキャリアを築くことが難しいため、昇進や昇給の機会が限られる傾向にあります。
もし、将来的なキャリアアップを望む場合は、正社員(直接雇用)になることを検討しましょう。正社員であると、長期的な視点でキャリアプランを立てやすく、昇進や昇給の機会も豊富です。
看護師が派遣で働く際の注意点に関するよくある質問
看護師が派遣という働き方を選ぶときの注意点について、よくある質問とその回答をご紹します。
Q1:ずっと派遣看護師として働くことはできますか?
ずっと派遣看護師を続けるのは難しいでしょう。
というのも、労働者派遣法によって、同じ職場で働ける期間は最長3年と決まっているからです。
ただし、紹介予定派遣という制度を活用すると、一定期間、派遣看護師として勤務したあと、派遣先と本人の双方が合意のうえで直接雇用に切り替えられます。
Q2:派遣社員の暗黙のルールってありますか?
派遣看護師として働くうえで、明文化されていなくても意識しておくべき暗黙のルールがいくつか存在します。
まず、派遣先のスタッフへの敬意と謙虚な姿勢が求められます。派遣看護師は外部からのスタッフであるため、職場の文化やルールを常に意識し、派遣先の指示に従う必要があります。
次に、派遣看護師は、派遣先の業務をサポートする立場であるため、時間管理を徹底し、与えられた業務に責任を持つ必要があります。
さらに、積極的に学び、柔軟に対応する姿勢も求められます。派遣先によって業務内容や使用する医療機器が異なるため、新しい知識やスキルを積極的に習得し柔軟に対応することが大切です。
まとめ:派遣看護師としての注意点を踏まえて理想の働き方を実現しよう
看護師が派遣に転職する際には、法律による制限や給与の違いなど、さまざまな注意点があります。
これらの注意点を理解したうえで、派遣という働き方が自分の希望や条件、生活、キャリアプランなどに合っているか、慎重に検討しましょう。
派遣という働き方を賢く選択することで、ワークライフバランスの取れた、より充実した看護師生活を送れるでしょう。
<参考サイト・文献>
労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・|厚生労働省

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