看護師が休職するおもな理由とは?休職前の確認事項3つや手続きの方法

「本当は休職したいけど、休職後のことが不安でできない」「休職したときって給料は支払われるの?」
看護師として働いていると、心身の不調やキャリアプランの変化など、さまざまな理由で休職を考える場面があるでしょう。
しかし、いざ休職しようと思っても、何から始めればいいのか、どのような手続きが必要なのかわからず、不安に感じるかもしれません。心身の不調が原因で休職したいのにできない場合は、さらに症状が悪化する恐れがあり注意が必要です。
この記事では、看護師が休職するおもな理由から、休職前に確認すべき事項や手続きの方法、復帰後の選択肢などを解説します。この記事を読むことで、あなたが安心して休職期間を過ごし、スムーズに職場復帰するための準備ができるでしょう。
看護師の休職のおもな理由はメンタルの不調
看護師が休職するおもな理由はメンタルの不調です。ここでは、ほかの理由と合わせて詳しく解説します。
職場内にメンタル不調で治療を受けている看護師がいる職員の割合は40.6%
日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査」によると、職場内にメンタル不調で治療を受けている看護師がいる職員の割合は40.6%と明らかになりました。
看護師は、次の要因からメンタルの不調になりやすいと言われています。
- 患者さまの命を預かる責任の重さ
- 夜勤を含む不規則な勤務体制
- 職場の人間関係
こういったストレスにさらされているため、心身のバランスを崩しやすく、メンタルの不調に陥りやすいといえるでしょう。
また、看護師は、常に緊張感を持って業務にあたるため、ストレスを溜め込みやすく、自身のメンタルの不調に気づきにくい傾向があります。
関連記事:クリニック看護師がつらいと思う理由は?対処法から退職手順まで解説
メンタルの不調以外で休職する理由
メンタルの不調以外にも、看護師が休職する理由には次のようなものが挙げられます。
- 病気やけがによる療養
- 妊娠・出産・育児
- 家族の介護
- キャリアアップのための学習
- 海外留学
これらの理由も、看護師が休職を考えるきっかけです。病気やけがによる療養では、手術や入院が必要な場合や、慢性的な疾患の治療に専念する場合などが考えられます。
ほかにも、大学院への進学や専門資格の取得を目指しキャリアアップしたり、語学留学や専門分野の研究のために留学したりする目的で休職を選ぶ看護師の方もいます。
休職する前に確認しておきたいこと
休職を決める前に、確認しておきたい点がいくつかあります。
- 休職中の給料
- 休職期間
- 勤め先との連絡手段
これらの情報をしっかりと確認しておかないと、休職中に給料がなく困ったり、職場復帰がスムーズにいかなかったりする可能性があるため注意しましょう。
休職中の給料
休職中に給料が出るかどうかは「職場次第」です。
というのも、職場の都合によって休業させた場合には看護師に平均賃金の60%が支給されますが、休職は法律上の必須の制度ではないため、制度自体がない恐れがあるからです。
職場から給料が出ない場合でも休職する理由によっては、傷病手当や休業補償を受けられる可能性があります。
そのため、休職中の給料については、勤務先の就業規則をチェックしたり、上司や人事課に確認したりしてください。
休職期間
休職期間についても、勤務先の就業規則で定められているケースが多い傾向です。
一般的に、休職期間は数ヶ月から1年程度に設定されています。
しかし、病気やけがの状況によっては、休職期間を延長できる場合もあります。休職期間の延長を希望する場合は、医師の診断書や勤務先の規定をもとに、手続きをおこなうことが一般的です。
勤め先との連絡手段
休職中の連絡手段についても、事前に確認しておきましょう。
休職期間中は、月に1回程度、現状や今後のことについて職場から連絡があったり、必要な手続きや復職に関する相談のために連絡したりします。
休職中の連絡手段としては、電話やメール、手紙などがあります。また、緊急時には、電話で連絡を取り合うことができるように、連絡先を共有しておくことが大切です。
看護師が休職する際に受けられる手当や給付金の制度
看護師が休職する際、条件を満たすと次のような手当や給付金を受け取れる場合があります。
- 傷病手当金
- 休業(補償)等給付・休業特別支援給付
- そのほか雇用保険からの休業給付
経済的な不安を軽減するためにも、どのような制度があるのか確認しておきましょう。
傷病手当金
傷病手当金とは、病気やけがで働けなくなった場合に、健康保険から支給される手当です。支給を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業である
- 労務不能である
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない
- 休業した期間は給与の支払いがない
引用:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
これらの条件を満たすことで、傷病手当金を受け取れます。傷病手当金の支給期間は、支給開始日から最長1年6ヶ月です。
ただし、健康保険未加入の場合はこの制度を利用することはできません。
休業(補償)等給付・休業特別支援給付
業務中や通勤中の病気やケガで働けなくなった場合に、労災保険から支給される給付です。こちらも、支給を受けるためには次の条件を満たさなければなりません。
- 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養である
- 労働できない
- 賃金を受けていない
引用:労災保険 休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
これらの条件を満たす場合に、休職して4日目から休業(補償)等給付・休業特別支援給付を受け取れます。給付基礎日額の60%程度が支給されます。
そのほか雇用保険からの休業給付
雇用保険からも、育児休業給付や介護休業給付など、休職の理由に応じて給付金が支給される可能性があります。
育児休業給付は、1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した場合に支給されます。支給額は、休業開始前の賃金の67%です。また、介護休業給付は、要介護状態の家族を介護するために介護休業を取得した場合に支給されます。支給額は、休業開始前の賃金の67%です。
これらの給付金を利用すると、休業中の経済的な負担を軽減できるでしょう。
看護師が休職したいときの手続き方法
休職することを決めたら、必要な手続きをおこないます。具体的には、次の4ステップで進めてください。
- 就業規則で休職制度があるか確認する
- 受診してかかりつけ医から診断書をもらう
- 職場の上司や人事部に休職について相談する
- 業務を引き継ぐ
それぞれを見ていきましょう。
1.就業規則で休職制度があるか確認する
まずは、勤務先の就業規則を確認し、休職制度があるかどうか、どのような条件で休職できるのかを確認しましょう。
就業規則には、次のように休職に関するさまざまな情報が記載されています。
- 休職できる理由
- 休職期間
- 休職中の給与
- 休職中の社会保険の扱い
- 休職中の連絡方法
- 復職に関する手続き
これらの情報を確認できると、休職の疑問や不安を解消できます。
しかし、休職制度は、法律で定められた制度ではないため、勤務先によって内容が異なります。そのため、就業規則を確認せずに休職してしまうと、休職期間が思ったより短かったり、休職中の給与が支払われなかったり、後々のトラブルになるかもしれません。
そのため、休職を検討する際には就業規則を確認して、記載されていない事項については、上司や人事部に確認しましょう。
2.受診してかかりつけ医から診断書をもらう
ケガや病気で休職する場合は、医師の診断書が必要です。
診断書は、休職の手続きに必要な書類であり、診断書がない場合、休職を認められないことがあるからです。
また、診断書の内容によっては、休職期間が短縮されたり、休職を認められなかったりするケースもあります。そのため、診断書をもらう際は、医師に症状や状況を正確に伝え、必要な期間を記載してもらいましょう。
3.職場の上司や人事部に休職について相談する
診断書をもらったら、職場の上司や人事部に休職について相談しましょう。休職の理由や期間、今後の見通しなどを伝えます。
すぐに上司や人事部に伝えることで、職場への影響を最小限に抑えられます。また、休職期間や復職時期などについて相談できます。
ただし、メンタルの不調で症状がつらいときは、無理して復職の話をする必要はありません。まずは症状を落ち着かせることを最優先としてください。
4.業務を引き継ぐ
休職することが決まったら、業務の引き継ぎをおこないます。
引き継ぎが不十分だと、休職中に職場から連絡が来たり、復職後に業務がスムーズに進まなかったりするなど職場に迷惑をかけてしまうため、丁寧におこなってください。具体的には、次の内容を引き継ぐと良いでしょう。
- 業務内容
- 担当している委員会の情報
- 担当している患者さまの情報
これらをまとめた書類を作成しておくと、引き継いだ看護師が困らずに業務に取り組めます。引き継ぎ期間は、業務内容や量によって異なりますが、余裕を持って1週間から2週間くらい確保しておくと安心です。
ただし、休職は急に決まることもあるため、自らが直接引き継げないこともあります。
日頃から業務の共有をおこない、自分しかできない仕事を抱えすぎない方がよいでしょう。
看護師が休職した際のおすすめの過ごし方
休職期間中の過ごし方は、心と身体の疲れを回復させるために大切です。
- 規則正しい生活を心がける
- 適度に外出してリフレッシュする
- 体調が戻ってきたら休職明けの生活をイメージする
できることからやってみてください。
規則正しい生活を心がける
休職中は、仕事のストレスから解放され、時間を持て余してしまうことがあり、生活リズムが乱れがちです。
たとえば、夜更かしをしたり、昼過ぎまで寝ていたりするかもしれません。
しかし、不規則な生活は、体内時計を狂わせ、睡眠の質を低下させます。睡眠不足は、疲労感や倦怠感を増幅させ、メンタルの悪化にもつながります。
規則正しい生活を送ることは、心身の健康を保つために重要であるため、毎日同じ時間に寝起きし、バランスの良い食事を取るようにしましょう。また、適度な運動を取り入れることもおすすめです。散歩やストレッチなど、軽い運動でも効果が期待できます。
規則正しい生活を送ることで、心身のバランスを整い休職期間を有効に活用できます。
適度に外出してリフレッシュする
休職中は、家に閉じこもりがちになりますが、体調や気分が良いときは、適度に外出してリフレッシュすることも大切です。自然豊かな公園を散歩したり、カフェで読書をしたりするのもおすすめです。
また、日光を浴びることは、体内時計を整え、睡眠の質を向上させる効果もあります。外出する際は、無理のない範囲で、自分の好きな場所や好きなことしましょう。
体調をみながら、医師と相談して気分転換の方法を検討することが大切です。
体調が戻ってきたら休職明けの生活をイメージする
体調が回復してきたら、復職後の生活を具体的にイメージしてみましょう。復帰後の働き方や職場での目標などを考えることで、復職への不安を軽減できます。
たとえば、時短勤務やフレックスタイム制度を利用したい、部署異動を希望したいなど、具体的な希望を書き出すことが大切です。
次に、職場での目標を考えましょう。たとえば、キャリアアップを目指したい、スキルアップしたいなど、具体的な目標を設定してください。
これらの目標を達成するために、どのような行動が必要なのかを考えることで、復職後の生活をイメージできます。
休職から復帰する際の選択肢
休職から復帰する際には、次のような選択肢があります。
- 自部署に復帰する
- 違う部署に異動する
- 転職を検討する
自分の希望に合った働き方を実現するために、それぞれを確認してみてください。
自部署に復帰する
休職から復帰する際の一般的な選択肢は、元の部署への復帰です。
休職期間中に職場環境や人間関係が変化している可能性もあるため、復帰前に上司や同僚に情報を聞いておくと、スムーズに職場復帰できるでしょう。
また、休職明けは、心身ともに疲れやすい状態であるため、無理せずに業務を進めていく必要があります。困ったことや不安なことがあれば、上司や同僚に遠慮せずに相談してください。
違う部署に異動する
元の部署での業務内容や人間関係に不安がある場合は、違う部署への異動を申し出てみてください。異動することで、新たな気持ちで業務に取り組めるかもしれません。
実際に、違う部署に異動する場合は、異動先の業務内容や役割を事前に確認しておくことが大切です。異動先の部署で必要なスキルや知識を習得しておくと、円滑に業務に取り組めます。
しかし、異動後は、新しい環境に慣れるまで時間がかかることがあります。焦らず、自分のペースで業務に取り組みましょう。
転職を検討する
休職中に、看護師としてのキャリアプランを見直した結果、転職を考える方もいます。
転職を検討する場合、まずは自分のキャリアプランをはっきりとさせてください。どのような看護師になりたいのか、どのような職場で働きたいのか、具体的な目標を設定することが大切です。働き方も考えてみましょう。
また、自分の強みや弱みを把握したうえで、応募先の職場を詳しく調べることが不可欠です。求人サイトや転職エージェントを利用すると、求人情報を効率的にリサーチできます。
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看護師の休職に関するQ&A
看護師の休職について、よくある質問をまとめました。
Q1:診断書なしでも休職できますか?
診断書がなくても休職できるかどうかは、勤務先の就業規則によって異なります。
何らかの病気やケガで休職する場合は、診断書があったほうがスムーズに手続きを進められます。
場合によっては、診断書がないと休職を認められないかもしれません。また、休職期間中に給与が支払われなかったり、社会保険が適用されなかったりするケースもあります。
そのため、休職を検討する際は、必ず医師に相談し、診断書をもらうようにしましょう。
Q2:上司や人事課、同僚に休職の伝え方のコツはありますか?
休職の理由は、正直に上司や人事課に伝えるのが基本です。
無理にプライベートな内容に立ち入る必要はありません。休職期間や今後の見通しなど、伝えるべきことを整理しておきましょう。
同僚に休職を伝える際は、個人的な関係性や状況に応じて、伝える範囲や内容を決めることが重要です。
たとえば、親しい同僚には、休職の理由や期間などを詳しく伝えても良いでしょう。しかし、あまり親しくない同僚には、休職することだけを伝え、理由は伏せておいても良いかもしれません。
Q3:新人がうつ病で休職することもありますか?
新人看護師でも、うつ病で休職することはあります。新人看護師は、環境の変化や業務のプレッシャーなどから、大きなストレスを抱えやすいからです。
また、先輩看護師や患者さまとの人間関係に悩むこともあるでしょう。これらのストレスが重なると、うつ病を発症し、休職せざるを得なくなるケースもあります。
新人看護師がうつ病にならないためには、日頃からストレスを溜め込まないようにすることが大切です。たとえば、十分な睡眠や休息を取り、趣味や運動などでリフレッシュするようにしましょう。
また、悩みや不安があれば、ひとりで抱え込まず、先輩看護師や上司、家族などに相談してください。
関連記事:看護師1年目はつらい?辞めたい理由や7つの乗り越え方を詳しく紹介
Q4:休職は何ヶ月続くとクビになりますか?
休職期間が何ヶ月でクビになるかは、勤務先の就業規則によって異なり一概には言えません。
一般的には、休職期間が満了しても復職できない場合は、退職となることが多い傾向です。
しかし、病気やケガの状況によっては、休職期間を延長できる場合もあります。休職期間の延長を希望する場合は、医師の診断書や勤務先の規定をもとに手続きが必要です。
また、勤務先によっては、休職期間満了後も復職を支援する制度を設けている場合があります。たとえば、リハビリ勤務制度や短時間勤務制度などがあります。
これらの制度を利用することで、スムーズに職場復帰できるでしょう。
まとめ
看護師の休職は、決して珍しいことではありません。
看護師は、常に患者さまの命と向き合い、心身ともに負担の大きい仕事です。そのため、ストレスや疲労が蓄積しやすく、メンタルヘルスを損なうリスクも高いといえます。
もし、あなたが心身の不調を感じたら、無理せず休職することも選択肢のひとつとして考えてみてください。
休職する際には、この記事で解説した内容を参考に、必要な手続きをおこない、安心して休職期間を過ごしましょう。復職する際には、あなたの希望に合った選択をしてください。
<参考サイト・文献>
2022年看護職員の労働実態調査「報告書」|日本医療労働組合連合会

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