看護師の接遇とは?基本5原則や必要性・スキル向上のポイントを解説

看護師は、医療の専門知識や技術だけでなく、患者さまやその家族、医療チームとの円滑なコミュニケーションを取るスキルも求められます。その中でも 「接遇」 は、患者さまに安心感を与え、信頼関係を築くうえで欠かせない要素です。
適切な接遇を実践することで、患者さまの不安を和らげ、より良い医療の提供につながります。また、接遇が整っている職場では、スタッフ間の連携もスムーズになり、業務の効率化にもつながります。
この記事では、看護師に求められる接遇の基本原則や、その重要性、スキル向上の方法 について詳しく解説します。
看護師に求められる接遇とは?
「接遇」とは、単なる礼儀作法や丁寧な言葉遣いを指すものではなく、相手の立場に立ち、思いやりをもって対応することです。
特に医療現場では、患者さまが体調不良や病気への不安を抱えており、看護師の接し方によって安心感を得られるかどうかが大きく変わります。そのため、適切な態度や言葉遣いで接することが求められます。
また、医療従事者としての専門性を活かし、患者さまの心身の状態を考慮した対応が重要です。接遇は医療チーム内の円滑なコミュニケーションにもつながり、医療の質を向上させる重要なスキルといえるでしょう。
看護師の接遇が求められる理由
看護師にとって、なぜ接遇が欠かせないのか見ていきましょう。
適切な医療提供をするため
患者さまが安心できる環境を整えることは、適切な医療を提供するうえで欠かせません。
接遇が行き届いていると、患者さまは医療者の説明を受け入れやすくなり、治療への理解が深まります。特に、初めて受診する患者さまや高齢の方などは、医療従事者の対応ひとつで不安が大きく変わるものです。
また、落ち着いた状態で診察や処置を受けると、誤った情報を伝えるリスクが減り、看護師との意思疎通がスムーズになります。
例えば、緊張や不安から症状を正しく伝えられない患者さまも、看護師の安心できる対応によって、より正確な情報を提供しやすくなります。結果として、処置のミスや認識のズレを防ぎ、安全で適切な医療の提供につながるのです。
看護師の接遇は、単なるマナーではなく、医療の質を向上させる重要な要素といえるでしょう。
患者さまとの信頼関係を構築するため
接遇の良し悪しは、患者さまとの信頼関係に大きく影響します。信頼がなければ、患者さまは自身の症状や気持ちを十分に伝えられず、適切なケアを受ける機会を失うかもしれません。
丁寧な言葉遣いや思いやりのある対応を心がけると、患者さまは安心感を持ち、医療者に対して信頼を寄せやすくなります。特に、長期的な治療が必要な患者さまにとっては、看護師との信頼関係が治療の継続にも影響を及ぼします。
信頼関係が築かれると、患者さまは自身の症状や不安を率直に話しやすくなり、看護師がより正確に状態を把握できるようになります。例えば、「大丈夫」と言いつつも、表情や態度に不安が見られる患者さまに対し、適切な接遇を通じて本音を引き出せるケースもあるでしょう。
その結果、患者さま一人ひとりに合った、適切なケアや治療方針を立てやすくなるのです。
クレームやトラブルを未然に防ぐため
医療現場では、ちょっとした言葉遣いや態度が患者さまの不安や不満につながる場合があります。例えば、忙しさから無意識にそっけない対応をしてしまうと、「冷たい」「ちゃんと話を聞いてもらえなかった」といった印象を与え、クレームにつながるケースもあるでしょう
接遇を意識し、誠実で丁寧な対応によって、不満を感じにくい環境を提供できます。特に、患者さまの話を最後までしっかり聞き、わかりやすい説明を心がけることは、誤解や不信感を防ぐうえで非常に重要です。
また、適切なコミュニケーションによって意思のすれ違いを防ぎ、クレームやトラブルの発生リスクを低減できます。結果として、医療スタッフの負担軽減にもつながり、チーム内の連携も円滑になります。
看護師の接遇は、患者さまだけでなく、医療従事者全体の働きやすさにも大きく関わっているのです。
看護師が押さえておくべき接遇の基本5原則
看護師が押さえておくべき接遇の基本には、以下の5原則が挙げられます。
- 表情
- あいさつ
- 身だしなみ
- 言葉遣い
- 態度
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①表情:笑顔の重要性とアイコンタクト
看護師の表情は、患者さまの安心感に直結します。笑顔で接すると、患者さまの緊張がほぐれ、信頼関係を築きやすくなります。反対に、不機嫌そうな表情や無表情は、患者さまに不安を与える原因になりかねません。
また、適度なアイコンタクトも重要です。目を合わせると、しっかり話を聞いているという姿勢が伝わり、患者さまは「自分を大切にしてもらえている」と感じやすくなります。
ただし、長すぎるアイコンタクトは圧迫感を与えるため、適度なバランスを意識しましょう。
②あいさつ:場面に応じた適切な言葉づかい
あいさつは、接遇の基本です。明るくはっきりした声であいさつをすると、患者さまに安心感を与えられます。
例えば、「おはようございます」「お大事になさってください」など、場面に適したあいさつが大切です。短い言葉でも、笑顔とともに伝えると、より温かみのある対応になるでしょう。
また、忙しい場面でも、相手を気遣う一言を添えるだけで、印象が大きく変わります。
③身だしなみ:清潔感のある服装・髪型
身だしなみは、看護師の第一印象を左右する重要な要素です。清潔感のある服装や整った髪型は、患者さまに安心感を与え、信頼にもつながります。
シワや汚れのない白衣の着用はもちろん、爪や髪の長さにも注意が必要です。特に長い髪はまとめておくと清潔感が保たれ、衛生面でも安心です。
また、香水や過度な化粧は、患者さまによっては不快に感じる場合もあるため、控えめにするのが望ましいでしょう。
④言葉遣い:患者に伝わりやすい言葉選び
医療用語をそのまま使うのではなく、患者さまが理解しやすい言葉への言い換えが大切です。
例えば、「浮腫がありますね」ではなく「体に水分がたまってむくみがありますね」と伝えると、より分かりやすくなります。
また、相手が話しやすい雰囲気をつくるために、語尾を柔らかくするのも効果的です。例えば、「〇〇してください」よりも「〇〇していただけますか?」と伝えると、丁寧で温かみのある印象になります。
一人ひとりに合わせた適切な言葉選びが、患者さまの不安軽減につながるでしょう。
⑤態度:信頼構築につながる立ち居振る舞い
接遇では、患者さまに対して、落ち着いた態度で接することが求められます。慌ただしい動作や雑な対応は、不安を与える要因になるため、慎重に行動しなければなりません。
例えば、患者さまのベッドサイドに行く際は、無言で近づくのではなく、「お加減いかがですか?」と声をかけると安心感が生まれます。また、話す際には目線を合わせると、親しみやすく信頼を築きやすくなります。
日々の業務のなかで、立ち居振る舞いを意識すると接遇向上につながるでしょう。
看護師の接遇スキルを向上させるポイント
接遇スキルは、意識して取り組むことで確実に向上します。ここでは、接遇スキルを向上させるための具体的な方法を紹介します。
目標を立て、日々の業務で実践する
接遇スキルを向上させるためには、まず具体的な目標設定することが重要です。
「笑顔を意識する」「患者さまの話を最後まで聞く」など、日々の業務で実践しやすい目標を決めると、継続しやすくなります。また、患者さまの反応を観察しながら、改善点を見つけることも大切です。
小さな積み重ねが自信につながり、より良い接遇へとつながるでしょう。
接遇マニュアルを活用する
職場全体で統一された接遇を実践するためには、接遇マニュアルの作成が効果的です。
マニュアルがあると、新人看護師も迷わず適切な対応ができるようになり、現場の接遇レベルを一定に保つことができます。また、マニュアルを定期的に見直し、実際の業務に即した内容に更新すると、より実践的なものになるでしょう。
定期的に振り返り、フィードバックを受ける
接遇スキルの向上には、自己評価だけでなく、周囲からのフィードバックを受けることも重要です。
同僚や上司と接遇について意見を交換し、自分では気づかない改善点を把握すると、より効果的なスキルアップが期待できます。また、患者さまの声を参考にするのも良い方法です。
定期的な振り返りによって、成長を実感しながら接遇力を高められるでしょう。
接遇研修やマナー講座を受講する
より高度な接遇スキルを身につけるためには、専門的な研修を受けるのも有効です。
接遇研修では、患者さまとの適切な距離感や言葉遣いなど、実践的なスキルを学べます。また、マナー研修の受講は、医療現場に求められる礼儀作法や立ち居振る舞いを見直す機会にもなります。
定期的な研修を通じて、接遇の質を向上させていきましょう。
まとめ
看護師にとって接遇は、患者さまの安心感や信頼関係を築くために欠かせないスキルです。患者さまへの適切な対応によって医療の質が向上し、トラブルの発生も防げるでしょう。
日々の業務の中で接遇を意識すると、スキル向上につながります。目標を設定し、定期的な振り返りや研修・講座を活用すると、患者さまへの対応の質も高まるでしょう。
看護師としての専門性を活かしながら、思いやりを持った接遇を実践し、より良い医療を提供していきましょう。

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