刑務所看護師がきついと言われる8つの理由!求人を探す際の注意点も解説

「刑務所で働く看護師って大変なの?」「刑務所看護師って自分にもできる?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
刑務所看護師は、受刑者の健康管理を担う職種です。
病院やクリニックの看護師とは違う環境のため、働くうえで大変なこともあります。
この記事では、刑務所看護師になる方法や「きつい」と言われる理由、求人を探すときのポイントを解説します。刑務所での勤務に興味がある看護師は、ぜひ参考にしてください。
刑務所看護師になるには?
刑務所で働く看護師は「法務技官」と呼ばれ、受刑者の心と身体の健康管理を担当します。
刑務所看護師とは、どのような仕事なのか解説します。
- 刑務所看護師の採用試験
- 刑務所看護師の給料
- 刑務所看護師の仕事内容
ひとつずつ見ていきましょう。
刑務所看護師の採用試験
刑務所看護師は、看護師の資格があると応募できます。
ある刑務所の採用試験では、学歴やこれまでの経験は問われず、看護師資格を持っていると応募可能です。応募資格として「日本国籍を有している」「犯罪歴がない」などが条件です。選考は書類選考の他、面接や筆記試験などがおこなわれます。
刑務所看護師は、受刑者の健康管理を担う役割を持ち、一般的な医療機関とは異なる環境での対応力が求められるため、公務員試験ではなく、独自の選考が実施されます。
採用方法は勤務地によって異なりますが、採用試験では面接に加えて、小論文がおこなわれる場合が多いのが特徴です。

刑務所看護師の給料
刑務所看護師は国家公務員のため、給料は公務員の給与体系にもとづいて支給されます。
経験年数や勤務地によって異なりますが、安定した収入が期待できます。
人事院の調査によると、刑務所看護師の給料は平均32万1,176 円です。一方で、厚生労働省の調査によると、看護師全体の平均月収は月額35万2,100円であるため、刑務所看護師の月収は平均よりやや低いといえるでしょう。
ただし、勤務地や勤務形態、時間外勤務の程度により給料は前後する可能性があります。
刑務所看護師の仕事内容
刑務所看護師の仕事は、受刑者の健康管理や応急処置、病院への搬送対応など多岐にわたります。
一般の医療機関とは異なり、限られた医療環境で対応しなければならない場面もあります。職場となるのは「一般刑務所の医務室」と「医療刑務所」、それぞれの違いは次のとおりです。
一般刑務所 | 医療刑務所 | |
勤務する場所 | 全国の刑務所内の医務室 | 全国4ヶ所にある医療刑務所内の病棟 |
仕事内容 | ・ケガの手当 ・体調不良時の対応 | ・医療ケア ・検査の介助 ・手術前後のケア ・緩和ケア |
夜勤 | 基本的になし | あり |
一般刑務所は、企業や学校の保健室のような役割、医療刑務所は一般的な病院のような役割をイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。
刑務所看護師がきついと言われる8つの理由
刑務所看護師は特別な環境で働くため、独自の大変さがあります。ここでは「きつい」といわれる主な理由を紹介します。
- 受刑者を対象にケアをしなければならない
- 閉鎖的な環境で勤務しなければならない
- 交通アクセスが悪く通勤しにくい
- 同業者(同僚)が少ない
- セキュリティ対策により自由度が低い
- 社会的なイメージが低い
- キャリアパスの選択肢が少ない
- 全国に転勤する可能性がある
それぞれ特徴があるのでみていきましょう。
受刑者を対象にケアをしなければならない
刑務所の患者さまは、一般病院の患者さまとは異なり、犯罪歴を持つ人たちです。なかには、複雑な成育歴があったり暴力的な患者さまもいたりするため、精神的なストレスを感じることがあります。
また、自殺(企図)やHIV、薬物依存など精神科領域での看護を必要とされる機会も多くあります。
閉鎖的な環境で勤務しなければならない
刑務所は外部との接触が制限された空間です。
限られた人間関係で仕事をするため、ストレスがたまりやすい環境といえます。
基本的に、受刑者との会話は禁止されているため、一般病院との違いに戸惑うかもしれません。
交通アクセスが悪く通勤しにくい
刑務所は都市部から離れた場所にあり、公共交通機関が少ないケースもあります。
転職で交通アクセスの良さを重視している看護師の方にとっては、通勤に時間がかかる点はデメリットといえるでしょう。
同業者(同僚)が少ない
病院やクリニックで働いている看護師が多い中、刑務所看護師として働いていることはレアケースでしょう。
それゆえに、同僚がいなかったり、刑務所看護師ならではの苦労を理解してもらえなかったりし、同期や同僚がいるほかの看護師の方がうらやましく感じるかもしれません。
セキュリティ対策により自由度が低い
刑務所では安全管理が厳しく、職員や受刑者に対するルールが多いのが特徴です。
また、職員は一度、医療刑務所に入ると勤務終了まで外に出られません。昼食をコンビニに買いに行くといったことができず、刑務所内の売店や食堂などで済ませなければならないのです。
また、看護師の方がよく持ち歩くハサミや聴診器は、厳重に管理します。
受刑者の安全を守るためにも必要なことであり、ケアの手順を念入りに決めて介入しなければならないため緊張感もあります。
社会的なイメージが低い
刑務所看護師は、一般的な病院勤務に比べて認知度が低い職種です。
そのため、家族や友人から仕事内容を理解してもらえないこともあります。「刑務所で働くの?」と偏見を持たれることもあり、説明に苦労する場面も考えられるでしょう。
キャリアパスの選択肢が少ない
刑務所看護師の方は特殊な環境で働くため、転職時に経験が活かしづらいかもしれません。
将来的にほかの医療機関へ転職を考えている看護師の方は注意が必要です。
最新の医療技術を学ぶ機会も少なく、スキルアップの面で不安を感じることもあります。
全国に転勤する可能性がある
刑務所看護師は、全国の刑務所や医療刑務所に異動する可能性があります。勤務地の希望が通るとは言い切れないため、家庭の事情によっては働きづらさを感じるでしょう。
刑務所看護師がきついと感じたときの対処法
刑務所看護師として働くうえでストレスを感じたときは、次のような対処が必要です。
- 信頼できる同僚や上司に相談する
- ワークライフバランスを見直す
- 刑務所看護師として働くメリットを考える
- カウンセラーや産業医などの専門家を頼る
- 転職を検討する
これらを読んで、自分に合った対処法を探してみてください。
信頼できる同僚や上司に相談する
刑務所内での業務は、限られた人員と設備の中でおこなわれるため、プレッシャーを感じる場面も少なくありません。
ひとりで悩みを抱え込むと、ストレスが溜まり、モチベーションの低下につながることもあります。そうしたときは、信頼できる同僚や上司への相談が大切です。
刑務所特有の環境に慣れている人からアドバイスをもらえると、気持ちが軽くなるかもしれません。また、同じ職場で働く仲間は、業務の大変さを理解しているため、共感しやすく、精神的な支えになることもあります。
ワークライフバランスを見直す
仕事が忙しくなり過ぎると、心身の疲労によって「きつい」と感じることが増えてしまいます。
とくに、交代勤務が必要な医療刑務所では、生活リズムが乱れやすく、疲れが抜けにくい場合もあります。
ストレスを軽減するためには、まず生活習慣の見直しが大切です。休みの日にしっかりリフレッシュする、十分な睡眠を確保する、趣味の時間をつくるなど、仕事以外の時間を充実させると、気持ちの切り替えがしやすくなります。
刑務所看護師として働くメリットを考える
仕事がきついと感じたときは、ネガティブな面ばかりに目が向きがちですが、刑務所看護師ならではのメリットを確認し、モチベーションを取り戻せることもあります。
刑務所看護師は公務員として働くため、給与や福利厚生が安定しており、退職金制度も整っています。
また、刑務所内の医務室勤務の場合、病院勤務と比べると残業が少ない職場も多く、ワークライフバランスが取りやすいのも魅力です。
さらに、刑務所看護師としての経験は、医療従事者としてのスキルアップにもつながります。
限られた医療環境の中で適切な判断を求められるため、臨機応変に対応する力が身につき、精神科看護や感染症管理など、幅広い分野の知識を深める機会もあります。
仕事の大変さだけでなく、メリットにも目を向けることで、前向きな気持ちで働き続けられるでしょう。
カウンセラーや産業医などの専門家を頼る
仕事のストレスが蓄積し、自分でコントロールできなくなってきた場合は、専門家の力を借りることも検討しましょう。
刑務所には産業医が配置されていることが多く、職員の健康管理やメンタルケアをサポートしてくれます。
また、外部のカウンセリングサービスを利用するのもひとつの方法です。心理的な負担が大きいと感じたら、早めに専門家に相談し、気持ちを整理しやすくなり、ストレスを軽減できる可能性があります。
とくに、一般的な医療機関とは異なる環境で働くことで、孤独を感じたり、精神的な負担が大きくなったりすることもあります。ひとりで抱え込まず、適切なサポートを受けることで、よりよい働き方を見つけられるでしょう。
転職を検討する
どうしても仕事が合わない、ストレスが限界を超えていると感じた場合は、転職を検討するのも選択肢です。無理して働き続けることで、心身の健康を損なってしまっては本末転倒です。
経験を活かしたい方は、以下のような職場へのキャリアチェンジが考えられます。
- 保健所や行政機関の医療職
- 精神科病院やクリニック
- 企業の産業看護師
- 訪問看護ステーション
様々な職種と連携し働いた経験は、強みとなります。
特に、訪問看護ステーションでは保護観察中の利用者さまを担当することもあるため、刑務所での看護経験が役立つでしょう。
転職を考える際は、これまでの経験を活かせる職場を探し、より自分に合った働き方ができる環境を見つけることが大切です。
刑務所看護師に向いている人
刑務所看護師は、以下のような人は適性が高いといえます。
- 臨床経験が3年以上ある人
- 国家公務員として安定した雇用で働きたい人
- ワークライフバランスを保って働きたい人
刑務所では、限られた医療資源のなかで迅速かつ的確な判断が求められるため、3年以上の臨床経験があると、業務にスムーズに適応しやすいでしょう。
また、刑務所看護師は法務省管轄の「法務技官」として採用され、国家公務員の待遇を受けられるため、長く安定して働きたい人にとって魅力的な職場です。
さらに、病院勤務と比べて、刑務所看護師はワークライフバランスが取りやすい職場です。夜勤の有無は施設によって異なりますが、日勤のみの勤務が可能な刑務所もあり、家庭と仕事を両立させやすい環境が整っています。
刑務所看護師の求人を探す際の注意点
刑務所看護師の仕事は特殊であり、一般的な病院やクリニックとは異なる環境で働くことになります。
- 求人数が少ない
- 転職先によって受刑者の状況が異なる
- 職場によっては夜勤がある
求人を探す際は、これらのポイントに注意しましょう。
求人数が少ない
刑務所看護師の求人は数が限られており、採用人数が少ないため倍率が高くなりやすいことが特徴です。
離職率が低いといわれており、欠員補充としての募集のみであるため、採用試験のタイミングもつかめないかもしれません。
そのため、希望する場合は求人情報をこまめなチェックが大切です。
厚生労働省や法務省の公式サイト、地方自治体の採用情報、転職エージェントなどを活用し、見逃さないようにしましょう。
転職先によって受刑者の状況が異なる
刑務所の種類や施設ごとに、収容されている受刑者の健康状態や医療の必要性が異なります。
たとえば、全国4ヶ所の医療刑務所のうち、2ヶ所は身体疾患対応、残りの2ヶ所は精神疾患対応と役割がわけられています。関東にある1か所の医療刑務所では看取りもしています。
一方、全国各地の一般刑務所への入所は、以下のような要素によって決まります。
- 女性が収容される刑務所
- 初犯の人が収容される可能性が高い刑務所
- 刑期が10年以上の人が収容される刑務所
これらの条件により、受刑者の入所場所が決定するといわれています。そのため、刑務所により受刑者の自由度や特徴が異なるのです。
気になる求人があれば、面接時に具体的な業務内容や施設の状況などを詳しく質問しましょう。
職場によっては夜勤がある
刑務所によっては、24時間体制で医療対応が求められるため、夜勤もあります。
とくに、医療刑務所では、夜間の急変対応や定時の処置が必要となるため、交代勤務になる可能性があります。
勤務時間やシフト体制は施設によって異なるため、応募前の確認が必要です。
刑務所看護師がきついことを把握したうえでよりよい求人を見つけよう
刑務所看護師は、勤務施設や対象者が特殊なため、人によってはきついと感じることがあります。
求人は少なく倍率が高いため、こまめな情報のチェックが大切です。
また、受刑者の健康状態や業務内容は施設によって異なるため、事前に確認し、自分に合った職場を選びましょう。
夜勤の有無や精神的な負担のほかに、給与や福利厚生もしっかりチェックし、納得したうえで応募するのが重要です。
<参考サイト・文献>

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