【看護師向け】高齢者とのコミュニケーションのポイントや注意点・話題

公開日:2025/03/12 更新日:2025/03/12
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高齢者とのコミュニケーションは、訪問看護や病院・施設でのケアにおいて非常に重要です。円滑な会話を通じて信頼関係を築くことで、高齢者の不安を軽減し、より良いケアにつなげることができます。

特に訪問看護の場面では、家族と過ごす時間が多い高齢者が、閉鎖的な空間でコミュニケーションが乏しくなってしまうことも珍しくありません。看護師との会話によって高齢者の気持ちが明るくなり、精神的な安定にもつながるでしょう。

この記事では、高齢者とのコミュニケーションのポイントや注意点、話題、そしてコミュニケーションで困る場面の対処法について詳しく解説します。

高齢者看護におけるコミュニケーションのポイント

高齢者との会話は、信頼関係を築き、安心感を与えるために欠かせません。ここでは、高齢者とのコミュニケーションをスムーズに進めるためのポイントを解説します。

落ち着いた声で明瞭に話す

高齢者は聴力が低下していることが多いため、早口や小さな声では聞き取りにくい場合があります。ゆっくり・はっきりと話すことが大切です。話す際には相手の顔を見て、口の動きが分かるようにすると、より聞き取りやすくなります。

また、高齢者の中には耳が遠くなっている方も多いため、大きな声で話さなければならないケースも考えられます。その場合、怒鳴るような話し方にならないように注意しましょう。音量よりも、会話のスピードに配慮したり環境を整えたりすることが大切です。

穏やかな気持ちで相手の話に耳を傾ける

会話の中で「そうですね」「なるほど」と相槌を打つと、相手が話しやすくなる場合があります。表情や身振りも交えて話を聴くと、より安心感を与えられます。特に訪問看護では、相手が安心できる関係性を築くことが重要です。

また、話を聞くときは単に相槌を打つだけでなく、「それは素敵ですね」「それは大変でしたね」など、感情に寄り添った言葉をかけると、より深い信頼関係を築くことができるでしょう。

年齢を意識しすぎないように接する

「ご高齢だから」と特別扱いをしすぎると、かえって相手が疎外感を感じる場合があります。年齢に関係なく、個人として尊重し、自然な会話を心がけましょう。

たとえば「ご高齢なので無理しないでくださいね」という言葉は、高齢者にとっては「年寄り扱いされた」と感じることもあります。そのため、「少しずつ無理のない範囲でやりましょう」といった表現を心がけると、前向きな気持ちを引き出しやすくなるでしょう。

高齢者の関心ごとを見つけて会話を広げる

高齢者が興味を持っていることを話題にすると、会話が弾みやすくなります。趣味や昔の思い出、家族の話など、本人が話しやすい話題を見つけてみましょう。

訪問看護の場面では、患者さんの部屋にある写真や飾り物をヒントに話題を見つけるのも有効です。たとえば、「この写真、素敵ですね。どちらで撮られたのですか?」といった質問をすると、相手が自然と話しやすくなります。

一方的な会話にならないようバランスをとる

会話をする際は、相手が話す時間をしっかりと確保し、押しつけがましくならないよう注意しましょう。高齢者が話したいことを引き出すためには、適度に質問を挟みながら、相手のペースに合わせて会話を進めることが大切です。

話しすぎてしまった場合は、「〇〇さんはどう思いますか?」といった問いかけをするなど、相手の意見を聞く流れを作ると良いでしょう。

相手の意見を否定せずに受け止め、共感を示す

高齢者の意見に対して「それは違いますよ」と否定するのではなく、「そうなんですね」「そういう考え方もありますね」と、一度受け止める姿勢が重要です。

特に認知症の方と接する際には、無理に正すのではなく、本人の気持ちを尊重する対応が求められます。「違いますよ」と指摘すると、相手が不安や混乱を感じてしまうケースもあります。「それは大変ですね」と共感しながら話を続けましょう。

親しみやすい言葉でゆっくりと話す

専門用語や難しい言葉を使わず、日常的で分かりやすい表現を心がけましょう。また、話が長くなりすぎると相手が疲れてしまうこともあるため、要点を簡潔に伝えることが大切です。

たとえば「誤嚥する恐れがあります」と伝えるより、「食べ物が気管に入ってしまうかもしれません」などのように優しい言葉に置き換えると、より伝わりやすくなります。

目線を合わせて適度なリアクションをする

高齢者と話すときは、目線を合わせると安心感を与えられます。座っている相手には同じ目線で話すようにすると、圧迫感を与えず、リラックスした会話ができるでしょう。

また、適度に頷く、笑顔を見せる、声のトーンを調整するなど、リアクションを意識すると、コミュニケーションがスムーズになります。

高齢者看護におけるコミュニケーションの注意点

高齢者と円滑に会話をするためには、相手の体調や気持ちに配慮することが大切です。ここでは、負担をかけずにコミュニケーションを取るための注意点を解説します。

話しかけるタイミングを見極める

体調が優れないときや、食事・排泄中に話しかけると、高齢者が負担を感じる場合があります。特に、痛みがあるときや疲れているときは、会話よりも休息を優先した方がよい状況もあります。

相手の表情や動作を観察しながら、適切なタイミングを選ぶことが大切です。

高齢者の心身機能の変化を理解する

高齢者は加齢による影響で、記憶力や注意力が低下することがあります。そのため、一度話した内容を忘れたり、会話の流れを見失ったりすることも珍しくありません。ゆっくりと丁寧に話し、理解できているかを確認しながら進めることが重要です。

また、難しい話題は避け、シンプルで分かりやすい言葉を選ぶようにしましょう。

高齢者への敬意を忘れずに接する

高齢者に接するときは、相手のプライドを尊重し、「〇〇さん」と名前で呼ぶなど、丁寧な態度を心がけることが大切です。高齢者自身も「年寄り扱いをされたくない」と感じることがあるため、過度に気を遣いすぎず、一人の大人として接する姿勢を持ちましょう。

また、指示や注意をするときも、命令口調にならないよう、優しく伝えることが信頼関係を築くポイントです。

高齢者看護における話題

会話のきっかけがつかめないと、やりとりが途切れやすくなります。ここでは、高齢者が話しやすく、会話が弾む話題について紹介します。

天気や季節の変化

「今日は暖かいですね」「桜が咲き始めましたね」といった天気や季節に関する話題は、誰にでも馴染みやすく、会話のきっかけとして取り入れやすいものです。特に、外出が少なくなった高齢者にとっては、季節の変化を感じられる貴重な機会にもなるでしょう。

新聞やテレビの話題

最近のニュースやテレビ番組の話題も、会話を広げるのに役立ちます。「〇〇のドラマ、見ましたか?」「今朝のニュースで〇〇をやっていましたね」など、その日あった出来事を話すことで、高齢者の興味を引きやすくなります。ただし、政治や宗教の話題は意見が分かれやすいため、注意が必要です。

好きな芸能人やよく見るTV番組

昭和の歌手や映画俳優、時代劇の話など、高齢者が親しんできた芸能人や番組の話題は、懐かしさを感じ、会話が弾みやすい傾向にあります。「昔よく聞いた歌はありますか?」「〇〇さんの映画が好きだったと聞きましたが、どの作品が一番印象に残っていますか?」など、具体的な質問をすると、より盛り上がるでしょう。

故郷や住んでいた場所の話    

出身地の話は、多くの高齢者が懐かしさを感じる話題です。「どちらのご出身ですか?」「昔住んでいた町はどんなところでしたか?」と聞くと、思い出を語ってくれることが多いです。ふるさとの名物や方言の話なども交えると、より楽しい会話につながるでしょう。

今の趣味や昔好きだったこと

「何か趣味はありますか?」と聞くだけでなく、「若い頃はどんなことが好きでしたか?」といった質問をすると、相手は具体的に話しやすくなります。手芸や園芸、書道、スポーツ鑑賞など、現在だけでなく過去の趣味についても尋ねると、会話が広がるきっかけになるでしょう。

懐かしい話や若い頃の出来事

「子どもの頃の遊びは何が流行っていましたか?」「学生時代はどんなことをしていましたか?」といった質問は、高齢者が楽しんで話してくれることが多い話題です。懐かしい記憶を思い出すことは、認知症予防にも効果があると言われています。

ご家族の話

ご家族の話は、多くの高齢者にとって関心が高い話題です。「お孫さんはお元気ですか?」「ご家族とはどのように過ごされていますか?」といった質問をすると話題が広がり、自然と笑顔が増えるでしょう。

高齢者とのコミュニケーションで困る場面と対処法

高齢者との会話では、話が続かない、同じ話を繰り返すなどの困りごとが発生するケースも珍しくありません。ここでは、そうした場面での適切な対処法を解説します。

同じ話を何度も繰り返す

高齢者は同じ話を何度も繰り返す場合がありますが、「さっきも聞きました」と指摘すると、傷ついてしまうことがあります。適度に相槌を打ち、「そうでしたね」と共感を示しながら話を聞くと、安心感を持ってもらえます。

話の辻褄が合わない

話の辻褄が合わなくなることもありますが、無理に訂正しようとすると相手が混乱する可能性があります。「そうなんですね」と共感を示しながら、話の流れを優しく誘導することが大切です。

なかなか打ち解けてくれない

初対面や、警戒心が強い高齢者の場合、なかなか会話が弾まない場合があります。無理に話そうとせず、まずは挨拶や簡単な天気の話から始め、相手が話しやすい雰囲気を作ることを意識しましょう。

会話が途切れがちになる

話が途切れてしまったときは、あらかじめ用意した話題を振ってみるのが効果的です。「最近の好きな食べ物はありますか?」「昔住んでいたところはどんな街でしたか?」など、答えやすい質問を投げかけることで、スムーズに会話が再開できるでしょう。

まとめ

高齢者とのコミュニケーションでは、相手が話しやすい話題を選び、共感を持って接することが大切です。天気や趣味、昔の思い出など、会話を弾ませる工夫により、信頼関係を深めることができます。

また、会話の困る場面でも焦らず、相手のペースに合わせながら進めると、より良い関係を築きやすくなるでしょう。

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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