看護師からケアマネージャーになるには?取り方とダブルライセンスのメリット

看護師として培った経験を活かし、ケアマネージャーとして新たなキャリアを築きたいと考える方は少なくありません。
しかし「ケアマネージャーになるためには、どのようなステップを踏めば良いのか」「ダブルライセンスのメリットやデメリットは何なのか」など、さまざまな疑問を持つ看護師も多いでしょう。
この記事では、看護師からケアマネージャーになるための具体的な方法、ダブルライセンスのメリット・デメリットなどを詳しく解説します。看護師からケアマネージャーに転職したいと考えている方の不安を解消できれば幸いです。
看護師からケアマネージャーになるには「介護支援専門員実務研修受講試験」の合格が必須条件
看護師がケアマネージャーになるには「介護支援専門員実務研修受講試験」(以下、ケアマネージャー試験)に合格する必要があります。
ここでは、ケアマネージャー試験について、次の項目で解説します。
- 看護師はケアマネージャーになるまでの流れ
- ケアマネージャー試験の受験資格
- ケアマネージャー試験の内容
- ケアマネージャー試験の合格率
- ケアマネージャー試験の看護師の免除科目は廃止
それぞれを見ていきましょう。
看護師がケアマネージャーになるまでの流れ
看護師がケアマネージャーになるまでの流れは、次のとおりです。
流れ | ポイント | |
1 | 実務経験を積む | 看護師として5年以上の実務経験 |
2 | ケアマネージャー試験に合格する | 筆記試験に合格 |
3 | 実務研修を受講する | 87時間以上の実務研修を受講 |
4 | 介護支援専門員として登録する | 都道府県にケアマネージャーとして登録 |
ケアマネージャー試験は、各都道府県が管轄して実施しています。そのため、申し込み方法や実務研修の実施時期などは、受験する都道府県のホームページで確認しましょう。
ケアマネージャー試験の受験資格
看護師は、次のいずれかの条件を満たすことでケアマネージャー試験の受験資格を得られます。
- 相談援助業務に関する実務経験が5年以上
- 特定の国家資格に基づく業務経験が5年以上
看護師の場合は、5年以上の実務経験があれば、ケアマネージャー試験の受験資格を得られます。
ケアマネージャー試験の内容
ケアマネージャー試験は、次の2科目から構成されています。
試験科目 | 内容 |
介護支援分野 | ・介護保険制度やケアマネジメントに関する知識 ・介護保険の仕組みや、ケアプラン作成の流れ、給付管理などが含まれる |
保健医療福祉サービス分野 | ・高齢者の心身の特性や関連する保健医療福祉サービスに関する知識 ・高齢者の疾患やリハビリテーション、福祉用具などが含まれる |
試験はマークシート形式で、各科目25問、計50問が出題されます。試験時間は120分で、各科目で一定の基準点を満たす必要があります。
ケアマネージャー試験の合格率
ケアマネージャーの試験の合格率の推移は次のとおりです。
年度 | 合格率(%) |
2020年 | 17.7 |
2021年 | 23.3 |
2022年 | 19.0 |
2023年 | 21.0 |
2024年 | 32.1 |
参考:第27回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省(直近5年分を抜粋して掲載)
近年のケアマネージャー試験の合格率は、20%前後で推移しています。合格率は年度によって変動しますが、例年、決して高いとは言えません。
合格率が高くない理由としては、試験範囲が広く、専門的な知識が求められるからです。また、実務経験にもとづく応用問題も出題されるため、試験勉強だけでは対応できない場合もあります。
ケアマネージャー試験の看護師の免除科目は廃止
2015年までは、看護師はケアマネージャー試験の一部科目が免除されていましたが、現在(2025年3月時点)、この免除制度は廃止されています。
免除制度廃止の背景には、ケアマネージャーに求められる専門性が高まっていることが挙げられます。ほかの受験者と同じように看護師も、全科目を受験しなければなりません。
看護師・ケアマネージャーのダブルライセンスのメリット
看護師とケアマネージャーのダブルライセンスを持つことで、次のようなメリットがあります。
- 病院での退院支援業務に活かせる
- 退院後の生活をイメージしてケアできる
- 相談業務のスキルが上がる
- 給料アップが期待できる
- 転職の幅が広がる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
病院での退院支援業務に活かせる
病院での退院支援において、入院患者さまの退院後の生活を見据えた支援ができます。
例えば、次のような支援ができるでしょう。
- 退院後のリハビリテーション
- 在宅での医療ケア
- 介護サービスの利用
看護師としての医療知識と、ケアマネージャーとしての介護保険制度の知識を組み合わせることで、患者さまの状況に合わせた多岐にわたる支援が可能になります。
退院後の生活をイメージしてケアできる
ケアマネージャーの視点を持つことで、患者さまの退院後の生活を具体的にイメージし、必要なケアを提案できます。具体的には、次のような提案です。
- 住宅改修
- 福祉用具の導入
- 地域の介護サービスの利用
看護師は、入院中の患者さまの状態を常に観察していますが、退院後の生活についてイメージできず十分に把握できない場合があります。
ダブルライセンスを持つことで退院後の生活環境や、利用可能な社会資源などを考慮した、より現実的なケアプランを作成できるでしょう。
相談業務のスキルが上がる
ケアマネージャーとしての相談援助の経験は、看護師としての相談業務にも役立ちます。
ケアマネージャーは、利用者さまやそのご家族の相談に乗り、さまざまなニーズを把握しなければなりません。この経験は、看護師が患者さまやそのご家族とコミュニケーションを取る際にも役立ちます。
給料アップが期待できる
ダブルライセンスを持つことで、専門性が評価され、給料アップにつながる可能性があります。
特に、病院や介護施設など、両方の資格を活かせる職場では、優遇される場合があります。
ただし、給料は勤務先や経験年数によって異なるため、ダブルライセンスによる給料アップを期待している方は、ケアマネージャーの試験を受ける前に確認することが重要です。
転職の幅が広がる
看護師の資格に加えて、ケアマネージャーの資格を持つことで、病院だけでなく、介護施設や地域包括支援センターなど、活躍の場が広がります。
ダブルライセンスを持つことで、さまざまな職場で即戦力として活躍できる可能性が高まります。
また、訪問看護ステーションでは、介護保険の利用者さまにおいて、ケアマネージャーが立案した居宅サービス計画書(ケアプラン)をもとに訪問看護師が訪問します。
看護の視点をもちながら、療養生活上で必要な介護サービスを検討できることは、利用者さまにも有益となるでしょう。
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看護師・ケアマネージャーのダブルライセンスのデメリット
看護師とケアマネージャーのダブルライセンスはメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 病棟ではスキルを発揮しにくい
- 患者さまをケアする時間を確保しにくい
これらのデメリットを踏まえたうえで転職を検討してみてください。
病棟ではスキルを発揮しにくい
病棟勤務の場合、ケアマネージャーのスキルを十分に発揮できない可能性があります。
病棟では、おもに医療ケアが中心となるため、ケアマネジメントの知識やスキルを活かす機会が限られるからです。
ただし、病棟勤務で退院支援チームに所属している場合や患者さんの退院後の生活について相談に乗る機会が多い場合には、ダブルライセンスが役立ちます。
転職を検討するほかに、退院支援センターといった部署への異動を希望することがダブルライセンスを活かす一手です。
患者さまをケアする時間を確保しにくい
ケアマネージャーの業務が増えることで、看護師としての患者ケアに割く時間が減る可能性があります。
ダブルライセンスを持ち業務をおこなう場合、両方の業務をこなす必要があるため、時間管理が重要です。
特に、ケアマネージャー業務は書類作成や関係機関との連携など、時間がかかる業務が多いため、効率的に業務をこなすことが大切です。
看護師がケアマネージャーに転職するメリット
看護師からケアマネージャーに転職することで、次のようなメリットがあります。
- 現場の意見を反映しやすい
- デスクワーク中心で体力的な負担が減る
それぞれのメリットを見ていきましょう。
現場の意見を反映しやすい
ケアマネージャーに転職すると、看護師としての経験を活かし、現場の意見をケアプランに反映させやすいです。
看護師は、患者さまの状態やニーズを把握しているため、より実情に合ったケアプランを作成できます。
例えば、患者さまのADL(日常生活動作)や認知機能、精神状態などを考慮し、適切なサービスや支援を提案できます。また、多職種との連携もスムーズにおこなえるでしょう。
デスクワーク中心で体力的な負担が減る
看護師は、患者さまの日常生活の介助をおこなったり、夜勤に入ったりなど、体力的に負担が大きい傾向です。
対して、ケアマネージャーはデスクワークが中心となるため、体力的な負担が軽減され、比較的落ち着いて業務に取り組めます。
ただし、ケアマネージャーも、利用者さまの自宅訪問や関係機関との連携など、外出する機会があり、職場によっては多忙なところもあります。また、ケアプランの立案や報告書の作成などデスクワークも決して楽ではありません。
関連記事:訪問看護におけるケアマネージャーとは?
看護師がケアマネージャーに転職するデメリット
看護師がケアマネージャーに転職するデメリットは、次の2つです。
- 給料が下がる可能性がある
- 休日や夜間に急に呼び出される恐れがある
ケアマネージャーへの転職を検討する際は、これらのデメリットを知っておきましょう。

給料が下がる可能性がある
一般的に、ケアマネージャーの給料は看護師よりも低い傾向にあります。具体的な給料は、次の表を参考にしてください。
ケアマネージャー | 看護師 | |
月収 | 29万7,100円 | 35万2,100円 |
賞与 | 65万1,000円 | 85万6,500円 |
年収 | 421万6,200円 | 508万1,700円 |
看護師の年収と比べると、ケアマネージャーの年収は86万5,500円低い現状です。
しかし、給料は、勤務先や経験年数によって異なるため、事前に確認することが重要です。給料だけでなく、福利厚生やキャリアアップの機会なども考慮し、総合的に判断しましょう。
休日や夜間に急に呼び出される恐れがある
利用者さんの状況によっては、休日や夜間に対応が必要になる場合があります。
特に、訪問介護や訪問看護を利用している利用者さまの場合、緊急時の対応が必要になることがあります。例えば、利用者さまの状態が悪くなって入院したり、ご家族からの相談事があったりした際に、休日にも対応を求められる可能性があります。
ただし、ケアマネージャーは、24時間365日対応するわけではありません。緊急時の対応は、基本的にサービス提供事業者がおこなうことが一般的です。
看護師からケアマネージャーに転職する際のよくある質問
看護師からケアマネージャーに転職する際のよくある質問とその回答は、以下を参照して下さい。
Q1:看護師とケアマネージャーはどっちが上なの?
看護師とケアマネージャーは、それぞれの専門性を持つ対等な職業であるため、どちらが上ということはありません。
看護師は医療ケアの専門家であり、ケアマネージャーは介護サービスの専門家です。両者は、互いに連携し、利用者さまの生活を支援するパートナーです。
Q2:看護師とケアマネージャーのダブルライセンスの求人はあるの?
ダブルライセンスを歓迎する求人はありますが、数は多くありません。
ご自身の希望条件に合った求人を探すことが大切です。求人を探す際には、求人サイトやハローワークなどを活用しましょう。
まとめ 看護師からケアマネージャーには「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要がある!自分に合った職場を見つけよう
看護師からケアマネージャーへのキャリアチェンジは、新たな可能性を広げる魅力的な選択肢です。
しかし、そのためには「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。この試験は、介護保険制度やケアマネジメントに関する深い知識、高齢者の心身に関する理解を問うもので、決して容易ではありません。
また、試験合格後も実務研修が待っており、そこで初めてケアマネージャーとしての実践的なスキルを身につけられます。
ダブルライセンスは、病院や介護施設、訪問看護ステーションなど、多岐にわたる職場での活躍を可能にします。しかし、それぞれの職場によって求められるスキルや働き方は大きく異なるため、自身のキャリアプランに合った職場を見つけることが重要です。
<参考サイト・文献>

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