看護師のコミュニケーションで大事なこととは?スキルを上げる方法も解説
スムーズで安全な治療を進めるためには、患者さまや同僚、多職種との適切なコミュニケーションが不可欠です。
適切な情報共有や信頼関係の構築により、医療ミスの防止や質の高いケアが実現します。
この記事では、看護師のコミュニケーションスキル向上のための方法を解説します。
患者さまや同僚との良好な関係を築くためのヒントをみつけましょう。
看護師にコミュニケーションはなぜ大事?
質の高いケアを提供するためには、看護師のコミュニケーション能力が必要不可欠です。
円滑なコミュニケーションによって患者さまの状態や気持ちを的確に把握し、医師や多職種との連携をスムーズに行うことができます。
また、患者さまとの信頼関係を構築し、適切なケアの提供につなげられます。
看護師のコミュニケーション能力は、患者さまだけでなくチーム医療の推進にも貢献できるでしょう。
看護師のコミュニケーションで使えるスキル
良好なコミュニケーションを築くためには、いくつかのスキルが有効です。
コミュニケーションスキルの例を紹介します。
傾聴
傾聴は、信頼関係を築き、問題解決を支援していくうえで重要なスキルです。
相手の話にただ耳を傾けるだけでなく、表情やしぐさ、態度を通して、本当に伝えたいことを理解するよう努めましょう。
傾聴のポイントは、以下の3点です。
- 誠実な態度で患者さまに向き合う
- 患者さまの立場に立って考える
- 患者さまの言葉を肯定的に受けいれる
さらに、態度や表情にも気を配り、相手への共感を示すことが大切です。
相手の話を遮ったり、否定的な発言をしたりするのは避けてください。
リフレーミング
リフレーミングとは、ものの見方を変える思考方法です。
以下のようにネガティブな内容をポジティブな内容に変換すると、他者の気持ちを前向きに導けます。
患者さまの言葉 | リフレーミング |
検査の結果が不安 | 病気を早期発見できる良いチャンスです |
治療がつらい | 健康な体を取り戻すための機会と考えましょう |
このように、相手の言葉の裏にある真意を汲み取り、ポジティブな視点に変換すると、信頼関係を深められます。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、相手の言葉の一部を繰り返すコミュニケーションスキルです。
「オウム返し」とも呼ばれ、注意深く聞いている姿勢を示し、相手との信頼関係を深める効果があります。
相手は自分の言葉が受け止められていると感じ、安心して話しやすくなるでしょう。
また、自身は重要な情報を再確認でき、誤解を防ぐことが可能です。
会話のペースを調整する効果もあり、相手の発言を促したり、沈黙を埋めたりする際にも役立ちます。
ペーシング
ペーシングは、相手に合わせて会話のペースを調整するスキルです。
具体的には、以下の要素を意識します。
- 会話のリズムやテンポ
- 声のトーンや大きさ
- 話すスピード
- 話題の転換のタイミングなど
ペーシングを意識すると、相手は「自分のことを理解してもらえている」と感じ、一体感や安心感を抱きやすくなります。
ミラーリング
ミラーリングは、相手の表情やしぐさ、表現などをさりげなく真似て、相手に親近感や安心感を与えるスキルです。
相手が笑顔であればこちらも笑顔で、相手が真剣な表情であればこちらも真剣な表情で対応するなど、相手の雰囲気に合わせます。
これにより、相手は「自分のことをわかってくれている」と感じやすくなるでしょう。
ただし、露骨に真似をすると相手に不快感を与える可能性があります。
あくまでも自然に、さりげなく行うことが大切です。
看護師のコミュニケーションスキルをアップする方法
看護師がより良いコミュニケーションを実践するためには、スキルアップのための具体的な方法を知ることが大切です。
スキルアップの方法を紹介します。
相手の話を注意深く聞く
コミュニケーションの基本は、相手の話を注意深く聞くことです。
注意深く話を聞くと、相手が伝えたい情報を正確に理解でき、誤解や行き違いを防げます。
相手の訴えを頭ごなしに否定すると、信頼関係を損なう原因になるため、まずは受けとめる姿勢が重要です。
沈黙の時間も、相手にとっては気持ちを整理したり、言葉を探したりする大切な時間です。
会話中に沈黙が生じる場合は、相手が話すタイミングを待つ姿勢をもちましょう。
また、相手の話を真剣に聞いていることを伝えるために、態度や姿勢、表情にも気を配る必要があります。
ボディランゲージを活用する
ボディランゲージを効果的に活用すると、相手に安心感を与え、信頼関係を築きやすくなります。
適度なうなずきで共感を示し、ジェスチャーで説明を補足しましょう。
アイコンタクトは、話への集中や関心を示すために有効です。
ただし、見つめすぎると威圧感を与えてしまうため、注意する必要があります。
明確な表現を使う
医療現場では、曖昧な表現が誤解やミスを招き、重大な医療事故につながるリスクがあります。
そのため、看護師には明確な表現で相手に伝えることが求められます。
具体的には、以下4つの点に注意しましょう。
- 端的で簡潔な言葉を選ぶ
回りくどい言い回しや専門用語は避け、誰にでもわかりやすいシンプルな言葉を選びましょう。患者さまとのコミュニケーションでは、「~のような」「~みたいな」といった曖昧表現を避け、断定的に話すことが重要です。 - 重要事項は復唱してもらう
重要な事項は相手に復唱してもらうと、内容を正しく理解しているかを確認できます。
- 数値を具体的に示す
医師やほかの看護師に患者さまの状態や処置内容などを伝える際には、「少し熱っぽい」ではなく「体温は37.5度です」のように、数値を使って具体的に示してください。 - 5W1Hを意識する
When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)を意識すると、情報が不足したり、相手に誤解を与えたりするのを予防できます。
フィードバックを受ける
看護師として成長するには、周囲からのフィードバックが欠かせません。
フィードバックを受けると、自分の強みや弱みを客観的に理解でき、今後の成長へとつなげられます。
効果的にフィードバックを受けるためのポイントは以下のとおりです。
- 素直に耳を傾ける
フィードバックを受けた際は、反論や言い訳を控え、問題点や改善点を理解することに集中しましょう。 - 質問する
フィードバックの内容が不明確な場合は積極的に質問すると、改善点をより深く理解でき、具体的な行動につなげられます。
- 感謝を伝える
フィードバックをしてくれた相手に感謝の気持ちを伝えることで、良好な関係を築き、今後のフィードバックの質向上にもつながります。
ロールプレイで練習する
ロールプレイとは、特定の状況を設定し、参加者がそれぞれの役割を演じて実践的なスキルを身につける学習方法です。
単なる知識の習得だけでなく、実際の場面での行動変容を促す点で優れています。
たとえば、患者さまへの説明や同僚との連携といった場面を想定したロールプレイを行うと、よりスムーズなコミュニケーションを実践できるようになります。
最初はうまくいかない場合でも、繰り返し練習すると、コミュニケーションスキルを身につけられるでしょう。
看護師のコミュニケーションのポイント(患者さま編)
患者さまと良好なコミュニケーションをとるためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
ここでは、3つのポイントに絞って解説します。
基本的なマナーを忘れない
患者さまと良好なコミュニケーションを築くためには、医療従事者として、そして社会人として、以下の基本的なマナーを守りましょう。
基本的なマナー | 詳細 |
服装 | ・清潔感のあるユニフォームを着用する ・髪型を整える ・メイクを控えめにする ・爪は短く、マニキュアやネイルは控える |
挨拶 | ・時間帯に合わせた挨拶をする ・明るく丁寧な挨拶を心がける |
言葉遣い | ・医療用語や専門用語は避け、わかりやすい言葉で説明する ・早口にならないよう、落ち着いたトーンで話す |
基本的なマナーを身につけると、患者さまとの信頼関係を築きやすくなり、より良いコミュニケーションを実現できます。
共感を示す
共感は相手の感情を理解し、共有するプロセスです。
相手の話を丁寧に聞いたり、解決策を一緒に考えたりすると効果的です。
患者さまの感情を理解し、共有すると、患者さまは安心感を得て心を開いてくれるようになるでしょう。
オープンな質問をする
患者さまの本音や意見を引き出すには、話しやすい雰囲気を作る必要があります。
イエス・ノーで答えられないオープン・クエスチョンを活用し、会話を深めましょう。
たとえば、「いつからどのような点が気になっていますか?」など、5W1Hを意識して質問すると、患者さまの考えや思いをとらえやすくなります。
看護師のコミュニケーションのポイント(同僚編)
同僚との良好なコミュニケーションは、質の高い看護を提供するために欠かせません。
円滑な人間関係を築き、チームとして効果的に機能するためのポイントを解説します。
一方的に批判しない
感情的な批判は、相手を萎縮させたり反論を招いたりするため、職場環境の悪化につながる可能性があります。
一方的な批判を避けるために、以下を意識しましょう。
- 冷静さを保つ
- 事実ベースで話す
- 改善策を提案する
- 相手の立場を考える
これらの点に注意すると、同僚との関係性を良好に保ちながら、チーム全体の成長につなげられます。
定期的に情報共有する
スタッフ間での定期的な情報共有は、質の高い医療を提供するために不可欠です。
適切な情報共有により、医療ミスの削減や患者さまの状態把握、治療方針の統一、業務の効率化などにつながります。
情報共有を円滑に行うためには、以下の方法が効果的です。
- 共有する情報を明確にする
- 適したツールを用いる
- 頻度を定める
定期的な情報共有は、スタッフ間のコミュニケーション活性化にもつながります。
感謝の気持ちを伝える
同僚への感謝の気持ちの伝達は、良好な人間関係を築き、円滑な業務遂行につながります。
感謝の言葉は、相手を認め、尊重している意思表示です。
互いに感謝し合える環境は、職場の雰囲気を明るくし、一人ひとりのモチベーション向上に役立ちます。
まとめ
看護師にとって、良好なコミュニケーションは質の高いケアを提供するうえで不可欠です。
患者さまとの信頼関係の構築でより多くの情報を得られるようになり、適切なケアにつなげられます。
また、同僚や他職種との連携も円滑になり、チーム全体で患者さまを支える体制を作ることが可能です。
コミュニケーションスキルは、経験を積むほど向上します。
日々の業務の中で患者さまや同僚との関わり方を振り返り、改善を重ね、より良い職場環境につなげましょう。
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