NICU看護師の本音とは?やりがいや辛さ、向いてる人を紹介
NICUは、早産で産まれたり、何らかの疾患を抱えたりと、命の危機にある赤ちゃんの治療やケアを行う集中治療室です。NICUで勤務する看護師は、産まれたばかりの小さな命を救うため、24時間体制で赤ちゃんの看護に務めます。
この記事では、そんなNICU看護師の仕事内容や、やりがい、辛いところについて解説します。NICUに向いている看護師の特徴も紹介するので、今後の勤務先としてNICUを考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。
NICUとは
NICUとは、新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit)の略であり、月数に満たない超未熟児や、先天的に疾患をもって生まれた赤ちゃんを治療する施設です。子宮に近い環境を作り出すため保育器を使用し、温度・湿度・明るさなどを整えながら24時間体制で管理します。
また、医療スタッフは、新生児医療の専門医師が常駐し、看護師は3人の赤ちゃんに1人という手厚い配置です。施設内には保育器、人工呼吸器、生体情報モニター、シリンジポンプなど最新の医療機器が数多く備えられ、抵抗力の弱い赤ちゃんを守るため、細菌感染に対する厳重な管理も行われます。
高度な医療技術と設備が必要であるため、NICUが設置されるのは大規模病院に限定されており、各施設の収容人数も制限されています。非常に特殊な部署であるといえるでしょう。
NICU看護師の主な業務内容
NICUで勤務する看護師は新生児の命を守るため、高度な専門知識と技術が必要とされます。赤ちゃんの状態を24時間体制で管理し、迅速な対応が求められる重要な役割を担っているのです。
NICUで勤務する看護師の主な業務内容は以下のとおりです。
- バイタルチェック
- 医療器具管理
- 薬剤投与
- 授乳介助
- 新生児ケア
- ご両親のメンタルサポート
それぞれみていきましょう。
バイタルチェック
NICUの赤ちゃんたちは、生命の維持に必要な体温調節・呼吸・循環などの機能が不安定な状態です。また、自分自身で「つらい」「苦しい」「寒い」などの意思を伝えることが困難です。そのため看護師は、わずかな異変も見逃さないよう観察に細心の注意を払う必要があります。
モニターを装着し、24時間体制でバイタルサインをチェックしたり、授乳量や尿量などのインアウトバランスもしっかりと観察したりします。赤ちゃんの体調の変化を確実に観察し、異常を早期に発見、早い段階で対処できるよう見守っているのです。
医療機器管理
NICUでは様々な医療機器を使用するため、その管理は看護師の重要な業務のひとつとなります。人工呼吸器やモニター類の正常な動作を確認し、トラブルがないか常に注意を払います。
日常的に管理するのは、主に以下の医療機器です。
- 保育器
- 人工呼吸器
- 心拍モニター
- 輸液ポンプ
- 酸素飽和度モニター
- 光線療法装置
これらの機器は赤ちゃんの命を支える大切な装置です。医療は日々進歩しており、医療機器も頻繁にアップデートが行われています。最新の医療機器に関して正しい知識を持つことは、赤ちゃんの健康管理を行ううえで非常に重要であるといえるでしょう。
薬剤投与
新生児への薬剤投与は、慎重な判断と正確な投与量の計算が必須です。体重が少ない赤ちゃんは投薬量のわずかな誤差も重大な影響が現れる可能性があるため、細心の注意を払う必要があるのです。
また、薬は赤ちゃん一人ひとりの体重や状況に応じて処方されます。用法や用量、投与速度などに間違いがないか何度も確認をしながら正確に投与していきます。
授乳介助
NICUに入院する赤ちゃんは、体の機能が未発達であることも多く、自力で母乳やミルクを飲むことができません。そのため全身状態が安定し、自分で母乳やミルクを飲めるようになるまでは、鼻や口にチューブを入れ、そこから授乳を行います。
看護師が授乳介助を行う際には、母乳やミルクの量、回数、方法など、赤ちゃん一人一人に合わせた適切な授乳の計画に沿って行います。
また、赤ちゃんの状態が安定してきたら、両親による授乳も可能となります。両親への授乳指導を行うことも、NICUの看護師の大切な業務のひとつです。
新生児ケア
赤ちゃんの清潔ケアやおむつ交換なども、NICU看護師の業務のひとつです。清潔さと快適な環境づくりは、赤ちゃんの感染予防、健やかな成長のために欠かせません。たとえば以下のようなケアを行います。
- 清拭・沐浴
- おむつ交換
- 体位変換
- 口腔ケア
- 皮膚の観察とケア
NICUに入院中の新生児は、外部からの刺激に影響を受けやすいため、これらの日常的なケアを行う際もバイタルサインに注意を払いつつ、慎重に行う必要があります。
ご両親のメンタルサポート
患者さまやそのご家族へのメンタルサポートは、どの診療科であっても看護師の重要な役割のひとつといえますが、NICUではとくにその重要性が高まります。看護師が不安や心配、恐れなどを感じているご両親の気持ちに寄り添い、適切な情報提供と心理的サポートを行うことは、ご家族への大きな支えとなるのです。
「元気な状態で産んであげられなかった」と子どもの障害や疾患に対して責任を感じ、自らを責めてしまう母親もいます。NICUの看護師は、そのようなご家族の気持ちに寄り添いながら、赤ちゃんの現在の状況を丁寧に伝えていきます。このように、ご両親が赤ちゃんとの絆を築けるよう支援することは、NICU看護師の重要な役割のひとつとなっているのです。
NICU看護師のやりがい
NICUの看護師は、赤ちゃんの成長や回復を間近に見守ることのできる、やりがいの多い仕事です。ここからは、NICU看護師のやりがいを具体的にみていきましょう。
命を救う仕事である
NICUでの看護は、チームで24時間体制の観察とケアを行いながら赤ちゃんの命を救う、重要な仕事です。危機的状況を乗り越え、元気になっていく赤ちゃんの姿を見られることは、大きな喜びや感動につながることでしょう。
赤ちゃん一人ひとりの命の重みや強さを実感できることは、看護師として大きなやりがいとなります。
ご両親から感謝される
入院中の赤ちゃんのご家族は、不安や恐怖、希望を抱きながら日々過ごしています。看護師がご両親に寄り添い、支援することで、関係性が深まります。赤ちゃんの状態が改善したときや、ご自宅へ退院できたときなどは、心から一緒に喜ぶことができるでしょう。
また、退院後に赤ちゃんが成長した姿をご家族で見せにきてくれることもあります。ともに頑張り、苦難を乗り越えた赤ちゃんや両親の笑顔を見られることは、看護師にとって非常に嬉しい瞬間です。
子どもの成長を見守れる
赤ちゃんの成長を見守れることも、NICU看護師の大きなやりがいのひとつです。疾患があったり、低体重で生まれたりと不安定な状態でNICUにやってきた赤ちゃんが少しずつ回復し、成長する姿は、看護師のモチベーションにもつながります。
また、お世話を続けてきた赤ちゃんの状態が落ち着き、元気に退院する場面は、とても感動的です。NICUに入院している赤ちゃんの成長過程を間近で見守ることは、看護師の大きな特権ともいえるでしょう。
NICU看護師の辛いところ
NICUの看護師は、やりがいとともにさまざまな困難や辛さも経験します。小さな命を預かるプレッシャーや、24時間体制で緊張感のある職場に、心が折れそうになる場面もあるでしょう。
ここからは、NICU看護師の辛いところを紹介します。
心身の負担が大きい
NICU看護師の仕事は、精神的にも身体的にも非常に大きな負担がかかります。24時間体制での勤務や緊急時対応、細心の注意を払うべき業務の連続など、緊張状態が続きます。勤務中は緊張感の張り詰めた場所で長時間過ごすことになり、心身ともに疲弊することもあるでしょう。
また、小さな命を預かっているという責任感から、追い詰められたような気持ちになってしまう看護師の方もいます。気の抜けない現場で長時間働くことは、それだけ負担が大きいのです。
全ての赤ちゃんが助かるわけではない
医療技術は日々進歩していますが、残念ながら全ての赤ちゃんを救うことはできません。医師と協力して全力を尽くしても、命を助けられなかったり、大きな障害を残ったりしてしまうことがあるのです。
命を救いたいという使命感が強い看護師ほど、赤ちゃんが亡くなったときの無力感や喪失感は大きく、辛いものとなるでしょう。気持ちの切り替えがうまくできず、NICUを辞めたいと感じる看護師の方も少なくありません。
ご両親とのコミュニケーションの難しさ
NICUに入院中の赤ちゃんのご両親は、不安や悲しみ、罪悪感など、精神的に不安定になっている方も多いでしょう。赤ちゃんのことを大切に思うからこそ、看護師の行動や言葉に敏感に反応される方も多く、ときには病院に不信感を抱いたり、看護師にその不安や怒りをぶつけたりする方もいます。
看護師は、そのような不安定な状態のご両親と向き合い、不安な気持ちの傾聴や、赤ちゃんの状態の共有を行います。ご両親とのコミュニケーションの際には言葉を慎重に選ぶ必要があり、精神的に疲れてしまうこともあるでしょう。
NICU看護師に向いている人
NICUは新生児の命を預かる特殊な職場です。やりがいも、心身の負担も大きな環境であるため、長期的に働くためには適性が求められます。
ここからは、NICU看護師に向いている人の特徴を紹介します。
- 冷静かつ迅速に行動できる
- ストレス耐性が高い
- コミュニケーション能力が高い
それぞれみていきましょう。
冷静かつ迅速に行動できる
NICUで働く看護師には、冷静な判断力と迅速な行動力が大切です。入院中の赤ちゃんは全身状態が不安定な状態であることが多く、急変も日常的に起こります。
看護師には、赤ちゃんの少しの変化も見逃さず、適切に対処する能力が求められます。急変時にも落ち着いて素早く適切な行動を取れる方は、NICUに向いているといえるでしょう。
ストレス耐性が高い
NICUで勤務すると、緊張感の張り詰めた、ストレスのかかりやすい環境で長時間働くことになります。少しのミスや誤差も許されない状況は、身体的にも精神的に大きな負担がかかります。
また、赤ちゃんの状態が悪化したり、思うように病状が回復しなかったりすることが日常的にある職場です。全力を尽くしても救えない命もあります。これらに関わることは、精神的な負担が大きくなるため、ストレス耐性が高い方や、仕事とプライベートをバランスよくとらえられる方が向いているといえるでしょう。長く働き続けるためには、自身の心身の状態を良好に保っておく必要があるのです。
コミュニケーション能力が高い
NICUでは、不安や悲しみ、罪悪感など、複雑な感情を抱えたご両親とのやりとりが必須です。相手の気持ちを汲み取り適切な言葉選びや行動ができる、コミュニケーション能力が高い方が向いているといえるでしょう。共感力と想像力を駆使して相手の気持ちを汲み取る能力は、質の高い看護に直結します。
さらに、赤ちゃんの治療やケアはチームで行うため、スタッフ間でのコミュニケーションが非常に大切です。コミュニケーションは、これからNICU看護師を目指したい方には必須のスキルです。
まとめ
この記事では、NICU看護師の仕事内容ややりがい、向いている看護師の特徴について紹介しました。
NICU看護師は新生児の命を守るため、日々奮闘しています。24時間体制での細やかな観察とケア、高度な専門知識と技術が必要とされる、負担の大きな仕事です。また、赤ちゃんの成長を間近で見守れる特別なやりがいのある職場でもあります。
新しい命の誕生に寄り添う仕事に就きたい方は、ぜひチャレンジしてみてください。
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。