看護師の接遇目標とは?例文付きで解説
質の高い看護を提供するために、看護師は患者さま一人ひとりに合わせた接遇を行い、信頼される存在になることが重要です。
この記事では、看護師の方に接遇目標が求められる理由や接遇のポイント、接遇目標の例文を解説します。
接遇とは
接遇とは、目の前にあることをただ遂行するのではなく、思いやりの心をもって対応することです。
接遇は接客業やサービス業などで重要なスキルであり、医療の現場でも重要です。
そのため、接遇マナー研修を行っている医療機関も多くあります。
看護師に接遇目標が求められる理由
「接遇目標」とは、患者さまへの対応で特に気をつけたい点を明確にした目標のことです。
看護師の方に接遇目標が求められる理由は、主に以下の3つがあげられます。
- 適切な医療を提供するため
- スムーズにコミュニケーションをとるため
- 患者さまの満足度向上につなげるため
不安を抱えて病院を訪れる患者さまは少なくありません。
そのため、看護師の言葉遣いや態度が、患者さまの精神状態や治療への意欲に影響を及ぼす可能性があります。
看護師が接遇目標を設定すると、丁寧な接遇につながり、患者さまとの信頼関係を構築しやすくなります。
スムーズなコミュニケーションによって、患者さまは安心して治療を受けられるようになり、満足度も向上するでしょう。
看護師の接遇で重要な5つのポイント
患者さまと信頼関係を築き、安心して治療を受けていただくためには、看護師が適切な接遇マナーを身に付ける必要があります。
看護師の方の接遇で、特に重要なポイントを5つ解説します。
挨拶
看護師の方はしっかりと患者さまの目を見て、心を込めて挨拶することが大切です。
特に、最初の挨拶は、その後の印象を左右します。
不安な気持ちで通院・入院する患者さまに安心感を与えられるよう、業務中でも手を止め、患者さまに向き合って挨拶しましょう。
挨拶は、病院全体の雰囲気作りにも貢献します。
担当する患者さまだけでなく、すれ違う患者さまやご家族にも積極的に挨拶をすると、病院全体で温かく迎えているといった印象を与えられるでしょう。
表情
看護師の方は、患者さまの立場に立ち、どのような表情で接するのが適切なのかを考えて対応することが大切です。
状況に合わない表情は、患者さまに「寄り添ってくれない」と感じさせてしまう可能性があります。
特に、暗い表情や固い表情は患者さまに不安を抱かせ、話しかけづらさを感じさせてしまいます。
基本的には笑顔を心がけつつ、患者さまが不安そうなときには、優しく柔らかい表情を意識しつつ、寄り添う姿勢を示しましょう。
振る舞い
患者さまやご家族に安心感を与え、信頼関係を築くためには、適切な振る舞いが欠かせません。
以下のような振る舞いは、相手にマイナスな印象を与えてしまいます。
振る舞い | 相手が受ける印象 |
猫背 | 自信がない、やる気がない |
髪の毛を触る | 不衛生 |
足や腕を組む | 威圧的、拒絶されている |
視線が合わない | 自信がない、関心がない |
物音が大きい | イライラしている、怖い |
看護師の方に求められる振る舞いのポイントは、以下のとおりです。
- 丁寧な動作を心がける
- 適切な距離感をとる
- アイコンタクトをとる
- 姿勢に気をつける
- 相手のペースに合わせる
患者さまの前では、落ち着いた態度で、急がず丁寧に行動することが大切です。
たとえば、物の受け渡しは両手でする、カーテンの開閉は静かにするなどの行動があげられます。
また、患者さまの気持ちを考えた距離感で、適度なアイコンタクトをすると、相手の話をしっかり聞いているという姿勢を示せます。
相手のペースに合わせた行動を心がけ、せかすような態度は避けましょう。
これらの振る舞いを意識すると、患者さまに安心感を与え、より良い看護サービスを提供できます。
言葉遣い
接遇において、看護師の方は適切な言葉遣いを心がけることが大切です。
言葉遣いは、患者さまとのコミュニケーションの基本となります。
意識すべき言葉遣いのポイントは、以下のとおりです。
- 敬語の正しい使用
- わかりやすい説明
- 肯定的な表現
- 患者さまの気持ちに寄り添う言葉
- プライバシーへの配慮
患者さまには、原則「です・ます」調の丁寧語を使用し、年上の方や目上の方には、尊敬語や謙譲語を適切に使い分けましょう。
治療や検査の説明では、医療用語をそのまま使うのではなく、患者さまが理解しやすい言葉に言い換える必要があります。
たとえば、以下のような言い換えが可能です。
医療用語 | 言い換え |
嚥下 | 飲み込むこと |
寛解 | 症状が落ち着いて安定した状態 |
ADL | 日常生活に必要な最低限の動作 |
腫瘍マーカー | がんがあるかどうかの目安になる検査の値 |
必要に応じてイラストや模型を使用したり、ゆっくり丁寧に説明したりするよう心がけましょう。
また、患者さまの質問には「できません」「わかりません」といった否定的な表現は避け、「○○なら可能です」「確認してまいります」など、前向きな表現を使うと、安心感を与えられます。
励ましの言葉を適切に使用しながら、患者さまの不安や痛みに共感する言葉かけを行いましょう。
個人情報に関わる会話は、周囲に聞こえないよう小さな声で話したり、必要に応じて別室を用意したりするなどの配慮が必要です。
身だしなみ
身だしなみは、患者さまやご家族に与える印象を左右する重要な要素です。
清潔感があり、信頼できる看護師という印象を与えるためには、以下のポイントに気をつける必要があります。
- 髪は清潔にまとめられているか
- 化粧は控えめか
- 強い香りを発していないか
- 爪は短く切られているか
- アクセサリーは最小限にしているか
- 制服に汚れやしわはないか
これらのポイントに気をつけられると、患者さまに好印象を与えられます。
チェックリストなどを用意して、日々、清潔感ある身だしなみを心がけましょう。
看護師の接遇目標の例文
看護師の方の接遇目標は、患者さまとの信頼関係を築き、より良い医療サービスを提供するうえで重要な役割をもちます。
具体的な例文は、以下のとおりです。
- どのようなときでも笑顔で明るく挨拶できる
- 患者さまやご家族に接するときは笑顔で話しかける
- 敬語を正しく使い、丁寧な言葉遣いができる
- チェックリストやマナーブックに沿った身だしなみができる
- 話を聞くときは手を止め、相手のほうを向く
中堅看護師やベテラン看護師の方には、後輩看護師の方の模範となる接遇が求められます。
具体的な接遇目標の例として、以下のようなものがあげられます。
- 柔軟な対応ができるよう、コミュニケーション能力を向上させる
- 患者さまの心情を察した気配りのある対応を心がける
- 後輩看護師の模範となるよう、常に礼儀正しい態度で接する
これらの例文を参考に、立場や経験に合わせた具体的な接遇目標を設定できると、より効果的な接遇改善が期待できるでしょう。
看護師が接遇に取り組むメリット
看護師の方が接遇に積極的に取り組むと、患者さまやご家族との関係性が向上し、医療サービスの質が高まります。
コミュニケーションの不具合が減り、患者さまの満足度も上がるでしょう。
また、接遇によって得られた患者さまとの信頼関係により、業務に対するモチベーション向上にもつながります。
看護師の方が接遇に取り組むメリットを、それぞれ解説します。
患者さまの満足度が上がる
看護師の方が適切な接遇を心がけると、患者さまの満足度が向上します。
丁寧な言葉遣いや温かい表情、適切な振る舞いにより、患者さまは安心感を得られ、治療に対する前向きな姿勢につながるでしょう。
また、礼儀正しい対応や患者さまの気持ちに寄り添う姿勢は、看護師への信頼感を高め、症状や不安を伝えやすくします。
その結果、看護師の方も必要な情報を得やすくなり、スムーズな治療につなげられます。
接遇の質が高まると、医療機関のイメージアップや再診率の向上、口コミによる新規患者の増加にも寄与するでしょう。
コミュニケーションの不具合が減る
看護師の方の丁寧な接遇は、患者さまと良好な信頼関係を構築し、コミュニケーションがスムーズに進みやすくなります。
患者さまは安心して治療やケアに専念でき、トラブルを未然に防げるだけでなく、看護師の方の業務効率化にもつながります。
一方、接遇が不十分な場合は患者さまとの間に不信感が生まれ、コミュニケーションがうまくいかなくなる可能性があります。
たとえば、訴えに対して面倒そうな対応をすると、患者さまは「話を聞いてもらえない」と不信感を抱くでしょう。
治療に対して消極的になったり、医師や看護師の指示に従わなくなったりするリスクが生じます。
看護師の方は、コミュニケーションの不具合を予防するために、丁寧な接遇を心がける必要があります。
業務へのモチベーションが上がる
接遇によって得られた患者さまとの信頼関係は、看護師の方の業務に対するモチベーション向上に大きく貢献します。
患者さまから感謝の言葉をいただいたり、信頼関係を築く喜びを感じたりすることで、看護師としてのやりがいを再認識でき、より質の高い看護提供への意欲を高められるようになるでしょう。
スムーズなコミュニケーションができるようになると、業務ストレスが軽減し、チーム医療への貢献も実感できます。
まとめ
接遇とは、目の前の事柄をただ遂行するだけでなく、思いやりの心をもって対応することです。
看護師の方においては、スムーズなコミュニケーションで適切な医療を提供し、患者さまの満足度向上につなげるために重要なスキルになります。
接遇で重要なポイントは「挨拶・表情・振る舞い・言葉遣い・身だしなみ」の5つです。
適切な接遇スキルを身に付けられると、患者さまと信頼関係を構築でき、コミュニケーションの不具合が減ったり、業務へのモチベーションが上がったりします。
接遇目標を立てる際には「患者さまやご家族に接する際は笑顔で話しかける」「話を聞くときは手を止め、相手のほうを向く」など、具体的かつ実現できる内容で検討しましょう。
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