訪問看護を起業するまでの流れ!訪問看護師の年収や活用できる助成金

公開日:2024/10/07 更新日:2024/10/07
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「訪問看護ステーションを立ち上げたい!」「訪問看護ステーションを起業すると年収アップできるの?」

高齢化にともない、訪問看護ステーションのニーズが高まり立ち上げ件数は増加しています。令和5年4月1日時点で訪問看護ステーション数は、15,697か所(令和4年4月1日より1,393か所増)です。このような状況から、訪問看護ステーションの起業を考えている看護師の方も多いでしょう。

この記事では、訪問看護ステーションを起業するまでの流れや、活用できる助成金などを詳しく解説します。訪問看護ステーションの起業に興味があるものの、実態がわからず悩んでいるあなたの手助けになれれば幸いです。

訪問看護を起業するまでの流れ

訪問看護ステーションを立ち上げて開設するまでのおおよその流れは、以下のとおりです。

  手順 注意点
1 事業計画書の作成 ・訪問看護ステーションを開設する方針と目的を決定 ・資金調達の方法や収支の計画、職員の配置などを具体化
2 法人設立 ・訪問看護ステーションを設立するためには法人化が必要 ・法務局で「商業・法人登記申請」をおこなう
3 事務所を契約 ・訪問看護の事務をおこなう事務所を契約 ・事業に支障がない広さ、利用申し込みの受付を相談できるスペースがあることなどが条件
4 スタッフの採用 ・保健師・看護師、または准看護師を常勤換算法で2.5人以上は配置 ・指定申請を出す時点でスタッフ3人以上を採用(自身が看護師として働く場合は2人以上)
5 都道府県の指定申請 都道府県の申請書および、添付書類を提出 ・指定申請書 ・訪問看護・介護予防訪問看護事業者の指定にかかわる事項 ・申請者の登記事項証明書、または条例(法人以外の者が開設する病院・診療所である場合を除く) ・病院の使用許可証・診療所の使用許可証、または届出の写し(病院・診療所で実施する場合) ・スタッフの勤務体制、および勤務形態一覧表  ・資格証の写し ・事業所の平面図 ・施設の外観および内部の様子がわかる写真など
6 設備や備品の準備 事務所の運営に必要な設備・備品を調達 ・事務机や椅子 ・パソコン・タブレット ・プリンター・コピー機 ・電話・FAX設備 ・感染対策用品など
7 事業を開始 ・指定申請が通り、通知書を受け取れると開業 ・医療機関や地域包括支援センターなどに営業・宣伝して利用者さまを確保

上記の流れは、一例であるため参考としてください。

提出する書類や条件などは訪問看護ステーションを開業する自治体によって異なるため、市区町村の窓口で確認しましょう。

訪問看護を起業する際に必要な資格

訪問看護ステーションを起業する際に必要な資格はありません。

ただし、訪問看護ステーションの人員基準を満たさなければならず、保健師や看護師、准看護師を配置する必要があります。

訪問看護を起業すると年収はいくら?

訪問看護を起業した場合の年収は、事業規模や地域、利用者数などによって大きく異なります。

訪問看護ステーションの開業者としてうまくいった場合は、収益は大きく伸びる可能性があり、年収1,000万円を超えるケースがあるかもしれません。

ただし、訪問看護ステーションの立ち上げの際には、初期投資や経費などがかかるため、安定した収益を得るには時間がかかる場合もあります。さらに、利用者さまの獲得がうまくいかなければ事業を進められません。

地域密着型の事業運営を目指して信頼を得ていくことで、利用者さまの増加や契約の安定が見込まれ、長期的な収益アップが期待できます。

訪問看護を起業する際に必要なおもな費用

訪問看護を起業するときにかかる費用について、おもに以下の費用がかかります。

  • 人件費
  • 事務所費
  • 備品・設備費

それぞれの費用について詳しくみていきましょう。

人件費

訪問看護を起業するときに、大きな費用のひとつが人件費です。

訪問看護ステーションを運営するには、看護師をはじめリハビリスタッフや事務員など、さまざまなスタッフを雇用しなければなりません。

とくに、看護師の方は専門的な資格を持つため、給与を高く設定する必要があります。 さらに、オンコール体制を整える場合は手当を支給する必要があるため、その分のコスト増も見込んでおくことが大切です。

事務所費

訪問看護を起業する際は、事務所費がかかります。

事務所は訪問看護ステーションの拠点となり、スタッフのミーティングや書類の管理、電話対応などをおこなうための場所として欠かせません。

一般的には、事務所をかまえると賃貸料や光熱費、通信費などがかかり、その額は事務所がある場所や広さによって異なります。一般的に、地方に事務所を建てる場合は賃貸料を抑えられますが、アクセスを考慮しなければなりません。

備品・設備費

訪問看護を起業する際に、忘れてはならないのが設備・設備費で​​す。

パソコンやプリンター、電話などは、利用者さまの情報管理や請求業務、連絡手段として必須であり、1台あたり数万円~数十万円の初期費用がかかります。

また、訪問看護で使用する医療機器や衛生用品も揃える必要があります。たとえば、血圧計やパルスオキシメーター、体温計などのほかに、消耗品も定期的にも補充しなければなりません。

さらに、訪問看護では車両が必要な場合も多く、車の購入費やガソリン代、保険料も考慮しておくことが大事です。

訪問看護を起業する際に役立つ助成金

訪問看護を起業するときに、資金調達として活用できる助成金は有効な手段です。

助成金は、事業の立ち上げの初期費用や設備投資などに充てることができます。代表的な助成金は次のとおりです。

  • 独立行政法人福祉医療機構の融資制度
  • 両立支援等助成金
  • 業務改善助成金
  • IT導入補助金
  • ICT補助金

訪問看護ステーションを起業する際には、さまざまな助成金を活用できる可能性があります。助成金をうまく活用することで起業時のコストを抑え、スムーズに事業をスタートできます。

訪問看護を起業する際に必要なもの

訪問看護ステーションを開設するためには、介護保険サービスを提供するためにあらゆる基準を遵守しなければなりません。

  • 訪問看護ステーションの運営基準
  • 訪問看護ステーションの人員基準
  • 訪問看護ステーションの設備基準

ここでは、上記3つの視点での基準をそれぞれ解説します。

訪問看護ステーションの運営基準

訪問看護ステーションは、運営基準を満たすことが求められます。その基準の一例は次のとおりです。

  • 手続の説明および利用者さまの同意
  • 正当な理由がなくケアを拒否することを禁止
  • 指定訪問看護を受ける資格があることを確認
  • 利用者さまの心身の状況や病歴などの把握

適切に事業所が運営されているか確認するために、訪問看護ステーションを管轄している都道府県が事業所を訪問する場合があります。

その際に、基準を満たしていなければ、その違反や間違いの内容によって、指導をおこなったり行政処分が実行されたりするため、基準が守れているか注意しなければなりません。

訪問看護ステーションの人員基準

訪問看護を起業する際に、訪問看護ステーションの人員基準を満たすことは重要です。

訪問看護ステーションを設立するためには、常勤の看護師が最低1名必要です。また、やむを得ない理由がない場合は、保健師や助産師、または看護師を管理者として配置しなければなりません。

さらに、訪問看護ステーションの規模や利用者さまの状況に応じて、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった医療スタッフの配置も求められます。

これにより、利用者さまへ柔軟な対応ができるようになり、訪問看護サービスの質の向上が期待できます。

訪問看護ステーションの設備基準

訪問看護を起業する際、訪問看護ステーションの設備基準を満たすことが重要です。

訪問看護ステーションには、事業の運営をおこなうために必要な広さがある事務室を設けるほか、必要な設備および備品などを備えなければなりません。

ただし、訪問看護ステーションがほかの事業の事業所を兼ねている場合は、事業の運営に必要な広さの区画があれば基準を満たせます。

これらの設備基準をしっかりと整えることは、訪問看護の起業の第一歩といえます。

訪問看護の起業・経営は難しいといわれる理由

次に、訪問看護の起業や経営が難しいといわれる理由は次のとおりです。

  • 看護師が不足することで人員配置基準を満たせない
  • ほかの訪問看護ステーションとの競争が激しい
  • うまく資金繰りができない
  • 多職種や医療機関との連携が難しい

先程の資料によると、令和4年に新規開業した訪問看護ステーションは1,968か所である一方で、廃止したステーションは568か所、休止したステーションは225か所です。1年で多くの訪問看護ステーションが運営できなくなっていることがわかります。そのおもな理由をみていきましょう。

看護師が不足することで人員配置基準を満たせない

看護師の不足により、人員配置基準を満たせない可能性があります。

というのも、訪問看護ステーションの有効求人倍率は2020年度時点で3.26倍であり、施設別で最も高く人手不足が明らかであるためです。

法律で定められた人員基準を守れなければ、訪問看護ステーションを運営できません。

また、看護師数がギリギリの状況であると、利用者さまに質の高いケアを提供することが難しくなり、業務が過重になることも考えられ、離職率が高まりします。

このような状況では悪循環となり、さらに運営に必要な人員配置基準を満たせないでしょう。

ほかの訪問看護ステーションとの競争が激しい

訪問看護を起業する際に、ほかの訪問看護ステーションとの競争が激しいことは大きな課題です。

とくに、同じ地域に複数の訪問看護ステーションが存在する場合は、サービスの質や料金、提供するケアにおいて差別化を図る必要があります。

この競争を勝ち抜くためには、特定のニーズに応じたサービスを提供することが効果的です。たとえば、認知症ケアや在宅リハビリテーション、小児科など専門分野に特化したサービスにすることで、特定の利用者さまをターゲットできます。

うまく資金繰りができない

訪問看護の起業において、資金繰りの難しさは訪問看護ステーションが取り組むべき課題のひとつです。

新たに事業を始めるときには、初期投資として事務所の設立費用や備品の購入費、人件費など多くの資金が必要です。

とくに、運営が安定するまでは、収入が不安定になる可能性があります。この期間に資金管理できないと、事業が立ち上がらなくなるかもしれません。

また、サービス提供費用はケアを実施したあとに請求する流れであり、支払われるまでに時間がかかるため、キャッシュフローの管理が重要です。

多職種や医療機関との連携が難しい

訪問看護ステーションは、医師や薬剤師をはじめ、リハビリテーションのスタッフやケアマネジャーなどさまざまな分野のスタッフと協力しながら、ケアをおこないます。

しかし、スタッフ間での情報共有や意見の調整がうまくいかないことがあります。とくに、新規の訪問看護ステーションでは、スタッフ間での信頼関係を構築するまでに時間がかかりやすいです。

さらに、地域の医療機関やほかの介護サービスとの関係が希薄だと、利用者さまの紹介や情報交換がスムーズにいかないこともあります。

訪問看護を起業するメリット

ここでは、訪問看護を起業するメリットを紹介します。

  • 実践したい看護を実現できる  
  • 経済的に自立できる
  • 地域社会に貢献できる

それぞれのメリットをみていきましょう。

実践したい看護を実現できる

訪問看護を起業する際の魅力は、自身が理想とする看護を実践できることです。

利用者さまのニーズに寄り添いながら、個別ケアを提供する機会が増えます。

自身の専門性や経験を最大限に活かした支援ができるため、より質の高い看護を実現できる環境が整うでしょう。

経済的に自立できる

訪問看護を起業するメリットは、経済的な自立が実現できる点です。

訪問看護師として独立することで、自らの報酬を管理でき、業務の効率化やサービスの充実に応じて収入を増やせます。

さらに、訪問看護は柔軟な働き方ができるため、自分のライフスタイルに合わせたスケジュールを組めます。

このように、訪問看護の起業は経済的な自立を促進し、将来的なキャリアの選択肢を広げる手段として魅力的です。

地域社会に貢献できる

訪問看護の起業は、地域社会において大きな影響を持つ事業です。

高齢化社会が進むなかで、在宅での医療・介護サービスの需要は増加している現状です。

このようなニーズに応える形で訪問看護を立ち上げることは、地域の健康を守るために重要な役割を果します。

さらに、訪問看護の起業は、地域内での医療連携を促進する機会となります。

このような連携は、地域の医療システムの強化につながり、住民の健康を支えられるでしょう。

訪問看護を起業する際の注意点

訪問看護を起業するメリットがある一方で、次のような注意点もあります。

  • 介護・診療報酬の改定による収支の変化
  • 資金の枯渇
  • 看護師の不足

それぞれの注意点を踏まえて、起業するときに後悔しないようにしましょう。

介護・診療報酬の改定による収支の変化

訪問看護を起業するときの注意点は、介護・診療の改定による報酬の変更です。

訪問看護ステーションの経営にはこれらの報酬が収入源となるため、改訂によって影響を受けやすいことを理解してください。

具体的には、介護報酬は3年ごと、診療報酬は2年ごとに報酬の体型や単位数などが見直されており、この見直しにより収益が下がるリスクがあります。

訪問看護を起業する際には、介護・診療報酬の改定による報酬の変化に注意して、経営戦略を見直すことが成功のカギです。

資金の枯渇

訪問看護ステーションを起業するうえで、緻密に資金の計画を立てていても、計画通りに運営できるとは限りません。

とくに、開業直後は集客に時間がかかることが多く、収入が思うように得られない恐れがあります。

そのため、訪問看護にかかわる助成金や補助金を調べて活用することで資金調達の問題を解決できるでしょう。

看護師の不足

訪問看護を起業する上で重要な課題は、看護師不足です。

求人に応募がなく開業できなかったり、開業後に看護師の退職によって休止しなければならなかったりします。

看護師を確保するためには、魅力的な職場を作ることが不可欠です。

たとえば、時短勤務やパート勤務など柔軟な働き方を導入したり、福利厚生を手厚くしたりすることで、看護師の方が働きやすくなります。

また、定期的な研修やキャリアアップの機会を設けることで、看護師のモチベーションを高めることも効果的です。

まとめ

訪問看護ステーションを起業するためには事業計画の作成や法人設立、スタッフ採用など多くのステップを踏む必要があります。

起業時にかかる費用には人件費や事務所費、備品費などがあり、助成金を活用することでコストを抑えることが可能です。

訪問看護ステーションの成功には、地域密着型の運営と信頼構築が重要です。安定した収益を得るまでには時間がかかることがありますが、適切な準備と運営で長期的な成長が期待できるでしょう。

もし、いきなり訪問看護ステーションの立ち上げが不安な方はまずは訪問看護ステーションの管理者としての経験を積み、訪問看護ステーションの運営がどのような流れで行われているかを理解するのがよいでしょう。

例えば訪問看護業界に特化した求人サイトであるNsPace Careerであれば、訪問看護ステーションの管理者の求人が多く掲載されているので、訪問看護ステーションの前段階としての管理者経験が積める職場が探しやすいです。是非活用してみてください。

参考サイト・文献

令和5年度 訪問看護ステーション数 調査結果|一般社団法人全国訪問看護事業協会 

指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について|厚生労働省

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|e-GOV法令検索

2020年度「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」 結果|日本看護協会

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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