訪問看護で准看護師ができないことは?減算や4つのメリットを紹介
「訪問看護ステーションで准看護師ができないことあるの?」「准看護師が訪問すると報酬が減る理由を知りたい」
准看護師の方のなかには、訪問看護ステーションへの転職を検討している方もいらっしゃるでしょう。
ただし、訪問看護において看護師と准看護師はおこなえる業務範囲が異なり、算定方法が変わります。
この記事では、訪問看護ステーションで准看護師の方ができないことやメリット、減算される理由を詳しく解説します。准看護師の方が気になっていることが解消され、訪問看護で働くきっかけになれば幸いです。
訪問看護で准看護師ができないことは?
訪問看護で准看護師の方ができないことについて、看護師の資格との違いとともに解説します。
- 訪問看護計画書および報告書の作成
- 自己判断での看護業務
- ほかの看護師への指示
- オンコール対応の担当
- 訪問看護の管理者やリーダー
それぞれを詳しくみていきましょう。
訪問看護計画書および報告書の作成
訪問看護計画書や報告書などの書類は、利用者さまの健康状態やケアを明らかにし、適切なサービスを提供するために欠かせません。
ただし、准看護師の方はこれらの書類の作成はできません。
というのも、准看護師の方は、看護師の方と同じような仕事内容である一方で、計画書や報告書といった業務には法的な制限があるからです。
これらの書類は看護師や保健師のほかに、理学療法士や作業療法士などの職種が作成できます。
准看護師として訪問看護に携わる場合、こうした制約を理解して業務の範囲を把握することが大切です。
自己判断での看護業務
訪問看護で准看護師の方は、自己判断での看護業務をおこなってはいけません。
これは、准看護師の方が自己判断で看護業務を進めることが、法律上許されていないためです。
たとえば、利用者さまから入浴介助を依頼されたケースで入浴や清拭介助が必要な場合、看護師の方はそのままアセスメントしたうえで、介助の準備を進められます。
ただし、准看護師の方は医師や看護師の方に報告して、入浴介助を行っても良いのか指示を仰がなければなりません。
状況によっては、看護師の方と比較すると准看護師の方は業務スピードが遅くなる可能性があります。
ほかの看護師への指示
先ほど紹介したように准看護師の方は、看護師の方から指示を受ける立場であるため、看護師の方に指示を出すことができません。
准看護師が先輩で、看護師が後輩の場合でも、このルールは変わりません。たとえば、新人看護師の方がケアについて悩んでいるところを見かけても、准看護師の方が指示を出せないので不便さを感じるケースもあるでしょう。
そのため、准看護師として訪問看護に転職を検討する場合は、この業務範囲の制限を理解しておくことが大事です。
オンコール対応の担当
准看護師の方は、オンコールの対応が認められていません。
なぜなら、厚生労働省「訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて」において、原則としてオンコール対応ができるのは看護師、もしくは保健師と定められているためです。
訪問看護においてオンコールは、利用者さまの状態悪化に対応するために重要である一方で、夜間や休日に呼び出しがあるため心身ともに負担を感じる業務でもあります。
准看護師の方はオンコール対応ができないため、利用者さまの緊急対応や看取りの経験が獲得しづらいでしょう。
訪問看護の管理者やリーダー
訪問看護で准看護師の方は、管理者やリーダーになれない可能性があります。
准看護師の方は訪問看護計画や報告書の作成ができなかったり、ほかの看護師の方への指示出しができなかったりするためです。
准看護師の方が業務の制限があることで、訪問看護ステーションの運営やスタッフの統括などの業務は、看護師の方が中心となります。
訪問看護で准看護師の訪問の減算とは
訪問看護において、次に該当する場合は減算の対象となります。
- 准看護師の方による訪問看護または介護予防訪問看護を提供した場合
- 定期巡回や随時対応型訪問介護看護と連携する基本報酬を算定している利用者さまは、当該月に1回でも准看護師の方による訪問があった場合
ここでは「介護保険」「医療保険」の減算について詳しく紹介します。
介護保険での准看護師の場合
訪問看護において、准看護師の方が介護保険サービスを提供する際には減算される場合があります。
介護保険制度では、訪問看護サービスを提供する看護職員が看護師か准看護師かによって報酬が異なり、准看護師の方がおこなう場合は報酬が減額されるためです。
具体的には、看護師の方と比べて、准看護師の方がサービスを提供すると10%の減算が適用されることが一般的です。
この減算は、利用者さまのケアに対する報酬額が減るため、訪問看護ステーションにとって経済的な影響を及ぼす可能性があります。
訪問看護に転職を考える准看護師の方は、この減算のシステムがあるため、転職しにくくなったり、給与が下がったりするリスクを知っておくことが重要です。
医療保険での准看護師の場合
訪問看護において、准看護師の方が医療保険でサービスを提供する場合には減算ではなく、「准看護師が訪問する場合」の報酬算定が定められています。看護師と、准看護師で金額が異なります。
具体的には、訪問看護ステーションから准看護師の方が派遣される場合は、介護保険の減算と同じように報酬が約10%低く設定されています。
訪問看護で准看護師が働く4つのメリット
訪問看護で准看護師の方が働くメリットは、次のとおりです。
- 利用者さまに深くかかわれる
- 在宅医療でのスキルが身につく
- 給与水準が高めに設定されている
- ワークライフバランスを整えやすい
それぞれを詳しくみていきましょう。
利用者さまに深くかかわれる
訪問看護において、准看護師として働くメリットは利用者さまに深くかかわれることです。
病院の勤務では、多くの患者さまにケアするため、一人ひとりに十分な時間を割くことが難しいケースもあります。たとえば、患者さまのケアをしている途中でほかの患者さまに対応したり、検査室やリハビリテーション室からの呼び出しがあったりします。
一方で、訪問看護ではご自宅に訪問し、その時間はひとりの利用者さまに向き合えるため、信頼関係を築きやすいです。
くわえて、訪問看護は利用者さまの日常生活に密接に関わるため、生活環境や背景を理解しながらケアを提供できます。
きめ細かな対応ができるようになることで、利用者さまの安心感や生活の質向上に貢献できるでしょう。
在宅医療でのスキルが身につく
在宅医療でのスキルが身につく点は、訪問看護で准看護師として働くメリットです。
なぜなら、病院や施設でのケアとは異なり、訪問看護では利用者さまのご自宅でのケアであるため、在宅医療に特化したスキルや知識が培われるためです。
具体的には、在宅酸素療法や点滴管理、日常生活動作の支援など利用者さまの状況に合わせて提供します。
ご自宅という医療機器や資源が限られた環境のなかで、利用者さまの生活を支えるスキルは、看護師としての成長できるきっかけとなるでしょう。
給与水準が高めに設定されている
訪問看護で准看護師の方が働く際のメリットは、給与水準が高めに設定される可能性があることです。
病院や介護施設などと比べて、訪問看護ステーションの有効求人倍率は最も高く3.26倍(2020年度)であり、人手不足であるためです。
さらに、訪問看護ステーションの需要は高まっており、訪問看護師数は2002年2.4万人であったのが2020年には6.8万人に増加しています。
訪問看護ステーションによっては、看護師と准看護師で給与水準が異なる場合もありますので、求人をしっかり確認しておくことが重要です。
ワークライフバランを整えやすい
訪問看護で准看護師として働く際の利点のひとつは、ワークライフバランスを整えやすいことです。
基本的に、訪問看護では決まったスケジュールで業務をおこなうため、時間の管理がしやすいです。これにより、プライベートの時間を確保しやすく、家庭との両立や趣味の時間を持てます。
病院や施設勤務と比較して、日勤のみに従事することができるため、生活リズムを整えやすい点も魅力です。
このように、訪問看護での勤務は准看護師にとって、心身の健康を保ちながら働きやすい環境といえます。
訪問看護で准看護師の求人例
ここでは、訪問看護業界に特化した求人サイト「NsPaceCareer」の准看護師の求人例を紹介します。
A求人(常勤)
月給 | 月給33万円~38万円 |
勤務時間 | 9:00~17:00分(60分休憩) |
休日 | 土日 |
福利厚生 | ・社会保険完備 ・ユニフォーム貸与 ・通勤手当 ・駐車場用意あり ・訪問車貸与あり ・研修費補助(場合による) ・産休育休制度 |
B求人(常勤)
月給 | 月給35万5,000 円~42万円 |
勤務時間 | 9:00〜18:00(休憩60分) |
休日 | 日・祝日+希望日/週 |
福利厚生 | ・社会保険完備 ・ユニフォーム貸与 ・退職金制度 ・通勤手当(全額) ・駐車場用意あり ・訪問車貸与あり ・研修費補助あり ・産休育休制度 ・自転車、自動車通勤可 |
C求人(非常勤)
時給 | 2,200 円~4,400 円 |
勤務時間 | 8:30~17:30分(休憩60分) |
休日 | ・週1日から相談可能 ・1日3時間から相談可能 |
福利厚生 | ・社会保険完備 ・ユニフォーム貸与 ・通勤手当(全額、2万円まで) ・駐車場用意あり ・訪問車貸与あり ・研修費補助あり ・産休育休制度 |
これらはいずれも「准看護師OK」「准看護師の方も可」で募集されている求人です。看護師と准看護師では待遇や要件が異なる可能性があります。求人サイト内で気になる求人がある方は、それぞれの訪問看護ステーションに確認して応募してみましょう。
まとめ
訪問看護ステーションで働く准看護師の方は、法律にもとづいて制限を受けることがあります。たとえば、訪問看護計画書や報告書の作成ができなかったり、管理者になれなかったりします。
その一方で、訪問看護には利用者さまと深くかかわり、在宅医療でのスキルを身につけられるなどのメリットがあります。ほかには、給与水準も高いケースがあり、ワークライフバランスを整えやすい点が魅力です。
NsPaceCareerでは、訪問看護業界に特化した求人サイトであり、准看護師の求人も豊富に取り扱っています。登録は無料であり、求人の検索のほかに訪問看護業界の経験者への無料相談を実施しているなど、さまざまサービスを提供しています。
転職を後悔したくない方は、ぜひ活用してみてください。
参考文献・サイト
訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて|厚生労働省
訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。