精神科訪問看護師の給料とは?給料アップする資格5つときついといわれる理由
「精神科訪問看護の給料はどのくらい?」「精神科訪問看護はなぜきついといわれるの?」
このように精神科訪問看護に興味がある一方で、実際に働くことに不安を感じていませんか。
精神科訪問看護で働くためには、精神科に特化した知識やスキルが必要です。精神科の利用者さまの精神状態や症状は評価しづらく、さらにコミュニケーションの難しさによって「きつい」と感じることがあります。
この記事では、精神科訪問看護の給料やきついとされる理由と対処法について詳しく解説します。精神科訪問看護に興味があるものの、実情がわからず悩んでいる看護師の方のお役に立てると幸いです。
また、精神科訪問看護全般について知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
関連記事:精神科訪問看護とは?対象の疾患や看護師の仕事内容、1日の流れや向いている人も解説!
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精神科訪問看護師の給料はいくら?
日本看護協会「2021 年 看護職員実態調査」によると、訪問看護ステーションで働く看護師の方の平均給料は36万7,775円です。
精神科の訪問看護ステーションは、この給料にくわえて手当がつくケースがあり「精神科」という専門性によって給料や賞与が高く設定されていることがあります。
一方で、病院で働く看護師の方の平均給料は38万6,046円で、夜勤手当が含まれるため訪問看護ステーションよりも高くなる傾向があります。
ただし、オンコール手当や役職手当など、それぞれの訪問看護ステーションごとに給与形態は異なるため、ホームページや求人情報を確認することが重要です。
精神科訪問看護で給料アップが期待できる5つの資格
精神科訪問看護で給料アップが期待できる資格を解説します。
- 精神科認定看護師
- 精神看護専門看護師
- ケアマネジャー(介護支援専門員)
- 精神保健福祉士
- 臨床心理士
ただし、資格手当がない場合は、給料アップにつながらないこともあるためご注意ください。
精神科認定看護師
精神科認定看護師は、訪問看護ステーションでの給料に手当がつく場合があり、資格を取得することで給料アップが期待できます。
精神看護のスペシャリストとして、高度な知識やスキルを活かし、利用者さまのメンタルヘルスケアに専門的にかかわることができるためです。
精神科認定看護師の資格取得に必要な条件は次のとおりです。
- 日本の看護師免を取得していること
- 看護師資格取得後、5年以上の実務経験があること(そのうち3年以上は精神科領域の経験がある)
精神看護専門看護師
精神看護専門看護師の資格を持っていると、給料に手当がつくことが多く資格取得により給料アップが実現できます。
これは、重症化した利用者さまを担当したり、ほかの看護師を指導したりと訪問看護ステーションでリーダー的な役割を担うことができるからです。
精神看護専門看護師は、日本看護協会が認定する資格であり取得に必要な条件は次のとおりです。
- 日本の看護師免許を取得している
- 大学院での専門教育が修了しており、所定の単位を取得していること
- 看護師免許取得後、5年以上の臨床経験があること(そのうち、3年以上は精神科領域の経験がある)
また、精神看護専門看護師はリエゾンナースとして、ほかの訪問看護ステーションの困難事例の支援をしたり、病院から在宅へ退院してくる患者さまのサポートを行ったりと多岐にわたる役割があります。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、介護サービスの専門的な知識を活かし、利用者さまやそのご家族に適切なケアやサポートを提供します。
ケアマネジャーは、介護が必要な方に対して介護サービスの計画を立て、サービス提供者との連携や調整をおこなう役割があり、利用者さまの生活を支える重要なポジションです。
資格は都道府県が認定し、資格取得には保健医療福祉分野での実務経験があり看護師や介護福祉士などの資格を持っていることが条件です。
訪問看護ステーションによっては、居宅介護支援事業所をもっていることもあり、働き方やキャリアアップが見込めるでしょう。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神疾患を持つ方の生活支援や社会復帰をサポートする国家資格であり、あらゆる面で利用者さまをサポートできるため、給料アップが期待できます。
訪問看護師の方は、医療的な支援はもちろんのこと、利用者さまが福祉サービスを活用できるように調整することも仕事内容のひとつです。
資格取得には、指定の専門学校もしくは大学での実習や実務経験が必要です。
臨床心理士
臨床心理士は、心理療法や行動療法を通じて利用者さまのメンタルヘルスケアを専門的にサポートできるため、精神科訪問看護において需要が高まっています。
とくに、精神疾患を抱える利用者さまへの個別対応が重要視されており、臨床心理士の役割がますます重要になっています。
このような需要の高まりから、臨床心理士の資格を持つことで、訪問看護ステーションでの待遇改善や給料アップが期待できるでしょう。
資格取得には、指定の大学院で心理学を専攻し、実習を通じて実務経験を積むことが求められます。
精神科訪問看護がきついといわれる理由
ほかの領域のケアと比べて、さまざまな理由により精神科訪問看護は「きつい」といわれることがあります。
- 利用者さまの変化がわかりにくい
- コミュニケーションが難しい
- 1人で訪問することに不安を感じる
- ご家族とうまく関われない
- 不衛生な住宅もある
- 介護業務が必要なケースがある
それぞれの理由を知って、転職を後悔しないように前向きに検討しましょう。
利用者さまの変化がわかりにくい
精神科訪問看護では、利用者さまの変化がわかりにくいときがあります。
なぜなら、身体的な症状とは異なり、精神的な症状はうつ病や統合失調症などのように少しずつ変化するため、短期間で改善したところがわかりにくいからです。
たとえば、看護師の方は自身のケアの効果が目に見えにくいため、モチベーションの維持が難しくなることがあります。
ただし、利用者さまと時間をかけてかかわるため、症状の改善がみられたときは喜びが大きく、その達成感がやりがいに思えるきっかけとなります。
コミュニケーションが難しい
精神科訪問看護では、利用者さまの状態や症状によってコミュニケーションが難しく感じる場合があります。
というのも、精神疾患の影響により「感情の変動」や「思考の乱れ」がみられ、スムーズな対話が困難になることがあるからです。
そのため訪問看護師の方は「表情」「視線」「声のトーン」などの非言語的なサインを読み取り、利用者さまの気持ちを察しながら適切に対応するスキルが必要です。
また、コミュニケーションに気を遣う場面が多いため、訪問看護師の方は利用者さまの急な感情の変化に対応しなければならず精神的な負担となり、きついと感じるかもしれません。
1人で訪問することに不安を感じる
精神科訪問看護では、1人で訪問することに不安を感じることがあります。
精神状態が不安定な利用者さまの場合は、急に症状が変化したりトラブルが発生したりする恐れがあるからです。
また、利用者さまの状態や家庭内でのトラブルが頻発しているケースでは、看護師の方がひとりで対応するリスクが高い場合もあります。
この体験が重なると、精神科訪問看護師の方は強いストレスや恐怖心を抱き、仕事を続けられないと感じることもあります。
ただし、安全に訪問することが難しい利用者さまの場合は、医師の指示のもと2人で訪問することが可能です。
精神疾患の利用者さまが、全員リスクの高い状態であることはほとんどありません。
ご家族とうまく関われない
精神科訪問看護では、利用者さまのご家族の理解不足や協力不足によってケアが難しくなるケースがあります。
たとえば、ご家族が利用者さまの精神疾患について理解していないため、サポートできず、訪問看護師の方がその調整に入ることがあります。
さらに、ご家族が介護に対して強いストレスを感じている場合、そのストレスが利用者さまに影響を与え、精神的な不安定さを引き起こすことがあります。
訪問看護師の方は、ご家族のストレスや不安に寄り添いながら、長期的に調整を続けることが求められるため、これらが負担となり、精神的にきついと感じることがあります。
不衛生な住宅もある
精神科訪問看護では、不衛生な住宅を訪問することがあります。
利用者さまが精神的な問題を抱えているケースでは、衛生的な環境を保持できない場合があります。その結果、利用者さまのご自宅の掃除や片付けが必要になることもあります。
例えば、放置されたゴミや汚れた環境は感染症のリスクを高めるだけでなく、落ち着いて座って対話をする場所がなくケアにも支障をきたすことがあります。
通常の看護業務以外のことは、看護師の方にとってストレスとなり精神的な負担の増加につながる可能性があります。
ですが、利用者さまの疾患や症状だけではなく、生活全般を支える必要が、訪問看護師に求められる役割の一つです。
介護業務が必要なケースがある
精神科における訪問看護でケアする場面では、一般的な看護業務にくわえて、介護業務が求められる場合があります。
病院での業務とは異なり、訪問看護ステーションでは看護と介護の業務がはっきりとわかれていないことがあります。
精神科訪問看護における介護業務の具体例は以下のとおりです。
介護業務 | 具体的な内容 |
日常生活の支援 | ・食事の提供や介助 ・入浴介助 ・排泄の介助 |
移動の支援 | 車椅子や歩行器での移動介助 |
家事の支援 | ・掃除や片付けの介助 ・洗濯物の整理 |
これらの業務すべてを訪問看護で行うわけではありません。
ヘルパーや生活相談員が支援することもあります。また、介助と言っても状況によっては見守り程度のこともありません。
たとえば、幻聴の症状がありシャワー浴の際に症状が悪化するため、浴室の扉の前で訪問看護師が付き添い見守る、ということもあります。
精神科訪問看護の実態について、さらに詳しく知りたい方は下記のインタビュー記事を参考にしてください。
関連記事:【精神科訪問看護】『きつい?怖い?』精神科訪問看護の醍醐味
精神科訪問看護がきついと感じたときの対処法
訪問看護師がきついと感じたときの対処法を詳しく解説します。
- 信頼できる上司や先輩に相談する
- 自分1人の時間を充実させる
- 身体を動かしてリフレッシュする
- キャリアプランをもう一度考え直してみる
- ほかの訪問看護ステーションで働くことを検討する
それぞれの対処法を実践して、より良い将来のビジョンを考えましょう。
信頼できる上司や先輩に相談する
精神科訪問看護がきついと感じたときは、信頼できる上司や先輩に相談しましょう。相談することで、次のように問題に対処できたりアドバイスをもらえたりするかかもしれません。
- 勤務やシフトの調整をする
- 訪問看護計画の内容を検討する
- 利用者さまへのかかわり方を変える
- ほかのスタッフや職種の協力を得られるよう調整する
悩んでいるときは、話を聞いてもらえるだけで、自身の精神的な負担が軽減することがあります。
経験豊富な上司や先輩は、問題解決の糸口をみつけてくれる可能性もあるため、1人で抱え込まず、ぜひ相談してみてくださいね。
自分1人の時間を充実させる
精神科訪問看護がきついと感じるときは、自分1人の時間を充実させることが大切です。自分の時間を確保することで、リフレッシュにつながるためです。
たとえば、散歩したり読書をしたりなど自分1人の時間を充実させることが大事です。
「自分が好きなこと」「自分がリラックスできること」をする時間を作りましょう。
また、精神科訪問看護は、専門的な知識やスキルが必要な仕事であり、ケアの責任がともないます。ときには、頑張っている自分をほめることも大切です。これにより、自己肯定感が高まり、ストレスの解消につながるでしょう。
身体を動かしてリフレッシュする
ネガティブな気分を解消させたり、こころと身体をリラックスさせたりする効果があるため、身体を動かす時間を作りましょう。手軽にできる方法は、次のとおりです。
- ヨガをする
- 近所を散歩する
- 軽くランニングする
- 朝起きたときや寝る前にストレッチする
1日20分くらい、身体が温まって汗ばむ程度を目安に身体を動かすことが効果的とされています。頑張りすぎると疲れてしまい逆効果になる恐れがあり注意が必要です。
身体を動かす時間が取れない方は、深呼吸を心がけてみてください。副交感神経が優位になり、リラックス効果が期待できますよ。
キャリアプランをもう一度考え直してみる
精神科訪問看護がきついと感じるときは、ご自身のキャリアプランをもう一度考え直してみることもおすすめです。
看護師として、別の領域を経験することで、新たな視点やスキルを習得でき「自分が何をしたいのか」が明確になるからです。
精神科訪問看護で働くことが、自身の看護師のキャリアにおいてどのような位置にあるのかを、ゆっくり考え直してみるのも良いでしょう。
ほかの訪問看護ステーションで働くことを検討する
精神科訪問看護がきついと感じるときは、ほかの訪問看護ステーションで働くことを検討するのもひとつの方法です。
異なる訪問看護ステーションでの経験は、新しい視点や経験を得ることができキャリアの幅を広げるきっかけになります。
ご自身での転職活動では情報の収集に限界があるため、ぜひ転職専門の支援を受けてみてください。NsPaceCareerは、看護師専門の転職支援サービスです。豊富な求人情報があり、専門的なアドバイザーが転職に対応しています。詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
精神科訪問看護は専門知識やスキルが求められ、利用者さまとのコミュニケーションや精神症状の評価が難しいため、きついと感じることがあります。
病院での勤務と比べると、精神科訪問看護は給料が低いことが多いものの、資格取得や手当で給料アップを狙えます。
ひとりで訪問する不安や家族とのかかわり、介護業務など精神的・肉体的な負担も多いため、十分な理解と対策が必要です。
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