夜勤専従看護師とは?メリットや求人を探す4つのポイントを紹介
「夜専」「夜勤専従看護師」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
夜勤専従看護師とは、夜勤のシフトだけに従事する働き方です。夜勤専従看護師の方は、給料が高かったり日中の時間を自由に使えたりなどのメリットがあります。
その一方で、夜勤専従での働くのは体調管理が難しく、家族との時間を持てないなど不安を感じている看護師の方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、夜勤専従看護師のメリットや求人を探すポイントを紹介します。夜勤専従として働きたいものの、悩んでいるあなたの手助けになれれば幸いです。
夜勤専従看護師とは
一般的に、病院や施設に勤務している看護師の方の多くは日勤と夜勤、両方に従事します。
ただし、なかには夜勤従事者や日勤従事者のように、夜勤もしくは日勤のいずれかだけの働き方もあります。
- 夜勤専従看護師の仕事内容
- 夜勤専従看護師の144時間ルール
ここでは、上記2つのポイントに沿って、夜勤専従看護師の方の実態を詳しく紹介します。
夜勤専従看護師の仕事内容
日勤とは異なり、夜勤専従看護師の方はスタッフが少ないなかで夜間のケアをおこなうため、幅広い業務を引き受けることが求められます。具体的には、以下のような仕事内容です。
- 食事の介助
- 入眠時のケア
- 点滴や注射の管理
- バイタルサインの測定
- トイレ介助やオムツ交換
- ナースコール対応
- 看護記録の作成
- 配薬の準備
- 緊急入院や看取りの対応
- 巡視
このように、日中の看護業務と大きな差はありません。
ですが、夜勤専従看護師の方は入眠時のケアをおこなったり、朝方に採血を採ったりします。ときには、急変した患者さまに少人数で対応する場合もあります。
夜勤専従看護師の方は勤務時間が長くなりやすいため、集中力を持続させながら仕事を進めることが重要です。
夜勤専従看護師の144時間ルール
夜勤専従看護師の方にとって、勤務時間の管理は重要です。
そのなかでも「144時間ルール」は、夜勤専従者の1ヵ月あたりの夜勤時間数の上限を指します。これは、日本看護協会が定めており、夜勤専従看護師の方の過労や健康リスクを防ぐことが目的です。
144時間ルールに従い勤務時間を調整することで、過重負担にならないよう働き、結果として患者さまに安全なケアを提供できるでしょう。
夜勤専従看護師の1日のスケジュール
ここでは、夜勤専従看護師の方の2交代制と3交代制のスケジュールを紹介します。1日を通して、どのような働き方をしているのか確認してください。
(2交代制の勤務)
時間 | 仕事内容 |
16:00 | 出勤・情報収集 |
16:30 | 日勤看護師からの引き継ぎ |
17:00 | 巡回・バイタルサインの測定・患者さまの状態の観察 |
18:00 | 血糖値測定・インスリン注射・夕食の準備・食事介助 |
18:30 | 与薬・歯磨き・口腔ケア |
19:00 | 巡回・患者さまの状態の観察 |
20:00 | 順番に休憩 |
21:00 | 入眠時のケア・睡眠薬の与薬 |
22:00 | 消灯 |
22:00~4:00 | 巡回・オムツ交換・体位変換・ナースコール対応・順番に仮眠休憩 |
4:30 | 採血準備 |
6:00 | バイタルサインの測定・患者さまの状態の観察・採血 |
7:00 | 血糖値測定・インスリン注射・朝食の準備・食事介助 |
7:30 | 与薬・口腔ケア |
8:30 | 日勤の看護師へ引き継ぎ |
9:00 | 退勤 |
(3交代制の勤務)
時間 | 仕事内容 |
23:00 | 出勤・情報収集 |
23:30 | 準夜勤の看護師からの引き継ぎ |
00:00~4:00 | 巡回・オムツ交換・体位変換・ナースコール対応・順番に休憩 |
4:30 | 採血準備 |
6:00 | バイタルサインの測定・患者さまの状態の観察・採血 |
7:00 | 血糖値測定・インスリン注射・朝食の準備・食事介助 |
7:30 | 与薬・口腔ケア |
8:30 | 日勤の看護師へ引き継ぎ |
9:00 | 退勤 |
2交代制、3交代制、いずれも勤務先やその日の患者さまの状況によってスケジュールは大きく変わります。
急変の対応や、緊急入院を受け入れるときには仮眠休憩が取れなかったり、時間通りに退勤できなかったりする場合もあります。
夜勤専従看護師のメリット
「夜勤ばかりの勤務は大変そうだな…」「夜勤は身体がきついだけで、良いことなさそう…」などと感じている看護師の方もいらっしゃるかもしれません。夜勤専従看護師として働くことには、次のようなメリットがあります。
- 年収が高くなりやすい
- シフトの自由が利きやすい
- 日中に自由な時間ができる
- 連休を取りやすい
- 委員会やプリセプターなどの役割を免除される
- 人間関係に悩みにくい
それぞれのメリットをみていきましょう。
年収が高くなりやすい
一般的に、夜間の勤務は昼間の勤務よりも高い賃金が支払われます。
これは、夜間の勤務にともなうリスクや体力的な負担を考慮しているからです。
夜勤専従の場合、夜間に特化した勤務をするため、その分の手当や割増賃金が支給されることが多いです。日本看護協会「2023 年 病院看護実態調査 報告書」の調査による夜勤手当の具体的な金額は、次のとおりです。
勤務形態 | 夜勤手当額 |
2交代制 | 11,368円 |
3交代制(準夜勤) | 4,234円 |
3交代制(深夜勤) | 5,199円 |
夜勤専従として働くことで、上記の夜勤手当が加算されるため、年収が高くなりやすいです。
そのため、年収アップを目指す看護師の方にとっては、夜勤専従という選択肢があるでしょう。さらに、夜勤看護師の年収について知りたい方は、下記の記事をチェックしてください。
関連記事:夜勤専従の看護師の年収は600万円?常勤の手取りやきつい理由を解説
シフトの自由が利きやすい
日勤や夜勤が混ざったシフト制の勤務と比べて、夜勤専従看護師の勤務は夜勤のみであるため勤務日や時間帯を自身の生活スタイルに合わせて調整しやすいです。
また、病院や施設では夜勤スタッフが不足しがちであるため、勤務時間や出勤日についても希望が通りやすいケースもあります。
たとえば、夜勤の回数を減らしてプライベートの時間を確保したり、シフトを増やして年収アップさせたり柔軟に調整できる勤務先もあります。
ただし、雇用形態によっては柔軟に働くことが難しい場合もあるので、勤務先に確認することをおすすめします。
ライフスタイルに合わせて働きたい看護師の方にとって、夜勤専従は理想的な働き方といえるでしょう。
日中に自由な時間ができる
日勤で働く看護師の方と比べて、夜間専従看護師の方は昼間の時間を有効活用できるのが特徴です。
たとえば、日中に趣味をしたり、買い物や役所の手続きを済ませたりできます。さらに、家族と過ごす時間を増やすことも可能です。
また、育児中の看護師の方にとっては、保育園の送り迎えや子どもの学校行事に参加しやすいという利点があります。
このように、夜勤専従看護師の方は昼間の時間を自由に使えるため、家庭や趣味と両立しやすく柔軟な働き方を実現できます。
そのため、仕事とプライベートのバランスを重視したい看護師の方にとって、夜勤専従の働き方は魅力的な選択肢です。
連休を取りやすい
夜勤専従の勤務形態は、通常のシフトよりも勤務日数が少なくなることが多く、夜勤後には長めの休息が設けられるため、連休を確保しやすいのが特徴です。
たとえば、一般的に1回の夜勤で10時間以上勤務するため、その後2~3日連続して休みが取れるケースもあります。
また、連続して夜勤に入ることで、数日間まとめて休みを取れます。これにより、旅行やリフレッシュの時間を確保することができるため、長期休暇も実現しやすいです。
リフレッシュしながら仕事を続けられるため、仕事のモチベーションを保てるでしょう。
委員会やプリセプターなどの役割を免除される
日勤の看護師は、通常の看護業務にくわえて委員会活動やプリセプター業務などを任されることが多いです。
これらの業務は看護師としての成長につながる一方で、業務負担が増えるため、プライベートの時間を削られることも少なくありません。
夜勤専従看護師の場合は、実質的に委員会の活動に参加することが難しく、プリセプター業務も同じことがいえます。
追加の業務負担が軽減されることで、心身の負担を抑えられることが夜勤専従看護師の魅力のひとつです。
人間関係に悩みにくい
日勤の看護師の方は患者さまのケアや委員会活動、ミーティングなどさまざまな場面でコミュニケーションの機会があり、ときには人間関係のストレスを感じることがあります。
ただし、夜勤専従看護師の方の場合は、限られたメンバーで業務をおこないます。
さらに、夜間は少人数であり業務に集中しやすい状況であるため、人間関係の複雑さに悩まされる機会が少ないのが特徴です。
スタッフ同士の距離感も程よく保たれるため、余計なストレスを抱えずに勤務できるでしょう。
夜勤専従看護師のデメリット
夜勤看護師として働くメリットがある一方で、デメリットもあります。
- 体調管理が難しい
- 家族との時間が合わない
- 常勤での募集が少ない
- 患者さまの様子をうまく把握できない
メリットとデメリット、それぞれをふまえて自身に合った働き方を見つけましょう。
体調管理が難しい
夜勤専従看護師の方のデメリットとして、体調管理が難しい点が挙げられます。
夜間に勤務することで、生活リズムが昼夜逆転して体内時計が乱れることが多々あります。
これにより、睡眠の質が低下したり、十分な休息が取れなかったりすることが少なくありません。
長期間夜勤を続けることで、慢性的な疲労や睡眠不足の状態になりやすく、体調不良のリスクが高まるのが現実です。
また、夜勤中は食事時間がずれるため、食生活が乱れ栄養のバランスが崩れることもあります。
この結果、健康に悪影響が出やすくなります。このような体調管理の難しさから、夜勤専従を続けるためには、睡眠サイクルを確立したうえで栄養バランスを考慮した食事や定期的な運動を取り入れることが重要です。
家族との時間が合わない
ほかの家族が昼間を中心に活動しているため、夜勤専従看護師の方とすれ違いが生じやすいです。
とくに、小さな子どもがいる方や家族行事に参加したい方にとっては、この時間のズレが大きな問題となります。また、家族とのコミュニケーションが不足することで、家庭内の関係性に影響が出ることもあります。
このため、夜勤専従の働き方を選択するときには、家族と十分に話し合い理解を得ることが重要です。
常勤での募集が少ない
夜勤専従看護師の方は、病院や施設での人手不足を解消するために重要な役割を果たします。
しかし、常勤として募集されることは比較的少なく、非常勤やパートでの雇用が一般的です。
というのも、夜勤専従看護師の方は昼間の業務に関与せず、組織全体の運営においての貢献度が低くなりやすいからです。
また、常勤の夜勤専従看護師として働く場合、労働時間や勤務条件が厳しくなることが多く、長期間続けるには身体的にも精神的にも負担が大きくなる可能性があります。
そのため、病院や施設側も夜勤専従看護師の方を常勤で雇用することに消極的な場合が多いのです。
くわえて、夜勤専従の常勤求人が少ないため、希望する働き方ができる職場を見つけるのが難しいこともデメリットです。
夜勤専従として働きたい看護師の方にとって、限られた求人の中から適した職場を選ぶためには、複数の求人サイトや転職エージェントを活用するなど、広範囲にわたって情報を集めることが不可欠です。
患者さまの様子をうまく把握できない
夜勤専従は夜間のシフトに特化しているため、日勤の看護師の方と連携する機会が限られます。
このため、昼間におこなわれた治療やケアの経過、患者さまの変化についての情報が不足する恐れがあります。
患者さまの健康状態や変化を把握するには、日勤の看護師の方との情報共有が不可欠ですが、これがうまくできないと業務に支障をきたすため注意が必要です。
このような情報不足を防ぐためには、しっかりとした引き継ぎが欠かせません。夜勤専従看護師として働く場合は、日勤の看護師の方と連絡を密にして、必要な情報を確実に受け取る体制を整えましょう。
夜勤専従看護師の求人を探す際のポイント
ここでは、夜勤専従看護師の方の求人を探すときのポイントをいくつか紹介します。
- 夜勤の回数と時間
- 夜勤の人数
- 夜勤の業務内容
- 夜勤の仮眠時間
ポイントを押さえて、理想の働き方を実現しましょう。
夜勤の回数と時間
夜勤専従看護師の求人を探す際の重要なポイントは、募集要項やホームページで夜勤の回数と勤務時間を確認することです。
夜勤の回数が多かったり時間が長かったりすると、生活リズムの調整が難しくなるからです。
自分のライフスタイルに合った頻度での夜勤が可能かどうか検討しましょう。
また、夜勤の開始時刻や終了時刻が施設によって異なるため、具体的な時間帯を確認しておくと安心です。たとえば、夜勤が22時から翌朝7時までなど固定された時間帯であるか、もしくはその時間が変動するかによっても働きやすさが変わります。
求人を探す際は、自分の健康と生活リズムに合った条件を選ぶことで、安定して働き続けることができるでしょう。
夜勤の人数
夜勤専従看護師の求人を探す際、夜勤の看護師数を把握することは重要なポイントです。
夜間の人員配置は、患者さまのケアの質や自身の働きやすさに大きく影響するからです。
たとえば、夜間のスタッフ数が少ないと、業務負担が増して緊急対応にスムーズに対応できなかったり、ナースコールに追われたりする可能性があります。
逆に、適切な人数が配置されている場合は、業務しやすい環境が整っているといえます。
夜勤の業務内容
夜勤専従看護師としての仕事は、日勤と異なる点があるため、しっかりと理解しておかなければなりません。
夜勤専従の職場によっては、重症患者や認知症の高齢者などに特化した業務が求められることもあります。
このため、応募前に具体的な業務内容を確認し、自分のスキルや経験に合った職場を選ぶことが大切です。
夜勤の仮眠時間
夜勤専従看護師として勤務する際、仮眠時間は非常に重要な要素です。
仮眠がしっかりと取れるかどうかは、仕事のパフォーマンスや体調に直結するからです。
そのため、求人を探す際には、仮眠時間に関する条件を確認しておきましょう。
また、仮眠場所の環境を確認することも必要です。仮眠を取るための専用の休憩室やベッドが用意されているか、またその設備が整っているかを確認しましょう。快適な仮眠環境が整っていれば、より質の高い休息が可能になります。
さらに、仮眠のタイミングや長さも重要です。大体何時くらいから交代で仮眠をとるのか、何時間くらいとれるのか、合わせて確認しておくと良いです。
仮眠が適切に取れる環境が整った職場を選ぶことで、夜勤専従看護師として仕事をしやすいでしょう。
夜勤専従看護師に関するQ&A
ここでは、夜勤専従看護師に関するQ&Aを紹介します。
夜勤専従のシフトは月に何回まで?
看護師の方の夜勤回数の目安には、1965年に出された「看護職の夜勤は8時間3交代勤務において、2名、月8回以内を基本とする」というルールがあります。実際の病院や施設の夜勤回数については、次の表を参照してください。
3交代制の夜勤回数 | 割合 |
7回未満 | 0.4% |
7回 | 0.4% |
8回 | 53.2% |
9回 | 28.7% |
10回以上 | 17.2% |
平均 | 8.7回 |
参考:2014 年 「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」の普及等に関する実態調査|公益社団法人 日本看護協会
2交代制の夜勤回数 | 割合 |
4回未満 | 0.3% |
4回 | 22.2% |
5回 | 33.0% |
6回 | 22.6% |
7回以上 | 21.9% |
平均 | 5.7回 |
参考:2014 年 「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」の普及等に関する実態調査|公益社団法人 日本看護協会
夜勤専従看護師として働く際には、自分の体調や生活リズムも考慮することが重要です。
長期間にわたって過度な夜勤が続くと、健康への影響が懸念されるため、適切なシフト回数を設定している施設を選ぶことが大切です。
夜勤専従で正社員になれるの?
夜勤専従看護師の方が正社員になることは可能です。
病院や施設によっては、正社員としての雇用形態を用意しており、安定した雇用と福利厚生を提供しています。
しかし、夜勤専従の正社員ポジションは求人が限られていることがあるため、条件や勤務地をしっかりと確認してから応募しましょう。
夜勤専従看護師の向いている人の特徴は?
夜勤専従看護師として成功するためには、夜勤ならではのライフスタイルが求められます。以下に、夜勤専従に向いている人の特徴を紹介します。
- 夜型の生活に適応できる人
- 体力に自信がある人
- ストレスに耐性がある
こういった特徴の人が夜勤専従看護師の方に向いているといえます。
ただし、この特徴に該当しない看護師の方でも夜勤専従看護師になれる可能性があります。自身の体調やライフスタイルと比べて、検討してみましょう。
まとめ
夜勤専従看護師の方は、夜間のシフトに特化して勤務する形態であり、高い年収や日中の自由な時間を得ることができます。
しかし、体調管理の難しさや家族との時間のズレ、常勤の求人が少ないなどのデメリットもあります。
夜勤専従として働くことで得られるメリットとリスクを理解し、自分に合った働き方を見つけることが重要です。健康管理や家族との調整をおこないながら、柔軟に勤務できる環境を整えることが成功のカギといえるでしょう。
参考サイト・文献
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。