専門看護師とは?専門分野14個の種類や認定看護師との違いを解説!

公開日:2024/08/28 更新日:2024/08/28
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「看護師としてもっと専門性を高めて働いてみたい」「看護師としてもっとスキルアップしたい」

このように考えている看護師の方も多いのではないでしょうか。この記事は、看護師としてキャリアアップを目指す方のために「専門看護師」について解説します。記事後半では、専門看護師についてよくある質問にも答えており、疑問が解決できる内容となっています。

専門看護師とは?

専門看護師は、日本看護協会が日本看護系大学協議会(※)と連携し運営している資格です。

高い専門性を持ち、特定の専門分野の知識・技術を深め、現場でのケアはもちろん、ほかの看護師の相談にのったりなどさまざまな役割を担います。まずは、具体的な定義や役割をみていきましょう。

※日本看護系大学協議会:日本の看護教育の質の向上を目的として、看護系の大学が連携・協力する団体のこと。

専門看護師の定義

専門看護師は「質の高いケアを提供するために、特定の専門看護分野の知識・技術・実践能力を有している」と認められた看護師です。

英語では、CNS(Certified Nurse Specialist)と表記します。

看護師の方がさらにスキルアップを目指すときの資格であり、2023年12月時点で3,316人の専門看護師が、それぞれの専門となる14分野で活躍しています。

専門看護師の役割

日本看護協会によると専門看護師の役割は、以下の6つです。

役割 内容
実践 患者さまや家族、集団に対して卓越した看護ケアを提供する
相談 看護者をふくむケアを実践する方の相談に合わせてアドバイスをおこなう
調整 必要なケアがスムーズにおこなわれるための、保健医療福祉にかかわるスタッフの間の調整をおこなう
倫理 患者さま、ご家族などが考えや思いを主張でき、その人らしい権利を守るため倫理的な問題が解決できるように調整をおこなう
教育 ケアの質を向上させるための、看護者への研修会、研究指導および講演会など教育的に活動する
研究 専門知識および技術の向上をはかるために実践の場における研究活動を行う

参考:専門看護師|日本看護教会

たとえば「調整」では、患者さまの状態に合った医療やケアをおこなうために、医師やリハビリテーションのスタッフなどと話し合う場をコーディネートします。

専門看護師の方は、特定の分野での専門知識と技術をもって患者さまへケアを提供します。また、ケアの質が向上するような「相談」「教育」なども専門看護師の大切な役割です。

専門看護師の種類

専門看護師の種類は、社会や患者さまのニーズに応じて14分野に分けられています。それぞれの種類は、以下のとおりです。

領域 役割
がん看護 がん患者さまの身体的または精神的な苦みを理解し、生活の質が向上するようにケアをおこなう
精神看護 精神疾患の患者さまへ質の高いケアを実施する
また、一般病院でも「リエゾン精神看護」の役割を提供する
地域看護 産業保健、学校保健、保健行政、在宅医療の分野で質の高いケアをおこない地域の保健・医療・福祉の発展に貢献する
老人看護 認知症や嚥下障害、誤嚥性肺炎などをはじめとする健康に問題のある高齢者の生活の質を向上させるためにケアでサポートする
母性看護 周産期にある母子および家族への支援、女性のライフサイクルにわたる健康へのアドバイス、質の高いケアをおこなう
小児看護 子どもが健康的に成長・発達していけるように医療スタッフと連携して質の高いケアを提供する
慢性疾患看護 生活習慣病をはじめとした慢性的に心や身体の不調がある方へ慢性疾患の管理、健康増進などに関する質の高いケアを実施する
急性・ 重症患者看護 重症度や緊急性が高い患者さまに集中的なケアを提供し、患者さま本人とそのご家族の支援、医療スタッフ間の調整等を行う
感染症看護 ・施設や地域における個人や集団の感染予防・感染症の発生時の対策をおこない患者さまへ質の高いケアで支援する
家族支援 患者さまをふくむ家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的や精神的、社会的などあらゆる側面から支援する
在宅看護 在宅で療養する利用者さまとご家族が、これまでの生活の場で可能な限り日常生活を送り、在宅での療養を続けられるようにサポートする
遺伝看護 患者さまの遺伝的な課題を明らかにして、意思決定の支援と生活の質向上を目指した療養生活を支える
災害看護 災害のときの限られた資源のなかで心身の健康を守るためにケアする 災害に備えて多職種や行政と連携・協働し、減災・防災システムを構築し、災害看護の発展に貢献する
放射線看護 放射線事故・災害におけるシステムを構築する 放射線診療を受ける対象者とそのご家族へ質の高いケアを提供する

参考:専門看護師|日本看護教会

専門看護師は、上記のすべての分野での知識やスキルを持っておく必要はありません。ある特定の分野の専門家として、後述する条件を満たすことで専門看護師として認められます。

専門看護師になるには?

専門看護師になるため、満たすべき条件は以下3つです。

  • 看護師免許を所有している
  • 看護系大学院修士課程修了者かつ、専門看護師の教育課程基準である総計26単位もしくは38単位を取得している
  • 実務研修が通算5年以上あり、そのうち3年間以上は専門看護分野とする実務研修である

この条件を満たして、例年10月に実施される認定審査に合格する必要があります。

専門看護師になる方法は下記の記事で解説していますので、詳細が気になる看護師の方はご覧ください。

関連記事:専門看護師になるには?資格取得までの流れや必要な臨床経験、認定看護師との違いも解説

専門看護師になるメリット

専門看護師のメリットはどのようなものがあるのでしょうか。以下の3つを解説します。

  • 高い専門性を示すことができる
  • 待遇面が向上する可能性がある
  • 院内外において働き方が広がる

それぞれ、みていきましょう。

高い専門性を示すことができる

専門看護師は、特定の分野において高い知識とスキルを持っていると認められた看護師です。

資格を取得することで信頼性も向上し、院内外を問わずスタッフへの指導や相談役としての役割が期待されています。

実際、2020年度の「専門看護師活動実態調査」では、専門看護師が成果をあげたと思う役割として「教育」「システム構築・課題解決」などがあがっています。以下の調査結果は、上位6位までを抜粋したものです。わかりやすいように10%以上の意見を記載しています。

【最も成果をあげたと感じる役割(自由回答)】

項目割合
教育29.4%
システム構築・課題解決16.6%
家族ケア14.8%
ケアの質の向上14.6%
調整13.5%
相談10.9%

参考:2020 年度 専門看護師活動実態調査|日本看護教会

システム構築では、例えば、院内で認知症の患者さまに対応するチームを立ちあげて、アセスメントにおける相談や研修の開催を仕組み化するといったケースがあります。

専門分野での教育や研究でも活躍の場は広がっており、ケアの質を向上させる役割を担えることは大きなメリットでしょう。

待遇面が向上する可能性がある

専門看護師になると給与をはじめとした待遇が向上する可能性があります。

日本看護協会の調査によると専門看護師の方が働く34.1%の医療機関で資格手当が支給されていることがわかっています。支給のタイミングと平均手当額は以下のとおりです。

【専門看護師・認定看護師資格手当の支給方法(複数回答)】

支給のタイミング割合平均額
毎月支払われる89.5%1万1,279円
賞与時に支払われる1.6%1万4,000円
資格取得時に一時金として0.4%51万7,000円
その他9.7%

参考:2022年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査|日本看護教会

病院ごとに設定されているクリニカルラダーや昇進を決める際の評価に関係する可能性もあります。

待遇については就業規則による取り決めがある病院も多いため、専門看護師の資格を取得する前に上司や人事課の担当者に確認しておきましょう。

院内外において働き方が広がる

専門看護師の役割には、専門分野における教育活動や、知識・技術の向上のための研究活動などが含まれており、院内外での活躍が期待されています。

また、専門看護師の資格は5年ごとの更新制であり、更新するためには研修や研究実績が必要です。実績として認められる活動のなかには、以下のように病院外での活動もふくまれています。

  • ほかの医療機関のスタッフへの指導
  • 看護学生への非常勤講師として講義
  • 一般市民やマスコミなどへの啓発活動やセミナー

このように専門看護師は、看護師やほかの医療スタッフだけではなく一般市民や学生に対してセミナーを通して、病気の知識として予防やケアを伝える活動をしています。

結果として、病院の認知度が高まることで患者さまの獲得にも貢献することができます。専門看護師はさまざまな役割を担っており、幅広い働き方を実現できるでしょう。

専門看護師と認定看護師の違い

認定看護師は、特定の看護分野で高度な知識と技術を有し、専門的なケアを実践する看護師です。専門看護師とは、役割や専門とする分野などが異なります。違いは以下をご覧ください。

専門看護師と誤解されやすい資格として「認定看護師」があります。それぞれにどのような違いがあるのでしょうか。

項目 専門看護師 認定看護師
定義 ・特定の分野において専門的な知識と技術を持つケアの専門家 ・研究、教育など現場以外の活躍も期待される 特定の分野における専門的な知識と技術を持つ看護師
役割 実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究 実践・指導・相談
専門分野の種類 14分野 19分野
受験する資格

・看護師免許を所有
・看護系大学院修士課程修了者で、専門看護師の教育課程基準の所定の単位を取得している
・実務研修が通算5年以上ある(3年間以上は専門看護分野)

・看護師免許を所有
・看護師免許を取得後、通算5年以上の実務研修を受けている(通算3年以上は特定の認定看護分野)
・分野ごとの認定看護師の教育機関における教育を修了している
履修期間 およそ2年 およそ半年
資格手当 毎月1万1,279円 毎月8,530円

参考:認定看護師専門看護師|日本看護教会、「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する|公益社団法人日本看護協会 労働政策部

専門看護師は「実践・指導・相談」をふくむ6つの役割を担っており、ときには認定看護師への教育にもかかわることもあります。

なお、それぞれの給与の違いは以下の記事で解説していますので、気になる方はそちらをご覧ください。

関連記事:専門看護師の給料は約549万円?資格手当や認定看護師との給料の違いを解説

専門看護師に関するQ&A

ここからは専門看護師についてよくある疑問にお答えします。

  • 専門学校卒でも専門看護師になれるの?
  • 2024年の専門看護師の人数は?
  • 専門看護師は更新しなければならないの?
  • 専門看護師の学校ってどこにあるの?
  • 専門看護師が廃止されるって本当?

それぞれ、みていきましょう。

専門学校卒でも専門看護師になれるの?

専門学校卒でも以下の条件を満たして、認定審査に合格すれば専門看護師になれます。

  • 看護師免許を所有している
  • 看護系大学院修士課程修了者で、専門看護師の教育課程基準の所定の単位を取得している
  • 実務研修が通算5年以上あり、そのうち3年間以上は専門看護分野の実務研修である

専門看護師になるには、大学院で所定の単位取得が必要です。

大学院へ入学するには大学を卒業して「学士」の学位を取得するか、修業年限が4年以上の文部科学省が認めた専門学校を卒業する必要があります。

専門学校卒から、専門看護師を取得するには道のりは長いため、長期的な計画を立てて臨みましょう。

関連記事:専門看護師になるには?資格取得までの流れや必要な臨床経験、認定看護師との違いも解説

2024年の専門看護師の人数は?

日本看護協会によると、2023年12月時点で専門看護師の方の人数は「3,316人」となっています。専門分野ごとの人数は以下をご覧ください。

分野名人数(2023年12月時点)
がん看護1,090人
精神看護436人
地域看護32人
老人看護268人
母性看護94人
小児看護314人
慢性疾患看護276人
急性・重症患者看護405人
感染症看護110人
家族支援94人
在宅看護127人
遺伝看護24人
災害看護40人
放射線看護6人

参考:データで見る専門看護師|日本看護協会

最も多いのは、1996年から認定がはじまった「がん看護」で、1,090人の方が活躍しています。「放射線看護」は2022年にはじまった分野であり、2023年12月時点で6人です。

専門看護師は更新しなければならないの?

専門看護師は、認定を受けてから5年ごとに更新審査を受けなければなりません。更新審査を受けるための条件は以下のとおりです。

  1. 日本の看護師の免許を有する
  2. 申請時に、専門看護師である
  3. 申請時に、過去5年間に日本看護協会の専門看護師細則に定める看護実績、研究業績および研修業績などがある

看護実績や、研究業績にも取り決めがあり「2,000時間以上の看護実績」「100点以上の研修・研究実績」の提出が義務づけられています。

なお、更新審査を不合格になったり認定更新審査を申請していなかったりする場合は、12月末日で資格が失効となります。再び専門看護師として活動するためには「再認定審査」の合格が必要となるので注意しましょう。

専門看護師の学校ってどこにあるの?

専門看護師の教育機関は、全国に109か所あります。

なお、教育機関ごとに単位取得できる専門分野は異なります。専門分野によっては教育機関自体が少ないケースもあるため、学びたい領域が決まっている方は事前に確認しておきましょう。

詳細は、日本看護協会の「2024年度専門看護師教育機関・課程一覧」をご覧ください。

専門看護師が廃止されるって本当?

「専門看護師が廃止される」という公式な情報はありません。ただし、社会や医療現場などのニーズに応じて専門看護師の役割や教育課程は日々、見直されています。

たとえば、2022年には新たな専門分野として「放射線看護」がはじまっています。教育課程についても、資格取得に必要な単位数が26単位から38単位に引きあげられました。

このように専門看護師の資格は、アップデートされており高度なケアやチーム医療において重要な役割をになうことが期待されています。

まとめ

本記事は、専門看護師について「専門分野の種類」「専門看護師になるメリット」などを解説しました。

専門看護師は、患者さまへ高度な知識や技術によるケアの提供をはじめ、専門分野での教育、研究などの役割を担う看護師です。

看護師の上位資格として位置付けられており、キャリアアップのために取得を検討する方も多いでしょう。
実際の取得方法は「専門看護師になるには?資格取得までの流れや必要な臨床経験、認定看護師との違いも解説」で解説しています。取得検討している方はそちらもぜひご覧ください。

参考サイト・文献

専門看護師|日本看護協会 

2020 年度 専門看護師活動実態調査|日本看護教会

長谷川美智子さん|日本看護協会 

2022年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査|日本看護教会  

認定看護師|日本看護協会

データで見る専門看護師|日本看護協会

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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