男性看護師の転職事情とは?ポイントやおすすめの勤務先
近年、男性看護師の割合が徐々にですが増加傾向にあります。とはいえまだまだ少数派。男性看護師が就職や転職を考える際には、新しい職場でうまくやっていけるかどうか、不安に思うこともあるでしょう。
この記事では、男性看護師の強みや悩み、転職後に仕事を長く続けるためのポイントを解説します。おすすめの部署も紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
男性看護師は増えている?
男性看護師の数は年々増加傾向にあります。
次の表は、厚生労働省による「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)」より、男性の就業看護師の人数と看護師全体における割合を年次推移をまとめたものです。
<男性看護師の人数と割合の推移>
人数 | 看護師全体における割合 | |
2010年 | 53,748人 | 5.60% |
2012年 | 63,321人 | 6.20% |
2014年 | 73,968人 | 6.80% |
2016年 | 84,193人 | 7.30% |
2018年 | 95,155人 | 7.80% |
2020年 | 104,365人 | 8.10% |
出典:厚生労働省 令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
表を見ると、男性看護師の人数と割合、ともに徐々に上昇していることがわかります。男性看護師の増加は、医療現場の多様性につながっているといえるでしょう。一方、2020年時点で男性看護師の割合は8.1%と、まだまだ少数派であるという見方もできます。
男性看護師の平均年収
男性看護師の平均年収についても見ていきましょう。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」における男女別看護師の平均年収、平均月収、平均年間賞与額は以下のとおりです。
平均年収 | 平均月収 | 平均年間賞与額 | |
看護師全体 | 約508万円 | 約35万円 | 約86万円 |
男性看護師 | 約526万円 | 約37万円 | 約88万円 |
女性看護師 | 約506万円 | 約35万円 | 約85万円 |
(平均年収は月収×12ヶ月+年間賞与にて計算)
男性看護師の平均年収は、女性看護師よりも20万円ほど上回っていることがわかります。この差には、女性看護師のライフイベントが関係すると考えられます。子育て中は夜勤を避けたり、時短勤務をしたりとそれまでよりも勤務時間を短くして働くことを選ぶ女性も多いことでしょう。その期間は必然的に収入も減少します。
関連記事:男性看護師の年収は高い?年収アップのコツやおすすめの職場5選を解説
転職における男性看護師の強み
看護師は女性の割合が多い職種ですが、男性看護師を求める職場も多数あります。男性看護師が転職をする際には、男性看護師ならではの強みをアピールするとよいでしょう。
ここからは、男性看護師の強みについて紹介します。
- 力仕事ができる
- 男性患者さまに頼られやすい
- 職場に多様性が生まれる
- 他の男性看護師が入って来やすくなる
それぞれ見ていきましょう。
力仕事ができる
看護師の仕事では、患者さまの移乗や移動の介助など、力仕事が必要な場面が多くあります。とくに体格の大きな患者さまや自身で動けない患者さまの移動の際には、看護師複数名で持ち上げたり支えたりする必要も出てきます。
男性看護師が負担の大きな力仕事を引き受けることで、チーム内で頼られる存在として活躍できるでしょう。
男性患者さまに頼られやすい
女性特有の悩みは女性同士で話しやすいように、男性患者さまは同性である男性看護師の方が「悩みを相談しやすい」と感じることもあります。身近に相談しやすい男性看護師がいることは、患者さまの緊張感を軽減させたり、安心感を与えることにつながるでしょう。
また、男性看護師が患者さまに寄り添うことにより、医療への抵抗感が軽減されるケースもあります。男性看護師の存在が、男性患者さまの精神面での支えとなり、よりよい医療につながることもあるのです。
職場に多様性が生まれる
女性が多い環境の中に男性看護師が入ることで、職場全体の雰囲気が変わることがあります。男性の立場からの意見を取り入れることで、チーム全体の視点や考え方が広がるためです。
男性看護師が一緒に働くことで、他にも次のようなメリットが考えられます。
- 新しいアイデアが出る
- コミュニケーションが活性化する
- 職場の雰囲気がよくなる
男性看護師の活躍により、職場全体がより活気のある、多様な視点を得られる場となることでしょう。
他の男性看護師が入って来やすくなる
男性看護師がいると、他の男性看護師も職場に入って来やすくなります。
たとえば転職先を探している男性看護師が興味を持ったとしても、同性のスタッフが一人もいない環境では「ここで続けられるのか」と不安に感じてしまいます。入職を諦めてしまうこともあるかもしれません。
一方、すでに活躍している男性看護師がいるとわかれば、入職後のイメージが湧きやすく、その職場で働く意欲も増すことでしょう。
男性看護師の悩みや不安
ここまで、男性看護師の強みについて紹介しましたが、男性ならではの悩みもあります。男性看護師が働くうえで、次のような悩みや不安を抱えることが多いようです。
- 職場に馴染みにくい
- 男性用の設備が整っていない
- 女性患者さまにケアを拒否されることがある
それぞれ詳しく見てみましょう。
職場に馴染みにくい
女性看護師ばかりの職場では、次のように、馴染みにくさや気まずさを感じてしまう男性看護師もいます。
- 女性同士の話に入りにくい
- 休憩室で居心地の悪さを感じる など
このような状況が続けば、人間関係にストレスを感じたり、疲れてしまったりすることもあるかもしれません。気まずさからのコミュニケーション不足は、思わぬトラブルにつながる危険性も考えられます。
男性用の設備が整っていない
規模の小さな医療機関では、男性看護師用の設備が十分に整っていないケースも存在します。男性が使用できる更衣室やトイレが整備されていなかったり、仮眠室が確保されていなかったりする場合もあるでしょう。
男性看護師用の設備の有無は、働きやすさに直結する重要なポイントです。設備面での不便さは、仕事へのストレスにつながります。
女性の患者さまにケアを拒否されることがある
女性の患者さまは、男性看護師にケアをしてもらうことに抵抗を感じる場合があります。とくに入浴介助や排泄介助、着替えの手伝いなどの羞恥心を伴うケアでは男性看護師に拒否されるケースも多いでしょう。
男性看護師の言動が原因でなかったとしても、患者さまに断られることが続くと、自信をなくしてしまうこともあります。男性の介入に抵抗を感じる患者さまの担当を変更するなど、チーム内でうまく相談・調整しながら、協力して仕事を進めていくことが大切です。
男性看護師が転職後も長く仕事を続けていくためのポイント
ここからは、男性看護師が転職後も長く仕事を続けていくためのポイントについてみていきましょう。
- 身だしなみに気をつける
- 中立を意識する
- 性別の差を気にしすぎない
それぞれ解説します。
身だしなみに気をつける
身だしなみは、仕事をするうえで大切です。とくに、医療機関では衛生面での配慮が重要となるため、髪型や服装を常にチェックするよう心がけましょう。
- 清潔感のある髪型にする
- 髭は毎日剃る
- 爪は短く清潔に保つ
上記はどれも当たり前のことではありますが、しっかりと意識することで、周囲に清潔感のある印象を与えられます。
中立を意識する
看護の現場では、多様な性格の人々がチームとして働いています。ときには派閥やグループが形成されたり、職場の雰囲気が悪化したりすることもあるでしょう。その場合には、特定のグループや集団の肩を持つことをせず、中立の立場を意識しましょう。同僚全体と平等に接していれば、人間関係のトラブルに巻き込まれることが少なくなります。
ほどよい距離感を保ちながら仕事をするよう、心がけてみてください。
性別の差を気にしすぎない
依頼される業務の内容や、患者さまの反応に性別の差を感じたとしても、気にしすぎないようにしましょう。同性同士だからこそ、頼みたいことや、相談したいこともあるのです。
性別の差から生まれるコミュニケーションの違いを認めたうえで、チーム全体で協力しながら前向きに仕事に取り組みましょう。
男性看護師が転職しやすい勤務先
男性看護師の需要が高く、活躍しやすい勤務先を紹介します。転職の参考にしてみてください。
訪問看護
訪問看護は、男性看護師のニーズが高い職場のひとつです。「男性看護師に訪問をお願いしたい」と考える患者さまや家族が一定数いるためです。訪問先では、動けない患者さまの介助やケアなど、体力を必要とする場面もあるため、男性の訪問看護師がいると重宝されるケースもあります。
精神科
精神科では、患者さまが突発的に暴言や暴力をふるうことがあります。これは疾患の症状のひとつであり、患者さま自身もコントロールが難しい状態です。力の強い患者さまが興奮した場合、女性看護師だけでは対応が困難な場面もあります。そのような状況下では、体力・筋力のある男性看護師の存在が重要となります。
整形外科
疾患や怪我により、移動に介助が必要な患者さまが多い整形外科も、男性看護師のニーズが高い診療科です。
体位変換や車イスへの移乗の際には、筋力のある男性看護師が活躍することでしょう。
また、病院にもよりますが、比較的若年層の男性患者さまが多いことも整形外科の特徴です。若い男性患者さまの中には、「同性に介助してもらいたい」という方もいるはずです。
救急外来・手術室
救急外来は重篤な患者さまへの対応を求められるため、体力的にも精神的にも負担の大きい部署です。また、手術室では10時間以上に及ぶ手術が行われることもあり、立ったまま業務に集中し続ける体力が必要です。これらの部署では、体力のある男性看護師が重宝されます。
また、救急外来や手術室では、チームワークも非常に重要です。男性看護師の存在が、チーム全体の士気を高める効果も期待できるでしょう。
まとめ
この記事では、男性看護師の転職事情について、詳しくみてきました。
男性看護師は増加傾向にあり、医療現場でもニーズが高まっています。とくに下記の職場では、男性看護師が求められる傾向にあります。
- 訪問看護
- 精神科
- 整形外科
- 救急外来・手術室
転職の際は、自分の強みをいかせるような環境を選ぶことが最も大切です。この記事の内容が、あなたにあった働き方を見つけるためのお役に立てれば幸いです。
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