看護師のデメリットを働く場所別に紹介!看護師にしかない5つの魅力も
魅力的な仕事である看護師ですが、なかには「人間関係がきつそう」「大変な仕事」といったネガティブな印象をもつ方もいるのではないでしょうか。看護師の仕事に限らず、転職をする際には、転職先の良い側面とそうでない側面の両方を理解した上で新しい職場に就くことによって、転職後のギャップを防ぐことができます。
そのため今回は「看護師として働くデメリット」にフォーカスして、勤務先ごとにご紹介します。
また、看護師にしかない5つの魅力もご紹介しますので、働きはじめたときに「こんなはずでは…」と後悔しないように、ぜひ最後までご覧ください。
看護師のデメリット【働く場所別】
看護師の働き方は勤務先ごとに大きく異なります。今回は働く場所別に、看護師のデメリットを解説します。
- 美容クリニック
- 訪問診療
- 老健(老人保健施設)
- 検診センター
- 有料老人ホーム
- クリニック
- 公務員看護師
- 大学病院
それぞれ、みていきましょう。
美容クリニックで働く看護師のデメリット
美容クリニックとは、「美容医療」に特化した医療機関です。看護師は一般的なクリニックと同様に「医師の診療の補助」「薬剤の管理」などおこないます。
「レーザー照射」「美容注射」などをおこなう点は、一般的な病院やクリニックとは異なる点です。
看護師が美容クリニックで働くデメリットは、以下のとおりです。
- 売り上げ目標が決められている場合がある
- 看護師の経歴にカウントされない可能性がある
- 病棟業務とのギャップがある
クリニックによっては、売り上げ目標を課せられるケースがあります。「クリニック全体での目標」「個人ノルマ」のように、クリニックにより内容は異なります。看護師の営業努力が求められるケースがあるため注意が必要です。
また、病院やクリニックへ転職するときに、美容クリニックでの勤務した期間は看護師歴としてカウントされないケースがあります。一般の病院とは、美容クリニックで取りあつかう機器や症例が違うためです。
これらの違いから、病院での勤務経験がある方は、仕事内容にギャップを感じる可能性もあります。
一方で「新しい仕事を楽しみたい」「自分の力を数字で評価されたい」といった方には向いている仕事だといえるでしょう。
訪問診療で働く看護師のデメリット
訪問診療とは、通院できない患者のもとに医師が訪れて診療する医療サービスです。看護師は、医師に付き添い「バイタル測定」「採血・注射」をはじめとした診療の補助をおこないます。
訪問診療で働く看護師のデメリットは以下のとおりです。
- 患者さまにかかわるケア以外の業務も多い
- 病院・クリニックによってはオンコール対応がある
訪問診療にかかわる看護師の業務は、医師のスケジュール管理や電話対応、物品発注など多岐にわたります。
診療所によっては、オンコールがあります。オンコールとは、訪問予定外のご家族や利用者さまからの緊急の電話にそなえて看護師が待機することです。基本的に「オンコール手当」が出ますが、なかには負担に感じる方もいるでしょう。
一方で、在宅医療のニーズは徐々に高まっており、看護師としてこうした仕事にかかわるのもキャリア形成のうえで大切だといえるでしょう。
老健で働く看護師のデメリット
老健(介護老人保健施設)は、介護を必要とする利用者さまが日常生活の支援やリハビリを受けながら、在宅に帰ることを目指す施設です。
看護師は、医療的な処置や健康管理、身のまわりのケアなど、さまざまな業務をおこないます。老健で働くデメリットは以下のとおりです。
- 医療行為が少ない
- 看護師ひとりの業務範囲がひろい
老健での医療行為は、病院ほど多くありません。以下は日本看護協会の調査による老健での「医療ニーズがある利用者の受け入れ実績」についての調査です。
受け入れたことがある | 受け入れたことがない | 回答なし | |
褥瘡処置 | 95.4% | 2.3% | 2.3% |
尿道留置 カテーテル | 93.1% | 5.0% | 1.9% |
経管栄養法 (胃ろうを含む) | 89.2% | 9.0% | 1.7% |
気管カニューレ | 21.9% | 74.6% | 3.5% |
中心静脈栄養法(IVH) | 4.8% | 91.5% | 3.7% |
人工呼吸療法 | 3.7% | 92.7% | 3.7% |
参考:特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査|日本看護協会
多くの老健で褥瘡処置や経管栄養法が必要な方の受け入れ実績があります。一方で、より医療依存度の高い傾向にある「中心静脈栄養法(IVH)」や「人工呼吸療法」が必要な方の受け入れは少ない傾向です。
また、日本看護協会の施設の職員体制の調査によると、老健での看護師の配置人数(常勤者・常勤換算)は「5.1人」、准看護師は「4.25人」だとしています。
入居者の人数によりますが、こうした看護師の数から、ひとりあたりの業務範囲はひろいと考えられます。
一方で、病院とは別の視点で入居者へアプローチができるのは老健の魅力だといえるでしょう。
検診センターで働く看護師のデメリット
検診センターとは、健康維持のためにさまざまな検査をおこなう施設です。看護師は、「身長・体重測定」「視力・聴力検査」「採血」など検査にかかわる業務をおこないます。
検診センターで働くデメリットは以下です。
- 給与が安くなる可能性がある
- 看護技術が身につかない可能性がある
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」による看護師の平均月収は「35万2,100円」、平均年収は「508万1,700円」です。
看護師の給与は、夜勤の占める割合も大きいといわれています。そのため、夜勤のない検診センターでは平均給与額を下回る可能性があります。
日本看護協会の調査による夜勤の平均額は以下です。
一回あたりの手当額 | |
2交代 | 1万1,368円 |
3交代(準夜勤) | 4,234円 |
3交代(深夜勤) | 5,199円 |
また、検診センターの業務は検査に関するものが多く、一般的な病棟とは異なります。
さまざまな看護手技や症例に触れづらく、ルーチンワークが多いため看護のスキルや知識に結びつかない可能性があります。
一方で、ルーチンワークが好き、採血が得意という方には向いている仕事だといえるでしょう。
有料老人ホームで働く看護師のデメリット
有料老人ホームは入浴・排泄などの介護とあわせて、健康管理や家事などを入居者へ提供する施設です。有料老人ホームで働くデメリットは以下です。
- 医療行為が少ない
- 看護師ひとりの責任が重たい
- 介護業務も任される
老健とおなじく、医療が必要なケースはほとんどありません。また、有料老人ホームの看護師の配置は以下となっています。入居者30人に対して看護師の配置数がひとりになる可能性もあり、看護師ひとりあたりの責任が重いと感じる方もいます。
有料老人ホームの看護師・介護士の配置 要支援者:看護・介護職員=10:1 要介護者:看護・介護職員=3:1 ※ただし看護職員は要介護者などが30人までは1人、30人をこえる場合は、50人ごとに1人 |
医療的な処置は少ないとはいえ「受診の付き添い」「急変時の対応」など看護師の役割は広く、負担に感じるかもしれません。また、排泄・食事のほかに、洗濯物や掃除といった家事業務も看護スタッフがおこなうケースもあるでしょう。
「入居者とゆっくりかかわりたい」「施設での生活を支援したい」など、病院とは違う方向性で高齢者とかかわりたい方にはおすすめです。
クリニックで働く看護師のデメリット
看護師の就業先として、病院についで多いのが「診療所」「介護施設」です。
クリニックにもよりますが「診療の補助」や「検査の補助」から「事務対応」までさまざまな業務があるのが特徴です。
デメリットは以下のとおりです。
- 看護技術を活かす場が少ない
- 給与が少ないケースがある
- 人間関係に悩む可能性がある
クリニックに来る患者さまは軽症の方が多く、提供する看護技術は限られている傾向です。また、看護師の給与は夜勤の有無により大きく変動します。夜勤のないクリニックは、一般的な看護師の平均給与を下回ることもあるでしょう。
また、病院に比べてクリニックは小規模のため「この人はイヤだな」「苦手な人だな」と感じる相手がいても逃げ場がなく、人間関係に悩む可能性があります。
とはいえ、デメリットばかりではなく「給与が高い」「人間関係がよく働きやすい」といった職場もあります。
公務員として働く看護師のデメリット
公務員として働く看護師とは、国や地方自治体などの公的な機関で働く看護師です。たとえば「国公立の大学病院」「国立・公立病院機構の病院」などの看護師が公務員・準公務員となります。
公務員になるには「公務員試験」に合格する必要がありますが、病院によっては就業することで公務員とおなじあつかいとなる「準公務員(みなし公務員)」に該当するケースもあります。
公務員看護師のデメリットは以下です。
- 副業禁止規定が設けられている
- 雇用保険に加入できない
公務員は「国家公務員法」と「地方公務員法」などにより副業が規制されているケースがあります。
また、公務員は雇用保険法の適用外となります。そのため、雇用保険には加入できず、失業保険も受け取れません。
一方で、「収入の安定性」「福利厚生の充実」などから、公務員看護師になることを希望する方も少なくありません。
大学病院で働く看護師のデメリット
大学病院は「診療」のほかに「研究」「教育・研修」の役割をもつ医療機関です。診療科が細かく分けられており、より専門性の高い知識や技術をみにつけられます。
大学病院のデメリットは以下のとおりです。
- 医療依存度の高い患者さまが多い
- 看護技術が身につけにくいケースがある
大学病院は特定機能病院(※)とされるケースもあり、より高度な医療の提供が期待されています。そのため、重症度の高い患者さまも多く、看護師も日々の勉強や自己研鑽は欠かせません。
「研修や勉強会は苦手」「できるだけ軽症の患者の支援がしたい」といった方には向いていない可能性があります。
また、医師や研修医が採血やルート確保をおこなうことが多いため、看護師はそのような機会が少なく、看護技術が学びにくいケースもあります。
しかし、「最先端の医療を学びたい」「研究に力を入れたい」といった方には、向いているといえるでしょう。
※特定機能病院:より高度な医療を提供する機関として一定の条件を満たして厚生労働省にみとめられた病院
看護師にしかない5つの魅力
ここからは看護師にしかない魅力を5つご紹介します。それぞれ、みていきましょう。
患者さまが元気になる姿を見届けられる
病院では治療により元気に退院する患者さまも多くいます。看護師にとって小さな変化でも患者さまが回復している姿をみるのはうれしいものです。
- 治療が終わり退院の目処がついた
- 歩いてトイレにいけるようになった
- 人工呼吸器を外して呼吸できるようになった
ほかの医療職に比べて、看護師は患者さまと身近でかかわる存在といえます。患者さまを支えて元気になる姿を見届けられるのは、看護師の大きな魅力だといえるでしょう。
患者さまから「ありがとう」と感謝される
患者さまから感謝される機会が多いのも看護師の魅力です。
患者さまのなかには「先生にはいえないが看護師には自分の意見がいいやすい」といった方もいます。患者さまからすれば、身近で寄り添ってくれる看護師を「頼りになる」と感じる方もいるでしょう。
そうして真剣にかかわった方から感謝の言葉を伝えられたときのよろこびは、ほかには変えがたいといえます。
社会貢献できる仕事と言われる
ほかの職種と比べて、看護師は社会的な認知度の高い仕事です。医療機関で患者さまの看護にかかわることで社会貢献できる仕事といわれる機会も多いでしょう。
看護師のなかには災害時に「DMAT(※)」として災害現場での看護にかかわったり、大学でさまざまな研究をおこなったりする方もいます。
こうした活動や社会的な認知度から社会貢献のイメージが強く、「人の役に立ちたい」と看護師をこころざす方も多いのではないでしょうか。
※DMAT:災害時に派遣される特別な訓練を受けた医療専門チーム
やりがいを感じる場面がある
看護師は大変な職業ですが、そのなかでも多くの方がやりがいを感じています。
医療労働連の調査によると、「看護のやりがい」について、「すこし感じる」「強く感じる」と回答した割合は合計して70%をこえています。
たとえば、前述した「患者に感謝される」「患者が元気になる姿を見届けられる」といった意見のほか、以下の場面が考えられます。
- 厳しい医師や上司に認められた
- 自分の成長を感じられた
医療の現場は命にかかわることもあり、医師をはじめ真剣に仕事に取り組む方も多くいます。そういった方に仕事ぶりを評価されるのは、ほかの仕事に変えがたいよろこびです。
また、看護師は専門的な知識や技術が必要な仕事であり、職員が成長を感じやすいように独自の評価制度を取り入れている病院もあります。こうした評価により自己成長を感じることは、やりがいとなるでしょう。
転職に困りにくい
看護師免許があれば、転職に困りにくいといえます。厚生労働省によると、令和3年時点で全国の病院やクリニックなどの医療施設は180,396施設だとしています。
また、看護師は「老人ホーム」「保育所」など医療施設以外のさまざまな場所でニーズがある仕事です。
実際に、厚生労働省の「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によると2022年の看護師・准看護師の有効求人倍率は2.2倍とされています。求職者ひとりあたり、2件以上の就業先が見込まれる状況となっています。
看護師に関するよくある質問
最後に看護師によくある質問についてみていきましょう。
Q1:看護師の大変なところは?
「医療労働連」による看護師への調査では、65.4%が「今の仕事に強い不満、悩み、ストレスがある」と回答しています。
内容は以下のとおりです。
仕事の不満やストレスの要因 | 回答した割合(複数回答可) |
仕事の量の問題 | 48.7% |
仕事の質の問題 | 31.8% |
職場の人間関係 | 22.2% |
夜勤 | 16.2% |
仕事への適正の問題 | 11.5% |
参考:2022年 看護職員の労働実態調査「報告書」|医療労働連
看護師の仕事内容は幅広く、医療的な処置や患者さまの身のまわりのケアのほか、家族や患者さまからのクレーム対応や、医師と患者さまをつなぐ役割も担います。
命にかかわる仕事もあり、ストレスを抱えるケースもすくなくありません。そのため「看護師が自分に向いているのか」と悩んでしまう方がいることも考えられます。
Q2:看護師が辞める理由は何ですか?
看護師の退職にはライフステージがかかわっています。以下は厚生労働省「護師等(看護職員)の確保を巡る状況」に記載されている看護師の退職理由です。
退職した理由 | 回答した割合(複数回答可) |
結婚 | 11.6% |
子育て | 10.5% |
転居 | 9.1% |
出産・子育て | 8.8% |
自分の健康(主に身体的理由) | 7.4% |
人間関係や、精神的なつらさなどが関係しているようですが、看護師全体でみるとこうしたライフステージが関与していることが多いとされています。
就職も容易であることから、こうした理由により辞めやすいと考えられます。
まとめ
今回は、看護師として働きたい方へ働く場所ごとのデメリットをご紹介しました。
それぞれの場所でデメリットがあり、なかには看護師の仕事を負担に感じている方もいるでしょう。
一方で「社会貢献につながる仕事」「ありがとうといわれる仕事」と、やりがいを感じて前向きに働いている方も多いです。
職場によっても向き・不向きがあるためこの記事を参考に客観的にメリットやデメリットを判断して、自分にあった職場を探しましょう。
参考URL・文献
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査 報告書|日本看護協会
「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
http://irouren.or.jp/research/a45cbfdb78bdf6ad5d567906ca9cdc1b715e72b4.pdf
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