クリティカルケア認定看護師になるには?仕事内容も解説
クリティカルケア分野の認定看護師は、救急看護と集中ケアの看護分野において、水準の高い看護技術と知識を有する者として、日本看護協会の認定を受けた看護師です。
2019年2月、認定看護師規程の改正により、救急看護と集中ケアの2つの分野が統合され、クリティカルケアと名称が変更されました。
急性期領域でのキャリア展開として、気になる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、クリティカルケア看護の概要や認定看護師の仕事内容、クリティカルケア認定看護師になるための条件を解説します。
クリティカルケア分野以外の認定看護師についてもお伝えするので、参考になれば幸いです。
クリティカルケア看護とは
クリティカルケア看護とは、命に関わる深刻な状態の患者さまやご家族などに対し、速やかに恒常性の回復・維持を図り、QOLや自立の向上を目指す看護のことです。
対象範囲は、救命救急・集中治療室から一般病棟、外来、在宅・地域まで多岐に渡ります。
病院搬送前や急性増悪を繰り返す重度の慢性疾患を抱える患者さまや、そのご家族もケアの対象です。
そのため、クリティカルケア看護では、さまざまな対象に適切なケアを提供する豊富な知識と高度な技術が求められます。
クリティカルケア認定看護師の仕事内容
クリティカルケア認定看護師の役割は、軽症・重症を問わず、急性期にある患者さまに対し、初期対応や重症化の回避・早期回復の支援を行うことです。
また、看護実践を通じてほかの看護職の指導やコンサルテーションも行います。
参照元:日本看護協会|認定看護師 役割、認定看護師教育基準 概要
これらの役割を基に、クリティカルケア認定看護師は以下の仕事を担当します。
異常の早期発見
クリティカルケア認定看護師は、患者さまの重症化を回避する能力が期待されています。
そのため、患者さまの細かな変化に気づき、適切に対応しなければなりません。
急性期にある患者さまを対象とするため、正確な知識と判断力でスピーディに関わることが重要です。
患者さまの生命維持
クリティカルケア認定看護師は、生命の危機状態にある患者さまの重症化を防ぎ、早期に回復するための支援を行います。
看護師は、患者さまが適切な治療を受けて、可能な限り快適な療養生活を送れるよう、知識と技術を駆使してサポートします。
生理機能の回復を目指した全身管理
クリティカルケア認定看護師は、急性かつ重篤な状態にある患者さまの生理機能の回復を目指し、きめ細かな全身管理をしなければなりません。
迅速な生理機能の回復が、患者さまの今後の人生にも大きく影響するため、認定看護師は医師や薬剤師・理学療法士などとチーム連携を図り、患者さまの早期回復を目指して対応します。
痛みの緩和
クリティカルケア認定看護師は、身体的・精神的な苦痛に対する緩和ケアも行います。
患者さまやご家族は、入院治療で以下のような苦痛がともなうことも多いでしょう。
- 疼痛や呼吸困難感、不眠など身体的苦痛
- 不安やいらだちなどの心理的苦痛
- 経済的基盤の喪失や家族の問題など社会的苦痛
- 無力感や価値観の変化などスピリチュアルな苦痛
クリティカルケア認定看護師は、こうした患者さまの苦痛を総合的にとらえ、対応します。
セルフケア能力の回復支援
患者さまが自分の身体を適切に理解し、必要な行動をとれるようサポートすることも、クリティカルケア認定看護師の仕事のひとつです。
例えば、呼吸器症状に注意が必要な患者さまに対し、酸素流量とSpO2値を確認しながらトイレへ行くようにアドバイスすることも、セルフケア能力の回復支援にあたります。
クリティカルケア認定看護師の関わりでは、患者さまの自立・自律を支持する姿勢を常にもち、意思をできる限り反映することが大切です。
ご家族へのサポート
クリティカルケア認定看護師は、患者さまへの適切な対応に加え、ご家族のサポートも行います。
急変が起こりうる現場ではご家族の精神的な負担は大きいため、マイナスな感情を溜め込まないよう、認定看護師は寄り添い共感します。
患者さまやご家族の権利擁護者・代弁者
クリティカルケアの分野では、自分から意見を発言できない患者さまやご家族が多いため、クリティカルケア認定看護師は権利擁護者・代弁者となるよう働きかけます。
権利擁護者・代弁者とは、患者さまの権利を擁護し、患者さまのもつ価値や信念に最も近い決定ができるよう援助する人のことです。
患者さまやご家族が望む最適な治療を受けられるよう、クリティカルケア認定看護師は想いを汲んで医師に伝え、多職種、と連携していきます。
クリティカルケア認定看護師になるには
クリティカルケア認定看護師になるための流れは、以下の通りです。
- 受験資格を満たす
- 認定看護師教育機関に入学する
- 教育基準カリキュラムを修了する
- 認定審査に合格する
- 認定看護師名簿に登録する
詳しく解説します。
1. 受験資格を満たす
クリティカルケア認定看護師になるには、以下の受験資格を満たさなければなりません。
- 日本の看護師免許を取得
- 実務研修が通算5年以上
- うち通算 3 年以上は手術室・NICU を除くクリティカルケア部門
- 疾病・外傷・手術など高度な侵襲に対する看護実績5 例以上
(生命維持装置を装着した患者さまの看護を1例以上含む)
上記に加え、クリティカルケア部門で勤務していること、救急蘇生(二次救命処置等)に関する知識・技術をもつことが推奨されます。
2. 認定看護師教育機関に入学する
受験資格を満たしたあとは、認定看護師教育機関に入学します。
クリティカルケア認定看護師になるための教育機関は、2023年度3月時点で東京都・大阪府の3校です。
参照元:日本看護協会|分野別教育機関一覧
3. 教育基準カリキュラムを修了する
教育機関に入学後、教育基準カリキュラムを修了する必要があります。
認定看護師になる教育課程にはA・B課程の2つありますが、クリティカルケア認定看護師は特定行為研修が組み込まれたB課程のみ選択できます。
クリティカルケア認定看護師 B課程 | カリキュラム 時間数 |
共通科目 | 380時間 |
専門科目の認定看護分野専門科目 | 180時間 |
特定行為研修区分別科目 | 99時間 |
演習・実習 | 165時間 |
合計 | 824時間 |
特定行為とは、研修修了により看護師が手順書に則り行えるようになる、診療の補助38行為です。
クリティカルケア認定看護師は、以下の特定行為研修を受けます。
- 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
- 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
- 循環動態に係る薬剤投与関連
参照元:日本看護協会|認定看護師 認定看護分野、特定看護分野の実務研修内容の基準p1、認定看護師教育基準 概要、カリキュラムp2
4. 認定審査に合格する
カリキュラム修了後は、認定審査に合格しなければなりません。
認定審査は年1回のみ行われており、Web申請や審査料の振込などの手続きをします。
試験内容は、マークシート方式・四肢択一100分です。
5. 認定看護師名簿に登録する
認定審査に合格した人は、認定看護師名簿への登録を行います。
B課程を修了した認定看護師は、特定看護師として名乗ることも可能です。
なお、更新は5年ごとに必要です。
クリティカルケア看護以外の主な認定看護師
クリティカルケア看護以外にも、次のようにさまざまな認定看護師が活躍しています。
感染管理認定看護師
感染管理認定看護師は、疫学・微生物学・感染症学・消毒と滅菌・関係法規などに関する専門的知識を基に活動します。
感染管理に関わる活動実績を通算 3年以上もち、自身が実施した感染予防・管理の改善実績を1例以上などの条件を達成したあと、以下のカリキュラムに取り組みます。
特定行為区分 | ・栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 ・感染に係る薬剤投与関連 |
カリキュラム | 801時間 |
感染管理認定看護師は、施設の状況に合った効果的な感染管理プログラムを構築し、病院に関わるすべての人を守る役割をもちます。
がん放射線療法看護認定看護師
がん放射線療法看護認定看護師は、患者さまやご家族の治療に関する意思決定支援や不安の軽減、症状緩和のために活動します。
がん放射線療法中の患者さまが多い領域で通算3年以上、がん放射線療法への看護実績5例以上などの条件を達成したあと、以下のカリキュラムに取り組みます。
特定行為区分 | 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 |
カリキュラム | 792時間 |
参照元:日本看護協会|認定看護師 認定看護分野、
がん放射線療法看護認定看護師は、専門的な知識や技術を用いた水準の高い看護ケアの実践や、スタッフの指導を行います。
がん薬物療法看護認定看護師
がん薬物療法看護認定看護師は、患者さまが抗がん剤治療で生じる副作用の予防や、セルフケアをサポートします。
がん薬物療法を受けている患者さまの多い領域で通算3年以上、がん薬物療法への看護実績5例以上などの条件をクリアしたあと、以下のカリキュラムに取り組みます。
特定行為区分 | 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 |
カリキュラム | 792時間 |
がん薬物療法看護認定看護師は、薬物療法の適正な投与管理とリスクマネジメントをしながら、患者さまやご家族の意思決定支援と療養生活支援を行います。
緩和ケア認定看護師
緩和ケア認定看護師の役割は、疾患をもつ患者さまやご家族に対してトータルペインの視点でアセスメントをし、その人に適したケアを提供することです。
緩和ケアを受ける患者さまの多い領域で通算3年以上、緩和ケアへの看護実績5例以上などの条件を達成したあと、以下のカリキュラムに取り組みます。
特定行為区分 | 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 |
カリキュラム | 792時間 |
参照元:日本看護協会|認定看護師 認定看護分野、
特定看護分野の実務研修内容の基準p1
認定看護師教育基準 概要 カリキュラムp2
緩和ケア認定看護師は、QOL向上のための症状マネジメントからご家族の喪失・悲嘆への対応までサポートします。
呼吸器疾患看護認定看護師
呼吸器疾患看護認定看護師は、呼吸障害のある患者さまとそのご家族に対し、急性増悪や重症化回避のための支援、症状緩和とQOLを高めるための療養生活支援を行います。
呼吸障害をもつ患者さまが多い部署で通算3年以上、呼吸障害への看護実績5例以上などの条件を達成したあと、以下のカリキュラムに取り組みます。
特定行為区分 | ・栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 ・呼吸器(人工呼吸療法に係る行為)関連 |
カリキュラム | 786時間 |
呼吸器疾患看護認定看護師は、呼吸症状の重症化予防から、生活調整・症状緩和のためのマネジメントまで行います。
まとめ
クリティカルケア認定看護師は、急性期の患者さまに対して、初期対応や重症化の回避・早期回復に向けた支援を行います。
患者さまの異常を早期に発見し、生命を維持しながら、生理機能の回復を目指した全身管理、苦痛の緩和・セルフケア能力の回復支援・ご家族へのサポートなど、幅広い対応が求められます。
クリティカルケア認定看護師になるためには、実務研修5年のうち3年以上はクリティカルケア部門で経験を積み、重度の患者さまの看護を5例以上担当することが必要です。
患者さまやご家族へこれまで以上にきめ細やかな対応ができるようになることで、急性期で働くやりがいが実感できるでしょう。
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