摂食嚥下障害看護認定看護師になるには?資格取得の条件や取得によるメリットも紹介
看護師のキャリアアップとして資格取得を目指す方もいるでしょう。
その中には、知名度の高い認定看護師の資格を目指す方もいるかもしれません。
認定看護師には多くの認定看護分野がありますが、「摂食嚥下障害看護認定看護師」と呼ばれる分野をご存知でしょうか。
今回は、幅広い年代や疾患の方に活かせる「摂食嚥下障害看護認定看護師」について、資格取得の条件や取得によるメリットを解説していきます。
認定看護師の取得を検討しているものの、どの認定看護分野を取得するか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
摂食嚥下障害看護認定看護師とは
認定看護師とは、日本看護協会によって「特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として、本会(日本看護協会)の認定を受けた看護師のこと」と定義されています。
認定看護師の認定看護分野には2026年度で終了となるA課程では21課程、新制度のB課程では19課程の分野があります。
摂食嚥下障害看護認定看護師と呼ばれるものは、A課程では「摂食・嚥下障害看護」、B課程では「摂食嚥下障害看護」の認定看護分野です。A課程の「摂食・嚥下」からB課程では「摂食嚥下」へと用語が変更になっていますが、他の認定看護分野との統合はしていません。
摂食嚥下障害看護認定看護師について、役割と活躍の場に分けて、どのようなものか解説していきます。
詳しい認定看護師資格自体の概要について知りたい方は下記の記事をご覧ください。
関連記事:認定看護師になるには?条件や取得までの流れ、資格取得によるメリットも解説
参照:日本看護協会「A 課程教育機関) 分野:摂食・嚥下障害看護」
摂食嚥下障害看護認定看護師の役割
摂食嚥下障害看護は英語でDysphagia Nursingと呼ばれ、下記のような知識と技術があることを認定されている認定看護師を指します。
・摂食嚥下の機能と障害の評価
・摂食嚥下機能の評価結果に基づく適切な援助と訓練方法の選択
・誤嚥性肺炎や窒息、栄養低下や脱水の増悪防止に向けたリスク管理
参照:日本看護協会「A 課程教育機関) 分野:摂食・嚥下障害看護」
看護の対象年齢や疾患などはなく、小児から高齢者まで幅広い疾患の患者さまに対する摂食・嚥下機能の評価、嚥下機能訓練の選択やリスク管理を行う役割を担っています。
摂食嚥下障害看護認定看護師が活躍している現場
摂食嚥下障害看護の認定看護師は、2023年12月末時点で1,225人おり、主に下記のような場所で働いています。
勤務場所 | 人数 |
病院 | 1,094人 |
訪問看護ステーション | 42人 |
クリニック・診療所 | 6人 |
介護保険施設など | 17人 |
学校・大学 | 17人 |
摂食嚥下障害看護の認定看護師1,225人のうち、病院勤務者は1,000人以上となっており、大多数が病院で活躍していることがわかります。
この背景には、全国の看護師のうち、70%以上が病院に勤務していることがあります。
また、病院で働くと多くの患者さまへ関われるだけではなく、認定更新に必要な2,000時間以上の看護実践時間や、50点以上の自己研鑽実績が作りやすいことも理由にあると考えられるでしょう。
他には、在宅への医療の移行が進む中で、訪問看護ステーションや介護保険施設など、在宅医療の現場で活躍している認定看護師の姿がみられるのがわかります。
※下記資料Excelファイル
摂食嚥下障害看護認定看護師になるには?資格取得の条件や費用
摂食嚥下障害看護を含めた認定看護師になるには、条件を満たした上での研修受講や試験、そして試験合格後の登録が必要です。
実務経験や教育課程の修了など、摂食嚥下障害看護認定看護師の資格を取得する条件と、取得に伴いかかる費用について、それぞれ解説していきます。
摂食嚥下障害看護認定看護師の資格を取得する条件
看護師として通算5年以上、その中でも摂食嚥下障害看護に関して3年以上の実務研修を満たすことが1つ目の条件です。
実務条件を満たした後は、摂食嚥下障害看護の認定分野の単位を修了するために、認定看護師教育機関へ入学し、教育機関を修了する必要があります。
ただし、A課程は2026年で教育が終了となるため、B課程の認定看護師教育機関を選択することをおすすめします。
しかし2023年3月時点では、摂食嚥下障害看護の分野のB課程が学べる認定看護師教育機関は下記の3箇所のみです。
・茨城県立医療大学地域貢献研究センター認定看護師教育課程
・群馬パース大学看護実践教育センター認定看護師教育課程
・公益社団法人愛知県看護協会 認定看護師教育課程
摂食嚥下障害看護認定看護師の資格取得にかかる費用
摂食嚥下障害看護認定看護師の資格取得にかかる費用は、下記の通りです。
・教育機関へ支払う費用(入学金や授業料など100万円〜)
・パソコンやプリンター、実習のユニフォームなど学習で必要な道具(数万円〜)
・認定看護師資格試験の受験料(審査料振込:51,700円(税込))
・認定審査合格後の登録費用(認定料振込:51,700円(税込))
また、前述した教育機関までの交通費や、場合によっては引越しが必要になることもあり、個別に発生する費用も想定しておく必要があります。
さらに、認定後も5年ごとに更新審査を実施しているため、審査料として30,800円(2024年5月時点)の支払いが必要です。
認定後の更新審査をせずに失効した場合は、再認定審査料として30,800円(2024年5月時点)の支払いが発生します。
参照:公益社団法人日本看護協会「B課程 認定看護師教育機関 <摂食嚥下障害看護>」
摂食嚥下障害看護認定看護師を取得するメリット
摂食嚥下障害看護の認定看護師資格を取得するメリットは下記の通りです。
・患者さまのQOLの維持と向上に貢献できる
・高齢化が進む医療現場で需要が高まる
・資格手当や昇給など待遇アップが期待できる
・病院以外にも幅広い現場で働ける
それぞれ解説していきます。
患者さまのQOLの維持と向上に貢献できる
摂食嚥下障害看護の認定看護師資格を取得することで、患者さまのQOLの維持と向上に貢献できるでしょう。
食事はQOLに大きく関わるため、その要素に専門家として関われるというのは、とてもやりがいを感じられるのではないでしょうか。
さらに摂食嚥下障害看護は、年齢問わず幅広い疾患に活かせる知識と技術を学べるため、多くの現場でQOLの維持と向上に寄与できる点はメリットといえるでしょう。
高齢化が進む医療現場で需要が高まる
摂食嚥下に関する障害は、加齢とともに出現してくるものでもあります。
そのため高齢化が進む医療現場では、今後もさらに需要が高まっていく資格であると考えられます。
摂食嚥下障害看護の分野での認定看護師資格を保有していることは市場価値としての意味でも大きなメリットとなるに違いないでしょう。
資格手当や昇給など待遇アップが期待できる
認定看護師資格の取得により、確実に資格手当や昇給につながると断言できないものの、待遇アップが期待できる場合もあります。
日本看護協会が公表している「2022年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書では、摂食・嚥下障害看護(A課程)の分野の認定看護師資格の取得によって処遇が改善されたという意見は、174件の調査対象に対して19%となっています。
また摂食嚥下障害看護(B課程)の分野では、13件の調査対象に対して23%となっています。
どちらも高い割合ではないものの、待遇アップができる可能性もあるため、まずは自分の働く職場の情報などを調べてみると良いでしょう。
参照:日本看護協会「「2022年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書p67-68」
病院以外にも幅広い現場で働ける
前述したように、摂食嚥下障害看護認定看護師は病院だけでなく、訪問看護ステーションや介護施設、クリニックや大学などでも資格を活かして働いています。
在宅医療へ移行が進む中で、在宅で摂食嚥下機能の維持・向上をしたい患者さまへ関わるという選択肢もあるでしょう。
訪問看護では専門性のある看護師は重宝されやすいため、訪問看護ステーションのような在宅医療の現場で摂食嚥下障害看護の資格を活かしてみるのも良いかもしれません。
摂食嚥下障害認定看護師以外におすすめの資格
摂食嚥下障害認定看護師になるにはハードルが高いと感じる方や、さらなるスキルアップを図りたい方は、下記のような資格取得もおすすめです。
・訪問看護ステーションにおける認定看護師資格取得支援事業
・嚥下トレーナー看護師
・介護食士
それぞれどのようなものか解説していきます。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
一般社団法人日本摂食・嚥下リハビリテーション学会によって認定される「日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士」も摂食・嚥下に関する資格制度の1つです。
資格取得のためには日本摂食嚥下リハビリテーション学会に2年以上所属する必要があり、加えて摂食嚥下に関する研究や臨床経験が通算3年以上必要で、学会が指定するeラーニング学習の全課程を修了し、認定士試験に合格することが要件となります。
資格を満たすまでに上記の期間は必要ですが、認定看護師のように教育機関の受講の必要はないため、認定看護師と比較すると資格取得は容易と考えられるでしょう。
参照:一般社団法人日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士制度規約」
参照:一般社団法人日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「認定士試験及び認定士登録規程」
嚥下トレーナー看護師
嚥下トレーナー看護師とは、特定非営利活動法人摂食介護支援プロジェクトによって認定される資格です。
摂食・嚥下に関する知識や技能を十分に有したものであることを証明する資格であり、研修の受講と認定申請が必要となっています。
トレーナー同士の交流も可能な制度となっており、臨床における困り事も共有できるため、他の看護師と学び合いたいと考えている方におすすめの資格です。
参照:NPO法人摂食介護支援プロジェクト「嚥下トレーナー認定規則」
介護食士
内閣総理大臣認定・公益社団法人全国調理職業訓練協会によって認定される3〜1級まである資格です。
介護食に関する知識を学べる資格で、介護職の方に注目されやすい資格ではありますが、看護師の取得も問題はありません。
講習受講の時間もあり、高齢者の心理から食品衛生学や栄養学も含めた知識を学べます。
介護施設や在宅で働く人にとっては学びになる資格といえるでしょう。
参照:公益社団法人全国調理職業訓練協会「介護食士|協会認定資格」
摂食嚥下障害看護認定看護師になるには一定の臨床経験を積む必要がある!今後需要が高まっていく分野の認定資格
本記事では摂食嚥下障害看護認定看護師になるにはどうすれば良いのか、資格取得のメリットも含めて解説しました。
摂食嚥下障害看護認定看護師は、資格取得にあたって一定の臨床経験を積む必要がありますが、高齢化や医療の在宅移行が進む今、需要が高まっていく分野でしょう。
どの認定分野を取得するか悩んでいる方は、ぜひ本記事を参考に検討してみてください。
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。